現実世界でクトゥルフ邪神の降臨を目指す!? 脱出ゲームでチャンバラでTRPG…リアルゲームLARPを初心者にもわかるように解説【LARPイベント体験レポ】

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LARP体験レポ2:邪神降臨

 『邪神降臨』の最大の特徴は、人狼スタイルのLARPであることだ。10人のプレイヤーたちは、邪神の召喚を目論み集まった「黒魔道士」と、その召喚を阻止するために送り込まれた刺客「白魔道士」に分かれて、正体を隠しながら互いの正体を探り、敵対勢力の重要人物を排除して目的の達成を目指す。

黒魔道士陣営

 物語の背景としては、白魔道士と黒魔道士はかつて大きな戦争を繰り広げ、それに敗れた黒魔道士は最下層民として生きながらえつつも復讐の時を伺ってきた。そして時が経って現代となり、プレイヤーたちはTRPGセッションかと思って教団の集会に参加したことで黒魔道士になる――というもので、なかなか急展開なストーリーとなっている。

 各キャラクターにはそれぞれ役職がランダムで割り当てられるが、『月夜見館のスケルツォ』のようにそれぞれのキャラクター像は決まっておらず、そのあたりは自由に演じるようになっている。

『邪神降臨』プレイ中の様子

 ちなみに筆者が担当することになったのは普通の黒魔道士。能力はないが、多数派ではあるので、数の力で白魔道士に圧力をかけていくのが主な役目だ。

【黒魔道士陣営】

●黒魔道士:4人

特殊な能力は持たない普通の黒魔道士

 

●選ばれし黒魔導士:1人

後述する「偽装の白魔道士」以外の白魔導士か分かる

 

●封印の黒魔導士:1人

最終局面で「偽装の白魔道士」を封印できる

 

●黒魔導紋章官:1人

誰が選ばれし黒魔導士か分かる

 

【白魔道士陣営】

 

●白魔道士:3人

特殊な能力は持たないが、他の白魔道士が誰か

 

●偽装の白魔道士:1人

「選ばれし黒魔道士」にも正体がバレない。さらに最終局面で「選ばれし黒魔道士」を封印できる

 さて、先程「人狼スタイル」といったが、その勝敗システムについても説明しよう。黒魔道士側の勝利条件は、邪神の召喚に成功すること。その召喚には「召喚の儀式」を2度成功させる必要があり、2度失敗してしまうと白魔道士側の勝利となる。

 その「召喚の儀式」が人狼に近いスタイルで行われる。話し合い(時間制限有り)により、プレイヤーの中から代表者を複数名選出。その代表者が黒・白のどちらかのクリスタルを秘密の箱に投じるのだ。そのクリスタルが全て黒だった場合は成功だ。

左手に握られているのが「クリスタル」

 ただし、儀式に2回成功し召喚の準備が整っても、召喚のカギを握る「選ばれし黒魔道士」を「偽装の白魔道士」が封印してしまえば召喚ができなくなり、白魔道士側の逆転勝利となってしまうなどの条件もある。

 つまり、黒魔道士はどうにかして白魔道士を見つけ出して代表者に選ばれることを阻止しつつ、「偽装の白魔道士」を見つけておく必要があるのだ。対して白魔道士は、「選ばれし黒魔道士」を探しつつ、代表者の中に紛れ込み、白クリスタルを投じることを目指す。

さっそくプレイ――手に汗握る逆転劇 

 それでは実際にゲームプレイの様子を見ていこう。まずは儀式を執り行う神官様の前に集まり、全員で「イア!イア!」と叫ぶ。邪神のカルトといったらやっぱりこれだが、実際にやると完全に怪しい宗教である。

そしてこのポーズで一礼

 そして別室に通され話し合いがスタート。特に能力のない黒魔道士の筆者からすればそもそも敵味方がわからない。全員黒い格好をしているし(そういうドレスコードの会だった)、ノーヒント。そんな中、「黒魔導紋章官」と「封印の黒魔道士」を自称する人物が登場する。

 高度な情報戦か……とも思ったが、別の「黒魔導紋章官」と「封印の黒魔道士」を自称する人物は出てこなかったので本物の黒魔道士なのだろう。

『邪神降臨』プレイ中の様子

 今回は神官様の命により代表者を3人の選出する必要があり、とりあえず名乗り出た黒魔道士2人に加えてもう1人を選ぶことに。今回はメンバーの中でもかなり積極的に発言し、話し合いを進めていた人が選ばれた。
 すると、別室から聞こえてくる「イア! イア!」の声。1回目の儀式は成功したのだ。初回で身元がバレてしまうのを防ぐため、あえて白魔道士が黒を投じた可能性はあるのだが、ひとまず勝利には近づいた。

 続く2回目は、神官様の命で4人を選出することに。とりあえず前回儀式を成功させたメンバーは変えず、もう1人を追加で選ぶことに決まった。が、その話の中でなんだか怪しい発言や動きをしている人が気になるようになり、最終的には「なんだかあなた白魔道士っぽいですね」という話が出るほどみんな疑心暗鬼になっていった。

 こうして追加の要員として、たくさん喋っていた筆者も選ばれ儀式は成功。この段階ですでに2回成功しており、黒魔道士の勝利はほぼ確実となった。

『邪神降臨』プレイ中の様子

 あとは「偽装の白魔道士」を探し出すだけとなり、3回目は同じ4人で儀式を行うことに。しかし、なんとなく「白魔道士っぽい人」の目星はついたものの、だれが「偽装の白魔道士」がわからない。そして結論が出ずに時間が来てしまい、信者が神官様の前に集められいよいよ邪神降臨の仕上げとなった。

 とりあえず「偽装の白魔道士」で一発逆転さえなければゲームには勝てる。そして「封印の黒魔道士」が、「偽装の白魔道士」と思しき人を指名するが……ハズレ!

 そして「偽装の白魔道士」が魔導書を手に正体を表す。なんと全くノーマークだった人がまさかの「偽装の白魔道士」だった。彼は積極的に発言をしていた人だったのだが、怪しいところがまったくなかったので「えぇ~!」と驚きの声があがる。
 とはいえ「選ばれし黒魔道士」さえ無事であれば逆転はない……ところが、「偽装の白魔道士」は見事に「選ばれし黒魔道士」を見つけ出して封印。なんと「白魔道士」の逆転勝利となってしまったのだ。

 ちなみに話し合いの中で一番「白魔道士」と疑われていた人は「黒魔道士」だった。この意外すぎる結果の連続に、会場は大いに沸いた。

ゲーム終了…と思いきや脱出ゲーム開始!?

 というわけで、黒魔道士の野望は打ち砕かれた。……だがしかし、神官の助手が「神官、あなたは終わりです。邪な力で黒魔道士となっていた者たちは皆、白魔道士だったのです!」と語り、ここから一気に急展開。

『邪神降臨』プレイ中の様子

 こうして神官と助手のフリをしていた白魔道士の魔法バトルが勃発する。我々は白魔道士の神官の魔力から逃れるために、閉ざされた扉の封印を解かねばならないという状況に追い込まれてしまう。

 そんなこんなで、敵同士だった者が仲間となり人狼ゲーム風のLARPから脱出ゲーム風のLARPへと早変わり。「偽装の白魔道士」が持っていた魔導書に隠されたヒントと道具を手に謎解きを始めるのであった。

謎解きは主にクロスワードに近い形式で、なかなかの難易度の問題ばかり。しかも、神官からの魔法攻撃により手や足が動かせなくなったり、会話を封じられたりなど妨害が入り、一層難しくなっていく

 そして知恵を出し合って謎を解き、道具を使って魔法の模様を描きドアを開放。そのようにして、我々はついに脱出に成功した。そして助手のフリをしていた白魔道士は自らの命と引き換えに神官を倒し、我々は生きながらえることはできたものの、怪しい化物が東京上空に現れ人々に襲いかかるのだった……という形で終了した。

プレイ時間は、説明込みで約2時間半。元々ホラーのアトラクションをやっている企業がやっているイベントということもあって、音響や小道具にも力が入っており雰囲気は抜群だ。 遊び方のスタイルとしては人狼的な対戦ゲームであったため、明確でシステマチックなルールで目的も明確でプレイしやすい。人狼ゲームでは定番の途中退場もないので最後までゲームを楽しむことができ、チーム戦型の人狼に協力型の脱出ゲームが重なってくる展開は非常に面白かった。一方、即興で展開が変わっていくようなTRPG系のルールではなかったので、ロールプレイが求められる場面は少なめであった。先に紹介した『月夜見館のスケルツォ』とはテーマこそ似ているものの対象的、短時間でサクッとアトラクション感覚のLARPが遊べるイベントだと言えよう。

武器を使った戦闘体験も…?

 最後に軽く触れておきたいのは、年に幾度か日本各地で開催される国内最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」での、ファンタジー系のLARPにおける戦闘部分だけを切り取った「LARP戦闘体験」というイベントだ。

テーブルを飛び出して鎧と剣で“チャンバラ”…これってゲームなの? 急速に盛り上がるアナログゲームの現在に迫る【ゲームマーケット2017春・レポート】

※詳しくはこちらの記事でも語られている。

 ぶつけても痛くないやわらかな武器を使ってのサバイバルゲームのような自己申告のヒット制のゲームだが、その武器が殆ど手作りというのも驚き。より詳しい内容は先日のレポートを見て欲しい。

 主催のLARP団体「ヴァルホル」は、ストーリー性を抑えた戦闘部分にフォーカスしたスタイルで、LARPをする「ゆるコンバットLARP」【※】というスタイルで遊んでいる団体だ。

※ゆるコンバットLARP
LARPサークル「ヴァルホル」の開催するLARPイベント。LARPでは世界観や大まかなシナリオがあらかじめ用意されており、参加者はそれに則ってプレイするのが通常だが、「ゆるコンバットLARP」では戦闘部分だけを目的として行われる。

 ちなみに、今回は登場していなかったが、弓(ナーフなどを使う)などの飛び道具や、魔法(詠唱とボールを使う)なども登場するという。デジタルゲームっぽいアクションたっぷりの戦闘が楽しめるイベントとなっている。

体験を終えて――今こそ始めどき!

 今回は3つのイベントの様子を紹介したが、その様子を見れば、一括りにLARPといっても遊び方が異なるということはわかっていただけたことだろう。ざっくり分類してTRPG型、アトラクション型、サバゲ型の3つスタイルのイベントだったが、それぞれ別の魅力を持っていた。

 また『月夜見館のスケルツォ』や『邪神降臨』はどちらも、ゲームが終わると参加者が楽しく感想を語り合っていたのが印象的だった。『邪神降臨』では最後に記念撮影まで行われたほどだ。初対面だった人たちが仲良くなれるのもLARPのようなアナログゲームの魅力である。

 そしてもう一つ、特に魅力を感じたのは主催者側の熱意だ。どの団体もLARPという面白い遊びを盛り上げてより多くの人に知ってもらおうという情熱と、そしてこういう遊びだからこそ安全に最大限気をつけようという気配りが感じられる。
 実際、アクションたっぷりの戦闘を実演していた「ヴァルホル」の会では、参加するためにはゴーグルやグローブの着用が必須となっていたり、また「CLOSS」はLARP安全憲章を掲げるなど安全な遊び方の普及に努めている。

 LARPはまだまだ日本では知る人ぞ知る遊びではあるが、こういう人たちがその熱意を発信していくことで、これからどんどん新規プレイヤーも増えて行くことだろう。事実、最近は関東だけでなく日本全国でLARPサークルが続々誕生し、本当に盛り上がってきている。

 さらに富士見書房/グループSNEの人気ファンタジーTRPG『ソード・ワールド2.0』をベースとしたLARPのルールセットが2018年頃に展開されることが発表済みで、これから更に熱くなっていくことが期待できる。

 LARPが気になるという人は、今が始めどきなのではないだろうか。

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取材・文
筋肉&アメコミ映画ライター兼翻訳家。しかし、その実態は重度のゲーム好き。ビジネスに使える大事な英語は幾多の洋ゲーに教わった。アナログゲームも大好きで、中でもミニチュアゲームをこよなく愛する。好きなヴァン・ダム映画は『タイムコップ』。
Twitter:@Sir_Motor
取材
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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