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リズムゲームファンによるリズムゲームが苦手な人のための、リズム+アクションゲーム。『No Straight Roads』はあなたの内に眠るリズム感のDNAを呼び起こす

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 「リズムゲーム」と聞くと身構えてしまう方は少なくないだろう。得意な人には「音楽に合わせてタイミングよくボタンを押すだけさ」と言われるかもしれないが、それがなかなか難しい。
 しかし一方で、「タイミングよくボタンを押す」というのは、アクションゲームにも通じることだ。プレイヤーは敵の攻撃に合わせて回避したり、弾いたり、ジャンプしたりする。リズムゲームが苦手でも、そうしたアクションならできるという方もいるだろう。
 もし、アクションゲームにようにリズムゲームを遊べたら? あるいは逆に、リズムゲームのようにアクションゲームを楽しめたら?

 そんなふうにリズムとアクションを融合したゲームがこの『No Straight Roads(ノー・ストレート・ロード)』だ。

 『No Straight Roads』は、リズムゲームの要素を取り入れたアクションアドベンチャー。
 ロック魂を持ったふたりの主人公「メイデイ」「ズーク」を操り、攻撃、ジャンプ、ローリング回避、そして敵の攻撃にタイミング良く攻撃を当てて発動するパリイなど、アクションゲームではおなじみのアクションを使い、邪悪なEDMアーティスト軍団「NSR」と戦う。

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主人公のメイデイ(右)とズーク(左)。日本語版はフルボイスで、声はそれぞれ佐倉綾音さんと福山潤さんが担当している

 開発はマレーシアに拠点を置き、『FINAL FANTASY XV』でリードゲームデザイナーを務めたワン・ハズメー氏率いるMetronomik。対応プラットフォームはPlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、PC(Epic Games Store)で、8月27日に発売予定だ。
 
 本作はリズムゲーム+アクションアドベンチャーと銘打っているが、安心してほしい。『Devil May Cry』でも、『Dark Souls』でもなんでもいい。何かひとつ主人公が武器をふるって敵と戦う3Dアクションゲームを想像してみてほしい。
 『ビートマニア』『ダンスダンスレボリューション』など、世の本格的なリズムゲームより、本作のゲームプレイはあなたが想像した3Dアクションゲームにたいへん近いと断言できる。

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 筆者は2019年のBitsummitにて本作を遊んで気に入っていたのだが、幸運にも今回ボス2体とゲームの舞台からふたつの地域を探索できる体験版を先行して遊ばせてもらった。

 良い部分はいろいろあるが、その中でたったひとつ、「リズムゲームが苦手な人のために作られたアクションゲーム」としての本作の魅力を紹介したい。

文/古嶋誉幸
編集/実存


リズムゲームが楽しめないなら、楽しめるようにするゲームを作ればいい

 筆者がBitsummit 2019に参加した際、開発者のハズメー氏に軽いインタビューを行った。自身はヘヴィ級のリズムゲーファンながら周りにはあまり理解されず、一緒に遊ぼうと誘っては断られているという氏の経験が紹介された。
 どうやら、リズムゲームは一般受けがあまり良くないらしい。だが、氏によれば、いつも聴いている曲がいつの間にか口ずさめるようになっているように、リズムゲームを楽しむ感覚は誰にでも備わっているという。
 インタビューや1年前のゲームプレイについては、IGN Japanの記事を読んでほしい。

 リズムゲームが楽しめないなら、楽しめるようにするゲームを作ればいい。氏がそう考えたかは分からないが、本作にはリズムゲームに苦手意識を持つ人でも、いつの間にかリズムゲームを楽しむための感覚を呼び起こす仕掛けが用意されている。

 その仕掛けが顕著なのが、ゲームを始めると最初に戦うボス「DJ サブアトミック・スーパーノヴァ」(以下、スーパーノヴァ)だ。傲慢で夢見がちだが、どこか憎めないスーパーノヴァとの戦いは、この体験版の中でもっともおもしろかった部分だ。この戦いでは、ゲーム攻略に必要なあらゆる要素を学ぶことになる。

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「DJ サブアトミック・スーパーノヴァ」

 スーパーノヴァは惑星を高速で公転させ、主人公にぶつけるのが主な攻撃手段だ。惑星はリズムゲームにおけるノーツの役割だといえるだろう。一般的なリズムゲームは、ノーツに合わせてボタンを押せなければ失敗だ。全てではないが、タイミング良くボタンが押せなければダメージを受けるものもある。

 一方で本作は、もしノーツに合わせてタイミング良くボタンが押せないなら、その場所から移動してもいいし、少々タイミングがずれてもジャンプやローリング回避で十分にかわせる。攻撃の予兆は視覚的にもわかりやすく、矢印が伸びる場所から逃げれば攻撃が当たることはない。
 つまり、リズムに合わせられなくても、アクションでカバーすることができるのだ。

 そのため、難易度ノーマルでのボス戦は、本当に普通のアクションゲームといった印象を受ける。しかし、とどめの一撃をかます最終フェーズだけは、リズムゲームの片鱗を見せる。

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チュートリアルで説明されるが、紫色の攻撃だけがパリイ可能だ。

 最終フェーズでは、まるでリズムゲームのように一直線にレーンが伸び、音楽に合わせて惑星がプレイヤーに向かって飛んでくる。
 そう、このフェーズはたった1レーンのリズムゲームだ。攻撃はスクラッチの音とともに飛んでくるため、その音をしっかりと聞いて攻撃ボタンを押し、パリイすることが求められる。
 このパートでパリイが成功するようになれば、「音に合わせてボタンを押す」というリズムゲームの基本が指に宿っているはずだ。

 このフェーズに限っては、しっかりと音を聞けば目をつぶっていても十分攻略できる。筆者は実際に確認済みだ。

 なお、もし自信が無ければ惑星をジャンプやローリング回避でかわすこともできるが、避けるだけでは相手へのダメージが非常に小さいため、あまり効果的ではない。パリイの成功数やクリア時間もスコアとして評価されるので、できるだけパリイで素早く倒してしまいたい。

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 ところで、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』はリズムゲームだ、という主張を聞いたことがある方は多いのではないだろうか。相手の攻撃をよく見てタイミング良くボタンを押す「弾き」がゲームの重要な要素になっているからなのだが、本作は音をしっかり聞いてボタンを押す『SEKIRO』だと表現できるだろう。

 スーパーノヴァは最初のボスのため、視覚的に攻撃がわかりやすくなっているという。しかし、今後のボスは徐々に視覚情報が控えめになっていく。卑怯とは言うまいな。

難易度を上げれば本格的なリズムゲームとしても楽しめる

 3Dアクションゲームに慣れ親しんだ方なら、スーパーノヴァのノーマルモードは少し物足りなく感じるかもしれないが、安心してほしい。一度倒したボスはさらに高い難易度にして挑むことができる。そして、スーパーノヴァ戦の面白さが存分に発揮されるのは、難易度「ハード」をクリアした後にプレイできる「クレイジー」だ。

 ハードまでは3Dアクションゲームだが、クレイジーからはゲームの印象ががらりと変わる。リズムゲーム要素が強まり、しっかりと音を聞いてタイミングよくボタンを押さなければ勝てなくなってくる。

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クレイジーでは、惑星の高速移動攻撃が全面で発生する。紫色のレーンはパリイ可能だ。

 クレイジーではスーパーノヴァの攻撃パターンが大きく変わり、安全地帯が減る分パリイが重要になる。パリイが成功すれば敵の攻撃を無効化し反撃もできるが、失敗するとダメージは必至。リスクは高いがリターンも大きい。

 クレイジーモードでは何度も敗北し、少しずつパターンとリズムを学んでいった。そしてクリアするころには、いつの間にかBGMのリズムを足で刻んでいた。ノればノるほど強くなる。体で音楽を感じながら、強力なボスと戦うことができる至福の時間だ。
 体験版では隠されているが、クレイジーモードより高い難度も複数用意されているようで、製品版が楽しみだ。

 「リズムゲーム+アクションアドベンチャー」、本作の説明を読んでゲームに興味がわいた方であれば、このゲームに期待するのはまさしくこのような戦闘のはずだ。そして、もしもリズムゲームに苦手意識を持つ方でも、クレイジーで戦えるようになっていれば、あなたの内に眠るリズム感のDNAが目覚めたといえるだろう。

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 ボス戦の唯一の不満は、一度倒したボスともう一度戦うには、マップを移動して所定の場所に行かなければならない点だ。このゲームではボスと戦うことでファンが集まるのだが、ファンの数はそのままスキルポイントになっており、さまざまなスキルのアンロックに利用することができる。
 そのためには、何度も同じボスと戦うことになるはずだ。あるボスと戦いたいと思ったのに、そこまでわざわざ移動するのは手間に感じる。

 ボスを倒すとレコードが手に入るので、自宅のレコード棚からいつでも再戦できるようにしてくれれば手軽だし、よりリズムゲームのような体験が得られるのではないかと思う。

優勢になるとBGMがEDMからロックに塗り替えられる

 リズムゲームで重要なのはBGMだ。ロックとEDMの戦いを描く本作には、「主人公の勢力が優勢になるとBGMがロックに塗り替えられる」というおもしろいシステムが取り入れられている。
 ステージには最初、ボスが奏でるEDM音楽が流れている。しかし、形勢が主人公に傾けば傾くほど、ロックのメロディがBGMに現れてくる。この演出は、BGMのメロディを複数のトラックに分割し、徐々に入れ替えていくことで演出を実現しているのだという。

 高難度とダイナミックなBGMの変化は2019年に遊んだときにはまだ実装されていなかったが、今回のデモで初めて体験できた。その効果は高く、ロックvsEDMの戦いを熱く彩ってくれた。

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 少し余談だが、アドベンチャーパートでステージの仕掛けを起動するためには、音楽の力が必要だ。楽器を演奏すると仕掛けが起動するのだが、その際に演奏するロックがそのときに流れているBGMと同期しているなど、芸が細かい。これもBGMをダイナミックに変化させる前述のシステムが使われているようだ。
 主人公たちは相手のライブをジャックするが、場違いな騒音を発生させて音楽を台無しにするような野暮はしない。

リズムゲームファンによって丁寧に作られたアクションゲーム

 『FINAL FANTASY XV』のクリエイターの作品と説明されることが多い『No Straight Roads』だが、「第一線で活躍したクリエイターが率いるMetronomikが開発したゲーム」の証明という以外には大して重要でないように思える。

 それ以上に大切なのは、本作がリズムゲームファンによって丁寧に作られたアクションゲームということだ。最初は「どこにリズムゲーム要素があるのだろう」と思っていたが、高難度ボス戦ではしっかりとその息吹を感じることができた。

 本作とゲームプレイ自体が似ているわけではないが、『SEKIRO』や『Dark Souls』シリーズのように攻撃のタイミングが重要な高難度アクションで腕を磨き、寝る前には『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』『Cytus II』でリズムゲームを楽しむ筆者には、一度にふたつが楽しめるゲームとして大いに楽しめた。

 このゲームは「ロック」なのだろうか。ゲーム内では、メイデイとズークがミュージックレボリューションを目指し、世界を変えるためにロックを掲げた。ゲーム外では、あるリズムゲームファンが人々の持つ苦手意識を変えるため、仲間とともに『No Straight Roads』を掲げる。きっとこのゲームは「ロック」なのだろう。

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著者
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一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
編集
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ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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