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ダルビッシュが語る、心身の不調を『フォートナイト』に救われた話──『フォートナイト』は1日の終わりにひと息つける場所。メジャー最多勝よりもビクロイで「パパすごい!」と褒められるよろこび

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野球よりも『フォートナイト』の終盤のほうがあたふたします

──大逆転勝利や意外な勝ち方など、予想外のドラマチックな状況が生まれることも『フォートナイト』の魅力のひとつだと思いますが、記憶に残っているシチュエーションはありますか?

ダルビッシュ:
 子どもと一緒にビクロイをとったのが、2週間くらい前の話なんですけど、建築を積んでいって高い場所で戦っていた人たちを最後に下から撃って、落ちてきたところをサブマシンガンで倒しました。それは気持ちよかったですね。

 ソロで印象的だったのは、前のチャプターでしたね。真下に撃って自分が飛んだり、相手に当てて飛ばしたりできる、ショックウェーブランチャーがあった時期。この武器で相手を飛ばそうとしたら間違えて自分が安全エリアの外に出てしまって。焦って戻ろうとしたら、ちょうどその相手のところまで戻っていって。そのままショットガンで攻撃し、ヘッドショットを決めてビクロイ、っていうことがありました。

 自分のミスが、逆に相手からしたら予想外の動きになって、きれいに決まったのが気持ちよかったですね。狙ってあんなこと、絶対にできないですけど(笑)。

記憶に残っているシチュエーションを話すダルビッシュ選手

──そういう瞬間があると、やめられないわけですね。

ダルビッシュ:
 はい。なくてもぜんぜんやるんですけどね、結局は(笑)。

──残り人数が減っていく終盤戦では、焦らないようにメンタルをコントロールするのも重要だと思います。ダルビッシュさんは野球の試合においてピンチでも動じないですが、『フォートナイト』のピンチや終盤戦のメンタルコントロールにおいて、共通点はありますか?

ダルビッシュ:
 『フォートナイト』のほうがはるかにあたふたしますね。野球ではそこまでパニックになることはないけど、『フォートナイト』ではエリアがどんどん狭くなっていって、回復もない状態で、あとひとり……となると、とても平常心ではいられない。ああいうゲームのプロの方たちのメンタル、冷静さっていうのはすごいと思います。

──公式ワールドカップでは、賞金総額は3000万ドル(約34億円)ということで、そういった大きな大会ではさらにプレッシャーが跳ね上がるわけですもんね。

ダルビッシュ:
 もう格が違いますよ、ああいうステージで戦う人たちは。本当にすごいです。

──シーズンやチャプターによってアイテムもどんどん変化していきますが、これまでとくに好んで使っていた武器はありますか?

ダルビッシュ:
 チャプター3はサブマシンガンがいちばん強い環境なので、よく使います。過去であれば、1撃のダメージ量が大きいポンプショットガン。射程が短くて連射速度が速いタクティカルショットガンは、途中で紫(エピック)金(レジェンド)が出たときに、より好きになりましたね。

 ポンプショットガンに比べてタクティカルショットガンは当たる範囲が少し広いので、いまよりもっとエイムの精度が悪かった時期にすごく助けられました。

──上達している実感があるんですね。

ダルビッシュ:
 いや〜……昔に比べたらましになったとは思いますけど、そんなに変わらないです。

 あとはブームスナイパーライフルもすごく好きでしたね。スナイパー武器なんですけど、弾を撃つと時限爆弾が相手にくっついて、時間差で爆発するんです。建築にくっつけて爆破させたりと、範囲攻撃にも使える。そのウザさがいいんです。自分がやられたらすごく嫌なんですけど(笑)。

ブームスナイパーライフルがお気に入りのダルビッシュ選手

──コスチュームでお気に入りのバンドルはありますか?

ダルビッシュ:
 とくにお気に入りはないんですけど……。2〜3年前に、PS4の購入特典でもらえたバンドルがあって。サングラスをかけて青い軍服を着ている……えーと、なんだっけ? あ、ロイヤルボンバーだ。最近はロイヤルボンバーをよく使ってますね。見た目もすごく好きで、YouTuberのちょめさんが使っていて印象に残っていました。これを使っている人をあまり見かけないっていうのも、使っている理由のひとつです。

──よく観る配信者の影響もありますか?

ダルビッシュ:
 それもありますね。スパガ / Supagaさんが使っていたスキン「コードネームE.L.F(エルフ)」も、けっこう好きで着てます。

──デザイン的な要素に加えて、ほかの人とかぶらないことを重視しているのでしょうか。

ダルビッシュ:
 う〜ん。みんなが使ってるスキンを使うこともあるし、そのときの気分です。そこまでこだわりはないです。ただ、怖い系のスキンは苦手ですね。

──……もしかしてダルビッシュさんは、あまりファッションに興味がない?

ダルビッシュ:
 ちょうど今日も妻から「あなたは外に行く用のズボンが1枚しかないね」と呆れられたくらいなので(笑)。ファッションに関しては、そのとおりです。

妻からファッションについて呆れられるダルビッシュ選手

──なるほど(笑)。でも、キャップに関してはつねに違うものを被っていらっしゃいますよね?

ダルビッシュ:
 帽子はたくさんありますね。ピッチングのときにも使うので。いま被っているものも、投げるときに使っています。

ラッパーのトラビス・スコットさんのサウンドウェーブはカッコよかった

 
──『フォートナイト』ではコラボ企画として有名アーティストがゲーム内でライブを行うサウンドウェーブ【※】というイベントもありますが、参加したことはありますか?

※サウンドウェーブ(SOUNDWAVE):『フォートナイト』内で独特なインタラクティブ体験ができる、世界中のアーティストを紹介する音楽ショーシリーズ。

ダルビッシュ:
 参加してます。いちばん覚えているのは、ラッパーのトラビス・スコットさんが海のところに大きく出てきたイベントです。あれはカッコよかったですね。

 ワンタイムイベントでいえば、チャプター1のシーズン9で巨大モンスターとロボットが戦うイベントが、臨場感があって好きでした。ストーリーとしてはティルテッドタワーなどいろいろな街が壊れて衝撃を受けて、これからどうなるんだろうって楽しみに感じたことを覚えています。

──ワンタイムイベントも満喫されているのですね。

ダルビッシュ:
 そうですね。ワンタイムイベントはYouTuberのみなさんが動画にしているのをよく見ています。うまい人のプレイやシナリオ的な考察も含めて、『フォートナイト』動画は全部好きで、毎日なにかしら見ています。

──最近よくご覧になっているチャンネルや配信者は?

ダルビッシュ:
 観ているのは日本の配信者さんたちで、ネフライトさんの動画はずっと観ていますし、あとはくらなさんうゅりるさん。最近よく観るのは、おれんじ君っていうおもしろ系の企画をやる方。挙げるとキリがないくらい、本当にいろいろな人の動画を観ています。

いろんな配信を視聴するダルビッシュ選手

──ちなみにお笑い芸人の小籔千豊さんも『フォートナイト』に熱中されているのですが、ご存じですか?

ダルビッシュ:
 「フォートナイト下手くそおじさん」【※】という名前でYouTubeをやっていますよね。どのくらいうまくなってるんだろうと思って、動画を確認したりしています。

※フォートナイト下手くそおじさん:吉本興業所属のお笑い芸人、小籔千豊が運営するYouTubeチャンネルの名称。息子さんに誘われたことがきっかけで『フォートナイト』のプレイを始める。当初は仕事を理由にプレイを断っていたものの、息子さんに根気強く誘われてプレイを続けていくうちにだんだんとおもしろくなり、2019年6月ごろには自分用のNintendo Switchを購入。その後、YouTubeチャンネルを開設するにあたり、上達のために『フォートナイト』の配信をスタートさせた。

──ダルビッシュさんから見て、小藪さんの実力のほどは?

ダルビッシュ:
 すごいですよ。年齢も僕より上で、始めたのも遅いのに、プレイ内容はすごくうまいと思います。

──小籔さんは『フォートナイト』の親子大会を主催しているのですが、ダルビッシュさんも親子で大会に出たり、大会のアンバサダーをやったりという可能性はないのでしょうか。『プロスピA』で大会をプロデュースするなどコラボをしているのと同様に。

ダルビッシュ:
 恐れ多くてできないです(笑)。『プロスピA』は題材が野球で自分のフィールドですけど、『フォートナイト』でそれをやるのは、(他の人からみて)意味がわからないと思います。

──先日の「プロスピA」に関するインタビューでも、いちユーザーとして、詳しくない人がよくわからないまま形だけのコラボをするのは良くないと語られていましたね。

ダルビッシュ:
 そうですね。これまでに『フォートナイト』の大会に誘っていただくこともあったんですけど、時差の関係で参加できず、大会を見て楽しんでいましたね。

──では今後大会に参加する可能性もある?

ダルビッシュ:
 う〜ん。でも誰かといっしょにやるのが苦手なので。あと僕の予定が変わってたとえばドタキャンになってしまったら、いろいろな方に迷惑がかかりますよね。そういうことを考え始めると、プレッシャーに押しつぶされそうになってメンタルがやられちゃうので。それはやめておこうかなっていう。

──なるほど……。ちなみに公式大会のワールドカップの模様などはご覧になっていますか?

ダルビッシュ:
 YouTubeでハイライトをまとめたクリップがありますよね。誰々がこんなすごいプレイをしたとか、最後の5分はこんな感じだったという動画は観ています。

 ただ、あのくらいのレベルになると、最後のほうは同じエリアに何十人もいるっていうわけがわからない状態になるじゃないですか(笑)。ああいうのを、「すごいな〜」と思って視聴してます。

公式大会を視聴するダルビッシュ選手

──ダルビッシュさんがストリーマー部門で出場したらとても盛り上がると思うのですが。

ダルビッシュ:
 いや、僕なんかが出るのは想像するだけで申し訳ないです(笑)。出場するしないはともかく、とにかく実力を磨いておこうかと思います。

『フォートナイト』に対してはまったく文句がない

──『フォートナイト』はエモートも魅力のひとつですが、お気に入りのエモートはありますか?

ダルビッシュ:
 名前を覚えていないのですが、いろいろと好きなものはあります。ただ、エモートするタイミングによっては煽り行為にもなってしまうし、気を使うのであまりやらないようにしています。待機島ではやりますけど

『フォートナイト』お気に入りのエモート

──こんなエモートや武器、バンドルがあったらいいなど、『フォートナイト』への要望などはありますか?

ダルビッシュ:
 正直、まったく文句がないんですよ。バンドルエモートもだいたい買っているし、どんどん新しいものが出てくるので楽しいし、すでに十分じゃないかと思います。ユーザーのなかにはけっこう文句を言う人がいて、そういう声を聞くとイライラしてしまいますね。

──べた褒めですね。開発者たちにとって最高の褒め言葉だと思います。

ダルビッシュ:
 べた褒めですかね。正直に思ったことを言ってるだけなんです。『フォートナイト』には苦しいときに助けてもらったという感謝が自分のなかでは大きいので、自分が元気になってちょっとうまくなったらいろいろと言い出すのか……? という気持ちもどこかであるのかな。

『フォートナイト』に救われたダルビッシュ選手

──『フォートナイト』に救われたとのことで、もしこのゲームに出会わなかったら、どうなっていたと思いますか?

ダルビッシュ:
 もし出会っていなかったら、まずYouTubeで動画をここまでアップすることもなかったし、ゲームチャンネルを開設するなんてもっとなかったはずです。

 ゲームチャンネルで『プロスピA』の動画をアップしてコロナ禍でバズったあと、KONAMIさんからお仕事をもらって「ダルビッシュセレクション」で新たに登場する選手や自分のデータをカスタマイズする……。ああいうことは『フォートナイト』をやっていなかったら、絶対に実現しなかったです。

 なぜかというと、『フォートナイト』を始めたことで関連する動画をたくさん観て、人気を保てる人とすぐに落ちてしまう人の違いを分析していたんですね。

 うまくいくためにはこうすればいいのか、逆にこうしたらダメか……と、どんどん自分のなかでやるべきことがわかっていったことで、自分がYouTubeを始めるうえで活かすことができた。あの体験がいまの状況につながっていると思っています。

『フォートナイト』がYoutubeにも役立っているダルビッシュ選手

──大げさではなく、ダルビッシュさんの人生を変えた、『フォートナイト』はダルビッシュさんにとって本当に大切なゲームというわけですね。

ダルビッシュ:
 そうですね。『フォートナイト』のプレイがひとりでホッとできる大切な時間だということは、毎日のように感じています。最初はしかりましたけど、隠れてこっそりやっていた息子も、いいタイミングで『フォートナイト』をプレイしてくれたのかもしれません。(了)


 『フォートナイト』がダルビッシュ選手の人生を変えた。

 これが虚構でも誇張でもないということが今回のインタビューで伝わったことだろう。メディアを通したダルビッシュ氏の舌鋒鋭い様子や、マウンドでの支配的なパフォーマンスしか知らなかった方にとっては、意外な一面だったはずだ。

 取材中、忘れてしまったアイテム名をスマホで調べながら「あ、いまのこの時間は取材時間にカウントしなくて大丈夫ですから」と取材陣を気遣い、人の名前を挙げるときはつねに「〇〇な方」「〇〇さん」と丁寧な言葉づかいを心がけるダルビッシュ選手の姿が印象的であった。

 自身の意見を表明する際には誰にも忖度をせず、ある意味ではつねにマジレス。そんな様子から、ある意味でとっつきづらく“強い”人物だという印象を持たれがちだが、いざ対面してみれば、とても礼儀正しく、屈託のない笑顔を見せる人物なのである。

 トップアスリートであり、ゲーマーにとっては縁遠い存在に感じられたダルビッシュ選手がゲームメディアに出ることを不思議に思った読者も、読み終わってみれば大いに親近感が湧いたはずだ。

 仕事や学業に集中しすぎてメンタルが落ち込んでしまったり、自分ではどうにもならない状況になってストレスが溜まっているときに、ゲームを楽しむことでリラックスできる。ゲームの仮想世界が心を癒し、明日の活力になる。これは、ゲームがエンターテインメントとして、その価値を最大限に発揮した瞬間なのではないだろうか。超一流のアスリートを救った『フォートナイト』。ゲームが人を救う。なんとすばらしいことなのだろう。ダルビッシュ選手の野球での活躍と、ゲーム実況者としての活躍に、ゲーマーとしては否が応でも期待せずにはいられない。

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ライター
毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。意外なテーマをかけ合わせた企画とインタビューが得意。守備範囲は政治・社会からアイドル、スポーツ、お笑いなどエンタメまで。30歳を超えてなお、相変わらず「マリオ」「ドラクエ」「パワプロ」「スパロボ」「ロックマン」の最新作をプレイしている現状に、20年前から精神年齢がまったく変わっていないことを痛感している。
Twitter:@mori_yusuke
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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