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“ガンダムを知らない人が楽しめる”ことを目指すFPS『GUNDAM EVOLUTION』。そのゲーム性には「強制大縄跳びの恐怖を和らげたい」という“祈り”も込められていた…!?

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「開発チームに相当詳しい人がいるだろう」→やっぱりいた

──ゲームをプレイしていて「これは開発チームに相当なガンダム好きがいるな」と感じる節が多々あったんです。チーム内に専任の設定考証のような方がおられるんでしょうか。

丸山氏:
 専任のスタッフがいるというわけではないですね。ただ、我々もかなり長い期間、ガンダムのゲームタイトルを作らせていただいてますし……。

──結論から述べるなら、“かなり”詳しいスタッフの方がおられると。

丸山氏:
 ですね。もちろん、サンライズさんにも最終的な監修を入れていただいています。なので、専任のスタッフがすべてチェックするといったような制作方法ではないです。

穂垣氏:
 前置きしておくと、スタッフ全員が詳しいというわけではないです。たとえば、ユニットのコンセプトを考える時は「こういう遊び方をできる機体を出したいね」と詳しいメンバーに伝える。

 そうするとガンダムに詳しいスタッフに決めた遊びが出来そうな機体をピックアップしてもらい、案で出た機体の設定を見て、コンセプトに沿うかどうかをチェックします。「この機体にこういう動きをさせたらどう思う?」というようなイメージのヒアリングも行っています。

──原作ファンからすると、各機体の性質を踏まえた上でも、セレクトがマニアックだなと感じる人が多いのではないかなと。選定のプロセスはどのようなものなのでしょうか。

『GUNDAM EVOLUTION』登場機体
かなりインパクトのあるラインナップ

丸山氏:
 無数の機体があるシリーズなので、すべてを網羅することは難しいし、ゲーム的に機体数はそれほど増えないことも理解していました。その上で、どうしても人気となるラインナップで揃えてしまうと“主人公機”や“ライバル機”になりがちなんです。武装も似ていたり、外観も近くなってしまったりと、チョイスの幅がスタートの段階で決まってしまう。

 なので「どのようにプレイしてもらうか」「こういう動きをしたら戦場に変化をもたらせるのではないか」という点からセレクトを行っています。「〇〇にこういう味をつけよう」ではなく「こういう味にしたいから〇〇にしよう」といった感じです。

──とはいえ、さすがに初代ガンダム(RX-78-2)は最初からいたんじゃないかなぁ~と思いますが、どうでしょう(笑)。

丸山氏:
 さすがにいましたね(笑)。ファーストガンダムを登場させないタイトルを僕らも作りたいというわけではないですし。

『GUNDAM EVOLUTION』RX-78 ガンダム

──ユニットのセレクトについて、もう少し踏み込んだ質問をさせていただきたいです。「マシンガンを持っている&戦闘能力を強化するシステムを搭載している機体枠」で、ブルーディスティニー1号機ではなく、ペイルライダーをセレクトした理由を教えていただけないでしょうか。

『GUNDAM EVOLUTION』ペイルライダー

丸山氏:
 理由としては色々あるんですけども、大きなポイントとしては「外観」と「設定の豊富さ」ですね。作品を知らないという方がパッと見た時に、とくに1号機は“青いジム”に見えてしまうというのが懸念点でした。

──言われてみれば確かに。自分も好きだからこそ、バリエーションの見分けがつきますが、そうでなかったら“なんか青いジム”に見えていたと思います。

丸山氏:
 今はスキンの一つとして空間戦仕様をリリースしていたりと、様々な面で本作にマッチする機体としてセレクトしたんです。もちろん開発段階ではブルーディスティニーも候補に挙がっていて、「どちらかを入れたらどちらかは入れられなくなる」という非常に悩ましい選択の上で、ペイルライダーになった経緯があります。

『GUNDAM EVOLUTION』ペイルライダー

──あと本作には、ガンダムゲームには珍しい「武器のリロードモーション」がありますよね。今までは一部の作品を除いて「リロードするモーション」はほぼなくて、リロードタイムのカウントが進んでいって、終わると再度射撃可能になる……というようなシステムが多かったと思うんですが、リロードモーションを作成した経緯をお聞かせ願えないでしょうか。

丸山氏:
 設定があるものはなるべく再現するようなモーションを作成しているのですが、設定がないものだと開発チームでラフを作って、サンライズさんに確認していただいています。その中で、弾数だったりのゲームバランスとなる要素は、原作再現よりゲーム性を重視しています。あくまでゲームオリジナルということで。

『GUNDAM EVOLUTION』リロードモーション
『GUNDAM EVOLUTION』リロードモーション

──サンライズさんの「公式設定ではない」ですけど、「公認は得ている」というような。

丸山氏:
 そうですね。実装されるものは、基本的にすべて確認を取っていただいています。

穂垣氏:
 FPSゲームというのが前提にあるので、“画面が何も動かず、撃てない”というのは違和感があるじゃないですか。なので、プレイヤーの方にしっかりと動きを見せて、“なぜ撃てないのか”を確認してもらう必要があるんです。

 設定にリロード機構があれば、それを基にラフを作成してお渡しできるんですが、そういう設定だったり描写がないものが多くてですね……。

丸山氏:
 まずは設定を探すことから始めるんですが、探してもない場合が多いという(笑)。他作品と差別化するがゆえに苦労する部分もあって、分からないような部分で時間が掛かっていたりします。

穂垣氏:
 モーション担当にはかなり無茶を言って実装してもらっています(笑)。

──あのリロードモーションがとてつもない苦労の上で作られていると考えると感慨深いですね……。

丸山氏:
 そこに言及いただいたのは初めてなので良かったです(笑)。知らないところは調べるところからですけど、ガンダムの世界は本当に深いので。そこは時間をかけてやらせていただいています。

──ほかにも苦労などはありましたでしょうか。

丸山氏:
 機体のモデルって様々なゲームであったり立体物であったり、常にリビルドされているんです。なので、たとえば「RX-78-2 ガンダム」であって「理想とするRX-78-2 ガンダム」は各々で変わってくる

 一つのゲームに登場させる以上、全体のトーンを合わせなくてはならないですし、そこは非常に時間を掛けて取り組んだ部分です。機体の色味も全体的に落としているんですが、これもUIやエフェクトとの、視認性のバランスを研究した結果になっています。

──ありがとうございます。「またその話か」となることは承知の上での質問ですが、おまけで「海ヘビ枠」でハンブラビではなく、マラサイ(UC)が採用された経緯をお聞かせ願えないでしょうか(笑)。

丸山氏:
 (苦笑いしつつ)ハンブラビだと変形させる必要があるんです。同じく変形要素を持つアッシマーと被ってしまう部分があり、結果としてマラサイ(UC)になりました。

『GUNDAM EVOLUTION』マラサイ(UC)

──あー変形か!確かに。いや、なるほど……なるほどなぁ……。

穂垣氏:
 「なんでハンブラビじゃなくてマラサイなんだ」とは言われました(笑)。

丸山氏:
 ゲームオリジナルの武装を含めて、「ファンの方に満足していただきつつ、ゲームから触れていただく方にも満足していただくという両軸でやっている」ということは強調させてください(笑)。

──でも、いいですよね。全然知らない方がマラサイを気になって調べたら「色違くない!?」ってなるという。

丸山氏:
 ネット配信などで作品に触れていただく機会も増えていますし、触れていただければ皆さんの心の中にも“ガンダムに対する思い”みたいなものが芽生えると思うんです。なので、ゲーム内ではあえて、オリジナルのストーリーなどは作っていません。本作を通じて「ガンダムに触れていただく」というのが目標の一つなので。

──ガンダムを知らない層からしたら「どの機体に人気があるか」とかって、そもそも分からないじゃないですか。ファンからしても「やっぱ〇〇は人気高いのかな」というような大まかなものはあったとしても、詳しいことは正直分からない部分ですし。

 その人気も「なんで人気なのか、どういうシチュエーションで人気なのか」という具合に分かれるという。

丸山氏:
 マヒローを知らない方が「この機体はなんだ?」となって、ガンダム』を観ていただくというのも狙いの一つです(笑)。

“ガンダムを知らない人が楽しめる”ことを目指すFPS『GUNDAM EVOLUTION』。そのゲーム性には「強制大縄跳びの恐怖を和らげたい」という“祈り”も込められていた…!?_001
マヒロー

──で、さらに調べて「股間にコクピットがある」ことを知ると(笑)。でも、ゲーム性の観点で「ほしい能力から逆算して機体を出す」っていうのは斬新だなと思います。ある意味で縛りがないというか。

丸山氏:
 他のタイトルだと様々な作品から1機体ずつ出すみたいな方式が主流ですが、本作は意図的にそうしていないんです。なので、シリーズという面で見れば出る機体は偏っていますね。それは今後も続くと思います。

──セレクトへの暗黙の了解じゃないですけど、逆に“のびのび”と作れているということですか?

丸山氏:
 のびのびと作れている……かは微妙ですが(笑)、ゲームプレイの内容を中心に据えている環境です。

──従来の作品でこういったスタイルってあったんでしょうか。

丸山氏:
 多分、まったくないと思います。そういう意味では、サンライズさんに「こういう目的で、こういう層を狙ってやります」というのを前段階から話させていただいているので。

──初期だとNGだったものってあるんでしょうか。

丸山氏:
 武器にオーナメント(チャーム)をつけるとかですかね。「ビーム・ライフルになんか吊り下げられてるけど」で、普通はダメなんです。なんですけど、「FPSゲームとして、このような要素があったほうがプレイヤーの方に喜んでいただけるんです」というのを説明して、ご理解いただきました。

『GUNDAM EVOLUTION』オーメント
『GUNDAM EVOLUTION』オーメント

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ライター
『アマガミ』に脳を破壊された結果、フリーランスライターに。FPSやTPSをメインに遊ぶトリガーハッピーだが、ノベルゲーやレトロゲーも好む雑食ゲーマー。美味しいご飯とお酒もゲームと同じくらい好き。
Twitter:@Shiki_Natsugami
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a
ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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