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もしあのころにこのクオリティーの『スペースハリアー』が発売されていたら……。セガ・奥成洋輔氏にプラチナゲームズ・ 神谷英樹氏が聞く『メガドライブミニ2』に込められたこだわりとは?

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開発チームからの熱望で産まれたまさかの完全新作『SEGA Q』

──もうひとつ、タイトルについてお聞きしたかったのは『MEGA Q』のセガ版こと『SEGA Q』についてです。あの問題の作成は、どのような形で進んでいったのでしょうか?

奥成氏:
 これに関しては、まずひとつ目のメガドライブミニのとき、宮崎と一緒に『MEGA Q』をコンバートしたんですね。もともと1993年のソフトだから、この問題がいまの時代的にOKかとか、倫理的に大丈夫かとか、いろいろとチェックすべき事柄があって、いくつかの問題を直してきたんですよ。

 その中で、「仮に時間があれば、全問題を変えることもできるよな」と宮崎が考えまして。それでメガドライブミニ2を立ち上げるにあたって宮崎から「試してみたいんだけど」と。「問題はどうするんですか?」 と聞いたら「俺が考える」と言うんですね(笑)。
 まあ僕も500問とか新規で作れれば、一応クイズゲームとしては成り立つなと思いまして、エムツーさんに相談したところ「できます」と言ってくださいました。

 それで、問題を作るためのエクセルのツール、「ここに問題と解答を全部入れてくれれば、あとは流し込むだけでできます」というものをエムツーさんが作ってくださって。ただ、問題を変えるだけでは面白くないのでエムツーさんと相談しつつ「司会のセリフは変えられますか?」とか「回答者の顔は変えられますか?」とか、いろいろやりたいことの重要度と難度を調べて、ここまでならできそうだ、というのを解析してもらいました。

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『パーティークイズMEGA Q 2022』

──なるほど、もともとは『MEGA Q』調整用の手続きだったわけですね。

奥成氏:
 その中でエムツーさんから「ジャンルも変えられそうなので、セガの問題とか作ったらどうでしょう?」という話が出たんです。宮崎に伝えてみると「問題は俺が全部考えるから」という話になり。
 宮崎は2022年の10月で定年退職を迎えるんですよ。「最後に1本作りたいんだな」って察知して、任せようと決めました。そうしたらエムツーさん側が「オレたちもなんかやりたいなあ」みたいに不服そうにしているので、じゃあもう1本、オレたち版を作っちゃおうか、と作ったのが『SEGA Q』です。

 それで、僕が仕様周りを切りつつみんなで問題を共有して少しずつ増やしていきました。2本同じクイズゲームが入っているのにその後も司会とか出演者のセリフが『MEGA Q』と一緒じゃつまらないからといじって、背景も『SEGA Q』専用のものに書き換えて、ジャンルも作って、問題も気がついたら2000問くらい集まって……という感じでした。半分くらいは僕が書いた問題だったんですけどね(笑)。

 回答者の顔を変えるのは時間が足りなかったのでできなかったんですけど、司会者はエムツーさんからの提案もあって光吉【※】に変えました。じつは『MEGA Q』のときに光吉に声を入れてもらおうと思いまして、音声を収録していたんですね。その際「メガ!」じゃなくて「セガ!」と言ってもらったバージョンも用意していたので、そちらを使っています。

※ セガの光吉猛修氏。『バーチャファイター』シリーズで「影丸」を演じるなど声優としても活躍している。

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『パーティークイズSEGA Q』

神谷氏:
 もうゲームデザイナーの領域に足を突っ込んでいますよね。プロデューサーじゃない、作ってるじゃんって(笑)。

奥成氏:
 僕は、もともとセガにはプランナーで入っているんですよ。最初は『ソニック』のキャラクターデザインをやられた大島直人さんが考案された格闘ゲームのプロジェクトに参加していたんですが、開発中止になってしまったんです。まあそのおかげで『NiGHTS』が生まれたんですけどね……。

 その後「奥成、お前は昔、徳間書店で雑誌を作ってたんだよな?」と言われて、セガサターンの雑誌向けの情報をどのタイミングで何を発表するかを決めていく、開発部署に寄り添ったパブリシティの仕事をやってました。最初はサターンのローンチの時だけという約束で「これが終わったら開発に戻してくださいよ」と伝えたら「わかった!」と言ってくれたんですけど、それもウソで。そのままセガサターンが終わるまでずっとその仕事を続けていました(笑)。

──前にもおっしゃっていましたね。

奥成氏:
 そんなことがあったので、当初はプランナーで入ったんですが実際にやっていたのは半年くらいかな。ただ、そういうことをやってきた経験は、今の仕事に役立っています。すべての開発チームを横断して仕事をしていたので、どのプロジェクトに誰がいて、何をしていたかというのをおおよそ把握できているんですね。

 普通、ひとつのプロジェクトに入るとその外のことはわからなくなってしまうじゃないですか。でも僕は新人のころからいろいろなプロジェクトを見て回っていたので、この話はこの人に聞けばいいとか、この人は前に何をやっていた人だ、というのをぜんぶ知ることができたわけです。

 会社内の交番みたいな立ち位置ですよね、「このゲーム作った人はどこにいますか?」みたいな(笑)。「資料を見ればわかるでしょ?」とも言うんですけど「奥成さんに聞いたほうが早いから」って。そんな仕事を十何年間続けてきました。

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第1弾「メガドライブミニ」よりもディープになった「メガドライブミニ2」

──あえて触れさせていただきますが、『ベヨネッタ3』【※】とメガドライブミニ2の発売時期が被っていますよね。

※『ベヨネッタ3』:プラチナゲームズが開発を担当し、任天堂より2022年10月28日に発売予定のNintendo Switch用アクションゲーム。神谷さんはスーパーバイジングディレクターを務めている。

・公式サイト
https://www.nintendo.co.jp/switch/axb7a/index.html

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(画像はニンテンドーeショップ『ベヨネッタ3』販売ページより)

神谷氏:
 いやー、だからね。Twitterで『ベヨネッタ3』を買いたいんだけどレジに持っていくのが恥ずかしい……みたいなツイートを見つけて、だったらメガドライブミニ2の下に隠して買えばいいよ、って(笑)。でもメガドライブミニ2って実際に店舗に並びます? 予約とかでなくなっちゃってる? みたいな反応が多くて。

奥成氏:
 並びますよ(笑)。ECで残ってなくても、お店に行けばまだまだ売っているところはあると思います。

神谷氏:
 こういうの、なかなか継続的に再生産してというのは難しいんじゃないかなと思っていまして。僕もふくめて、欲しがるユーザーって濃い人間が集中しているので、求める人には届いてほしいな……と思います。「サイバースティック」も品薄ですよね?

奥成氏:
 いい質問です。サイバースティックの生産にあたって、「このくらいいけますよ」というのを前もって伝えたんですけど、さすがにその数よりは少な目に生産したんですね。そうしたら予想以上の好評で、もう1ヵ月くらい前から品薄になっていたのですが、このたびめでたく増産が決まりました

 年内の納品を目指して予約を再開中なので、先にメガドライブミニ2を遊んでいただいて、「やっぱり『ナイト・ストライカー』や『スペースハリアーII』をサイバースティックでやりたい」と思われた方はお店に確認していただくと良いかなと思います。

神谷氏:
 おー! よかったよかった。こんなこと言ったら失礼なんですが、予約で店頭からなくなるほど売れるとは思っていなかったというか(笑)。あとからみんなが「どこにもない!」と騒ぎ始めたので、自分もちゃんと予約したかどうか心配になって確認までしたんですよ。ちゃんと予約済みで胸をなでおろしました。

奥成氏:
 (笑)。サイバースティック発表の段階では『アフターバーナーⅡ』と『ナイトストライカー』、『スターブレード』の3本だけでしたからね……。よくあのタイミングで企画に乗ってくださったな、と。アーリーアダプターの方々にはどれだけお礼を言っても足りませんね。

 神谷さんの「うん、やっぱり『スペースハリアー』だよな」というツイートを信じて「そうか、セガは『スペースハリアー』を遊べるようにしているんだ」と思ってくれた方も数百人くらいはいると思うので。

神谷氏:
 いやいやいや(笑)。

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──せっかくの機会ですので、神谷さんから奥成さんへ何かお聞きしてみたいことはありますか?

神谷氏:
 となるとやっぱり、まずは今後の展開は……的なお話ですかね。

奥成氏:
 「今後もいろいろ準備中です。ご期待ください」としか言えないんですが……中期で考えるからにはこれで終わらせるつもりはないと思っています。

神谷氏:
 次を望むユーザーはとても多いですもんね。僕としてはセガ・マークIIIミニをやってほしいかな。今日もマークⅢのTシャツで臨んでいますし(笑)。FMサウンドユニットだったり、ラピッドファイアだったり、あとから追加できるデコレーションキット的なものも期待できますし。国内版はマークⅢミニで、海外版はマスターシステムミニで。そうなると国内版マスターシステムミニもいるか……。あ、これはファンとして勝手に言っているだけですよ? 夢は広がるなあって。

奥成氏:
 これはことあるごとに言っているんですけど、セガ・マークIIIは僕が最初に買ったハードで、一番好きなセガハードなんですよ。

神谷氏:
 僕は一番最初に手に入れたハードはファミコンなんですが、その直後に買ったマークIIIもすごく思い出深くて。忘れもしない、僕はそのとき受験の時期だったんですね。
 で、僕の叔父が遊びに来て「勉強に根を詰め過ぎるのも良くないから、息抜きしてこい」って2万円を渡してくれたんです。で、僕はそのお金を握りしめて速攻でゲームショップに向かい、マークIIIと『スペースハリアー』を買ってきて、親父にしこたま怒られるという(笑)。

 受験が終わるまでは取り上げられてしまったんですが、なんとか受験に合格して、ようやく返してもらって遊んだ『スペースハリアー』が、ファミコンでは出ない色味だったり、大きなキャラクターだったりと、マークIIIじゃないと味わえない感動が詰まっていて。本当に思い入れの深いハードです。

──あと、改めてメガドライブミニ2の収録タイトルラインナップをご覧になっていかがでしたか? 『アウトラン』も収録されていますし、神谷さんの琴線に触れる作品も多かったのではないでしょうか。

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『アウトラン』(画像はメガドライブミニ2公式サイト『アウトラン』より)

神谷氏:
 正直『アフターバーナー』と『アウトラン』は、もちろんどうにか入れてほしいと熱望していたんですが、まさか本当に入るとは思っていなくて……その、ライセンス的な問題があるんじゃないかと。いろいろとデリケートなタイトルじゃないですか。

 僕自身がアーケード志向の人間なので、それらが入らないとなると「メガドライブミニ2はあんまりかな」と思っていたんですね。もちろん買いはするんですけど、思い入れはそこまでになっちゃうかなって。それが予想に反して『アフターバーナー』、『アウトラン』、さらに『スペースハリアー』に『ファンタジーゾーン』まで入っているじゃないですか。もう、なんか僕向けに作られた商品なんじゃないかってくらい。

 前回のメガドライブミニの選考でこぼれてしまった、ほかのユーザーが望む作品もまだまだたくさんあるだろうし、そうなると僕が希望するようなタイトルは難しいかな? とも思っていましたから、「よくぞ入ってくれた」と思いました。

奥成氏:
 あちこちで話しているのですが、前回のメガドライブミニは「キレイなメガドライブミニ」なんですよね。ターゲットをコアなメガドライブユーザーに絞らず、ハードの存在くらいは知っている人とか、友達が持っていたとか、そういう人が触れやすいラインナップをそろえるように意識していました。だからカプコンさんの『ロックマンメガワールド』『ストリートファイターII』みたいなところも、知名度を加味して押さえている感じです。

 もちろんマニアックなタイトルも散りばめてはいるんですけど、取っつきの良さそうな作品や、完成度に自信のあるゲームをそろえたのが第1弾のメガドライブミニでした。逆に言うと、当時のメガドライブをディープにやり込んでいた人にとっては「キレイすぎる」。そう言われるかもな、くらいの覚悟をもって出していたんです。

 話題に挙がっていた『アフターバーナー』や『アウトラン』を外したのも、もちろんライセンス的な都合もあるんですが、メガドライブならではの要素を持つ作品を優先したという背景もあるんですね。たとえば『スラップファイト』ならアレンジモードが遊べる、『スノーブラザーズ』の後半20面はメガドライブじゃないと遊べない、みたいな。

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──「メガドライブ」の入り口という位置づけだったんですね。

奥成氏:
 その一方で、メガドライブミニ2は当時のメガドライブをやり込んだ人が「面白い」と語れるような、多少とっつきの悪い、ハードルが高いゲームも入れています。アーケード版から比較すればダウンサイジングされてしまっているけれど、それでもやっぱり思い出に残るタイトルとかをチョイスしたんですね。それもあって、今回僕が考えたキャッチコピーが「さらに小さく、より深く。」というものなんです。「ディープなメガドライブ」にしました、というね。

 それができたのは、今回はそもそも販売台数が前回よりも少ないという点もあります。普通の商品は前回10売れたら、次は20売りたい、となるじゃないですか。これはもう、10どころか7も8もありませんみたいな商品なので(笑)。

 ただ、ターゲット層を思いきり絞り込んだ結果、そういったタイトルも入れられるようになりました。だからこそ『ソーサリアン』『ポピュラス』みたいな、知らない人が触ったら戸惑うような作品もくわえられたんです。

神谷氏:
 確かに『ソーサリアン』をいまの時代に触って遊べるかと言われたら、多くの人がはじかれるでしょうね……。キャラクターが年を取って死んだりとか、魔法を使うにも要素を掛け合わせなきゃいけないとか、敷居は高いですから。

奥成氏:
 そうなんです。ただそういうゲームでも、60作品という大ボリュームを収録するからこそ入れることができました。普通の人って、60本もゲームを持っていないし、遊ばないんですよ。当時メガドライブを遊んでいた人でも、せいぜい10本とか20本とかというレベルだと思うんですね。だから、60本全部を遊んでいただく必要はまったくなくて、最低3本くらいおもしろいゲーム、ほしいゲームがあればもとはとれるんじゃないでしょうか。

 『三輪サンちゃん』とか『スーパー・ロコモーティブ』も、40本のうちの1本がこういう作品だったら「こんなタイトルを入れやがって」と怒られてしまうと思います。でも、60本収録していたら趣味に走ったようなゲームの存在も許してもらえるのかな、と。『SEGA Q』なんてその極みみたいな存在ですよね。

 なかには「メガドライブミニ2を買っても3本くらいしかやらないなあ」といったツイートをされている方もいるのですが、「それでいいんですよ」と思っています。「サイバースティック対応作品だけでももとは取れると思いますよ」と。あと57本あるんだから、暇なときにちょっと気が向いたら遊んでみて、と。それで意外と面白かったら素敵じゃないですか。

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『スーパー・ロコモーティブ』

──話を聞けば聞くほど、奥成さんがいてこそのラインナップとクオリティーですよね。

神谷氏:
 僕はつねづねゲームメーカーは自社のタイトルをアーカイブして、きちんと後世に残してほしいと話しているんですね。「こういうゲームがあったんだ」と知る機会や、誰かがどこかで遊ぶ機会というものを残し続けることに意義があると思っています。だからこそ、メガドライブミニ2のようなふんだんにクラシックタイトルを収めてくださったハードの存在は本当にありがたいなと。

 あとは今回、現代の技術で『スペースハリアー』を移植したり、『スペースハリアーII』のアレンジをやったということは、新旧の歩みが結びついたというか。いま、僕がやっているような普通のゲーム作りではなかなか現れないような現象が生まれているわけなので、それはじつに意味あることなんじゃないかなと思います。

奥成氏:
 僕もチャンスがあればまだまだ何かを出したいと思っています。エムツーさんも同じような気概でいてくれてるんじゃないかなと思うんですけど。

神谷氏:
 僕はメガドライブミニ2が『スペースハリアー』を遊ぶためだけのものだったとしても買いますよ。『アフターバーナー』は別で売ります、と言われたらそっちも買います。4万円、5万円くらいまでは出しますね。そのくらい価値あるものだと思っていますから。だから奥成さん、絶対に死なないでくださいね(笑)。ミニシリーズの続きを待っています。

奥成氏:
 ありがとうございます(笑)。

──神谷さんから熱いラブコールをいただいたところで、終了とさせていただければと思います。本日はありがとうございました。(了)

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 神は細部に宿る。

 これは、今回の対談を通じて最初に感じた感想である。一般的に「細かな部分までこだわり抜くことで、全体の完成度が高まる」と解釈されている格言だが、メガドライブミニ2ほど、この言葉が当てはまるものはない。

 とくにすばらしいのは、神谷氏が語っていたように「もしこの『スペースハリアー』が当時メガドライブで発売されていたら……」とプレイヤーを夢の世界へと誘い、受け手側に余白、余韻を与えていることにある。

 ただ昔のゲームを多数収録して終わり、ではなく、メガドライブというハードを、あのときの時代、あのときの感情、あのときのドラマまでを含めて、現代に届ける意味を持たせている。これはひとえに、メガドライブミニ2開発スタッフたちの狂気的なまでの熱意と愛情、そして「あのころのゲームをいまの時代に伝える」という確固たる意志があったからこそ実現できたことだ。

 そんな熱意の結晶であるメガドライブミニ2を見ていると、神谷氏が語っていた「クラシックゲームのアーカイブ化」に価値を見出さずにはいられない。数々の名作があったこと、それに携わったクリエイターがいたこと。ミニシリーズはそういった歴史的価値をいまに伝えるハードなのだ。

 メガドライブミニ2は10月27日に発売を迎えた。もしECサイトで売り切れていても、店舗には在庫が残っている場合があるとのことなので、今回の対談記事で興味を持たれた方はぜひ探してみていただきたい。また、奥成氏の話す「今後の展開」にも強く注目していきたいところだ。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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