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『マリオ オデッセイ』タイムアタックの前に立ちはだかる「1時間切り」という壁。14ヶ月もの挑戦における短縮タイムは“5分と少し”

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 2017年10月27日にNintendo Switch用ソフトとして発売された『スーパーマリオ オデッセイ』。同作のタイムアタックには、発売間もないころからそびえ立つクリアタイムの壁がある。それが「1時間」だ。

 発売からわずか2ヶ月、12月9日にゲームクリアの最速タイムは「1時間5分」に達している。『スーパーマリオ オデッセイ』のタイムアタックを視聴する人たちのあいだでは、すぐに1時間切りが達成されるだろうと楽観視されてきた時期もあった。

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(画像はSuper Mario Odyssey – Stats – speedrun.comより)

 しかし、上記の『スーパーマリオ オデッセイ』の世界記録の推移表を見ていただくと分かるとおり、発売から間もなくしてタイムの伸びは急速に縮まることになる。以降、1年以上にわたり、世界記録が塗り替えられてもわずか数秒ずつのタイム更新を繰り返すこととなった。

 帽子の「キャッピー」を2Pに操作させる協力プレイで1時間切りを達成している記録はあるものの、ひとりプレイの最速記録は記事執筆時点で「1時間0分11秒」。14ヶ月前に記録した最速記録から5分と少しの短縮に成功しているが、それでも1時間切りを達成したプレイヤーは現れていない。

 本記事では、『スーパーマリオ オデッセイ』のRTA(リアルタイムアタック)の1時間切りがなぜ難しいのかを簡単に紹介し、さらに1時間切りのために今後越える必要がある要素をまとめてみよう。

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(画像はYouTube | RTA in Japan 3 – スーパーマリオオデッセイ の0:07:56より)

 『スーパーマリオ オデッセイ』のおおまかなストーリーは、マリオがクッパにさらわれたピーチ姫を助けるために国から国へと渡り歩き、最終的に「月の国」でクッパをやっつけるというものだ。この国自体がひとつのステージとなっており、最初は「帽子の国」、次は「滝の国」、さらにその次は「砂の国」と物語は進んでいく。

 それぞれのステージでマリオはは自由に行動できるが、次の国へ進むにはステージに散らばっているパワームーンを一定数集めるか、ボスを倒さなければならない。

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(画像はYouTube | RTA in Japan 3 – スーパーマリオオデッセイ の0:06:39より)

 タイムを縮めるため、パワームーンの取得やボスの撃破といった条件を満たした上で短縮点を探す必要がある。だが、パワームーンを取得した際の演出はスキップすることが不可能。ボスの攻撃パターンはある程度一定で短縮要素を見つけづらいなど、タイムを短縮するための要素が格段に少ない。これらが『スーパーマリオ オデッセイ』のクリアタイム短縮を難しくしている要因だ。

 パワームーンを例に挙げると、パワームーン取得の際には「YOU GOT A MOON」という文章とともにゲームの演出が止まってしまう。パワームーン取得の際の静止画面はゲームの進行を妨げることなく、かつゲームを盛り上げるように演出されているが、このわずかな静止時間も1時間切りの壁として立ちはだかってくる。

 アクションゲームのRTAでは、ステージ自体をスキップしてクリアタイムを大幅に短縮してしまうテクニックが発見されるゲームも多い。一方で『スーパーマリオ オデッセイ』で発見されているステージスキップは、かえってタイムが遅くなってしまうという内容である。ゆえに、ステージをクリアする上で必ず見ることになる「YOU GOT A MOON」といった演出は、絶対に短縮できない要素として重くのしかかってくる。

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(画像はYouTube | RTA in Japan 3 – スーパーマリオオデッセイ の0:10:09より)

 このような過酷な条件下でタイムを縮めるために「壁抜け」などのテクニックがある。上記のスフィンクスの箇所が分かりやすい部類だ。本来このスフィンクスは、出題するクイズに答えると隠し部屋への道を開けてくれるというギミックになっている。しかし、このスフィンクスは一部の当たり判定が抜けており、フレーム単位の緻密な操作が要求されるものの、オブジェクトをすり抜けて隠し部屋にそのまま入ってしまうことが可能だ。

 なお、このスフィンクスの当たり判定は、のちにパッチが当てられたため通れないように修正されている。このほかにも、パッチで直されたため使えなくなったタイム短縮箇所が存在する。そのため、RTAプレイヤーたちはタイムのためにパッチを適応することを拒んでおりNintendo Switch本体を工場出荷時の設定のままにして自動更新をオフにし、発売当時のままにした『スーパーマリオ オデッセイ』をひたすら研究し続けている。

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(画像はYouTube | RTA in Japan 3 – スーパーマリオオデッセイ の0:43:52より)

 演出を飛ばすことができないパワームーンにも、取得方法でタイム短縮の要素がある。上記の「ようこそ!パウダーボウル!」のパワームーンはその一例で、本来ならほかの国から雪の国にワープしないと取得できない場所に存在しているパワームーンだ。しかし、「帽子踏みジャンプ」、また「ベクトリング」という、空中でマリオをジグザグに動かすことで移動距離を伸ばすテクニックを絶妙なタイミングで決めることにより、ほかの国を経由せず、雪の国へ最初に訪れた段階で取得することが可能となっている。

 このようなパワームーンは「湖の国」でも見られ、ほかのパワームーンよりも素早く取得できることから、タイム短縮の鍵となっている。これらは自由度の高い、いわゆる「箱庭マリオ」だからこそ実現できたルート取りと言えるだろう。しかし、パワームーンの取得順序や壁抜けなどのテクニックを組み合わせても、まだ1時間切りには数十秒ほど足りないという期間が長いあいだ続いてきた。

 そこで最近になって、新しいテクニックが生み出された。上記のテクニックは『スーパーマリオ オデッセイ』プレイヤーであるSyrkl氏が発見したもので、プクプクのキャプチャーの仕方を工夫して壁抜けをしている模様を撮影したものだ。本来なら通れない場所を突破し、その先にある隠されたパワームーンを素早く取得することに成功している。

 このテクニックで短縮される時間は5秒程度だが、わずか数秒でも『スーパーマリオ オデッセイ』RTAプレイヤーにとっては貴重な時短要素だ。さらに研鑽を進めた結果、このテクニック発見後にRTAの世界記録は十数秒ほど更新されている。

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(画像はSuper Mario Odyssey – Leaderboard – speedrun.comより)

 『スーパーマリオ オデッセイ』のRTAプレイヤーは世界中に存在し、総プレイヤー人口は1000人を超える数にまで膨らんでいる。そんなプレイヤーたち全員の夢となる1時間切りに向けて、上位プレイヤーたちは日々挑んでいるが、「文字どおり”不可能”だったものが単に”不可能”と呼べるものになった」と形容されるほどに、残りわずかな時間を短縮することが難しくなっている。

 しかし、各区間ごとの最速ラップタイムを繋ぎ合わせたタイムは1時間を切っているというプレイヤーは、すでに数多く登場している。あとは「最初から最後までミスをせず正確な操作で最速ラップを叩き出せるか」というのが、現在の1時間切りに必要な要素だ。

 最初に1時間切りのゴールテープを切るのは、いったいどのプレイヤーなのか。『スーパーマリオ オデッセイ』RTAの今後の展開が見逃せなくなっている。

ライター/もか
協力/かにかま

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ライター
『マリオ オデッセイ』タイムアタックの前に立ちはだかる「1時間切り」という壁。14ヶ月もの挑戦における短縮タイムは“5分と少し”_007
小学校の頃にゲーム雑誌でタイムアタック特集を見てこんな遊び方もあるんだと感動し、RTAという言葉が生まれる以前からゲームの早解きを行い続けて現在に至る。
Twitter:@moka_peer

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