【レディ・プレイヤー1】漫画家・榎本俊二がレビュー「今回ほど3Dメガネに感謝したことはない。PS VRを買う決心がついた」【ネタバレ注意】

 電ファミにて『現代ゲーム用語大全』を連載中の漫画家・榎本俊二先生は、じつは大の映画マニア。

 

 一度は映画業界に身を置くことを夢見て日本映画学校を卒業したものの、「自分には協調性がない」ことに気づき“漫画家”に転向したという先生は、雑誌『アフタヌーン』『映画秘宝』に映画について寄稿し、また書籍『映画でにぎりっ屁』(講談社刊)を著すほどの映画評論家でもあったりする。

 

 そんな榎本先生が最近、息子さんとともに映画『レディ・プレイヤー1』を鑑賞したとのこと。
 “ゲームに関係する映画だ!”ということで、編集部ではさっそくレビューを執筆していただきました(若干ネタバレが含まれるところがあるので、ご注意ください!!)

4歳の頃から映画相棒の、中2の息子と観に行った

 現在、広島県在住の漫画家・榎本俊二です。

 以前、東京で暮らしていた頃は渋谷まで車で15分足らずで行けたので、どんな映画でもたやすく観ることができた。
 メジャーなロードショー作品からマニアックなミニシアター系まで、なんでもだ。離れてみて痛感する、東京という街の“便利さ・スゴさ”である。

 今住んでいる所はたいへんな田舎で、車で高速に乗って映画館まで90分かかる。わかりやすく言うと1時間30分だ。つまり往復で3時間。広島県人になってから、「映画鑑賞」は1日がかりの大レジャー行為になってしまった。

 昔のように、仕事の合間をぬってちょっと気になる新鋭監督の『レザボア・ドッグス』をささっと「シネマライズ(おしゃれ映画館)」に観に行ってすぐ帰ってくる、なんてことはもう二度とできないのである。

(画像はAmazonビデオ|レザボア・ドッグス (字幕版)より)

 やけに古い話で恐縮だ。シネマライズは閉館してしまったらしいね。東京の文化が心配だなあ。「ユーロスペース」はまだある? 『バスケットケース』面白いよ。

 ともかく気軽に映画館に行けないぶん、いったん行くとなったらとことん楽しまないといけない。普通に2本立てハシゴは当たり前、なんなら3本立てしたいくらいだが、それだと帰りが夜中になってしまうので泣く泣くガマンだ。

 今回も、いつものように息子を従え、映画館のある町・福山を目指して高速・尾道線(別名やまなみ街道)を激しく下る。

 中学2年になったばかりの息子は、4歳のときから『トランスフォーマー』やマーベル映画につきあってくれている、今や立派な映画相棒だ。
 「『グリーン・ホーネット』の続編はいつやるの?」とかイカしたジョークも飛ばし、最近ではナマイキにも「洋画は字幕じゃないと観る気がしない」などとのたまう。

(画像はAmazon|グリーン・ホーネット [DVD] より)

 ちなみに「キャメロン・ディアスが引退宣言しちゃったからグリーン・ホーネットの続編はムリかもね」とこっちもイカしたジョークでお返しする。

 本日の我々のお目当てはスピルバーグの最新作『レディ・プレイヤー1』である。ハシゴで観るもう1本は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』だ。なんとどちらも、若者たちがゲームの中に飛び込んで大暴れする映画だ。

シネクロニシティという映画の神様の贈り物

 ちょっと脱線するが、たまたま続けて観た映画が似ているストーリーだったり、テーマが同じだったりした経験がないだろうか。一方の作品の問題提起に対して、もう一方の作品がそれに答えていたりとか。

 自分はそういうことがちょくちょくあって、この前もたまたまハシゴした2本が『ラ・ラ・ランド』『ネオン・デーモン』という、どちらも“都会のショウビジネスに憧れる田舎娘が厳しい現実に打ちのめされるお話”だったりした。

 なんの気もなしにレンタルしたDVD2枚が『マトリックス』『トゥルーマン・ショー』で、そのどちらも(一方はデジタル的、もう一方はアナログ的な)“仮想現実の中で本当の自分を見つける話”なので興奮したこともあった。

 このような、映画どうしの偶然の一致を「シンクロニシティ」ならぬ「シネクロニシティ(シネマ+シンクロニシティね)」と勝手に名付けて、映画の神様からの贈り物としてとてもありがたがっているのだ。

 みんなもこれから映画を複数本レンタルするときには、注意してそれぞれの作品を味わっていただきたい。だいたい6回に1回くらいはシネクロニシティあるよ(適当でごめん)。

 映画って、単独でその1本を楽しめるのはもちろんだけど、ほかの作品どうしを照らし合わせてその共通項や違いなどに思いをはせてニヤニヤするという格別な楽しみもあるのだ。って大きなお世話か。

「オアシス」の“なんでもできる”のスケールがバカでかい

 さてさて本命の『レディ・プレイヤー1』である(『ジュマンジ』は1本目に観終わった。面白かった)。

 この『レディ・プレイヤー1』は、「オアシス」というバーチャルリアリティ・ゲームにみんな仕事そっちのけでハマり込んじゃう、やや困った未来のお話だ。
 そんなめちゃくちゃハイテクな「オアシス」は視覚、聴覚だけじゃなく全身スーツ着用で、触覚までもリアルに感じてしまう夢のようなゲームだ。

 たとえばゲーム内でうけたキン蹴りなどもプレイヤーにダイレクトに伝わってきて悶絶する。
 もちろんいやらしい系の触覚も伝わるのだが、そのへんは“よいこ”仕様の映画なのであえて描かれない(ご不満の助平諸氏には傑作SF漫画『狂四郎2030』【※】を読むのをおすすめしたい。この漫画に登場するVRシステムは「スケベ行為」のみに特化した、たいへん潔くそしてとてもいやらしいものだ。ってこれも大きなお世話だ)。

※『狂四郎2030』……徳弘正也による近未来SF漫画。バーチャルSEXマシンが登場し、物語の大きな役割を担っている。ちなみに、作中には“オアシス農場編”と呼ばれるエピソードがあり、興味深いことに『レディ・プレイヤー1』とのシンクロニシティが見られる。
(画像はAmazon|狂四郎2030【期間限定無料】 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) より)

 テレビで山田孝之が叫んでいるプレイステーション4のCMとまったく同じ売り文句が、本作の冒頭でこの「オアシス」を説明するのに用いられている。

 いわく「なんでもできる」。しかしその「なんでも」のスケールが、かたよった方向にバカでかくて激マニアック。
 日・米・英のオタク・カルチャー作品(アニメ・ゲーム・漫画・映画・ドラマ・小説などなど)の世界が完璧に再現されていて、お気に入りキャラの姿で巨大ロボやマシーンを操りまくれるというのだ。
 最高にもほどがある。これでは、未来のみんながことごとく廃課金状態なのもまあ仕方がないよね。

 次から次へと出てくる有名キャラや有名ロボや有名乗り物がオタク魂を燃え上がらせ、洪水のように押し寄せるポップ・カルチャー・トリビアがやっぱりオタク魂を燃え上がらせる。本作のセールスポイントはそこに尽きる。

(画像はAmazon|シャイニング [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]より)

 個人的にいちばん血がたぎったのは、キューブリックのホラー映画『シャイニング』登場のくだり。
 じつは『レディ・プレイヤー1』を観るほんの4日前にアマゾンプライムで『シャイニング』をひさびさに観返していたので、ものすごく驚いた。シネクロニシティー!!   

この映画はオッサン向け懐メロムービーだ

 『レディ・プレイヤー1』の原作小説『ゲーム・ウォーズ』の作者アーネスト・クラインは1972年生まれで、わたしは1968年生まれ。ぎりぎり同世代だ。
 本作に出てくる『インベーダー』『パックマン』『ガンダム』『スター・ウォーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、そして『AKIRA』といった、そうそうたるレジェンド作品に、ハートを直撃された世代である。
 なので、本当にどの瞬間もまばたきするのがもったいないくらい楽しめた。

 いっぽう13歳の息子は、ダイレクトに響いてきたキャラは「ほとんどなかった」と言う。
 辛うじて漫画家の息子のたしなみとして教科書がわりに読んでいた『AKIRA』の金田バイクアイアン・ジャイアントの登場シーンに反応していたくらいだ。

 ゲームネタに限っていえば「やっぱり『ポケモン』と『マリオ』がいないのはツラいかな」とのこと。「あと『デュエマ』」。そういやジャンプ系もコロコロ系もジブリも見当たらなかった。

 どうやら全年齢対象のSFアクション・アドベンチャーの装いをまとっていながらも、オッサン向け懐メロムービーというのが『レディ・プレイヤー1』の本当の姿みたいだ。

 とはいえ『マリオカート』の壮絶な実写化のような前半のレースシーンは超絶燃えた。奮発して3D&IMAX(料金が通常の1.4倍だ)にして大正解だ。

 わかってもらえないことを覚悟で例えるが『フレンチ・コネクション』×『スパイダーマン2』×『キング・コング』×『マトリックス/リローデッド』×『マリオカート』ってな感じのすさまじいアクションだった。

 3Dメガネが感動の涙でびしょびしょになったよ。隣りで観ていた息子もあまりの迫力に3Dメガネを外したりかけたりを繰り返していた。なんのこっちゃ。
 そんなこんなでめくるめく140分(わかりやすくいうと2時間20分ね)が終了した。

 長いエンドクレジットも当たり前のようにがっつり最後まで観る(眺める)のが我々の流儀だ。
 ちんぷんかんぷんな英語のスタッフ・ロールだけど、意味もなく日本人の名前を探し出して「海を渡ってがんばっているな」と感慨にふけったりもできる、とても大事な時間だ。

 教えたわけでもないのに、息子も「けっこう日本人が働いているね」とささやいてくる。頼もしいヤツめ。こいつになら後をまかせても大丈夫だ(何の?)。
 ゆっくりと館内が明るくなり余韻に浸りながら外に出る。そこで作品の感想の口火をきるのは、いつも息子のほうからだ。

息子「お父さん的にはどうだった?」

わたし「おもしろかったよ」

息子「『ジュマンジ』とどっちが?」

わたし「こっちかな。お前は?」

息子「オレもこっち」

わたし「だよな」

息子「だよねー」

 本当はもっとするどい意見で息子の尊敬を勝ち取りたいのだが、気のきいたセリフがちっとも出てこない。
 シネコンの出口にたどりつくまでにあらかたの議論は済んでしまう。かならず尿意もMAXだし。

PS VRを絶対手に入れよう! と決心できたのが収穫

 でも改めて振り返ってみると、さんざん最新技術を駆使した映像でVRワールドの素晴らしさを見せつけておきながら、最後は「あんまりゲームをやりすぎちゃいけないよ」という、まるでお母さんみたいな説教で締めくくっている。
 うーんそういうのってどうなんだろう。スピルバーグも人の親なんだなあってことなのか。いや71歳だから人の祖父か。

 しかし、それじゃ寝る間も惜しんで「オアシス」内の謎解きに挑み、ワルイやつらの欲深い企みを阻止した『レディ・プレイヤー1』の勇者たちがなんだか可哀想だ。原作では、1個の謎解きクエストをクリアするために何年もかかってレトロゲームやアニメを猛勉強するっていうし。
 なんというか全否定ってやつ? 学校の先生やPTAが子どもたちに判を押したように言う「ゲームは時間を決めてほどほどに」が、この映画の最大のテーマだったってことは、あんまり声を大にして言いたくないなあ。中学生の子どもを持つ親が思うことじゃないけど。

 それでもありがたい収穫があって、それは“買うのをずうっとためらっていたPS VRを「絶対手に入れよう!」と決心できたこと”

PlayStation VR
(画像はPlayStation VR 公式サイトより)

 わたしの「最新ゲームハード持ってない歴」はけっこう長く、Wiiを買った2009年(遅っ!)からPS4購入の2017年までじつに8年ものあいだ、新しいゲーム機にさわることがなかった。
 つまりWii UもPS3もまったく知らないのだ(なのにゴメン! 電ファミのようなゲーム専門サイトに文章なんか書いて……!)。

 32ビットマシンが登場した1994年以降の3DO、プレステ、セガサターン、32X(!)、ニンテンドウ64、ドリームキャスト、ゲームボーイアドバンス、ワンダースワン(!)、プレイステーション2、ニンテンドーゲームキューブ、XboxそしてWiiと順調にニューハードを買って楽しんでいたが、広島に引っ越してからこっち、仕事や育児にかまけてすっかりゲームからご無沙汰してしまったのだ。
 使っているパソコンもヴィンテージだし、携帯もずっとガラケーだからオンラインゲームやソシャゲの類もぜんぜんわからない。すっかり時代の波から取り残された、田舎の手描き漫画じじいになってしまった……。ここ(電ファミ)に載ってる4コマ漫画の原稿だって、毎月宅配便で送ってるんだ。すごいだろう!

 とまあ、そんな恐るべきデジタル弱者に成り下がったわたしが、去年待ちに待った『人喰いの大鷲トリコ』発売に合わせてついにPS4を購入したのだった。

 その後『ホットライン マイアミ』などの良作を楽しみつつ、そろそろ話題のVRが欲しいかなあと思いはじめたのだが、あのヘッドセットってかさばりそうだし、なにより高価だし、おまけにメガネ者にとって二重メガネ(メガネの上にメガネ)って本当に煩わしいんだよね、などとくどくど迷う日々。
 映画館でかける3Dメガネだってすげー耳が痛いし、ずり落ちるし、そうまでして立体に見えなくてもいいよ! とそこにいないどこかの誰かに逆ギレする始末だ。

 そうこうしているあいだに義父母の介護やらなんだでいろいろ忙しくなってきて、気がつくとまたゲームから遠ざかっている毎日……。いかん、このままだとせっかくのPS4が息子の『パワプロ』専用機になってしまう。

 そこで出会ったのが『レディ・プレイヤー1』というわけだ。今回ほど3Dメガネに感謝したことはないと断言しよう。
 本当に素晴らしい驚くべき体験を前にしたら、かさばるとか二重メガネがどうとかまったくどうでもよくなるんだと、今さらながらに思い知らされた。つうか耳、全然痛くなかったし。

 この世にはさらなるすごいことがまだまだあり、それはVRメガネの向こうにも間違いなくどっさりと待ち構えているのがありありとみえる。
 このサイトの読者ならとっくに知っているであろう事実に、やっと気がつくことができました。

 ありがとう『レディ・プレイヤー1』! ありがとうスピルバーグ! あなたのおかげでPS VRが1台売り上げましたよ! チーン!
 でも「ほどほどに」というあなたの映画の教えは、守れるかどうかわかりません!

息子のうっぷん晴らしを見て「ゲームって本当に必要なんだな」と思った

 興奮のうちに映画2本を無事観終えると、息子がゲーセンに行こうと言い出した。シネコンのそばにはたいていゲーセンが隣接しているため、子どもにとってそれはお決まりのコースといえる。

 「いや、今日はマジで時間ないから」と息子の提案を退けるわたし。「あんな映画を観たあとに『マリオカート』やらないなんてウソでしょ!?」と鼻息ふんふんで息子が詰め寄ってくる。

 「ホントにそうだよなあ」と心の中ではげしく同意しつつも帰途を急ぐ。だって『マリカー』やりはじめたら絶対1回じゃ済まないしなあ。
 忘れてるかもしれないけど、帰るのに1時間半かかるからね。やっぱり遠いってのはイタい。今日のところはガマンしてくれ。

 いつかは将来「オアシス」のようなゲームがプレイできるようになるのだろうか。
 そしたらガンダムやデロリアンやメカゴジラを操縦する前に、まずは徒歩1秒くらいで行ける、ものすごく近い映画館をバーチャル世界に作りたい。そこで『レディ・プレイヤー1』を何度も何度も繰り返し観るんだ父は。

 ところで家についたら息子が駐車場で車の周りをものすごい勢いで何周も走り出したので驚いた。
 『マリカー』やれなかったうっぷんを夜中に自走ではらそうとする息子の姿を見て、ゲームって本当に必要なんだなと思いました。

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著者
榎本俊二
1968年12月10日神奈川県藤沢市生まれ。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。日本映画学校在学中に『ビッグコミックスピリッツ』で第3回相原賞特別賞(ゴッホ記念財団(嘘)賞:賞品はひまわりのタネ)を受賞。その後『月刊アフタヌーン』(講談社)の四季賞(1989年秋の佳作)に入賞し、応募作が同社の『週刊モーニング』に掲載され漫画家としてデビューした。代表作は『GOLDEN LUCKY』『えの素』(ともに講談社刊)『火事場のバカIQ』(小学館刊)『榎本俊二のカリスマ育児』(秋田書店)『思ってたよりフツーですね』(KADOKAWA刊)など。
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