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現実世界でクトゥルフ邪神の降臨を目指す!? 脱出ゲームでチャンバラでTRPG…リアルゲームLARPを初心者にもわかるように解説【LARPイベント体験レポ】

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 近年ボードゲームやTRPGが脚光を浴びているが、近隣ジャンルで2017年に入ってから盛り上がりを見せているゲームジャンルがある――「LARP」だ。

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 LARPとは、ライブ・アクション・ロールプレイング(Live Action Role-Playing)の略称で、国内ではライブRPGとも呼ばれている。もしかしたらリアルTRPGと表現した方が分かりやすいかもしれない。

 具体的には、「魔王の討伐」や「館からの脱出」といった明確な目的があり、プレイヤー全員がゲームの登場人物になりきって、その目的の達成を目指していく。それらの行動を、デジタル空間でもテーブルの上でもなく、我々が住まう現実世界で行うのがLARPという遊びなのだ。

 このLARP、欧米では既にメジャーなジャンルになっている。年に幾度か開催される、魔法大学となったポーランドの古城に4日間泊まり込み、魔法を学びつつモンスターと戦ったりする「College of Wizardry」というイベントは特に話題だ。

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(画像は月夜見館のスケルツォ告知ページより)

 そんなLARPの波が、実はいよいよ日本にも訪れ始めており、2017年はその節目の年になろうとしている。そこで電ファミニコゲーマーでは、LARPの現在を伝える記事をお届けしようと思う。LARPの魅力や日本での動向をお伝えしていきたい。

取材/傭兵ペンギンクリモトコウダイ
文/傭兵ペンギン


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LARP体験レポ1:月夜見館のスケルツォ

 とはいえ、いきなりLARPの詳しい話をされても全くイメージが湧かないと思う。そこで本稿では主に2つのLARP体験レポートを中心にLARPの魅力をお届けしよう。

 まずは、7月22日に体験型LARP普及団体「CLOSS」が池袋の「mistel」にて開催したイベント『月夜見館のスケルツォ』【※】のレポートと共に、まずは実際のLARPの雰囲気をご紹介。

※月夜見館のスケルツォ
2017年7月22日に池袋mistelにて開催された、LARP普及団体CLOSS主催の協力型ホラーLARP。嵐の夜の洋館を舞台に、8名の参加者が役どころを得て、それぞれに密かに与えられた「本性」の達成を目的とする。

 この『月夜見館のスケルツォ』は、現代日本を舞台としたホラーLARPだ。8人の登場人物たちが嵐の夜に怪しげな洋館に迷い込んだことをきっかけに、様々な怪奇現象に見舞われていく、というのが大まかなストーリーとなる。

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エンディングは複数用意されており、館から無事脱出することができればクリアとなる。なお、プレイにかかる時間は説明込みで約5時間だ

 登場人物は「学生」「占い師」「考古学者」「軍人」「医者」「探偵」「刑事」「犯罪」の8人。プレイヤーたちはこの中から一人を選択する。各人物には、「苗字(下の名前自分で設定可能)」「固有能力」「仮面」「本性」が設定されている。

 LARPは、このような、プレイヤーたちに与えられた設定と目的に沿って、即興劇の要領でそのキャラクターを演じながらプレイしていくのだ。

【固有能力】


「鍵開け」「オカルト」「治療」といった、RPGにおけるスキルの様なもの。能力はキャラクターによって異なり、ゲーム内の謎を解いたり、自分の目的を達成するために使用する。

 

【仮面】


そのキャラクターの基本設定とも言えるもので、例えば学生の場合だと「あなたは、都内大学に通う大学生だ。1年前にこの館の近辺に家族旅行に来たことがある。今回は、気ままな一人旅だ。そんな中、嵐の中で森に迷い、助けを求めてこの洋館に駆け込んだ。旅の終焉を予感させるような、雷雨の夜の事だった──」という設定が与えられる。

 

【本性】


“裏の顔”とも言えるもので、そこにはこのゲームで達成しなければならない真の目的が書かれている。例えば、仮面には「しがない医者」と書かれていて、本性には「治療と称して人々を暗殺する犯罪者。目的は全キャラクターの抹殺」と書かれていた場合、プレイヤーは“しがない医者”を演じつつ、他のプレイヤーを抹殺する方法を探さなくてはいけない。

 館からの脱出はもちろん、本性に書かれた真の目的も、一人では達成が困難なようにデザインされており、各PCのスキルを活かした連携が必要となる。そういった協力プレイの中で起こる会話の中にロールプレイが挟まれていき、盛り上がりが加速していく。

 今回の『月夜見館のスケルツォ』では、雨に打たれ館に集まったシーンから始まる。「いやー、雨で車が止まっちゃってねぇ」「丁度良い所に館があって助かりましたね」と設定を踏まえて雑談をしていると、「客室の準備をしてまいりますので、少々ここでお待ちください」と館の使用人たち(スタッフが演じるNPC)が現れ、すぐに別の部屋に去っていく。

 ところが、使用人たちが帰ってくる気配はなく――という導入までがいわゆるオープニングで、「じゃ、これからどうしましょうか」という話し合いをする部分から本格的にゲームがスタートする。

 ゲームの展開はプレイヤーの行動によって左右され、今後の方針を話し合うもよし、辺りを物色するもよし、他の部屋に移動するもよし――と、モラルある行動であれば基本的に何をやってもいい。

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なお、TRPGではゲームマスター(以下、GM)進行のもと、ゲーム世界を想像しながらプレイするが、LARPはプレイヤーが立っているその場所自体がゲームをプレイする場であるため、自分の目で見て、自分の手でモノに触れることができる。そのため、能力を行使しない限りゲームマスターを介してアクションを行う必要がなく、GMも基本的にはゲームプレイに介入してこない。ただし、プレイヤーが特定の行動を行うとチェックが入り、GMが動く。例えば、プレイヤーが箱を空け、そこにトラップが仕込まれていた――という場合は、GMから号令が入り、ゲーム的な処理が行われるのだ。因みにGMは複数人体制でプレイヤーの行動を監視し、平行してフラグ処理を行っていた。

 そんなこんなで「こんな所に怪しいお札が!」「とりあえず厨房に行ってみませんか?」「何かうめき声が聞こえるんですけど……」という感じで各々がキャラクターになりきって行動していると、ライブ感溢れる出来事がいくつか起こるのだ。

 例えば、真面目に魔法の呪文を解読するプレイヤーの裏で、他のプレイヤーが次々に発狂するという不可解な事件が起きていた。本作ではいわゆるSAN値【※】の概念があり、プレイヤーが強い恐怖を感じると「恐怖判定」が入ってしまう。
 当然、判定に失敗すると発狂し、その場合は発狂した演技をしなくてはならないのだが、あるプレイヤーが偶然見つけた100万円の札束に呪いが込められており、それをくすねようとしたプレイヤーが次々発狂していくという大変人間らしい出来事があったのだ。いわば「現玉発狂事件」である。

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※SAN値……TPRG『クトゥルフの呼び声』における、どれだけPCが理性を保てているかを表す指標「正気度」を示すパラメーター。ショッキングな場面や宇宙的事象に出くわしたときに減少し、「一時的狂気」や「不定の狂気」に陥り、ゼロになるとPCとしては復帰不可能となる。

 さらには、あるプレイヤーが館の設備を修理できる工具を見つけ、「これ、飛び道具として最適じゃね」と言い出し、異形の者に投げつけて応戦するという、何ともサバイバルホラー感のあるシチュエーションも発生した。なお、本作では戦闘や罠によっては負傷することがあり、ダメージを受けた部位はゲーム内で動かせなくなってしまう。

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 これらの出来事は、プレイヤーたちの行動が引き起こしたことであり、台本などは存在しない。このライブ感こそがLARPの醍醐味と言えよう。
 そしてクライマックスに近づく中、部屋は暗くなりホラーな演出やカッコいい魔法陣のエフェクトなどが登場。そしてPCたちは協力しながら洋館に隠された恐るべき怪異と対峙し、なんとか脱出に成功した。

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ルールに合わせ遊ぶ上での注意が丁寧に説明された。LARPは実際に身体を動かしロールプレイを行うので、安全対策は重要となる。不慮の事態に際し完全にゲームの進行を止める号令なども説明され安心して楽しめうような配慮がなされていた。
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ゲームマスターやNPCの衣装バッチリ決まっていて、洋館ホラーの雰囲気を演出。ちなみに、プレイヤーは衣装の指定は基本的になく手ぶらで参加できる形式だった
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スキルの使用などの成否の判定にはトランプを使用した。プレイヤーの知識やロールプレイが上手にできたかどうかが成否の判断基準ではなく、ゲームマスターが持つデッキからカードを引きその数字やスートによって成否が決まるのだ
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館に隠されたおぞましい秘密が少しずつ明らかになる中で、続々と不思議なアイテムが登場。小道具はかなりプレイヤーをワクワクさせてくれる素晴らしいクオリティだ

LARPの魅力とは何か? 

 以上が『月夜見館のスケルツォ』の体験レポとなる。LARPとは、その名の通りライブであり、アクションであり、ロールプレイングが面白いゲームであることがおわかりいただけただろうか? 特に今回の『月夜見館のスケルツォ』は、キャラクターになりきる楽しさと、同じ時間と空間を共有し顔を合わせて遊ぶ楽しさを存分に感じさせてくれる内容で、まさにLARPの楽しさがつまったゲームであった。

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『月夜見館のスケルツォ』当日のアクションシーン

 何より実際に物に触れ、実際の人物と会話しながら身振り手振りで行うロールプレイは、デジタルゲームのRPGとは違った楽しさを味わうことができる。現実世界にちょっとした小道具とイマジネーションをプラスすることで、どんなハイスペックなゲーム機にも負けないグラフィックを体感できると言っても過言ではないだろう。

 そして今回はプレイヤー側での取材が主であったが、GM側にも惹かれるものがある。全体のシナリオやセッティング、キャラクターを作るのはもちろんのこと、武器や衣装を買い揃えたり自分で作ったりすることに楽しさを見いだせる人もきっといるだろう。

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 もっと言ってしまえば、今回遊ばれたルールはすべて主催側のオリジナルのもの。自分でルールを作って遊ぶということも、少々大変ではあるが、大きな魅力になることだろう。こうして考えると、やはりLARPの魅力のポイントはその祖先であるTRPGに近いと思える。

 TPRGとの違いで言えば、TRPGではNPCの役割をゲームマスター(以下、GM)が1人で務めるのに対し、LARPではGMとNPCが別人であることが多いというのも興味深い。
 NPCを複数人が担当することでキャラクター像やロールプレイの幅が広がるし、例えば戦闘の場面などで、1人のGM対プレイヤー全員というような構図にはならず、GMとNPCとの間での連携プレイなどが生まれてくるのは面白いところだろう。


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