これもコスプレ写真!? 東方の「世界観」を切り取る人気写真家、その活動から東方の魅力に迫る。そして今ホットな海外事情とは…?【インタビュー】

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今ホットな中国/台湾の東方同人事情

――最近はよく中国や台湾のイベントにも行かれていますよね。

うひ丸氏:
 実は1年くらい前から中国のTsuBaKi(@tsubakishanghai)というサークルさんと提携してるんです。向こうは音楽がメインのサークルで、僕ら写真サークルとはまったく違うベクトルを持っているように感じられるんですけど、いざ手を組んでみると一緒にできることが多くて。

 ライブイベントやCDジャケットの写真とか。そういうので僕達は協力して、中国のサークルには僕達の中国での展開を手伝ってもらったりしてます。

――お互いに刺激を与えあって、協力できるところは協力するって感じなんですね。中国の東方コミュニティの印象はどうでしょうか。

うひ丸氏:
 勢いがスゴイですね。なんというか、日本の東方コミュニティの熱って、ちょっと落ち着いてきた印象があるじゃないですか。ニコニコ動画で『Bad Apple!!』がめっちゃ流行ってた時期とかに比べて。中国には今まさにあの頃の熱があるなって感じます。

 中国の大手サークルが協力して、持ち回りで主催になってイベントをやったりしてるんですけど、今年の上海のイベントは会場が上海メルセデス・ベンツ・アリーナ【※】になったり、チケットがカード型でもホログラムを使った特殊なものだったり……なんというか、資金力の差みたいなの感じますね。すごいですよ。

※上海メルセデス・ベンツ・アリーナ……中国・上海にある大型施設で、アニソンイベント「アニサマ」が開催されたほか、2017年7月には「ビリビリ動画」の大規模イベントが実施された。
(Photo by Getty Images)

 あとは国民性みたいなのもあるのかもしれませんが、以前参加したイベントでサークルの前に物凄い勢いで集まってきて、ちょっと怖いくらいの熱気を感じました。「売ってくれ!」、「いや、俺に売ってくれ!」とサークルの前でケンカが始まるんですよ。

――よく海外のSNSとかで「金ならあるぞ、売ってくれ!」ってイラストを見かけますけど……。

うひ丸氏:
 そうそう、まさにそんな感じです。ただ中国だといまはアプリを使った電子マネーでの取引が浸透しているので、会場でもQRコードを張り出してるサークルが多いですね。うちも中国のサークルに協力してもらって導入しています。

――やはり中国や台湾で文化の違いは感じますか?

うひ丸氏:
 思い切りの良さを感じますね。ほかはあまり大きな違いはないですけど、写真に関していえば被写体をメインにしたものというよりも、なにかしらのストーリーだったり、世界観が感じられる作品が人気を得ているかなと。

――ではイベント会場でのコスプレはどうでしょうか。少し前はカオスな感じでしたけど、ここ最近は少しずつ変化してるなと感じてますが。

うひ丸氏:
 カメラを持った人がコスプレイヤーの前に並んでる光景って、日本だとよく見るものじゃないですか。中国や台湾だとそういうのはあまり見ないですね。
 中国はなんというか、すれ違いざまに撮るというか。歩きながら出会ったコスプレイヤーに声をかけて、その場でパシャっと撮るみたいな感じです。上海のイベントに参加したときも、そういうのを良くみかけました。【※1】

 また、台湾はもうすぐ囲み【※2】ますね。めっちゃ囲みます。隙あらば囲もうと思っているのかってくらいで、囲んで撮ってる様子をみかけますね(笑)。コミケとかでもよく囲みってみかけると思うんですけど、比じゃないです。【※3】

※1 中国のコスプレ事情
大きなイベントはショッピングモールなどの商業施設で実施されることが多い。通路をフォトスタジオのように占拠してしまう事例も。

※2 囲み
コスプレイヤーを囲んで撮影すること。複数のカメラマンが同時に撮影できるが、カメラマン側からは構図を狙いにくく、コスレイヤーは切り上げるタイミングを掴みにくいなど、メリットとデメリットのある撮影形態。

※3 台湾のコスプレ事情
大きなイベントでは、明確にコスプレエリアを決めていないこともあり、会場周辺がコスプレエリアのようになってしまうことが多い。

若い世代が問い直すコスプレ文化

――そろそろ締めに入らさせて頂こうと思うんですが、日本の東方コスプレ界隈って今後どうなると思いますか?

うひ丸氏:
 昔はストロボをばしばし使った、モデル主体の写真がメインだったわけですけど、最近は背景を使った、ひきで撮った写真に目を向けるようになってきたなとは感じます。Twitterとかでもそういう写真をよく見かけるようになりましたよね。

 ただ、いまだにカメラマンによって東方は怖いって言うんですよ。なんでかって聞いたら、もう世界観ががっちり固まってるからって。

――新しい人は入りにくいかもしれませんね。個人的には「ニワカは困る」みたいな言い方が好きではないんです。フィギュア・ドール界隈の人間としては、「期待の新人やぞ、囲め」くらいの気持ちでいたいですね。

うひ丸氏:
 そうやって沼に沈めていくんですね、悪い人だ(笑)。

 冗談はさておき、東方って昔はいろんな人がコスプレしてましたけど、もコスプレしている人ってそういう時代からずっとやってる人が多いので、めっちゃ濃いんですよ。知識とか、こだわりとか、いろんな意味で。
 でもそういうのに触れられるのって、たぶん東方くらいなものです。学べることがたくさんあると思うし、楽しいポイントもたくさんあると思うんです。

――今ちょうど、東方コミュニティには若い世代が来ているんですよね。今まで避けていた人にも参加してみてほしいところです。では、そのときにコスROM【※】みたいな表現はどうなると思いますか?

※コスROM……コスプレの写真を詰め込んだCR-ROMのこと。コミックマーケットなどのイベントにサークル参加したコスプレイヤーが自身の写真データを詰め込んで頒布する。

うひ丸氏:
 コスROMはいずれなくなるでしょうね。方向性としては紙媒体である写真集に回帰するか、クラウド化するかのどちらかじゃないかなって。

――クラウド化ですか、なんかイメージしづらいですが……。

うひ丸氏:
 ポストカードみたいな物を渡して、そこからQRコードなりでデータがダウンロードできるとかですかね。

 中国のアプリ決済ほどの勢いで広がることはないと思いますが、少しずつROMという媒体から他の物に変化していくのは間違いないと思います。そもそもROM、ディスクって、別に必要なものじゃないですよね。本当に欲しいのはその中にある写真データなわけですから。

 一方で「紙に回帰する」とも言うのは、やっぱり紙媒体だからこその魅力ってのもあるからですね。そういうのは、自分で作ってみて初めてわかるものだから、興味を持った人はチャレンジしてみてほしいです。ROMと比べてページ数の制限があったりして、「何を掲載しようか」「どういうテーマで作ろうか」と悩むところも多いと思うんですが、貴重な経験になると思います。

写真“だからこそ”の「幻想郷」に挑戦したい

――では最後に、改めて活動方針やご自身のテーマをお聞きしてもよろしいでしょうか。

うひ丸氏:
 もう東方は伝統文化といっても過言じゃないですよね。その一方で、時代の変化みたいなものにあわせて、東方ファンのニーズというか人気コンテンツも変わってきています。
 「こだわり」をもって一つのことを貫くという姿勢は大事なことですけど、最近は時代の変化に柔軟でいられることも大事かなと思っています。

――昨今は「伝統を残しつつ、新たなことに挑戦する」ことが伝統工芸の世界で命題とされているそうですし、私たちも東方を伝統文化と思うなら守ることだけでなく新しいことへの挑戦や変化を受け入れる必要がありますね。

うひ丸氏:
 その上で、自分の原点というようなものは大切にしていきたい、ブレずにいたいと思っています。
 そもそも僕が今の様な写真を撮るようになったのは、りゅうか(@Ryuka_09)さん【※】というコスプレイヤーさんのサークルが出していた写真集がきっかけなんです。

 背景と空間をしっかりと使いつつ、シリアスな世界観を魔理沙や霊夢に与えた作品で、モデルが前面に出した人気のコスROMとは違い、そのキャラが「なぜそこにいるのか」という情報がしっかりと表現している。それを製本された写真集を出してたんですよ。

 なんというか「魅せる」ってことへの強いこだわりを感じて、そこにすっごく惹きつけられたんです。僕の原点であり、随分と勉強させていただきました。

※りゅうか
コスプレイヤー。ジャンルは「東方Project」、『マクロスF』、「VOCALOID」など。『東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.』に登場したメディスン・メランコリーをモチーフにした『毒人形』、霧雨魔理沙をモチーフにした『東方星導夜~壊れた世界にさよなら~』など、同人写真集を発行している。

――先達との出会いがいまの表現につながっているんですね。

うひ丸氏:
 だからこそ、言い方は悪いですけど、コスプレイヤーの尻を追いかけるような人間にはなりたくない。まぁ僕も男なんで気持ちはわかりますが、目先の露出度の高い女の子を撮るってところをゴールにしてるように見えて(笑)。そういうのは嫌だなと。

 なので、イラストだからできる壮大な世界観の表現にはまだまだかなわないですけど、漠然と背景を使うだけでなくて、光だったり物だったり、そういう環境も含めて「世界」を切り取る――写真だからこそできることに挑戦していきたいと思っています。(了)

 コスプレ写真に対するこだわりから、中国や台湾の東方コミュニティの話まで、幅広く話を聞かせてもらった今回のインタビュー。うひ丸氏だけでなく、東方の二次創作をしている人たちと話していて感じるのは、それぞれの内に「幻想郷とは、こうである!」というビジョンを持っていて、それを自分にできることでどうにか表現しようとしていることだ。

 では「幻想郷」とは何なのか。世界観の設定でいえば、私たちが暮らす世界のどこかにある、結界によって外から観測することはできず、人々に忘れられ「幻想」となったものが集まる場所とされている。
 幻想とはすなわち「空想」であり、「願望」である。神主・ZUN氏が生み出した世界「幻想郷」という領域を軸に、二次創作を繰り広げる人々はもっとも「幻想郷」に近い存在ではないだろうか。マンガ、イラスト、立体物、コスプレなど、表現方法は違えども、その心の中にある何かはきっと「幻想郷」に通じていると確信する。

 僕たちの世界がそうであるように、「幻想郷」もまた変化し続けている。目には見えないが最も身近などこかで――。

【C92新刊情報】

 

配置:金曜(1日目)東メ55b サークルVeronica

タイトル:Вероника мұражай Veronica Costume Cllection

サイズ:195×220mm 32P

価格:1000円

内容:“Вероника мұражай”はカザフ語で“Veronicaの博物館”という意味になります。東方写真における重要な要素として、衣装と小道具があります。モデルだけではなく、カメラマンとモデルの思想に基づいた、サークルとして東方の世界観を反映させたものの一端になります。

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【東方ステーション #4】

 hellnian氏、ぴずや氏、普透明度氏、そしてZUN氏(来てほしい)をゲストに迎え、夏コミ直前の同人特集をお届けしたり飲んだり(!)する予定の東方Projectの情報バラエティ「東方ステーション」は、8/9(水)の19時20分開場、 19時30分開演予定です! お楽しみに!

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インタビュアー・著者
春山優花里@haruYasy.
フリーライター。この身体はアニメやゲーム、フィギュアとかで出来ている。理屈よりも感覚を優先するタイプで、わりと日々を適当に生きている。
Twitter:@haruYasy

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