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ゲーム実況で食ってる人で下手くそなのは俺たちだけ──人気実況者・加藤純一ともこうが考える、視聴者たちが彼らのプレイに熱中する理由とは

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 ゲームが“遊ぶもの”ではなく、“見るもの”になりつつある時代が到来している──。

 ゲームをプレイしながら、その様子を自身で実況する動画を配信する。「ゲーム実況」と呼ばれるジャンルが、世の中に定着しつつある昨今。

 2007年から2008年にかけて、ニコニコ動画内でアップされる例が増え始めたゲーム実況は、2009年以降に人気カテゴリーへと成長していく。しかし、ゲームの映像や音声はあくまでメーカーの著作物。
 ジャンルの創成期からしばらく経つまでは、法的にグレーな存在であり続けた。

 ところが、2013年にスパイク・チュンソフトが『不思議のダンジョン 風来のシレン4 plus 神の眼と悪魔のヘソ』『テラリア』など新作のプロモーションのために条件付きで許可を出したことを皮切りに、徐々にゲームメーカー側が理解を示す例が増え始めた。
 そしてここ数年では、新タイトル発売前に人気実況者が実況配信をする事例はPRの主要な方法になりつつある。

 さらに、ノンジャンルで活動するHIKAKINはじめしゃちょーといった人気YouTuberがサブチャンネルでゲーム実況をアップする例が多くなるばかりか、人気女優の本田翼がYouTubeでゲーム実況を開始
 今年10月にはさいたまスーパーアリーナでリアルイベントを開催するなど、新たな展開も。

 世界に目を向けても、2018年に世界で最も稼いだYouTuberトップ10のうち、実に4人がゲーム実況者であり(Forbes調べ)、ゲームを見ることを楽しむ人の多さが伺える。

 ゲーム実況は、もはや一部のゲーム好きのみが楽しむジャンルではなく、YouTubeで動画を見る人たちが日常的に接する、一般的なジャンルとなりつつあるのだ。

 今回は、そんなジャンルの創成期から活動を始め、今年で10年目を迎えた人気実況者の加藤純一氏、もこう氏をお迎えしてインタビューを行った。

 加藤氏は、編集した動画をアップするのではなく、主に生配信を行うスタイルの実況者。令和へ改元後間もなく行った配信『ポケモンエメラルド・バトルファクトリー金ダツラを倒す男~令和~』では、約7万8000人がその様子を見守り、生配信のリアルタイム同時接続者数が世界一位を記録。

 時を同じくして生配信を行っていた世界一人気の実況者・Ninja(YouTubeの登録者は約2200万人)の視聴者数を大幅に超える大記録となった。

 一方のもこう氏は、主にネットの対人戦を好む実況スタイル。YouTubeチャンネル登録者数約78万人を誇り、2018年には『ぷよぷよ』のプロライセンス保持者(当時11名のみ)となった。
 今年にはNHK Eテレの『沼にハマってきいてみた』のeスポーツ回にて「プロプレイヤー、ゲーム実況者」として出演。タレントの桜井日奈子にぷよぷよの指導をするなど、ゲーム実況界の顔の一人として活躍している。

もこう:
 やりましたね。

 もう一つのトレンドとしては、対戦ゲームだと魅せるプレイングをできる人の方が伸びやすくなってきた気がします。プレイスキルがあって、そのうえで面白いことが喋れることが重要というか。

加藤:
 確かに。ゲーム実況で食べてる人のなかで、下手くそなのって俺ともこうくらいじゃない? 他の人たちはある程度上手いじゃん。

もこう:
 マジでそうかもしれないです。

──確かに、かつてニコニコ動画で人気だった実況者たちは、上手さよりもキャラ重視だったように感じます。ただ、今YouTubeで人気な人たちは、ニコ動でも人気だった人が多いですよね。

加藤:
 ああ、そうですね。キヨレトルト牛沢ガッチマンとか。あ、キヨもゲーム下手だわ(笑)。若いから、俺たちより多少は上手いけど。

 なんでですかね。見ていてストレスがかかるんですかね? これだけインターネット使う人が増えたら、本当にいろんな人が見るので、そこまで興味ない人たちにとって、グダグダやってるの見てられないって感じなのか。

もこう:
 僕も「イライラするからもう見ない」って書かれるようになったかもしれないです。昔だったら「草」「ここ下手すぎワロタ」くらいだったところが、徐々に変わってきた。

加藤:
 でもさ、今さら変えられないし、俺たちが喋らずにそれなりのプレイをしてたって面白くないじゃん(笑)。

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──上手さを求める方向って、結局同じ方向に向かっていってしまうわけですもんね。ビジネス業界でも、最近はロジカルシンキングはコモディティ化しているという見方もあって、意思決定に合理性を求めるほど平凡なサービスになってしまうという。それに近い気がします。

加藤:
 プロゲーマーがYouTubeでプレイ動画を上げても、そこまで再生数が上がらないのって、そういう理由があるのかもしれないですね。みんな、引退してエンジョイ勢になってからの方が人気が出るんですよ。

もこう:
 確かに、現役のプロでYouTubeでも人気な人ってあんまり……。

加藤:
 それこそ、現役プロで今一番人気あるのはもこうじゃない? 一応プロでしょ。なのに1勝もしてないんですよ。一番人気あるのに一番下手っていうのが面白いんじゃない?
 競馬で言うハルウララ【※1】みたいな。馬場豊【※2】と語感も似てるし(笑)。そのままでいいんじゃないかな。

※1 ハルウララ
2000年代初頭に人気を博した競走馬。当時日本歴代2位の108連敗を喫するなど、連戦連敗が続いたことで「負け組の星」として人気を誇った。当時引退時の成績は113戦0勝。

※2 馬場豊(ばば・ゆたか)
もこう氏の本名で、声優活動をするときはこの名義を使う。

──盛り上げるために、あえて上手く進めないこともあったりするんですか?

加藤:
 いや、あえて下手くそにやってるわけじゃなくて、本当にうまくないんです。なんなら、老化で反射神経もなくなっていくし。気持ちでカバーしてる感じです。
 まあでもね、ゲームって上手い人だけのものじゃないし。下手くそが楽しんだっていいわけじゃないですか。

 だから、語弊があるかもしれないけど、eスポーツに対してもゲームは上手いだけが全てじゃないぞって気持ちもありますね。もこうは、プロゲーマーなわけでしょ?

もこう:
 そうですね。ぷよぷよで。

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もこう選手
(画像はSEGA | ぷよぷよポータルサイト | eスポーツ | プロ選手一覧より)

加藤:
 プロゲーマーだけど、1回も勝ったことがないんですけど、それが超面白いんですよ。
 でも、ぜんっぜん勝てない彼が1勝したときの盛り上がりって、尋常じゃ無いと思うんですよ。そういうプロゲーマーがいてもいいと思うんですよね。
 eスポーツが盛り上がるのは悪いことじゃないけど、上手いだけが全てじゃないぞって。

 聞きたいんだけどさ、もこうはゲームが上手いように見せたいの?

もこう:
 対戦では、そう見せたいですね。自分の理論に基づいた行動で読みが当たったら嬉しいし。それが裏目に出たとしてもぜんぜん構わないですけどね。
 シャドバでも、いい試合にしようとして、結果的にぜんぜんダメだったりするけど、コメントで「わざと下手にやってるんじゃないの」って言われるんですよ。

加藤:
 言われるよね。でも、俺たちはちゃんとやって下手くそなので(笑)。

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──おふたりはYouTubeとニコニコ動画という2つのプラットフォームを使っているわけですが、それぞれになにか違いは感じますか?

加藤:
 やっぱり分母がでかいからYouTubeメインでやってますけど、見てる人たちの雰囲気はそんなに変わらない気がします。

もこう:
 そうですね。

加藤:
 視聴者の数が5倍くらい違うので、金銭的にも変わってくるとは思いますけど。あ、YouTubeでやれそうなゲームを、ニコ生で試してみるっていうのはありますね。
 まあでも、結局は自分が楽しかったらいいというのが大事で。視聴者の反応ばっかり気にしてたら、それこそ病気になっちゃうから。

 一回だけ、超狙って十万人企画みたいな感じでホラーゲームをやったんですけど、地獄のようにスベったんですよ。それ以降、ウケ狙いは金輪際やらないって決めたんで。

もこう:
 当てに行ってスベるのはしんどいですね(笑)。

──ウケは狙わないとはいえ、ゲームを選んだり、プレイしている最中に、視聴者を盛り上げるための工夫はしているんですよね?

加藤:
 これをやったら面白いんじゃないかって工夫はしますよね。例えば、ニコニコ生放送って、視聴者さんがいくつかの部屋に分かれているんですよ。
 それぞれの部屋から、別の部屋のコメントは見えないので、部屋ごとのコメントでキャラを操作させてプレイするとか。

 『ファイアーエムブレム』ってゲームをやったときに、俺は主人公を動かして、他のキャラは部屋ごと割り振って。
 例えば、立ち見Aの部屋にいる人たちは代表を決めてコメントで行動を決めてくれって感じでやっていったらすごく面白かったんですよ。

 普通なら自分が全部決める選択肢に、他人の意見が入ってくるのが面白かったし、視聴者さんも楽しんでくれたみたいです。

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 いま考えてるのは、あれを今度はニコ生とYouTubeでやったら面白いんじゃないかって思ってます。なんか知らないけど、ニコ生とYouTubeの視聴者たちって、お互いを嫌い合ってるので。

配信中に“感情失禁”して泣いてしまったことも

──ちなみに、お互いの動画や配信を見ることはあるんですか?

加藤:
 生配信をやってるのに気づいたら、今日はどんなケンカしてるのかなって見に行く感じですね。

もこう:
 僕も加藤さんの生配信はけっこう見てますよ。特にオーイシマサヨシさんとやってるネットラジオはけっこう見てますね。

──お互い認める、ここはスゴいと思うポイントはありますか?

加藤:
 すぐ思いつくことが1つありますね。同期で後輩で付き合いも長いから、長く見てきたけど、こいつ、最近おかしくなっちゃったんですよ。
 企業さんの案件でも、ブチ切れて止めたりしちゃって(笑)。もともと荒い奴だったとは思うけど、あれ以降は共演すると心強いですね。最悪、ちゃぶ台ひっくり返していいんじゃんって思うから。

 普通、そういうことはできないじゃないですか。僕も、8年間は社会人を経験してからゲーム実況の専業になってるので、かしこまっちゃうんですよ。
 でも彼は良くも悪くも、そういうことがなくて、その素直な部分が視聴者にウケてるんだろうなって思います。

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──ブチ切れてしまったのは、どんなシチュエーションだったんですか?

もこう:
 とあるゲームの案件で、ゲーム自体は非常に素晴らしい、海外でも人気な作品なんですけど。

加藤:
 去年の生配信の中で、一番面白かったですね。俺も聞きたいわ、なんで切れちゃったの?

もこう:
 1時間の配信って聞いてたんですけど、なんかしんどいなって感じて時計を見たら、まだ15分くらいしか経ってなくて。これが後45分も続くのかって感じたら、しんどくなってきちゃったんですよね……。やってて、楽しくなかったというか。
 コメントの返しの雰囲気とかも含めて、自分が楽しい空気を作れなかったのが悪いんですけど。

加藤:
 ちょっと前にも動画で募金【※】をしてたけど、あれは俺がやったらいやらしくなっちゃう。いやらしく感じないから感心したもん。

※募金
今年7月、アニメ制作会社の京都アニメーション放火殺人事件が発生。しかし、アニメを見ていただけの無関係な自分が、関係者に混ざって「ご冥福をお祈りします」などと発言することに違和感を感じ、追悼コメントを出さずにいたもこう氏。
しかし、動画に対する不謹慎なコメントを放置した結果、「もこう自身も同じことを思っているのか」という理不尽な批判が相次いだことで怒りを覚え、偽善者と言われようが、自分なりにできることをやろうと考え、99万円の募金を決行した。

──ふたりのクリアするまで帰らない生放送、もこうさんがコメントで叩かれてましたよね。

もこう:
 ああ、そうでしたね。

加藤:
 でも俺は『SEKIRO』やったとき、感心したけどね。すごい量の「チュートリアル見ろ」「〇〇しろ」ってコメントが無数に流れてきたんですよ。でも、俺は絶対にコメントの通りにしてほしくなかったから、心の中で「絶対に読むなよ」って思ってて。
 50時間くらいかな、最後まで読まなかったんですよ(笑)。広報の人が来て、「こうやって読むといいですよ」って言ってたのに、読まなかったから。

 最後までコメントが荒れてたけど、自分のやり方を突き通したわけじゃん。あれはスゴいなって思った。ただ言うことを聞いてたら、ラジコンと同じなわけじゃん。

もこう:
 まあ、それは捉え方の問題ですね。俺はあのゲームをアクションだと捉えていたので、文字を読んだら負けかなと。

加藤:
 何言ってるのかちょっとよくわかんないけど、そういうこだわりがあったほうが良いよね。
 どんなに荒れたとしても。世界中の人から批判されても、決して曲げない姿勢は絶対に必要なんですよ。俺もそういうときがあるし。
 あ、もこうにもあるんだ、と思って見てたけど、50時間ずっと読まないとはね(笑)。

──ゲーム実況の配信では、視聴者とコミュニケーションすることでライブ感が高まることもあると思うのですが、あえて意見を聞かないのがいいということですか?

もこう:
 そのときは、すでに何回か視聴者のコメントを真に受けながらやってたけど、身が入らなかったから、その反省を活かしたのもありますね。
 あと、加藤さんが『ダークソウル2』やってたときに、同じような感じのことをやってたんですよ。毒の沼地みたいなところで、これを使えば簡単にいけるっていうコメントを無視し続けて。

加藤:
 そのとき、もこうが起きてきて、開口一番に「なんでコメント拾わないんですか?これで行けるらしいですよ」って言ってきて、俺がキレたんだよね。

もこう:
 「ずっと見てたけど、無視してたんだ」って言ってて、なるほどなって感心しましたね。

加藤:
 でもこれって俺たちだけじゃなくて、全人類にあることなんですよ。『ドラクエ6』で使わなくてもいいテリーを使うとか。
 皆さんも無駄にこだわりのあるキャラクターを使うことがあると思うんですよ。その程度のことなんです。でも、誰かに見られてるわけじゃないから、意識しないだけで。

──『ドラクエ5』でフローラを使ったほうがお金も貰えて覚える呪文も強いけど、ビアンカを使いたいとか。

加藤:
 そうそう。野球でも、合理的な勝ちだけを求める考えだったらソフトバンクを応援すればいいわけじゃないですか。でも、オリックスを応援してる人たちもいるわけで。
 ゲームやってたら、趣味嗜好が入るわけですよ。それを理解していない人たちが多い。もこうだって、『SEKIRO』のときは文字を読みたくなかったわけじゃん!

もこう:
 そうですね(笑)。

加藤:
 それは、すごいわかるの。だから何も言わなかったじゃん、俺。いいぞ!って思ってたから。

ゲーム実況で食ってる人で下手くそなのは俺たちだけ──人気実況者・加藤純一ともこうが考える、視聴者たちが彼らのプレイに熱中する理由とは_013

──以前、イベント出演の際に「自分に嘘をついたら終わりだ」と話していましたが、そういう気持ちだったんでしょうか。

もこう:
 そうですね。

加藤:
 あれはすごかったですよ。あんなにコメントが荒れてるのに、無視してやってんのすげえなと(笑)。「帰れ」って言われまくってたから。

──実況のスタイルとして、加藤さんは「ここ、どうするべき?」などとコメントを拾うイメージが強かったのですが、意外です。

加藤:
 そういうときもありますけど、うっとおしいと思ったらコメントを見てるふりしてるときもありますよ(笑)。

もこう:
 え、マジっすか!?

加藤:
 「ああ、そうなんだ」とか言って、拾ってるふりしながら、1〜2時間見ないときもある。

もこう:
 “エアコメ読み”してるんすか(笑)。これは初耳ですね。

加藤:
 見てる人たちはストレスなく進めてほしいから。気持ちはわかるんだけど、俺は俺がやりたいようにやっちゃう。そこに大きな差が生じたときは、ちょっと申し訳ないけど、消しながらやることもあるね。

 こっちの方が面白いと思ったら、何万人でも無視することもありますよ。コメントが止まったのかわからなくならないように、最初の1文字目だけ表示して。
 だってさ、もこうも同じだと思うけど、あれだけたくさんの人に見ていただいて、全部の意見は聞けないわけじゃん。

もこう:
 それはそうですね。

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加藤:
 もちろん、仲良くするときはめっちゃ仲良くしますけどね。
 なんというか、攻略本を見て、答えの決まってるレールにずっと乗っかっていくのって、面白くないと思うんです。
 生配信に関しては、自分がこうなったら面白いはずって方向に進むのが一番面白いと思います。

もこう:
 僕も理想の配信像を思い描くけど、そのとおりにならないことが多いかな。

──もこうさんにとっての理想像とは?

もこう:
 最後、思いっきり盛り上がって、ピークのところで終わる感じですかね。
 最近だと、最終的に視聴者とケンカして、後味悪い感じで終わっちゃうことが多かったけど。

加藤:
 それはそれで面白いじゃん。

もこう:
 毎回、別の意味では盛り上がるんですけど……。でも、本当はゲームで盛り上がりたいんですよと。
 例えば、「24連勝するまで終わりません」って『ぷよぷよ』をやってるときに、19連勝とかいいところまでいって、結局は達成できずに、無理やりオチをつけて終わらせるって感じになっちゃったりして。

 それでも面白がってくれる視聴者もいますけど、やっぱり「最後までやれよ」って言われるので。もちろん僕もそうしたかったけど、音を上げちゃったんですよね。
 そういう意味では、加藤さんの「金ダツラ」【※】が全クリまで行ったのは、びっくりしましたね。僕も見てたんですけど、2年は無理なんじゃないかって思ってました。

※金ダツラ
ダツラとは、『ポケットモンスターエメラルド』で登場する、バトルファクトリーという施設のボスキャラクターの名称である。
この施設では、自身の育てたポケモンではなく、ランダムで変化するレンタルのポケモンで戦う形式で相手もランダムで決まるため、運の要素が非常に高いシチュエーションとなっている。24戦目、48戦目でダツラが登場し、前者を倒すと銀のシンボル、後者では金のシンボルをもらえる。
つまり「金ダツラ」とは、倒すと金のシンボルをもらえる48戦目のダツラの通称であり、実質的に『ポケットモンスターエメラルド』のバトルファクトリーで48連勝をすることを意味する。
加藤氏が金ダツラに挑んだ下記の配信では、同時接続者数7.8万人という驚異的な数字を記録。世界の配信ランキングでトップとなり、2200万人超えの登録者数を誇る実況者・Ninjaの配信をも上回った伝説の配信となった。

──加藤さんと一緒に配信をして、「テンションについていけない」と感じたことはありますか?

もこう:
 5年くらい前に初代ポケモンを同時に進めて対決していく企画をやったんですよ。あれが最初に一緒に長時間やった企画だったと思うんですけど。
 6〜7時間なのに、ぜんぜんノリについていけなかったです。正直、しんどかった(笑)。

加藤:
 最近も、もこうと一緒にやると、最初の15分くらいは張り切ってるけど、その後は一段落するよね。「よし、仕事したな」みたいな(笑)。
 ペース配分なんだろうけど、後半の方は意識がなかったりすし。

もこう:
 意識ないですね。だから、加藤さんのテンションのスタミナが異常なんですよ。

──そのスタミナは昔から持っていたんですか?

加藤:
 いや、ゲーム実況を始めてからじゃないかな。だって、学生時代、会社員時代は徹夜もできなかったし、やっぱり配信が好きなのかもしれない。
 麻雀好きな人が、気づいたら寝ずに丸二日打っちゃったっていう感覚に近いんじゃないですかね。

──では、仮に配信せずにゲームをするなら、そんなにスタミナが持たないのでしょうか。

加藤:
 配信しなかったら、すぐ飽きるでしょうね。配信して、見てくれる人がいて、リアクションがあるのが楽しいんだと思います。

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──配信していて、一番アドレナリンが出るのはどんな瞬間ですか?

加藤:
 一応、10年やってきたので、こんな内容だったらこのくらいの反響かなという想定はできるんですよ。でも、皆さんの反応が予想を大幅に超えてくる瞬間があって、そういうときは脳から変な汁が出ますね。

 今年もあったんですよ。いつも3万人くらいの方が見てくれるんですけど、ある日突然7万人くらい、ドカンと来たときがあって。
 今までにない幸福感があったので、死ぬ前にもう一度味わいたいって思いますね。

──それはどんな企画だったんですか?

加藤:
 ポケモンで、ストーリーとは別のサブイベントがあって。6匹の中から3匹選んで連勝していくモードがあるんですよ。
 41連勝したら42戦目でボスが現れるので、それを倒すっていう生配信をしてたんですけど、ずーっと勝てなかったんです。

もこう:
 あれは毎回見てましたけど、向こう2年は終わらないだろうなって思ってましたよ。見てる人たちもみんなそう思ってたところを超えていく、そのライブ感が半端なかったですね。

加藤:
 やっぱりハードルは高ければ高いほうがいいっすね。その方がやってて楽しい。ハードルの高さは自分の物差しでよくて、世界初の挑戦をしたいわけじゃないんですよ。

もこう:
 最後、スターミーのれいとうビームでバンギラスが凍ったじゃないですか。あの瞬間、どんな感じだったんですか?

加藤:
 これ、凍ったら神回だなって思ってた(笑)。でも、予感はあったの。今までさんざん失敗してきてたから、凍るんじゃないかとは思ってた。
 ああいうときって、なにやってもうまくいくじゃん。

もこう:
 わかります。そういうとき、ありますよね。

加藤:
 人生でたまにあるじゃん、そういう時。
 凍れ、凍れって思ってたら、本当に凍ったから。たまたま10%の状態異常を引いて、無理やり勝ったシーンだったんですけど。マジで脳みそがとろけた、あの瞬間。終わった後も、しばらくパソコンの前で動けなくて。
 あの後、1週間くらいずっと機嫌よかったもん(笑)。もこうにも味わってほしいわ。

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──もこうさんも、「何をやってもうまくいく」という感覚を味わったことがあるんですね。

もこう:
 「動画が調子いい」って感じる波がたまにあって、今年の4月〜5月くらいにもあったんですよ。それこそ、加藤さんが言う想像を超える反響が一回ありましたね。
 すごい昔のゲームをやって、ほぼノーカットで適当に話してる動画を上げたら、めっちゃ伸びたんですよ。そのときは、脳汁が出たというか。

 ニコ動時代からそうなんですけど、数字を見てるのが大好きで、毎時ランキングをずっと見てるのが楽しいんです。

加藤:
 やっぱり、みんなそうだよね。

もこう:
 荒れた動画でも、初動の24時間はどんな感じで伸びてるのか、とか。逆に、今回は伸びなかったか……って一喜一憂してるのが楽しいから。
 ニコ動でもYouTubeでも、それが一番楽しいんですよね。

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