濃すぎる経歴のVRエバンジェリストがOculus VR社を退社! GOROman氏が初音ミクと歩き出すVRの未来とは?

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悪いUIを作ると未来人が苦労する

――そういうところで、バックグラウンドがゲーム開発者だなあ、と思いますね。UI開発者として、ゲーム経験がないと、余白が少ないUIを作りがちですね。ボタンとボタンのマージンもそうだし、ボタンの受付時間とかも。

GOROman:
 いわゆるエンジニアが考えたUIですね。ゲームエンジニアが考えることって「気持ち良さ」なんですよ。シューティングゲームで打って「スカッとする」ものと、『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』【※】みたいにストレスしか溜まらないものと、両方ありますよね。

※『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』
1985年にバンダイから発売された、ファミコン向けアクションゲーム。いわゆるクソゲーらしいが、筆者はプレイしたことがないので判断は保留。

オバケのQ太郎 ワンワンパニック』。

――わはは。わかります。

GOROman:
 それってセンスなんですよ。ゲーム開発者はゲームをやっているから、「これが気持ちいいUIである」とか「これがスカッとするUIである」とかという部分がわかっている。

 『ストII』でいえば、バーンと殴った時にヒットストップが出るんですが、あれがあるとないとではぜんぜん違う。『パックマン』でパワーエサを食べて逆襲する時に止まるじゃないですか。あれがあるかないかで、脳みそから出る汁が違うんです。ゲームプログラマーは、そういうことを直感的に理解しているんですよね。

 だから、銀行のATMなんか、イライラしますけど、ゲームプログラマーが開発すれば楽しいATMになるんじゃないかと思うんです。あと、待たせない。「Now Loading感」を減らす。

――特にUI設計の初期段階、PCのようなもののUI設計の初期段階って、そういう発想が非常に大切なんじゃないか、と思いますよね。

GOROman:
 ダメなUIがデファクトになってしまうと、その後何十年も、未来人が苦労することになるんです。これは、POBox【※1】などを開発した増井俊之【※1】先生の言葉ですが。

 この先空間にUIが入る中で、みんなでデファクトを作り上げたいと思ったんですよ。みんな『マイノリティ・レポート』【※2】を作っちゃうんですが、あれはすごくダメで。疲れますからね。

 あれはペーパーパラダイムの延長線上にあるもので、結局平面に過ぎず、こう(水平のものを垂直にする仕草)しただけ。でも、あれは映画的にカッコよくて、それが大事になんです。なぜかというと、既存のパラダイムの延長線上で持ってこないと理解できないんですよ。なんでもいいんですけど「アチョペチョパー」っていうまったく新しい概念ができて(笑)、それをそのまま映画の中で「アチョペチョパー」として出しても、なに言ってるかわからないですから。

 『攻殻機動隊』の中で、キーボードをタイプするオペレーターの指が「バシャッ」と広がるシーンがあるじゃないですか。あれもどうかとは思うんですよ。だって電脳化してるんだから、ジャック入れればいいじゃん、と。でも、あの物理インターフェースの方がなんかかっこいいわけでしょ。未来感があって、「いまのインターフェースのものすごい未来版」だって誰にでもわかる。

※1 POBox、増井俊之
日本のユーザーインターフェース研究者で、現在は慶應義塾大学環境情報学部教授。POBoxは1990年代末、増井氏がソニーコンピュータサイエンス研究所在籍時代に開発したもので、現在でいう「推測変換」の先駆けとなったもので、当時としては非常に素早く、高い入力精度を誇った。その後増井氏はアップルに入社、iPhone向け日本語入力システムの開発に参加した。

※2『マイノリティ・レポート』
2002年に公開されたSF映画。トム・クルーズ主演。犯罪予知を行うコンピュータシステムの操作が非常に未来的で、「空間を使ったUIの例」として挙げられることが多い。どのような映像かは、以下のトレイラーを参照。

――ものすごいスピードで処理してるのが、誰の目にも明らかですからね(笑)。

GOROman:
 そうそう。プラグ刺しても、凄さはなんにも伝わらない。映画的演出上はあああるのが正しいんです。そうすると、でも思考停止になっちゃう。

VR OSを普及させるための「階段」

――VR OSも、そうなりつつある部分はありませんか?

GOROman:
 でも、「階段」を作るのは大事だと思っているんです。例えばMS-DOSからWindowsに移行する際にもコマンドプロンプトは残した、とか。今までできたことを新しいパラダイムの中でもできるようにしておくことは重要なんです。

――VR OSの上でも、既存のデスクトップが見えるのは重要だ、と。

GOROman:
 今、バーチャルデスクトップが見えるのは階段に過ぎないんです。

 僕がやりたいのは、タッチコントローラーを持って画面の中に手を突っ込んで、MP3ファイルを取って耳を近づけたら聞けるとか、『ドラゴンボール』の「ホイポイカプセル」みたいに投げつけるとコンポが現れて聞けるとか、それで5.1chを配置して聞けるとか。

 要は、アイコンの次が定義したいんです。結局すべてはメタファーなんですよ。

 iPhoneの初期はスキュモーフィズム【※】を採用していて、わざわさ電話は「電話らしい」アイコンをしてたわけですよね。電卓も電卓になってた。本当はそんな必要はないんだけど、新しい流儀に慣れていない人のためにも想像できるようにメタファーが必要だったわけです。

 算数の授業で「りんごが5個にみかんが3個」っていうのはスキュモーフィズムですよね。そこでいきなり「X=5、Y=3」とかやるとわかんなくなっちゃう。足し算を教えても覚えられない。概念を具象化しないと、最初はわからないですよね。

※スキュモーフィズム
他の物質に似せるために行うデザイン手法。アイコンを実際にあるものに似せたり、PCの壁紙を実際の部屋と同じようにするのはその典型的な手法。少し前までは主流のデザイン手法だったが、今はシンプルで抽象的な「フラットデザイン」に移りつつある。

――だからVR OSも、20年とか30年とか経ってみると、画面上に浮かんでいるものはすごく抽象化されたアイコンに……。

GOROman:
 アイコンじゃないですよ、多分。アイコンもメタファーなので。

――ファイルを消すのも、「ゴミ箱に入れる」んじゃなくなりますよね。

GOROman:
 クラウドが数ペタバイトレベルになり、回線も5Gだとか6Gだとかになって湯水のように無限に使えるようになると、「セーブ」という概念も「デリート」っていう概念もいらないと思うんですよ。だって、消しちゃったら戻せないじゃないですか。なぜゴミ箱にしたかというと、「捨てても拾えるようにする」ためですよね。でも、そんなのは、あらゆる時間軸を全部残せるようになればいらないです。「7秒前の状態に戻す」とかできれば。

 もっとすごいこともできると思っていて、さらに「非同期コラボレーション」できる時代が来るはずなんです。今は同じ文章を「同時に」編集していますよね。でも、Aさんがやった履歴をたどってBさんが作業する、ということもできる。Aさんが線画を描き、寝ているうちにBさんがその作業履歴に合わせて色を塗り、Cさんがさらにその履歴に沿って仕上げる、みたいなやり方です。

 今のデータは「離散的」なんですよね。保存するとそこで途切れる。でも連続的に保存できる概念が生まれると、BさんがAさんの作業を見ながら、「へー、ここでこう直したんだ」という意図を汲み取ってコラボレーションすることができる。それが当たり前になると思うんです。

 ストレージやメモリーが高価だった時代には、「セーブ」という概念、一時のスナップショットをとってたわけです。でもメモリーが無限にあるなら、すべての過程を残し、無限にアンドゥできるようになります。

――最近、ペン系のアプリケーションは、ストロークや筆圧、それを書いているタイミングなど、「書いている過程すべてを残しておく」世界に突入していますね。

GOROman:
 前に思いついたのは、自分がプログラミングしている時の顔も全部記録しておいて、苦悩している顔が何%だったか、みたいな機能。「ああ、ここでオレむかついてたんだな」的なことがわかると面白いな、と思ったんですよね。

――いまだとディープラーニングで「今の顔はムカつき度何%」とか出せますからね。

GOROman:
 そこで相関図を作れますよね。朝何時だと効率いいとか、相関が出せるはずで。

Miku@Homeの衝撃?!

――VR OSの実装について。個人にとって求められているのは「UIそのものを作るためのコンピュータ」であり、今の仕事、例えばメールの処理や文書作成の処理自体を行うコンピュータが、UIのためのコンピュータと一体である必要はないですよね。

GOROman:
 まったく、ないですね。

――ゲームもそうですよね。レイテンシの問題があるから今はローカルであるのがいいけれど、ひとつの本質として、ロジックからUIからグラフィックス生成までを1つのコンピュータでやる必然性があるわけではないし。

GOROman:
 ですね。なのでMikulusのひとつの野望として、使ってないコンピュータをSETI@Home【※1】みたいに演算に使って、すごい演算資産を生み出す、みたいなことも考えているです。ネットにすごい演算力が生まれて、その正体がミクさんだ、みたいな(笑)。

 久夛良木さんがPS3で言ってたこと【※2】、本来やりたかったことって、そういうのじゃないのかな、と思うんですよね。 10万人がMikulusを起動していて、その10万人のミクさんが動く機器の余分な計算力が集まる、的な。Miku@Home。昔、みんなやってたでしょ? SETI@Home。

※1 SETI@Home
カリフォルニア大学バークレー校が、1999年に一般公開したボランティアプロジェクト。異星からの通信電波を探す「SETI」の効率を上げるため、PCなどで死蔵されている演算能力を使う、分散コンピューティング的な発想で作られていた。2000年前後、爆発的にブームとなった。現在も行われている。

SETI@homeのアプリケーション画面。(画像はSETI@home JAPANより)

※2 久夛良木さんがPS3で言ってたこと
久夛良木さんとはPlayStationの生みの親である久夛良木健氏のこと。PlayStation 3に使われたプロセッサーである「CELL Broadband Engine」では、サブプロセッサーであるSPEの余剰分を、ネットワークの向こうにある機器同士で連携させて分散コンピューティング環境を構築する、という構想があった。だが、PS3以外でCELL Broadband Engineが使われることが少なかったこと、実効性に疑問の声もあったことなどから、構想のままに終わった。

――なつかしいなあ(笑)。 確かに「あ、このタスク回してみたけど、自宅だけじゃ足りないわ」といってネットにとりにいく、みたいな世界があってもいい。

GOROman:
 要は元気玉ですよ。元気玉コンピューティング。「元気玉コンピューティングに参加しますか?」っていうチェックボックスをつけなきゃいけないですね。そうしないと、「おい、知らないうちになんかミクさんが電気食ってるぞ。うち50A契約なのになんで足りないんだ」と怒る人が出てきたりして(笑)。

――ある種のモチベーションとして、Miku@Homeに参加するとモーションが増える要素を入れるとか。あるいはお金?

GOROman:
 いやいや。結果としてミクさんがどんどん賢くなる、という要素だったらやると思いません? 「AI自体の機械学習のためにMiku@Homeを使います。参加しますか?」だったらやると思うんですよ。

――それは、キャラクターによってモチベーションが変わりませんかね。

GOROman:
 それはそうですね。

――逆にいえば、キャラはある種のスキンに過ぎないわけですよね。そこでどの振る舞いを選ぶか。ある人はミクさんだろうし、ある人はミッキーかも知れないわけですよね。

GOROman:
 そこで抽象化の概念が必要になるわけです。ある意味、「ミク」を突き詰めた上で抽象化すれば、その先はまさにスキンに過ぎないわけです。

 でもいきなり、リンゴとミカンとすいかを一緒に育てます、といっても失敗しますからね。とにかくまず、フォーカスするのが大事だと思っています。

――僕自身としてVR OSにすぐに有用なのは、自分が持っているマルチデバイスを、「VR OSでは同じレイヤーの上に置く」ということだと思っているんです。

GOROman:
 まさにその通りですね。使っている方によっては、Mikulusの中で、PCにWiiUをつないで『スプラトゥーン』をやってたり、PS4を動かして『ダライアス』をやってたりするんですよ、すでに。現実側のテレビでやってたものを、とにかく全部こっち側に持ち込んでいるんです。あと、スマートフォンもそうですね。Androidの画面を全部こっちに出す、とか。

 今ある平面デバイスの画面を、VR OS上で結合させるところから便利さが広がっていって、そこから空間上に情報を出せるとか、手を使ったコンピューティングの方向に行くんだろうな、と。

VRも「からだ」に支配される

――そこで、疑問がひとつあるんです。ペンとかタッチの方がコンピューティングとしては自然ですよね。キーボードよりずっと色々なことができるのに、ハードウエアとして実装した瞬間に、UIの問題で使い勝手が悪くなる。同じことをVRの中に持ち込む時にどうなるのかなあ、とは思うんです。VR空間だったら、見る方向も書く方向も自由に実装できる。キーボードが便利なのは、重力のあるこの空間で、触って使うからじゃないですか。でも、VR空間だったらその前提が崩れる。どうなりますかね?

GOROman:
 まず、VRの中だと重力の概念がなくなるので、ディスプレイは空間に置こうがどこに置こうが自由です。資料とかを空間においてデッサンしたりできますよね。

 しかし問題なのは、VR空間は無重力でも、こっちのリアル空間は厳然として重力に引きずられる。だから、(垂直の面に辺をあてる動作をして)こういう動作は難しいわけです。一方で(机の表面に指をあてて)ここにキーボードを表示して、指でトントンする方法はあります。Augmented【※1】 Virtuallyという言葉があって、現実側をVR側と結合させる、ということです。

 要は、コリジョンはリアル側に置く。例えば(腕に指をあてて)ここに、VR空間ではパックス・パワーグローブ【※2】を置く(笑)。そうすると、触覚があるから操作感が良くなるわけです。マイノリティ・リポートみたいな(空間で腕を動かして)「この」UIは、押した感がないからすごいストレスになりますよ。

VR映像を腕に重ね、操作系は腕への触感で確実性を高めるアイデアを披露するGOROman氏。

※1 Augmented
拡張される、という意味。現実とCGを重ねて情報を付加する「Augmented Reality」の「A」の方。本原稿では、情報量をさらに付加していく、という意味合いで使っている。

※2 パックス・パワーグローブ
1990年に発売された、ファミコン用の周辺機器。腕につけ、その位置をセンサーで把握する。当時はバブル期であり、CMで派手に「パックスのしわざ」として喧伝された。なにがしわざだったのかは、いまだ分からない。アメリカではおもちゃメーカーのマテル社が販売しており、それをパックスが輸入したものだった。また当時は第一期VRブームが始まったころで、当時のVRの象徴が、手の動きを取り込むデータグローブであったことも大きく影響している。

パックス・パワーグローブ。(画像はWikipediaより)

――あー、そうか。VR空間内にタッチスクリーンを置いても、そこには実際に「押した感」がないわけだから。でも腕の上なら……。

GOROman:
 ここにAugmentedできるから、フィードバックがあるわけですよね。別に手のひらやおなかでもいいわけですよ。要はアタリ判定があればいい。だから、Leap Motion【※】がうまくいかない理由というのは、空間ではフォースフィードバックができないからですよ。 疲れること以上に、不安感があるんですよ。自動販売機があるとして、そこでジュースを買うとき、ボタンをおしてもそこをシューッとすり抜けていったら怖いですよね。

※Leap Motion
2012年にLeap Motion社が発表したジェスチャー認識の入力装置。外部に大きな機器を置かず、腕に何かをつけることもなく、指や腕の動きを取り込める。画期的との評価もあるが、精度や実用性への批判もある。

Leap Motionは新たな入力デバイスとなるのか。(画像は公式サイトより)

――ガツッとあたるからいい、と。キーボードもそうですよね。みんなノートPCで「底つき感のあるものがいい、ふにゃっとしていると気持ち悪い」と言うんですが、それも結局は、「ガツッ」というアタリ判定のフィードバックを欲している、ということですもんね。

GOROman:
 押した感があって安心感があるからです。iPadなどのスクリーンキーボードが若干気持ち悪いのは、ストロークがなくて押した感がないから。結局画面を見ちゃう。人は、視覚・触覚・音・ストローク感など、五感で判断しているんですけれど、その中のどれかが欠けると不安になるんですよ。

 ツールを使う時に作用と反作用を求める、というのは自然なことなんでしょうね。ないと不安になる。

――だからVR OSを作るとしても、画面こそ重力がなくなって自由にレイアウトできるけれど、人間の身体性から離れられない以上は、「なにかを触る」みたいな要素が……。

GOROman:
 なにかがないと不安になる、と僕は思っていて、(腕を出して)ここをトントンするか、(机を叩いて)ここにキーボード的なものがポップアップするか。

――そこでキーボードに変わるインターフェースが必要、ということですね。

GOROman:
 はい。本当はVR時代というのは、マウスとキーボードを壁に叩きつけて破壊するところからスタートしないといけないんですよ。ただ難しいのは、既存のインターフェースからの階段を作ってあげないと、新しいパラダイムにはついてきてもらえない。

――スマホのゲームが「スマホのゲーム」というくくりで結果的に落ち着き、コンソールやPCのゲームが結果的に生き残っているのは、「物理インターフェースによる正確さ」がゲーマーの命、ということがわかったからですよね。

GOROman:
 一時ありましたよね。『ストリートファイターIV』がスマホに移植され、バーチャルパッドが出てきましたよね。でも最高に気持ち悪かった。VRやARも、一歩間違うとそういう「操作がままならない気持ち悪さ」につながりかねない。

――PCとの階段の中で、「仮想的な動きをUIの軸とする」のは、やっぱり正しくないんじゃないか、とは感じますね。

GOROman:
 とはいえ、バズらせるには未来感がないといけないので、『マイノリティ・リポート』や『スター・トレック』のようにワクワクさせないといけない。そういう意味ではマーケティングですね。マーケティング色が強くなると失敗するんですよ。実用性とかっこよさでは実用度をとらないといけないんですが、買ってもらうにはバズをとらなきゃいけない。そこが戦うところですね。

――僕ら、コンピュータの話になると忘れがちになるけれど、結局操作しているのは人間で、目や手や体の制約に引っ張られるわけですよね。その結果を脳内で再構築して認識しているわけで。

GOROman:
 しょせんそうです。感覚器を使って。今は不便なんですよ。腕が腱鞘炎になるくらい機器を使っているんだけど、本当はああいう形は優しくない。でも、デファクトスタンダードになったから、しょうがない、と思って使っているわけですよ。マウスからタッチパッドになったり、トラックポイントが発明されたりはしているけれど、実際にはまだまだいいインターフェースが作れるような気はしています。

「カルチャライズ」されたものをみんなの知見で

――それはともかくとして。これから、どんな風にMikulusを進化させていくんですか?

GOROman:
 これからOculus Touchに対応させて、本格的な空間UIを作っていきます。

――最後に、本質的な質問を。いまやろうとしていること、Oculus社内ではできない、と思ったわけですか?

GOROman:
 できなくはない、んじゃないですかね。Facebookはやってますし。ただ、日本人っぽいものはできないんじゃないですかね。

 重要なのは「カルチャライズ」することです。ローカライズじゃなくて。『サマーレッスン』なんかも「カルチャライズ」。アメリカだとまったく受け入れられないですよね。「ミクさんと」というのも理解されない。中国や台湾、韓国などのアジア圏は理解してくれると思うんですが。

――そこの説得にエネルギーを使うくらいだったら自分でやっちゃえ、と?

GOROman:
 ていうか、僕がそういう部署にいない、というのが一番大きかったですね。技術サポートが中心だったので。将来的に、Mikulusを作ってたら「こいつを雇え」って言われるんじゃないか、と思ったりはします(笑)

――ちなみにマネタイズは?

GOROman:
 それはすっごくいろいろなアイデアがあります。まだまだ秘密。でも、なんというか……これは集合知じゃないですか。僕は金儲けでこれをやろうと思って始めているわけじゃない。いま、テスターの方は700人以上いますが、そういう方々の知見で成り立っているものですからね。これで商売をするのはちょっと違う、と思っています。

 たとえばやるならクラウドファンディング。Mikulusからお金をひっぱるのは違うと思います。やるなら、むしろ自己資本。自分の資産を全部売ってやる。

 それに、この先いろいろデバイスが出てくるのに、Oculus社にいたらOculus以外のことはできませんしね。それはリスクだ、と正直思いました。僕がやりたいことを考えると、ひとつに縛られるのはつらい、と思いましたね。

GOROman氏のオフィスには、過去からのVR開発機材・タッチコントローラーが、試作機も含めて多数。中にはほとんど世に出ていない、非常に珍しい試作機も。

 3年間自分はVRをやってきて、機器も世の中に出てきました。その間、自分が作りたいものを作れていたわけでもないし、Oculusでも、VR OSを作るような部署だったわけではないですからね。そろそろ新しいものがやりたい【※】

 すごいスピードで作っている、と言われるんですが、自分の感覚では、「チョロQをぐっと後ろに引っ張って、いま手を離した」みたいな感じですね(笑)。

※そろそろ新しいものがやりたい
退職に関する経緯などは、ご自身がウェブ上に経緯を残しているので、そちらを参照いただきたい。

 

西田宗千佳(にしだ・むねちか)@mnishi41
デジタル家電、ネットワーク、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。
主な著書に『ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『クラウドの象徴 セールスフォース』(インプレスジャパン)など。小寺信良氏との共同メルマガ「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を毎週金曜日に発行中。

関連記事:
【退職ブログ】Facebook(Oculus)社を退職しました
MikulusをVR OSに──GOROman氏が想い描く「空間パラダイム」の世界
(情報元:PANORA VR)

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