【速報&水口哲也氏インタビュー】『Rez Infinite』PC版が本日登場! その出来映えに茫然自失しつつPC版の狙いを訊く。MODでユーザーが生み出す可能性に期待の言葉も…!

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PC版で広がる「自作」の可能性

――それではすこし切り口を変えて、テクニカルな話をお聞きします。こちらは、ドワンゴVR部のMIROさんです。あの、以前かなり話題になった、「自作シナスタジア・スーツ」を作られた方です。

水口氏:
 自作シナスタジア・スーツ、拝見しましたよ。Twitterで流れてきて「えーっ!」となって(笑)。なにもかも自分で作られたんですよね。すごいなあ。

MIRO:
 ありがとうございます。いやあ、たいへんお恥ずかしい話です。そうですね、あれはコントローラーのバイブレーターから信号を出して、そこに震動子をくっつけたんです。

 その時の試行錯誤を思い出しながらお聞きするのですが――今回、なんといってもPC版ということで、ゲームのデータが個人のPCにインストールされるわけですよね。私のような人間からすると、そのデータを応用して何でも作ってしまえるじゃないか、という話になってくるんです。ちなみに、PCのエンジンはOpenVRですよね?

水口氏:
 そうですね。ViveはOpenVRで動作します。Oculus Riftはそれに加えて、Oculus SDKでも動かすことができます。

MIRO:
 ですよね。それで、このOpenVRの下層レイヤーをいじるといろんなことができると思うんです――たとえば先日、『Rez Infinite』をドームの天井に映し出すイベント【※】を行われましたよね。あれはドーム専用のプロジェクションを作られたわけではなかったと思います。

【水口哲也インタビュー&レポ】究極のVRの最新到達点は?「肉体で感じるVRスーツ」「みんなで没入する巨大ドームVR」【ドワンゴVR部】

※「VR to Dome 実験:Rez Infinite」
2017年6月3日、日本科学未来館にて行われたイベント。当日は半球のドームシアターに『Rez Infinite』が投影され、本来ひとりで楽しむものであったVRコンテンツを、約100名の鑑賞者が同時に体験した。上記の記事は、そのイベントを電ファミが取材したもの。

水口氏:
 そうですね。あれはPS4 Proから直接1台のプロジェクタ(2K)に入力してドームに投影しました。

MIRO:
 とすると、あのプロジェクションは通常のプレイ画面を引き延ばしたものになりますよね。そこで思ったのは、ドームの中心にいるプレイヤーから見て、より適切な画角で、きちんとした球形のレンダリングをすれば、より優れた体験になるんじゃないか、ということです。

 なにが言いたかったかというと、PS VRだとどうにもとっかかりがなくて、ユーザーサイドでそのあたりの調整ができなかったのですが、今回PC版が発売されると、いちユーザーとして、そのあたりがとてもいじりやすくなるんです。

――ちょっと、もしかしてMOD【※】を作成するつもりですか?!

※MOD
有志のユーザーがゲームを改造する行為と、改造されたゲームそのものを指す。ゲームによっては、改造したファイルの配布を公式が認めたり、あるいは支援する場合さえあり、その流れを受けてコミュニティが発生することも。有名なところでは、『Fallout 4』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』のコミュニティが盛んである。PSなどのコンシューマ機では技術的なハードルが高いが、PCになると、いわばデータを丸裸にして回覧できるため、有志によるMOD作成が流行する傾向がある。

水口氏:
 いやあ、じつは、前々からそういうこともやりたくて……もう、一緒にやっちゃいませんか?(笑)

MIRO:
 やりましょう! ――とにかくそういうわけで、私はPC版が出たら、コードのところをごにょごにょと触れるぞと、いまから楽しみなんです(笑)。

水口氏:
 ぜひ触ってみていただきたいです。我々のほうでもなにか協力できることがあれば、言ってください。

――なるほど。PC版が出ると、まちがいなく世界中で、MIROさんがおっしゃったようなことを考えはじめる人々が出てくるでしょうね。水口さんご本人の前では、ちょっと言いにくいことではあるのですが――じつは個人的には、その流れが楽しみだったりもします。PC版の『Rez Infinite』に対して、世界のコミュニティがどんなフィードバックを返すのかという。

水口氏:
 僕も楽しみにしていますよ。MIROさんのように、世界のどこかで自作シナスタジア・スーツを作る人も、きっと出てくるでしょう。うーむ、MODが出るとしたら、どんなものになるんだろうなとは考えていましたが、そうか。OpenVRのレイヤーに仕込むと、いろいろできるわけですね。信号とか取れちゃうわけだし。

MIRO:
 公式からシナスタジア・スーツの出力規格が一般配布されたら、すごくアツいかも。

水口氏:
 おお、それは面白いかも。

MIRO:
 ぜひ、お願いします(笑)。ただ、話題にしていただいて大変ありがたかったのですが、自分でスーツを作ったあと、本物のスーツを体験して、恥ずかしくてしょうがなかったですよ。本物はすごく細かく震動パターンが織り込まれていて、まったく違う体験だったので。

 なんにせよ、ユーザーがつくるものをより本物に近づけるために、あるいはまったく別の発想をするためにも、このPC版はすばらしいことだと思います。

水口氏:
 そうですよね。シナスタジア・ルームとかつくる人が出てきたら、面白いなあ。いろんな信号をいろんな出力に置き換えて。

greenspa:
 『Rez Infinite』の世界を拡大するものとしてのPC版でもあると。これは、いちプレイヤーとしてもすごく楽しみです。

水口氏:
 ありがとうございます。もちろん、いろいろと実現できるかどうかはわからないのだけれど、我々はある意味、PCに初めて参入しているので、そういう声は本当に嬉しいですね。このフィールドでは、もっと面白い発想をしていけると思います。パッチもすぐに当てられますしね。

終わらない至高の『Rez』の探求 

――そろそろお時間が迫ってきてしまいましたので、最後にひとつ。ズバリ、次の構想ってありますか?

水口氏:
 直近の話で言うと、Google Daydream【※】版を作っています。

※Daydream……GoogleによるスマホVRプラットフォームで、Android 7.1 NougatのOSに組み込まれている。Samsung, HTC, LGなど合計8社の一部スマートフォンを、よりよいVR体験を得るために最適化する機能を持つ。
(画像はDaydream公式サイトより)

greenspa:
 あっ、デイドリームスマホ、持ってますよ!

水口氏:
 さすが! そうですね、これはもう作りはじめています。まだ、いつ出せるかは言えませんが。

greenspa:
 Google Daydreamは解像度が高いので、そこで『Rez』を楽しめるというのはもう、よだれが出るなあ――あ、すみません。

――妄想が広がりますね。(笑)

水口氏:
 なんといってもコードレスなので、より没入感が出ると思います。あのコントローラーも良いですよね。いろいろと要素を比較していけば、ほかのプラットフォームと比べてちょっと落ちる要素もあるけれど、総じて言えば、おお、これはいいな、未来だなという感じがする。これはなるべく早く出したいと思っているんですが。

――期待しています。

水口氏:
 あと、これはまだ確言できる段階にはないのですが、そもそも「Area X」自体をひとつのプロローグのつもりで作っているので、その先の展開はかならず何かあります。発表のタイミングは、もうすこし経ってからになりますが。

greenspa:
 なんと! 本当に楽しみです。

水口氏:
 うん、僕も(笑)。そして、早く作りたいですね。構想はいろいろあっても、一気にはできないものですから――ああ、でも、みなさん早く遊びたいですよね。もうちょっとお待ち下さい。僕はもっと、気持のいい、楽しい、夢のあるものを作りたいと思っていますから。みなさん、今日はありがとうございました。

――ありがとうございました!(了)


 いかがだっただろうか。一時間のインタビューではあったが、ゲームが目指しているものからテクニカルな話題、そして今後の展望までをお話しいただき、個人的にもすばらしい体験をさせていただいた。対話を続けるうちに確信したのだが、水口氏は優れたゲームデザイナーであると同時に、インターフェイスの枠組みから新しい体験を発想することができる人物だと思う。

 水口氏の発想が特異なのは、現状のメディアを出発点とするだけでなく、まだ見ぬ未来のメディアに向けて理想を投げかけていることだ。
 他のゲームクリエイターの発言と比較しても、彼ほど「肉体の消失」や「感覚の統合」への強い志向を持っている人間は珍しい。そのことは、新しいインターフェイス「シナスタジア・スーツ」の開発や、日本科学未来館での実験的な上映に現れている。

(取材当日のプレイ画面)

 水口氏の発想を体現するには、現状のVRではまだまだ技術的に足りていないところがある、と筆者は考える。例えばそれは、「電脳化」のような技術でなければならないだろう。「Area X」ラスト・ステージの像は、肉体感覚なしで相対したときにはじめて、私たちと真正な「鏡像関係」を結ぶことができるはずだから――とはいえ、これも今は夢想でしかないが。
 氏の製作がどのような道筋をたどるのか、今後も注意深く見守ることにしよう。

 これは閑話だが、灯りが落とされた会議室から出てくるとき、編集部のひとりが「まるで映画をたてつづけに五本見たあとのような気分だ」と言葉を漏らした。そこで水口氏は、「なるほど、映画五本か……」とつぶやいた。その声には、映画五本ぶんの体験を与えることができたという充足感と、これで終わりではなく、つぎは映画五本どころではすませないぞという決意が、同居しているように思われた。

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インタビュー・著者
藤田祥平
1991年大阪府生まれ、文筆家。
Twitter : @rollstone
Website : http://shoheifujita.smvi.co/
インタビュー
電ファミニコゲーマー編集部員。映画を観るのとアナログゲームをするのが好き。
Twitter:@_k18

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