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『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)

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Twitterスペースをお聞きの方へ:
本コンテンツはリアルタイムの興奮をみなさんと共有するため、声優さんにもあえて脚本を事前にお渡しせず、皆さんとおなじ画面を直接読んでいただいております。
そのため、つっかえや読み間違え等が発生することがあります。
ご不便をおかけしますが、コンテンツの性質としてご承知いただければ幸いです。

第五の分岐

選択肢:ビョルカ
が選択されました!

End 08に分岐します。

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_064
『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_065

「……残念ながら、
 いまだ人里にはたどり着けず。
 我らの旅は、この空と同じく
 黄昏を迎えつつあります。
 
 しかし、最後まで諦めない。
 最後まで進み続ける。
 そのためにも。
 約した『儀』を、決行します。
 
 よろしいですね。2人とも」

「うん」

「……」

「フレイグ」

「……進めて下さい」

「いいでしょう。
 
 『ヴァルメイヤよ、
  我らを導く死体の乙女よ!
  信心と結束をいま示します!
  ご照覧あれ!』

 ああ、

 決まってしまう……

「血と肉と骨にかけて──
 
   みっつ!
 
     ふたつ!
 
       ひとつ!」

「……」

「……そう、ですか」

 それは、想像できたこと。

 ヨーズは、ビョルカさんを。
 ビョルカさんは、ヨーズを。

 2人がお互いを、指さした。

 それで、僕は。

「……フレイグが、私を。
 ヨーズも、私を。
 
 そうですか。
 
 ヴァリン・ホルンは
 成りました。
 
 目隠しは要りません。
 どちらでも、構いません。
 好きな時に、やりなさい」

「……ビョルカさん、これは、」

「聞きたくない……
 
 ……いえ。
 言い訳や説明は要りません。
 
 あなたから見れば、
 私もヨーズも、
 等しく疑わしい。
 いや、巫女の立場がある分、
 私のほうがよほど怪しい。
 
 何とでも説明はつき、
 聞けば傷つくだけです。
 
 このまま死にます。
 
 さあ、やりなさい」

「……私がやる」

「駄目だッ!!
 
 僕が、
 
 僕が、やらなきゃ、
 
 僕が……
 
 あ……あ、あ、
 
 て、が、」

「……
 
 ふう。
 こんな時、役に立たないとは。
 
 フレイグ。
 あなたという『剣』は、
 もう不要です。
 
 あなたはきっと、優しすぎた。
 
 役目はヨーズに託します。
 ヨーズ。よろしく」

────……

「……分かった。
 
 フレイグ。どいて」

 僕は。
 
 僕は。

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_066


 
 その銃声が響いた時さえ。

 目をそらしていることしか
 できなかったんだ。

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_067

 【ビョルカ死亡】

 【生存】
 フレイグ、ヨーズ

 【死亡】
 ウルヴル、ゴニヤ、ビョルカ、
 レイズル

 【3日目の日没を迎えた】

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_068

「終わった。
 
 行こう」

 心臓の音だか、
 銃声の残響だか分からない、
 轟音が頭を
 ガンガン鳴らしていた。

 結局僕は、
 何もかもをヨーズに任せて、

 立ち上がることすら、
 ヨーズに手を引かれて、

 虚脱状態のまま、
 その場を、去った。

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_069

「フレイグ。
 
 フレイグ。
 
 おい。
 血便面(けつべんづら)」

「……いてえ。
 
 ほっぺ叩くなよ」

「眠りかけてる。
 
 まずいな。
 夜を越せない。これだと」

「もうそれでいい……」

「おい。
 こら。
 
 ビョルカは。
 少なくとも、格好だけは。
 最後まで、巫女をやったろ。
 
 お前もがんばれ。最後まで」

「……
 
 僕はもう剣でも盾でもない」

「はあ。
 
 ちょっと待ってろ」

 ……ヨーズが去る気配がした。
 僕は力なく膝を折る。

 情けないし、悲しいけど、
 それ以上に、何もかもが
 どうでもよく思えた。

 こうなることは分かっていた。
 ビョルカさんは、
 僕の全てだったから。
 もう、いつからか、
 思い出せないくらい前から。

 なのに、
 僕はビョルカさんを指さした。

 なぜか。

 そうすべきと思ったから、
 としか言えない。

 ヨーズの言うことが、
 この上なく正しく、
 恐ろしく聞こえた。

 その最悪が、
 まさに僕に降りかかっていると
 信じた。

 結果は……分からない。

 ビョルカさんは、
 『狼』の正体をさらけ出して
 襲ってきたりはしなかった。

 もちろん『狼』とは、
 そういうものかもしれない。

 敵がいつもご親切に
 全てのネタを晒してくれるとは
 限らない。

 いずれ、正しいことをやったと
 確信できるのかもしれない。

 『狼』にやられたビョルカさん
 の仇を討ったと、胸を張れる
 こともあるのかもしれない。

 でも、今じゃない。

 今は、ただ、

 頭に響き続ける轟音が
 いますぐ終わってくれるなら、
 何だっていいと、思ってる。

「……おまたせ」

 声がした後、すぐそばに、
 何か大きなものが放られた。

 ……毛皮……?

 クマの毛皮、みたいだ。
 殺したて、剥ぎたてなのか、
 激しく湯気が立っている。

「着て。
 マシになるはず」

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_070

 ……言われるがままに、
 僕はそれを身にまとった。

 生き血と、脂と、糞尿。
 むせかえるような命の残り香と
 ともに、そこには確かに、
 熱があった。

 頭の中の轟音は、
 全く消えない……けど、

 温かさが、少しだけ、
 思考を動かす。

「……ヨーズも、入って」

「は?」

「これ着て、
 夜明かすんじゃないの?
 
 僕とじゃ嫌だろうけど……
 言ってる場合じゃない」

「……えっと……
 
 あの。それは……
 
 考えて、なかった。
 
 悪くはないね……
 
 でも、やめとく」

 ……言って、ヨーズは。

 なぜか、
 長銃を、
 構える。

「ヨーズ、
 
 それは、」

「がまんしようと思ったけど。
 できるかな、と思ったけど。
 
 できないや。
 ごめん。
 
 てわけで、
 
 お坊ちゃん。
 お逃げなさい、
 
 狩るから」

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_071

──ああ、

 なんてことはない、

 僕は自分の手で、
 最悪を完成させてしまった。

 ヨーズが、『狼』だ。

 だってほら。

 眼が。牙が。爪が。毛皮が。
 もう、人のそれじゃない……

「……ぜんぶ、嘘だったの」

「嘘なんて、言ってない。
 
 ビョルカが『狼』だったら
 どうする、と聞いただけ。
 
 私ならビョルカを乗っ取る、
 と持論を言っただけ。
 
 踊ったのは、あんた。
 
 ビョルカに惚れた弱みで、
 疑念で満ちて弾けた、あんた」

「でたらめ言うな……!
 僕は惚れたりなんてしてない!
 
 そんなんじゃないんだ……
 
 ビョルカさんは……
 ただ誰よりも、
 尊敬してただけだ……!」

「だからなに。
 
 一番。特別。替えのない女。
 それだけ。私から見れば。
 
 むかついてたよ。
 ずっと。
 ずっと。
 ずっと前から。
 
 私が好きなのは、
 あんただけ、なのに」

 ……

 何を、言ってるんだ?

 何も、知らない。
 ヨーズが、僕を?

 じゃあ、いつもの罵倒は、

 気持ちに気付かないばかりか
 ビョルカさんしか見ていない
 僕への苛立ち だったとでも

 轟音で頭が割れそうだ

 待て
 待て
 それじゃあ

「おまえ、
 
 まさか、
 
 だから、僕に、
 ビョルカさんを殺させて──」

「そうだよ。
 
 ちょっと、すっとした。
 
 でも、失敗だった。
 
 結局あんたはあいつが好き。
 それで悩むのを、
 見せつけられただけ。
 
 全部どうでもいいね。
 
 結末はいっしょ。
 
 『狼』は、夜に1人を殺す。
 がまんはできない。
 
 それだけ、みたいだから」

 笑みさえ浮かべて

 怪物の目をした女の銃口が
 僕の鼻先に狙いをつける

 僕は死ぬらしい

 ただ

 その事実に何も想うことが
 できないほど

 あたまがいたい

 むねが

 あつい

「……つまり
 
 ぼくはもう ようなしか」

「ああ
 
 人のフレイグは
 もういらない
 
 あたしが『狼』
 おまえが手負いのクマ
 もう それだけでいい
 
 さあ
 
 狩りの時間──────え?」

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_072

 腕の一振りで

 女の体は、
 ちぎれるほどに
 切り裂かれていた

「あ
 
 ああ
 
 あー
 
 おまえもか
 
 ははは
 
 おまえもだったんだなあ」

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_073

 その笑顔が気に入らなくて

 真っ赤に染まった視界の中で
 両腕をめちゃめちゃに
 動かした

 あっというまに
 『狼』はただの『かけら』
 なり果てた

 そうだ

 俺もだったんだ

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_074

 熊の毛皮を着たせいなのか

 あるいは何か別のもののせいか

 何かが俺を獣に変えた

 きっと『狼』と同じものに

 俺はもはや フレイグであって
 フレイグではなく

 禁忌はもはや 俺を縛らず

 旅はもはや 続くべくもない

 人ならぬ咆哮が
 喉からほとばしった

 もはや頭は痛まない

 もはや思考も悩みも存在しない

 体じゅうを満たす
 狩りと殺しへの渇望に
 突き動かされ

 なけなしの熱が尽きる時まで

 この雪原をさまようのみだ

『ギ・クロニクル』第二夜(End 08「捕食」)_075

 【ヨーズ死亡】

 【フレイグ脱落】

 【巡礼者が全滅しました】

End 08「捕食」

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