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『ウルトラマンオーブ』田口清隆監督が怪獣特撮の視点で“ゲームにおける巨大生物“の魅力を語る「見慣れた日常が蹂躙される…そこに感動がある」

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「『地球防衛軍』の実写化をやりたい」と、ずっと言っているんです

ラー油氏:
 そもそも田口監督は、子どもの頃からゲームはお好きだったんですか?

田口氏:
 すごくやり込んでいるわけではないですけど、ハードはいろいろ持っていましたね。ファミコン、スーパーファミコン、PCエンジンSUPER CD-ROM2、セガサターンという感じで。プレイステーションじゃなくてセガサターンを買ったのは、そっちで『ゴジラ』のゲームが出ちゃったからですけど。

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ラー油氏:
 セガサターンの『ゴジラ』のゲームというと、すごく難しいヤツですよね。

田口氏:
 ええ、『ゴジラ 列島震撼』【※1】ですね。それを言ったらPCエンジンも、『ゴジラ爆闘列伝』【※2】という『ゴジラ』のゲームのために買ったんですが。とにかく『ゴジラ』のゲームは全部、ひたすらやっていましたね。
 逆に、最近出た新しい『ゴジラ』のゲームは遊んでいないんですけど。

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※1 ゴジラ 列島震撼……1995年にセガから発売された、リアルタイム怪獣撃退シミュレーションゲーム。プレイヤーは対怪獣専門部隊「Gフォース」を率いて、都市に来襲してくるゴジラをはじめとした東宝怪獣の撃退を目指す。
(画像はAmazonより)

※2 ゴジラ 爆闘列伝
1994年に東宝から発売された、PCエンジン用ソフト。CD-ROMの容量を活かした対戦格闘ゲームで、ゴジラのグラフィックが対戦怪獣に応じて原作映画同様に変化するなど、細かい原作再現が行われている。

ラー油氏:
 プレイステーション3とプレイステーション4で発売された『ゴジラーGODZILLAー』【※】ですね。プレイステーション4でタイトルが『ゴジラーGODZILLAーVS』になったという。

※『ゴジラーGODZILLAー』
2014年にバンダイナムコゲームス(現・バンダイナムコエンターテインメント)から発売された、プレイステーション3用アクションゲーム。プレイヤーはゴジラを操作して、街を破壊することでゴジラを進化させていく。2015年には『ゴジラーGODZILLAーVS』としてプレイステーション4で発売。ゴジラ以外の登場怪獣をプレイヤーが操作したり、オンライン対戦が可能になった。

田口氏:
 あのゲームも、ソフト自体は知り合いからもらって持っているんですけど、プレイしていないという。というのも先ほど言ったように、操作の複雑なゲームが苦手だからなんですが。

ラー油氏:
 お話を伺うと、特撮っぽい雰囲気のゲームを選んでプレイされていて、『地球防衛軍』に巡り会ったという感じですか?

田口氏:
 『地球防衛軍』と言われると、特撮ファンなら東宝特撮のあの映画【※】がすぐ出てきますからね。だからもう自然に、何も考えずにやっていた気がしますね。プレイステーション2のゲームも、そんなにたくさんはやっていないですから。

※東宝特撮のあの映画
1957年に公開された本多猪四郎監督による東宝特撮映画『地球防衛軍』のこと。

ラー油氏:
 『地球防衛軍』以外には、“SIMPLE2000”や“SIMPLE1500”シリーズはプレイされていないのですか?

田口氏:
 いや、他にもやってますよ。えーと、『THE 戦車』【※】とか。

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※THE 戦車……2003年にディースリー・パブリッシャーから“SIMPLE2000シリーズ”の一作として発売されたプレイステーション2用ソフト。第二次世界大戦期から最新鋭までの実在戦車13種を操縦して、ミッションクリアを目指すほか、画面分割による対戦も楽しめる。ちなみにSIMPLEシリーズの『THE 戦車』はこれ以外にもプレイステーション、プレイステーション・ポータブル、ニンテンドーDSで発売されている。
(画像はAmazonより)

──えっ!? ここでまさか『THE センシャ』が出てくるとは思いませんでしたよ。ねぇ、ラー油さん!(笑)

ラー油氏:
 じつは『THE 戦車』を、30本ぐらい持ってるんです。

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33本の『THE 戦車』
(画像はラー油氏のブログ「SIMPLE絶対主義」より)

田口氏:
 えっ、『THE 戦車』ってそんなに種類があるんですか?

ラー油氏:
 いえ、同じものを33本持ってます。

田口氏:
 なんでですか?

ラー油氏:
 一時期ですね、酔っ払ったお父さんが『THE 戦車』を買ってくるっていうネタが、ネット上で流行っていたんですよ。「THEセンシャカッテキタゾ」【※】って。そんなノリで『THE 戦車』を見かけるたびに買っていたら、全部で30本ぐらいになっちゃって。正直どうしようって、ずっと思っているんですけど(笑)。

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※THEセンシャカッテキタゾ……2ちゃんねる家庭用ゲーム板で流行していたネタ。

田口氏:
 なるほど。意外な因縁があったんですね(笑)。

ラー油氏:
 じつは同時発売だったんですよ。『THE 地球防衛軍』と『THE 戦車』って。

田口氏:
 あぁ、そうだ。『地球防衛軍』の1作目をクリアして、次は何をやろうかなと思って、『THE 戦車』を買ったんだ。でも、イマイチ戦車を乗りこなせなくて、すぐに止めちゃったんですよね。

ラー油氏:
 発売当時よく言われていたのが、『THE 戦車』の戦車よりも『THE 地球防衛軍』に出てくる戦車のほうが戦車らしいって(笑)。

田口氏:
 そうですか(笑)。プレイステーション2では他に何のゲームをやってたかなぁ。『地球防衛軍』以外、思い出せないけど。

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ラー油氏:
 『THE お姉チャンバラ』【※】はどうですか? 

※THE お姉チャンバラ
2004年にディースリー・パブリッシャーから発売された、“SIMPLE2000シリーズ”のプレイステーション2用ソフト。ヒロインの彩をはじめとする美女たちを操作し、返り血を浴びながらゾンビを斬り倒していく血みどろ剣劇アクション。“SIMPLE2000シリーズ”で続編が次々と発売されたほか、フルプライスの独立シリーズとして多数のハードでリリースされている。『地球防衛軍』と並ぶディースリー・パブリッシャーの人気作である。

田口氏:
 『お姉チャンバラ』は、ゲームは遊んだことがないんですけど、じつは実写映画版(『お姉チャンバラ THE MOVIE』)の合成をやっているんですよ。血しぶきが飛んだり首が飛んだりする合成を担当していました。

ラー油氏:
 実写映画版は上映会にも行きましたし、DVDも買いましたよ。意外なつながりがありますね。

田口氏:
 僕は昔、『大怪獣映画 G』【※】という自主映画を作ったんですけど、そのDVDを発売してくれたのが、『お姉チャンバラ THE MOVIE』のDVD発売元である、当時のジェネオンエンタテインメント(現・NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)さんだったんです。『G』でつながりができたので、「ウチで何か映画の企画をやらない?」って、当時言われていたんですよ。

 そのときに僕は「『お姉チャンバラ』を実写でやるんだったら、『地球防衛軍』も実写でやりましょうよ」と言っていて。

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※大怪獣映画 G……田口清隆監督が8年の歳月をかけて、2008年に完成された自主怪獣特撮映画。巨大怪獣ガラエモンと自衛隊、そして巨大ロボのハードな戦闘が、多摩川を舞台に繰り広げられる。
(画像はDVDのパッケージ)

ラー油氏:
 えっ、そうだったんですね?

田口氏:
 当時その話をしていた人が、『お姉チャンバラ THE MOVIE』のプロデューサーと会社で隣りの席だかなんだかで、「もしかしたらいけるかもしれないなぁ」なんて言っていたんですけどね。

 ただまぁ、どう考えても予算の問題があるでしょうから(笑)。でも当時は、やる算段も自信もあったんですけどね。だからいまだにずっと温めているというか、「何か企画ない?」って誰かに聞かれるたびに、「『地球防衛軍』はどうでしょう」って言っているんですけども。

ラー油氏:
 田口監督がそこまで『地球防衛軍』に思い入れがあるとは、さすがにビックリしました。ちなみに『THE 大美人』【※】とかは、やっていないですよね? 

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※THE 大美人……2004年、ディースリー・パブリッシャーから発売された“SIMPLE2000シリーズ”のプレイステーション2用ソフト。ディースリー作品でおなじみのグラビアアイドル・双葉理保が突如として巨大化。プレイヤーは自衛官としてなんとかこの事態を収拾しようとするという、SIMPLEシリーズの中でも特にブッ飛んだ設定の作品として知られている。
(画像はAmazonより)

田口氏:
 『THE 大美人』もタイトルは知っていますけど、プレイしたことはないですね。あれ? 自分はなんでプレイステーション2を買ったんだろう……ぜんぜん思い出せないなぁ(笑)。プレイステーション3ははっきり覚えていて、『ファイナルファンタジーXIII』をやるために買ったんです。

ラー油氏:
 RPGもプレイされるんですか?

田口氏:
 子どもの頃に『ドラクエIII』『ドラクエIV』をやってたんですけど、途中で『FF』派になって。『FF』は『IV』『V』『VI』とやっていました。ただ、それ以来ずっと遊んでいなかったんです。RPGをやるようなまとまった時間が、自分にはないと思っていたので。

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 でも『FF』のグラフィックはどんどんキレイになっているし、やっぱり面白そうだから、改めて『FF』をやってみようと思って。プレイステーション3と『FF XIII』をまとめて買ったんですよ。でも買ったその日に3時間ぐらいやって、それっきりやらなくなっちゃって(笑)。「オレにはもうRPGはできないんだ」というトラウマをそこで作ってしまい、それ以降はやってないですね。

 ちょうどその頃に、『コール オブ デューティ』を始めたんです。鉄砲を撃つゲームがやりたくて。ゲームセンターでも『タイムクライシス』【※1】とか、昔の『ザ・警察官 新宿24時』【※2】とか、鉄砲を持って撃ちまくるゲームが大好きだったので。

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※1 タイムクライシス……1996年に第1作がアーケードでリリースされた、ナムコ(当時)のガンシューティングゲーム。好評を得てシリーズ化されたほか、ガンコン対応ソフトとして家庭用ゲーム機でもシリーズ展開されている。画像は『タイムクライシス』筐体。
(画像は『タイムクライシス』公式サイトより)

※2 ザ・警察官 新宿24時
2000年にKONAMIがアーケードでリリースした、ガンシューティングゲーム。プレイヤーは警察官となり、新宿歌舞伎町を舞台に暴力団との対決に挑む。テレビのドキュメンタリー番組でおなじみの田中信夫氏によるナレーションが、緊迫感を盛り上げる。2001年にはプレイステーション2で発売された。

ラー油氏:
 『ザ・警察官』は良いゲームでしたよね。

田口氏:
 『ザ・警察官』と『セイギノヒーロー』【※】は全面クリアしました。ゲーセンで全面クリアしたゲームって、あのふたつぐらいじゃないかな。あっ、『タイムクライシス2』もクリアしてたっけ。

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※セイギノヒーロー……2004年にKONAMIがアーケードでリリースした、『ザ・警察官』シリーズの流れを汲むガンシューティングゲーム。ステージごとに警察官や海洋保安官、機動隊員などの「ヒーロー」になりきって活躍できる。画像は『セイギノヒーロー』筐体。
(画像は『セイギノヒーロー』コウシキ ウェブサイトより)

ラー油氏:
 『ザ・警察官』は演出がすごく良いんですよ。本当にテレビの「警察24時」そのまんまで。

田口氏:
 ちゃんとナレーションも付いていて。しかも歌舞伎町でやるのがいいんですよ(笑)。

 歌舞伎町のゲームセンターで、歌舞伎町が舞台のゲームをやるっていう。歌舞伎町の真ん中で鉄砲をバンバン撃ってて大丈夫なのかなって、ドキドキしながらやってました。

映画監督たちのゲームにまつわるエピソード

──お話を伺っていて思ったのですが、田口監督は物心ついたときからゲームがあるという映画監督の、最初の世代じゃないかと思うんです。

田口氏:
 ファミコンという意味ではそうかもしれないですけど、たとえば僕が一緒に仕事をしたことのある方で言うと、押井守【※】監督はかなりのゲーマーですよね。押井さんは『ウィザードリィ』が大好きで、いまだにご自身の映画に『ウィザードリィ』を引用するじゃないですか。

※押井守
1951年東京都生まれ。TVアニメの演出家として『うる星やつら』などで注目を集め、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、『機動警察パトレイバー the Movie』といった劇場アニメを監督する。なかでも1995年の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は世界で絶賛され、ハリウッド映画にも多大な影響を与えている。アニメだけではなく『紅い眼鏡』、『アヴァロン』、『GARM WARS The Last Druid』などの実写映画も手掛けているほか、ゲームにも造詣が深い。

──まさにそのエピソードを、田口監督が担当【※】されていましたよね。

※そのエピソードを、田口監督が担当
『機動警察パトレイバー』のテレビアニメとオリジナルビデオアニメにおいて、押井守監督は『ウィザードリィ』をオマージュした「地下迷宮物件」と「ダンジョン再び」というエピソードの脚本を執筆している。田口清隆監督は実写映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー』で、その2本の続編となるエピソード9「クロコダイル・ダンジョン」の監督を務めている。

田口氏:
 そうですね。だから映画の中にゲームを本気で取り入れた監督というと、僕は押井さんが最初だろうと思っています。

──映画の中にゲームを取り込むという意味では、確かにそうですね。

田口氏:
 僕が初めて遊んだゲームというのは、ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』『ツインビー』『いっき』なんですよ。

ラー油氏:
 そこで『いっき』ですか(笑)。

田口氏:
 そうなると、ゲームセンターの頃からゲームを遊んでいる人から見れば、まだちょっと新しいんだろうなって思っちゃいますね。
 ただ、ファミコンをスタートとするのなら、そこから先のゲームの変遷というのは、ひと通り体験してきましたから。

ラー油氏:
 ご自身が小さい頃からゲームを遊ばれてきたことが仕事に影響を与えていたり、反映されているところはありますか? 

田口氏:
 僕自身の体験というわけではないのですが、僕は黒沢清監督【※】が大好きで。黒沢清監督の映画って、人がすごく渇いた死に方をするんです。すごく無慈悲に、ただ単に人生を断ち切られるんです。黒沢清監督ご本人がインタビューでおっしゃっていたんですけど、その死に方の原点は『ドラゴンクエストII』なんだそうです。

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『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』パッケージ
(画像は編集部撮影)

※黒沢清
1955年兵庫県生まれ。高校時代から自主映画を制作し、1983年の『神田川淫乱戦争』で監督デビュー。『CURE』、『回路』、『ドッペルゲンガー』などのホラー色の強い作品で世界的な注目を集める。近年の監督作には『トウキョウソナタ』、『岸辺の旅』、『散歩する侵略者』などがある。

ラー油氏:
 えっ、『ドラクエII』なんですか? 

田口氏:
 『ドラクエII』って、あの長いパスワードを忘れると、それまでの積み重ねが無慈悲にゼロになるじゃないですか。あの感じなんだそうです。

ラー油氏:
 なるほど、そこなんですね。

田口氏:
 それと、『ドラクエII』はモンスターが強すぎると。敵のレベルが高い場所に行くと、まったく無慈悲に殺されてしまう。映画における人の死に方のひとつのモデルは、あの感じなんだと、黒沢清監督が言っていて。

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 それを本か何かで知って、この考え方はカッコイイなって思ったんです。だから、映画とゲームがそんな考え方でつながるんだという発想を、最初に僕にもたらしてくれたのは黒沢清監督かもしれないですね。

ラー油氏:
 その話は面白いですね。

田口氏:
 いざ自分が監督になってみると、実写の映画やテレビは予算に縛られてがんじがらめになっているし、そもそも実写で撮れるものは限られているじゃないですか。それに対してアニメやゲームは、わりと自由な発想で作られていて。日本国内の作品で、けっこうなお金をかけてビジュアルを表現できているものというと、やっぱりゲームだと思うんです。

 そういう意味では国内で映像を作っている人間として、今のゲームを知らないわけにはいかない、と思うところもあって。いろんなゲームを遊んでいるのは、そんな義務みたいな気持ちも半分ぐらいありますね。

日本の「怪獣」と、ハリウッドの「クリーチャー」との違いとは?

ラー油氏:
 田口監督は実写だけではなくゲームやアニメもいろいろとご覧になられていて、それを『ウルトラマン』シリーズのような特撮作品に取り入れられている印象がありますが……。

田口氏:
 もちろん取り入れていると思うし、自覚していなくても入っていると思います。それで言うとまさに、僕は『機動戦士ガンダム』じゃなくて、『機動警察パトレイバー』が好きだったんですよ。子どもの頃から宇宙戦争には興味がなくて、地球の上で起こる戦いにしか興味がないっていう。言ってしまえばそれは、やっぱり東宝特撮からスタートしているからでしょうけど。

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画像は『機動警察パトレイバー』TVシリーズ第1話
(画像は 『機動警察パトレイバー』TVシリーズ|PATWEB|バンダイビジュアルより)

 『パトレイバー』は整備員たちのやり取りに代表される、泥臭い感じが好きだったんです。押井監督だと、映画の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』も香港みたいな泥臭い感じの、現実にあり得そうな近未来ですよね。だからやっぱり、『ブレードランナー』ぐらいの近未来が好きなんです。透明なチューブの中を空飛ぶ車が走っている未来世界まで行っちゃうと、たとえ地球という設定でも、それは知らない場所だから興味がなくなるんですよね。

 その流れで言うと、スティーブン・スピルバーグ監督の描く近未来は泥臭くて好きですね。トムクルーズの『マイノリティ・リポート』とか。『レディ・プレイヤー1』【※】も楽しみにしています。

※レディ・プレイヤー1
アーネスト・クラインの小説『ゲームウォーズ』を映画化した、2018年4月公開のスティーブン・スピルバーグ監督作品。2045年の近未来を舞台に、VRワールド「OASIS」を巡る物語が描かれる。VR世界を表現するために、『機動戦士ガンダム』、『AKIRA』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『オーバーウォッチ』といった、映画・アニメ・ゲームのキャラクターやガジェットが総動員されている。

ラー油氏:
 ちょうどハリウッド映画の話になったので伺いますが、海外と日本では怪獣に対する概念自体が違うという、昔はそういう話があったと思うんです。でもここ最近、急にその壁が崩れてきているというか、状況が変わってきたように感じますが。

田口氏:
 ハリウッドの映画も昔まで遡ると、モンスターのデザインは牧歌的というか。昔の『宇宙戦争』に出てくる火星人【※】とか、すごく怪獣っぽいじゃないですか。それこそウルトラシリーズの宇宙人にいてもおかしくないような感じで。

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※昔の『宇宙戦争』に出てくる火星人……1953年に制作されたバイロン・ハスキン監督の映画『宇宙戦争』では、長細い手足と3色に分かれた目を持つ、個性的なデザインの火星人が登場している。画像は海外で発売されたプラモデル。
(画像はPegasus Hobbiesより)

 そこからハリウッドのデザインがどんどんと、「より現実的にするとこうだろう」というのを突き詰めていって、その到達点が「クリーチャー」と呼ばれるヤツになっていると思うんです。気持ち悪いじゃないですか、向こうのクリーチャーって。

ラー油氏:
 あの気持ち悪さは、日本の怪獣とは違いますよね。

田口氏:
 それはハリウッドには、気持ち悪くてもいいという考え方があるからだと思うんです。それこそ、世の中にいる生き物の、気持ち悪いところをかき集めるといった思想も感じられて。
 それが行き着くところまで行き着くと『エイリアン』のあの怪物【※1】になるんでしょうね。あのエイリアンは、僕のなかではクリーチャーではなくて、怪獣だと思っているんですけど。

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※ 『エイリアン』のあの怪物……1979年に公開されたリドリー・スコット監督の『エイリアン』で初登場し、以後のシリーズ関連作にも登場している完全生物。オリジナルのデザインは、スイス出身の画家H・R・ギーガーが手がけた。日本では怪物自体を指して“エイリアン”と呼ぶことが多いが、海外では“ゼノモーフ”と呼ばれている。画像は海洋堂によるエイリアンのフィギュア。
(画像はAmazonより)

 それはともかく、『遊星からの物体X』【※1】の人間がドロドロになっている感じとか、ああいったものは日本の怪獣としては受け入れられない気持ち悪さですよね。

 それに対して日本では、成田亨【※2】さんがデザインしたウルトラ怪獣というのが、早い時期から国民的に根付いたので。それもあって、ハリウッドのようにリアルで気持ち悪いクリーチャーにはいかない時代が、長く続いたわけです。

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※1 『遊星からの物体X』
1983年に公開されたジョン・カーペンター監督のSFホラー映画。南極の氷の下から発見された宇宙生物が、南極基地の隊員に同化して地球を侵略するサスペンスが描かれる。犬や人間が変形してグロテスクな姿になる怪物の描写は、公開当時に大きな反響を呼んだ。画像は『遊星からの物体X』ユニバーサル思い出の復刻版 ブルーレイ パッケージ。
(画像はAmazonより)

※2 成田亨
1929年青森県生まれ。武蔵野美術大学で絵画や彫刻を学び、彫刻家として活動する一方で、『ウルトラQ』、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』といった特撮作品で、ウルトラマンや怪獣などのデザインを多数手掛けた。「動物をただ大きくしただけのデザインはやめる」、「身体が壊れたようなグロテスクなデザインをしない」という成田氏のポリシーは、以後の日本の怪獣デザインに大きな影響を与えている。2002年に逝去。

 その間に、ハリウッドはもっとリアルに、もっと気持ち悪くという方向に進んでいった結果、日本とはかけ離れていったのかなと思うんですけど。でもハリウッドにも、そういう昔っぽい……というとあまり良くないかもしれないけど、あまりリアルではない方向性のデザインが好きだという人もいて。ギレルモ・デル・トロ監督【※】なんかは、そのいちばん先頭にいるんでしょうね。

※ギレルモ・デル・トロ
1964年メキシコ生まれ。子どもの頃からホラー映画や日本のアニメ・特撮作品に影響を受け、1993年の『クロノス』で監督デビュー。『ヘルボーイ』、『パシフィック・リム』といった大作映画から、『パンズ・ラビリンス』のようなダーク・ファンタジーまで、ホラーやモンスターにこだわった作風を貫いている。『シェイプ・オブ・ウォーター』で第90回アカデミー賞監督賞を受賞。

ラー油氏:
 『パシフィック・リム』【※】ではズバリ、「KAIJU」と言ってますからね。

※パシフィック・リム
2013年に公開されたギレルモ・デル・トロ監督のSFアクション映画。太平洋の深海から襲来する巨大「怪獣」から太平洋沿岸の都市を守るため、人類は巨大ロボット「イェーガー」を開発して立ち向かう。日本の特撮・アニメを真正面からオマージュした超大作で、日本でも高い人気を獲得している。

田口氏:
 日本人ではないデル・トロ監督が、モンスターともクリーチャーとも違う、日本にしかいない生き物として「怪獣」を認識していたわけじゃないですか。アレを目指すんだって。
 『パシフィック・リム』の怪獣をデザインするときも、デル・トロ監督は「人間が入っている感じにしなきゃダメだ」って言ったらしいんですよ。日本の怪獣は逆に、いかにして人間が入っていないようなフォルムに見せるかを、がんばっていたのというのに(笑)。

ラー油氏:
 ペスター【※】とか、そうですよね。

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※ペスター……初代『ウルトラマン』第13話「オイルSOS」などに登場した怪獣。ヒトデがふたつ横につながったような形をしており、その中間に顔がある。このデザインは、左右それぞれにひとりの人間が入ることで、人間の形状から離れた形にするため。画像はソフビ人形。
(画像はAmazonより) 

田口氏:
 その一方で、日本ではどんどんと、これまでの怪獣の枠から外れようとしていて。

 このあいだ、『モンスターハンター』を作っている皆さんから真面目なお話を聞いたことがあるんです。『モンスターハンター』に出てくるのは怪獣でもなければ、クリーチャーでもない。あれは「モンスター」なんだと。

 かつて現実に存在していた恐竜に立脚している部分はあるんだけど、身体に光る部分があって、そこから放電するという意味ではある種、日本の怪獣の良さを採り入れていて。でも全体的なデザインとしてはいわゆるクリーチャー寄りであったり、そういうリアルな感じにしていると。

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『モンスターハンター』シリーズに登場するモンスターのジンオウガ
(画像はCAPCOM:モンスターハンター4 公式サイト|モンスター|雷狼竜 ジンオウガより)

ラー油氏:
 先ほど田口監督が言われたハリウッド的なクリーチャーと、日本の怪獣のちょうど中間に、『モンスターハンター』のモンスターがいるわけですね。

田口氏:
 まさにモンスターなんだろうなって。これはもう言葉遊びになっちゃうんだけど、ハリウッドのモンスターがどんどんクリーチャーになっていて、一方で日本はモンスターではなくて怪獣になっていったと。その間にいるのが、『宇宙戦争』の火星人やハリウッドの昔の半魚人みたいな、昔ながらのモンスターだったのかなって。

 ただデル・トロ監督も、『シェイプ・オブ・ウォーター』【※】の半魚人は、どちらかというとクリーチャー寄りになっていますよね。あれは別に怪獣である必要はまったくないから、それでいいと思うんですけど。

※シェイプ・オブ・ウォーター
2017年に公開(日本公開は2018年)された、ギレルモ・デル・トロ監督作品。1960年代の冷戦期を舞台に、声を失った女性と半魚人との恋愛を描いたファンタジー映画。第90回アカデミー賞で作品賞を受賞。これはモンスターを主題とした映画としては画期的だ。

ラー油氏:
 こうやって説明してもらえると、すごくわかりやすいですね。

田口氏:
 別にどっちが良くてどっちが悪いという話ではないんです。僕は『ウルトラマン』で怪獣を作っている人間として、今のウルトラ怪獣はこれでいいと思っていて。

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 その一方で昔、樋口真嗣【※1】さんが『ウルトラマンパワード』【※2】で、そのウルトラ怪獣をハリウッドモンスター寄りのデザインにするというのを試みているわけですよ。
 あと最近は、フィギュアで『ウルトラマン』の宇宙人をクリーチャー寄りにしたらこうなる、といったデザインも出てきたりとか。あれはあれでカッコよくて、すごくいいなと思っていて。

 だからどれも好きだし、どれが良い悪いという話ではないんです。ただ、着ぐるみで表現するのには、やっぱり怪獣のデザインが合っていて。でもCGでやるのなら、もっとモンスター風にしたほうがいいのかなとも思うし。クリーチャーに関して僕は、着ぐるみじゃなくて造形物でやったほうがいいと思っているんです。

※1 樋口真嗣
1965年東京都生まれ。『ふしぎの海のナディア』、『新世紀エヴァンゲリオン』などのアニメ作品で絵コンテや脚本を手がける一方で、平成『ガメラ』三部作では特技監督を担当。2005年の『ローレライ』で実写長編映画の監督デビューを果たす。『シン・ゴジラ』では監督・特技監督として、庵野秀明総監督を支えた。田口清隆監督自身が後述しているように、田口監督にとっては師匠的なポジションにあたる人物。

※2 ウルトラマンパワード
円谷プロがアメリカで制作し、日本では1993〜94年にビデオ発売された後、1995年にテレビ放送された。内容的には、アメリカを舞台に初代『ウルトラマン』をリメイクしている形だが、登場する怪獣は樋口真嗣氏や前田真宏氏が、オリジナル版の怪獣を新規デザインでリニューアルしている。

──実物大の模型(アニマトロクス)や特殊メイクで表現する形ですね。

田口氏:
 そうですね。CGでテキパキ動くクリーチャーって、意外と面白くないもんだなぁって、最近はちょっと思ってるんですけど。

 『ジュラシック・パーク』【※】のティラノサウルスって、やっぱりあの物(ブツ)感が良かったじゃないですか。ちょっと不器用な動きで。CGだったらもっと自由に動けるんだけど、造形物だからここまでしか動けないんだ、っていう動きが逆にリアルな気がしていて。

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※ジュラシック・パーク……マイケル・クライトンの原作を元にして、1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督作品。バイオテクノロジーを駆使して現代に甦った恐竜たちの姿をCGで表現して、映画の歴史を塗り替えた画期的作品……ではあるが、じつは本作で恐竜をCGで表現しているのは、全身が映し出されるカットのみである。ティラノサウルスをはじめとする恐竜たちがアップで登場する場面の多くは、実物大の模型で表現されている。画像は『ジュラシック・パーク』DVDパッケージ
(画像はAmazonより)

 動物園でサイとかカバとかを眺めていると、「あれって人が入ってるんじゃないの?」って言いたくなるような、いかにも着ぐるみがやりそうな動きをするんですよ。もちろん中島春雄さん【※】をはじめとして、スーツアクターのみなさんも動物園でいろいろ学んでいたわけだから、それはそうなんですけど。

 それに対してCGだと、“アニメならではの動き”すぎる感じがあるんです。生き物ってじつはそんなに動かないし、動物園に行ってもアクティブに動いている動物は、なかなか見られないですし。
 ということを考えると、造形物で作られた生き物の、おじさんたちが後ろのほうで油圧で動かしている感じの動きは、生き物として意外とリアルに見えたりする瞬間があるんじゃないの、と思っていて。

※ 中島春雄
1929年山形県生まれ。東宝の大部屋俳優として『七人の侍』などに出演する傍ら、1954年の初代『ゴジラ』でゴジラの着ぐるみの中に入って演じた、日本のスーツアクターの元祖的人物。以降、1972年の『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』までシリーズ12作でゴジラ役を担当したほか、他の東宝特撮作品や『ウルトラマン』などでも怪獣役を演じた。2017年に逝去。

『地球防衛軍5』に登場する怪獣は「目」が魅力的

田口氏:
 今の『ウルトラマン』は予算とかいろいろな制約があって、着ぐるみでしかできないのでそうしているんですけど、もしその制約が外れて「怪獣を好きに作っていいよ」と言われたときに、自分はいったいどうするんだろうというのは、ときどき考えるんです。その機会が来ないから、まだあんまりちゃんと考えてはいないんですけど。

『ウルトラマンオーブ』田口清隆監督が怪獣特撮の視点で“ゲームにおける巨大生物“の魅力を語る「見慣れた日常が蹂躙される…そこに感動がある」_052

 そう考えると『モンハン』って、ひとつのいい答えを出しているよなぁと。『地球防衛軍5』の怪獣も、CGで「怪獣」を表現する場合のひとつの答えとして、すごく良いスタイルをしているなぁと思っていて。

ラー油氏:
 今回は怪獣のデザインも、気合が入っていますよね。

田口氏:
 そうですね。怪獣デザインも良かったですね。怪獣戦のステージは楽しかったです。メーサー車【※】がワーッといて、自分は道路の真ん中に立っていて。『地球防衛軍5』の中でも、このステージがいちばん楽しかったなぁ。

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※メーサー車……1966年の東宝特撮映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』で初登場し、平成ゴジラVSシリーズなどにも登場した超兵器。正式名称は「メーサー殺獣光線車」。ちなみに、『地球防衛軍5』に登場するパラボラ兵器を搭載した車両の正式名称は、原子光線砲を搭載した大型車両「EMC」である。
(画像は『地球防衛軍5』公式サイトより)

──メーサー車も、けっこうそのまんまですよね。

田口氏:
 『地球防衛軍』なんだから、やっぱりパラボラ兵器を持っていなきゃ。もう最高ですよね。

 あと、『地球防衛軍5』の怪獣で僕がわりと好きなのは、目の大きさなんです。

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ラー油氏:
 あぁ! なるほど。

田口氏:
 『シン・ゴジラ』も『パシフィック・リム』の怪獣もそうなんだけど、最近デザインされた怪獣ってみんな、目が小さいんですよ。動物ってどんなに体がデカくても、目は大きくならないという考え方だと思うんですけど、僕自身は目が小っちゃい怪獣は、あんまり好きじゃなくて。

 やっぱりウルトラ怪獣、それも初代『ウルトラマン』の怪獣がとにかく好きなので。目が三白眼だったりするあの感じ。今回の『地球防衛軍5』の怪獣は、どっちかというとそっちなんですよね。「怪獣」の目をしているんです。自分はそっちのほうが好きだなぁと思っていて。

ラー油氏:
 テレスドン【※】なんかも目が特徴的ですよね。

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※テレスドン……初代『ウルトラマン』第22話「地上破壊工作」をはじめ、『ウルトラマンX』、『ウルトラマンオーブ』の田口監督演出回などにも登場した人気怪獣。地下4万メートルに棲息する地底怪獣で、暗闇に光る目を持つのが特徴。画像はテレスドンのソフビ人形
(画像はAmazonより)

田口氏:
 テレスドンが暗闇の中からガッと出てきた瞬間に、目だけ光っているっていうね。目が光っているのがまた、動物としてはおかしいんだけど(笑)。外の光を反射しているならともかく、発光していますからね。でも、それはもういいじゃんって。

 樋口真嗣さんも平成『ガメラ』のときに、ガメラの目を光らせるべきかっていうのはけっこう迷って、結果的に光らせていないんですよ。リアルを取るために。その代わりレギオンとかイリスとか、敵の怪獣は人知を超えた生命体だから光らせるっていう。

 僕が『長髪大怪獣ゲハラ』【※】っていう商業デビュー作を監督したときに、樋口さんがプロデュースしてくれたんですけど、そのときに「目は光らせたほうがいいよ」って。自分がガメラでできなかったことを、ゲハラにぶつけたんじゃないかと思いますけど(笑)。

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※長髪大怪獣ゲハラ……2009年にNHKの番組内企画としてオンエアされた、田口清隆監督の商業デビュー作。製作総指揮:樋口真嗣、企画・脚本:みうらじゅんと、短編作品ながらもスタッフ・キャストには豪華な顔ぶれが揃っており、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などでも上映された。画像は『長髪大怪獣ゲハラ』DVDパッケージ
(画像はAmazonより)

 そういう意味で『地球防衛軍5』の怪獣は、これはもうガッツリ怪獣だなって。アルファベットの「KAIJU」ではなくて、漢字で書ける「怪獣」だなと、そう思いますね。

今は怪獣の灯火を絶やさないための「種まき」をしている時期

ラー油氏:
 ここ最近、『パシフィック・リム』のKAIJUであるとか、『モンスターハンター』のモンスターも含めて、いろんなところで怪獣だとか怪獣的なものがどんどん出てきていることについて、田口監督としてはどう思われますか?

田口氏:
 日本国内で怪獣を取り扱っている人間からすると、怪獣ブームなんて来てないですよ。むしろ怪獣の灯火が消えかけているとすら思っていて。
 なのになぜ、ハリウッドであんなに怪獣映画が作られているんだろうなと。あのハリウッドの熱気と、日本の冷気のギャップはどうしたものだろう? と思っているんですけど。

 『ウルトラマン』もこの5年ぐらいの間、新作の放送自体は1年の半分ぐらいとはいえ、それでも毎年ずっと続けていることで、子どもたちの認知度が上がってきていて。やっぱり継続の力なんですよね。
 東映のスーパー戦隊シリーズや『仮面ライダー』は、ずっと途切れていないですから。

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 もちろん『ウルトラマン』も戦隊もライダーも、みんな一緒にがんばっていかなきゃいけないんですよ。テレビの特撮物としては今、ウルトラ・戦隊・ライダーしかないわけですから。
 『牙狼-GARO-』は大人向けなので、ひとまず置いておくとしても。そういう意味で今は、みんなでがんばって一生懸命に種まきをしている状態というのが、日本国内の「特撮」の現状だと思うので。

ラー油氏:
 本当になぜ、ハリウッドであんなに怪獣映画が作られるようになったんでしょうね?

田口氏:
 アメリカのほうもそういう世代になったからでしょうね。海外で上映されていた、昭和後期の『ゴジラ』を見ていた世代が今、監督になってきているから。それはすごく嬉しいことだし、去年僕も「G-FEST」というアメリカの怪獣特撮ファンのお祭りに初めて行って、向こうの熱気を直接感じてきましたけど。

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 とはいえそれも、日本のコミケの熱気にはぜんぜん敵わないわけで。やっぱりマンガのほうがみんな好きだし、大勢の人が読んでいるし。それに比べると特撮やSFが好きな人は、ある一定の固定客以上は増えていない感じがしていて。どこかでそれは打破したいし、もっと盛り上がっていってほしいと思っているんですけどね。

 ヘンな話、ゲームも一時期と比べたら、今は落ち着いている感じじゃないですか? 昔に比べると、今はゲームが好きだという人しかゲームをやらなくなっている雰囲気があると思うんです。そんな風にどの業界もいろいろと難しい状況になっている中で、怪獣を扱う業界も、やっぱり厳しいんだよなぁというのが僕の実感ですね。

ラー油氏:
 先ほど田口監督が「種まきをしている」とおっしゃっていたのが、いちばん適切なのかなと思うんです。
 田口監督が作られた『ウルトラマンX』『ウルトラマンオーブ』を見ていると、その次の何かにつながりそうな気がすごくしているんですけど。

田口氏:
 「種まき」という意識は明確にありますよ。僕が主催している「全国自主怪獣映画選手権」【※】というイベントも、その種まきのひとつですから。今の若い子にも、特撮や怪獣を好きな子はいるんだけど、その出し口がないために止まっている子たちもけっこういて。僕が『大怪獣映画 G』を作ったときもそうだったんですけど、怪獣物の自主映画を相手にしてくれる場所なんて、そうそうないですから。特撮雑誌の『宇宙船』ぐらいしかないので。

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※全国自主怪獣映画選手権……田口清隆監督が自ら主催している自主映画上映イベント。アマチュア制作の怪獣特撮映画を募集し、観客の前で上映するというもの。過去に米子、岡山、尼崎など日本各地で開催されており、2018年4月1日には第11回となる「東京総合大会」を調布で開催。
(画像はパンフレット表紙)

──自主映画のなかでも、特撮物は別枠扱いですよね。

田口氏:
 怪獣映画に賞なんか、絶対に獲らせてくれないですからね(笑)。だからこっちも自主映画のコンペとか、ぜんぜん興味がなかったんです。そう思っていたら、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭【※】が賞をくれたので、それが嬉しくて今でも毎年、夕張に行っているんですけど。

※ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
1990年より北海道・夕張市で開催されている映画祭。当初は夕張市が運営していたが、同市の財政問題により2006年にいったん休止を発表。2008年からはNPO法人による運営が行われている。田口清隆監督は2009年に、同映画祭で市民賞を受賞している。

 そこで自主怪獣映画選手権という形で、「お前らが怪獣映画を作って面白ければ、ここで上映するよ」という場所を作ってみたら、わりと尽きずに新作がどんどん送られてきている状況なんです。今度で11回目になるんですけど。

 自主映画を作っている人たちが今、どれぐらいいるのかは知らないですけど、今は自主映画ってすごく作りやすい状況なんです。高校生でも中学生でも簡単に、自主映画を撮れますから。僕も中学生から撮ってはいたんですけど、僕らのとき以上に撮りやすい状態ですよ。

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 だってスマホで動画が撮れるんですから。しかもiPhoneがあれば、ハイスピード【※】が撮れるんです。4倍のハイスピードなんて、僕らのときはどうすればいいんだって感じだったのに、今はそれが当たり前にスマホで撮れちゃうので、特撮も作りやすいんですよ。

※ハイスピード
いわゆるスローモーション撮影のこと。フィルム撮影では、フィルムを通常より早く送りながら撮影することで、一定時間内に撮影されるコマ数が通常より多くなり、スローな動きを記録できる。ハイスピード撮影は重量感などを強調できるため、特撮では必須の技術である。

ラー油氏:
 僕もYouTubeなどで特撮物の自主映画を目にすることがあるのですが、最近の作品は本当にクオリティが高いですよね。

田口氏:
 高校生から大学生にかけての時期は、発想の自由さだったり、時間の使い方だったりが、あの頃独特のものじゃないですか。社会人になったらそうはいかないので。もちろん全世代から募集はしているんですけど、特にあの年齢の人たち、10代後半から20代前半の熱さみたいなのを、とにかく持ってきてもらいたいですね。

ラー油氏:
 この自主怪獣映画選手権がきっかけになって、田口監督のスタッフになった人もいるわけですよね?

田口氏:
 僕のスタッフというよりも、いろんな特撮の現場にどんどん流れて入ってきていますね。言ってしまえば僕と知り合う時点で、業界と知り合ったようなものなので。

 僕は日活芸術学院という映画学校の出身で、そこも現場直結の学校だったんです。その中で「怪獣やりたい!」ってずっと言ってたから、樋口真嗣さんの『さくや妖怪伝』【※】の現場に実習で行くことになって、そこで樋口さんと知り合ったんです。その後、『大怪獣映画 G』が完成したので樋口さんに渡したら、気に入ってくれて。それで商業デビュー作の『長髪大怪獣ゲハラ』を撮らせてくれたという経緯があるので。

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※さくや妖怪伝……2000年に公開された原口智生監督のファンタジー時代劇。樋口真嗣氏は同作で特技監督を担当している。『さくや妖怪伝』DVDパッケージ
(画像はAmazonより)

ラー油氏:
 かつて樋口監督が田口監督を商業デビューさせたように、今度は田口監督ご自身が、特撮の現場を目指す若い人たちを招き入れようということですね。

田口氏:
 もちろん、自主映画のコンペで賞を獲っても映画監督になれるかもしれないけど、こと怪獣映画をやりたいヤツらだったら、僕と知り合う方が早いだろうと。いちばん手っ取り早い方法を今ここに作っているんだから「これを利用しない手はないぞ」というのが、この自主怪獣映画選手権なんですけど。

 それと同じような意味で、「メイキングに力を入れよう」と、『ウルトラマンX』や『ウルトラマンオーブ』のときにもよく言っていたんです。裏側を見せないんじゃなくて、むしろ積極的に見せようと。なぜかというと、平成VSゴジラシリーズのときに、川北紘一監督【※】の特撮のメイキングがテレビでよく放送されていたんです。僕はそれを見て「自分も『ゴジラ』を作りたい」と思って、今こうしてやっているわけですから。

※川北紘一
1942年東京都生まれ。1960年代から東宝特撮の撮影現場にスタッフとして入り、1976年の『大空のサムライ』で、映画作品の特撮監督デビューを飾る。以後、『さよならジュピター』、『ガンヘッド』などの作品を経て、『ゴジラvsビオランテ』から『ゴジラvsデストロイア』までの6作品で、特技監督を務める。2014年に逝去。

ラー油氏:
 そうなんですね。

田口氏:
 特撮の現場は「夢の工場」だから、夢を壊しちゃいけないから見せない、っていう考え方もあるんですけど、むしろ夢の工場を見せることで夢を持った人間もいるんだよと、僕は思っていて。

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 特に今、担い手が少なくなっていくかもしれないこの特撮業界において、その入り口を最初から閉ざしてどうするの、と思っているので。

 だから『ゲハラ』や『G』や『ウルトラゾーン』には、たまたま僕にその権限があったので、本編より長いメイキングをソフトに入れたりしています。それこそ特撮映画のBlu-rayやDVDのソフトを買うモチベーションって、特典映像のメイキングじゃないですか。
 本編は別にレンタルでも配信でもどこでも見られるけれど、メイキングは買わなきゃ見られないっていうのが、ソフトをコレクションする理由ですからね。

特殊な立ち位置の作品は、けっこう得意かもしれない

──田口監督はテレビシリーズや映画だけではなく、ちょっと特殊な作品も作られていますよね。VRの360度全天球特撮に挑戦した『ウルトラマンゼロVR』【※】とか。

※『ウルトラマンゼロVR』
ウルトラマンゼロと怪獣エレキングがオフィスビル街で対決する光景を、全天球360度のVR映像で表現した意欲作。周囲360度が爆発で埋め尽くされるなど、前代未聞の特撮シーンが田口清隆監督によって描き出されている。この作品と同時に『ウルトラファイトVR』も製作された。

田口氏:
 あれは別に、自分から探して撮ったわけではないんですけどね(笑)。去年の『ウルトラマンジード』では、僕はメイン監督じゃなかったので、言ってしまえば体が空いているわけですよ。そのときに円谷プロに来た別案件、たとえば台湾のミュージックビデオ【※】だとか、VRの企画だとかが、偶然そのときに来たので。

※ 台湾のミュージックビデオ
台湾の人気ロックバンド・Mayday(五月天)による「少年漂流記(少年他的奇幻漂流)」のミュージックビデオ。台北の街に出現したダークバルタンに立ち向かうウルトラマンネオスと、ウルトラマンに憧れる少年の姿がドラマチックに描かれる。台湾のムー・チェン(陳奕仁)監督が演出を担当し、円谷プロによる特撮を田口清隆監督が手がけている。

 そういう意味では、最近やっと発表されましたけど、じつは2年前には『帰ってきたアイゼンボーグ』【※】を撮っていたんですよ。テレビシリーズの間の空いている期間に、そういう変わったものもけっこう撮っていて。

※ 帰ってきたアイゼンボーグ
円谷プロが1977〜78年に放送したテレビ特撮番組『恐竜大戦争アイゼンボーグ』は海外でも放送されており、中東地域では今でも高い人気があるという。そこで番組の40周年を記念して、サウジアラビアからの要望と協力で作られた特別番組が 『帰ってきたアイゼンボーグ』である。この番組はドキュメンタリーパートと新作特撮パートで構成されており、新作特撮パートを田口清隆監督が演出した。

──『帰ってきたアイゼンボーグ』は最初、昔の映像を使っているのかと思ったぐらい、1970年代の『恐竜大戦争アイゼンボーグ』そのままの雰囲気になっていて、ビックリしました。

田口氏:
 あれはもう、昔の映像を全力で再現してほしいっていう、サウジアラビアのクライアントからのオーダーだったんですよ。「進化したものを見たいんじゃないんだ。今の技術で昔と同じことをやってほしい」って。それこそ4:3の画角が16:9になっていればいい、ぐらいの感じだったので、それならばと徹底的にやってみました。

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 お話を聞いてみたら、サウジアラビアでは『アイゼンボーグ』だけがずっと、ヘビーローテーションで放送されていたらしいんです。「『ゴジラ』も『ウルトラマン』も『仮面ライダー』も、知らないから別にいらない。とにかく『アイゼンボーグ』がほしいんだ」って言われて。

ラー油氏:
 そうなんですか!? それはそれでスゴイお話ですね。

田口氏:
 ドラマ部分で日本人の俳優が出ていると海外ではやっぱり難しいんですけど、『アイゼンボーグ』はキャラクターがアニメだったので、海外でも受け入れられやすいんですよ。だから日本のアニメって、世界で通用するんでしょうね。

ラー油氏:
 なるほど。言われてみればちゃんと理由があるんですね。

田口氏:
 ただ、たしかに僕は、ちょっと変わった作品は得意かもしれないです。そもそも僕は、最初に円谷プロでやったのが『ウルトラゾーン』【※】っていう、斜め上どころか左下の端っこからスタートしていますから(笑)。

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※ウルトラゾーン
2011〜2012年に放送された、ウルトラシリーズの怪獣たちにスポットを当てたバラエティ番組。怪獣たちが日常生活を繰り広げるコントや短編コメディドラマが並ぶなか、田口清隆監督はシリアスな本格特撮短編ドラマを演出している。
(画像は「ウルトラゾーン」公式サイトのスクリーンショット)

 そこから『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』とか『ネオ・ウルトラQ』とか、ひたすら外堀を埋めていって、ようやく『ウルトラマン』に入ったという経緯があって。プロデューサーもそれを知っているので、どのへんに僕を置くと得意なのか、よく知っているんですよ。

ラー油氏:
 田口監督はやっぱり、そのお仕事の幅の広さがすごく印象に残っていて。

田口氏:
 この火を絶やすまい、とまでは言わないですけど、今やれることは全部やろうと思っていますよ。もちろん僕自身も、食っていかないといけないので。

ラー油氏:
 では今は、新作を準備されている感じでしょうか? 

田口氏:
 『ウルトラマン』に限らず、いろいろと新作の準備はしています。その中のどれが実現するかは分からないですけど。今回こうやって、「いろんなゲームを遊んでいますよ」と発信することができたので、そこから何かあるかもしれないですし。

 ゲーム内ムービーの演出とかもやってみたいですし、あとはアニメの仕事もぜひやってみたいなと思っていて。アニメは昔、『東京マグニチュード8.0』【※】というTVアニメのエンディングの演出をやったことがあるんですけど。

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※東京マグニチュード8.0……2009年に放送されたTVアニメ。首都圏を巨大地震が襲ったという設定で、お台場にやってきていた中学生の姉と小学生の弟が、世田谷の自宅に戻ろうとする姿を描く。
(画像は『東京マグニチュード8.0』公式サイトのスクリーンショット)

ラー油氏:
 『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』【※】の実写シーンは、単なるスタッフというか、お手伝いですか?

※パンティ&ストッキングwithガーターベルト
2010年に放送された、『天元突破グレンラガン』の今石洋之監督によるテレビアニメ。落ちこぼれ天使の姉妹が、街に巣くう悪霊「ゴースト」退治に大暴れする姿が、下ネタギャグを交えて描かれる。本文にもあるように、ゴーストの断末魔はなぜか実写の爆発シーンで表現されている。

田口氏:
 あれは完全にお手伝いですね。それも爆破のお手伝いで(笑)。

ラー油氏:
 アニメの途中で急に実写になって、昭和の特撮みたいな感じで敵が爆発するんですよね。

田口氏:
 その敵の後ろの風景の紙は、僕が貼っていました(笑)。

ラー油氏:
 では、今後制作される田口監督の新作も、楽しみにお待ちしています。『地球防衛軍』の実写版を田口監督が演出する日が、いつか実現することを期待しておりますので!(了)

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 今回の企画は『地球防衛軍5』がメインとなるものだったが、ここまで読んできた方はおわかりの通り、田口監督の話は驚くほど広範囲に及んでいる。ゲームと実写映画の関係、ハリウッドと日本の怪獣に対する捉え方の違い、そして新たな怪獣の表現を模索する上において、『地球防衛軍』や『モンスターハンター』といったゲームタイトルが果たしている役割など……。

 「特撮」や「怪獣」というと、人によっては子ども向けのものだと思うかもしれない。だがそれを制作している現場では、その表現やメッセージに真剣に向き合い、全力を傾けている人たちがいる。
 その姿は、同じように「子ども向け」のジャンルとみなされることもあるゲームの現場と、まったく変わることはない。
 そのことを確認できただけでも、今回の取材は非常に有意義なものだったと思うのだ。

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著者
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ラー油
ゲームブログ「絶対SIMPLE主義」を運営するブロガー。 SIMPLEシリーズを中心に低価格なゲーム全般が守備範囲で、最近はゲームライターとして各地で奔走中。 宇宙人キャラをウリにしてるが設定は定まっていない。田口清隆監督作品で好きな怪獣は「グリーザ」「マガオロチ」。
Twitter: @daikai6
著者
『ウルトラマンオーブ』田口清隆監督が怪獣特撮の視点で“ゲームにおける巨大生物“の魅力を語る「見慣れた日常が蹂躙される…そこに感動がある」_068
過去には『電撃王』『電撃姫』で、クリエイターインタビューや業界分析記事などを担当。現在は『電撃オンライン』『サンデーGX』などでゲーム記事を執筆中。また、アニメに関する著作も。
Twitter:@ito_seinosuke

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