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『FF16』完成後の開発チームにインタビュー! 同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏から「プレイヤーの操作を予兆して楽曲を展開する」システムまで

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祖堅さんに聞きたい。「インタラクティブミュージック」ってなんなのですか?

──以前のインタビューにて、「今作のボス戦はシーン単位でシーケンスを組み、曲を展開している。この技術は祖堅さんのチームが頑張っている」とお聞きしました。この「バトルのシーン単位でシーケンスを組み、曲を展開する」とは、具体的にどういうことなのでしょう?

祖堅氏:
 今作のバトルコンテンツは、シームレスに状況が大きく変わっていきます。その絶えず変化し続けるバトルコンテンツに対して、ただ1本の曲を流し続けるだけでは、当然ゲーム体験に合わないんです。それに対して「じゃあ違う曲を何曲か用意して、それを切り替えればいいじゃん」という意見もあると思います。

 ただ、『FF16』ではそれよりもテクニカルな要素に挑戦しています。簡単に言うと、「自分のタイミングでゲームをプレイしているのに、気がついたら音楽もそれに合わせて追従し、変調している」ようなバトルBGMに挑戦してみました。これは、世間一般では「インタラクティブミュージック」という言葉で片付けられてしまうものかもしれないんですが……それとはまたちょっと違います。

 昨今のインタラクティブミュージックは、「状況に対して、多段階の異なるアレンジや異なる楽器トラックを用意する」というものが多いです。「この状況だったら、のアレンジを流す、この状況だったらこの楽器を足す」などです。シーケンスをたくさん用意することで、プレイ状況に起伏を持たせるのは、最近で割とよくある手法です。

 僕はこの手法のインタラクティブミュージックはかなり昔から取り入れていました。『FF14』では24人レイドや大規模PvP等に実装していましたが、それより前のゲームにも取り入れていました。

 そして、長年取り入れ続けてきた結果、このインタラクティブミュージックの進化として、多段階のシーケンスをどんどん増やしていく事が本当に効果的かどうかは……と、結構懐疑的に思えるようにもなってきました。確かに、プレイヤーのゲーム体験には寄り添える手法なんですが……。

 たとえば、強大な敵との決戦に入る時、出だしは静かに始まり、バトルが盛り上がるにつれて曲調も多層シーケンスを入れ替えて盛り上げていくと、確かにプレイ体験には従順な音楽なんですが、ゲーム体験としては、何となくぼんやりしちゃうんです。

 逆に、決戦の時は下手に音楽を追従させず、曲の流れを突然変える。「おら、バトルが来たぞ!!」と、音楽で思いっきり伝えるとメチャクチャ盛り上がった状態でゲームプレイができるんです。

 つまり音楽があまりにもプレイヤーに追従しすぎてしまうのも、それはそれで良くない、と感じるようになったのです。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_015

祖堅氏:
 「シーンごとにBGMを完全に途切れさせて、次の曲に移行する」のではなく、1曲の中でバトルの進行に合わせて曲の展開が変わっていくような感じです。

 「プレイヤーにアレンジが変わったなと意識させる体験」ではなくて、「バトルに合わせて1つの曲の中の展開が音楽を破綻させずに変わっていく」ということを手法として取り入れています。

 だから……これは……なんていうシステムなのかは俺もわかんないんですが(笑)。

 「新しいインタラクティブミュージック」って言えばいいのかな。

髙井氏:
 あれはもう「召喚獣合戦をやっている」としか言えない。

 実際、この手法を取り入れているからここまで曲数が膨れ上がっています。
 1体の召喚獣に大体何曲ぐらい作ったんだっけ……?

祖堅氏:
 もう……わかんない!

 昨今のインタラクティブミュージックだと、1つの曲の楽器数を増減させることで、アレンジを変えていったりします。ただ、『FF16』の場合はアレンジなのではなく、「曲の展開」自体が変わるようにしています。単純に曲に足したり引いたりが行われるわけではありません。

 1本の音楽であるにも関わらず、その曲がしっかり次の展開に進みます。曲自体がリアルタイムのゲームプレイについていき、バトルが終わる時も同時にバシッと終わります。

 よく聞いてると「あっ、今曲変えた?」と気付くような違いですね。

髙井氏:
 曲の中にちゃんとのりしろもあって、なおかつバトルに合わせてフェードアウトするように作られています。熱中して遊んでいると全く気付けないけど、曲だけに集中して聞いていると、もしかしたらその曲が切り替わった瞬間がわかるかもしれません。

祖堅氏:
 『FF16』はアクションゲームなので、その「動的なゲームプレイに合わせた曲作り」はめちゃくちゃこだわって作りました。ゲーム体験が盛り上がればいいなぁ!

──お話を聞いている限りだと、ものすごく大変そうな作り方に聞こえます。

祖堅氏:
 いやぁ……やってみたら無茶苦茶大変でした。

 確かに1曲だけ作る方が明らかに楽なんですが……一度この手法に手をつけてしまったので。

 しかも、スタッフの反応も「めちゃくちゃ良いじゃん」という感じでした。正解だったと思うと同時に、「あれ?これあと何体分残ってるんだ……?」と(苦笑)。

髙井氏:
 そして、こっちは「まだ何体も残ってるよ」としか答えられない。

 一度だけ祖堅に「この作り方を全部の召喚獣でやるの?」と聞いたくらいです。
 「これ全部やるの?本当に?」と心配になっていました。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_016

──『FF14』でもボスのフェーズによって楽曲が変わったりしますが、『FF16』はあの形式とは全く別のスタイル……という認識で合っていますかね?

祖堅氏:
 そうですね。『FF14』の履行フェーズによる楽曲の切り替えよりも、よりアクション寄りに楽曲を展開するのが『FF16』です。

前廣氏:
 『FF14』の曲の展開は「CMを挟んだうえでの、前半戦と後半戦」のような感じです。

──まだ『FF16』をプレイされていない読者の方にどこまで伝わるのかはわからないのですが……やはりあの「プレイヤーの入力に合わせて音楽の展開が変わっている」ような感覚はすごかったです。しかも、あの音楽の演出をサラッとやっているような印象を受けたので、本当に驚きました。

祖堅氏:
 いや、サラッとやってるように見えて、超めんどくさかったです。地獄です。

前廣氏:
 でも、プレイヤーのみなさんにはサラッと体験していただく。

祖堅氏:
 やはりゲームなので、音楽も「プレイフィール」が大事です。

 たとえば、敵に攻撃する時にボタンを押したとしても、BGMがガンガン鳴っているとそのボタンを押した感覚や攻撃のSEは聞き取れないので、その入力に合わせてゲーム側でBGMの音量を下げたりします。

 そして、そのボタン入力はいつ何時起こるかわからないので、システム的に「いつBGMを調節すればいいのか」を予兆して、プレイヤーの入力に合わせて音量が変わったりします。こんな感じの「FF16のための独自システム」は……なんかたくさんあります。

「良い意味で疲れる」FF16のゲーム体験、なぜ実現できた?

──実際、『FF16』はバトルシーンが完成してから音楽を作り上げるようなスタイルだったのでしょうか?

祖堅氏:
 今回はゲームが先に用意されていて、そこに音楽をつけていく作り方が多かったですね。

髙井氏:
 今回のような制作方法の場合、やはり「ゲームが完成していて、そこにサウンドをつける」という形が最も理想的です。そしてもちろんそういう形で進めようとしたので、祖堅ちゃんは「基本そう進んでいます」と答えてくれたと思うんですけど……とはいえ、サウンドやSEがついた後に、ゲーム側がガッツリ変わるパターンもあるんです。

 そうなるともう……大喧嘩に(苦笑)。

祖堅氏:
 大喧嘩……しましたね……。

──そうですよね。先ほどから思っていたのですが、その制作方法だと、バトルも音楽もしっかり認識を擦り合わせて作らないと大変なことになりそうです。

髙井氏:
 そうなんです。
 こういう作り方をしてるから、うっかりバトルの尺が変わったりすると……

祖堅氏:
 もう「大事故」ですよね。

一同:
 (笑)。

祖堅氏:
 割と誇張抜きで、全損になります。

 もちろん、バトル制作チームもサウンドチームに気を遣ってくれていたとは思うんですけど……それでも「バトルの尺、変わっちゃいました」という事故は発生しました。そして、実際に尺の変わったバトルをプレイしてみると……音楽がズレています。

 そこで「バトルの尺が10秒早まったから、音楽も10秒早くしてね」とか言われるかもしれないんですけど……音楽ってそんな上手くいかないんですよ!

 「10秒短くする」ということができないのが音楽だから、もう……「どうすんべ!!」と。

髙井氏:
 ただ、ゲーム側も「サウンド調整ができないから、バトルを調整しない」というわけにもいきません。そこが「喧嘩する」ポイントなんです。

祖堅氏:
 あの尺をどうするのかとか、このデータ構造をどうするのかとか……そういうことをずっとやってた感じですよね。

 最初にこの手法を取り入れた時、制作チームの間でも「これは上手くハマったね!一体感があって良いね!」と、良い反響がありました。ただやはり……同時に「で、これ全部作るの?」と思ってしまうくらいの膨大な作業量も生まれました。

 もう……「ヤベえとこに足突っ込んじゃったな」と(笑)。

 でも、人間って一度良いものを味わってしまうと、その味を忘れられなくなるというか……。

前廣氏:
 一度知ったら生活レベル落とせないからね!

祖堅氏:
 もちろん1曲だけで構成されているものもありますが、そういった曲もしっかりゲーム体験に沿った形で作っています。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_017

──さきほど「世間一般のインタラクティブミュージックで片付けられない」とおっしゃっていた中で恐縮なのですが、祖堅さんの中でこの「FF16のインタラクティブミュージック」という手法にはどんなメリットや魅力があると感じますか?

祖堅氏:
 手法やメリットというより、「ゲーム体験が良ければそれでよし」という目標に向かって音楽を作り上げていきました。その最適解が、この手法だった……ということですね。

前廣氏:
 チーム全体が髙井の「とにかくゲームのフィーリング重視という仕切りのもと、ゲーム体験重視で作り上げていきました。シナリオ、曲、バトル……とにかくゲーム全般をプレイフィールに全寄せしています。

 ゲームを遊んでる最中によくあることとして、プレイ中になにかノイズが入ると、一度引いちゃうような感覚があると思うんです。いわゆる「メタ視点」になっちゃうような。『FF16』は、あの現象が起こらないようにするための、最大限の努力を重ねたタイトルです。

──実際に体験会でベネディクタ戦を遊んだ際も、その「ノイズ」が全くないような感覚はありました。バトルと音楽とシナリオがしっかり繋がっていて、とにかく没入感を感じました。「良い意味で疲れる」と言いますか……。やはりお三方から見ても、「ゲーム全体がしっかり繋がっている」手応えなどはありますか?

髙井氏:
 それはもちろんあります。良い感じにゲーム全体が繋がっていると思います。

 たとえば、バトルシーンで主人公がなにか余計な一言を言うだけで「お前、そんなこと言うか……?」と冷めてしまうこともあったりします。ただ『FF16』においては、一切それはないんじゃないかと考えています。

──これくらいの連続感がRPGの基準になっちゃうと、なんか大変なことになりそうな気がします。

前廣氏:
 そうなってくれるくらい、皆さんが楽しんでくださると嬉しいです。ただ、もう一回やるとなると……うーん……と言いたくなってしまうくらい、全力投球で作りましたので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

祖堅氏:
 俺も、次回はちょっと考えさせてほしいです(苦笑)。

髙井氏:
 ちなみに、バトルコンテンツは当初よりだいぶ短く調整していきました。それこそベネディクタ戦は、当初は倍くらいのプレイ時間でした。ただ、通しプレイを繰り返していくと、この連続するゲーム体験を作る中で、「このくらいの時間バトルをしていると、プレイヤーが疲れてしまって緊張感が持たない」ということがわかったんです。

 なので、よりプレイフィールを重視して、バトルコンテンツ全体が当初よりもギュッと凝縮されています。

前廣氏:
 ボス戦に至るまでのステージの長さ、バトルの回数、ベネディクタ戦自体の長さ……そういったところを何度もプレイしながら加味した上で、バトルコンテンツの長さを調節していきました。「体験が気持ちよくなるように、このフェイズごと削っちゃえ!」といったような大幅なカットもあったりしました。

髙井氏:
 そのせいで、開発後半にバトルコンテンツをうっかり短くすると、サウンドチームが泣くという……。

祖堅氏:
 調整される前のバトルコンテンツは、大体ボリュームモリモリで来るんです。そこに対して最初から本気で作ると大事故を起こすから、最初は軽くやっておきつつ……。

 「これは……尺が変わるな!?」みたいな予想をしながら曲を作ってましたね。

一同:
 (笑)。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_018

髙井氏:
 実際に開発側でも、「ここの召喚獣戦、バトル開始からもう45分くらい戦ってるんだけど……絶対プレイヤーの緊張感もたないよね!?」みたいな問題が起きたりしました。そうなると、もうカットする部分はカットせざるを得ません。

 スタッフ全体が、「うおおお、凄いの作るぞ!」という空気で作り上げていたので、もう最初はとにかくボリュームモリモリの状態だったのです。

前廣氏:
 結果的には、連続するプレイの中でも一息つけるようなちょうどいい塩梅が作れたと思います。すごいボス戦があり、ボスを倒してなんとか一息つける……その繰り返しが構築できたのではないかと。

 盛り上がるパートの合間もサブクエストをこなしたり、ゲーム内テキストを読んだり……ゲーム全体で良いリズムできたと思っています。

祖堅氏:
 徐々にバトルコンテンツを膨らませるより、段々シェイプアップしていくパターンの方が多かったよね。まぁ、そのせいでやり直しが多かったんですけど……。

髙井氏:
 申し訳ございません(苦笑)。

──実際、前廣さんの脚本チームと祖堅さんの音楽チームが開発中に意見を交わされることはあるのでしょうか?

祖堅氏:
 ガンガン交わしますね。

前廣氏:
 とりあえず意見を言いに行って、言ったら言い返されて……それを永遠にやってるような感じですね。

祖堅氏:
 細かい尺の調整などの細かいオーダーから、「これは引用元が違う」「もっとこういう曲に変えてくれ」といったような大きいオーダーまで、とにかくバンバンやり取りしてる感じですね。特に「曲の鳴らし始め」などの細かい調整の部分は、前廣が頑張っていた部分だと思います。

米津玄師の主題歌のすごさ、開発陣が語る。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_019
「『FINAL FANTASY XVI』- State of Play 4K」より

──そうでした、先日の「State of Play」でひとつ聞きたいことがあって……。
 これまで公開されていた『FF16』の情報の中で、やっと「街」が出てきていました。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、「あ、よかった。街あるんだ……」と安心しました。

前廣氏:
 そういう意味だと、ちゃんとロールプレイングゲームになっていると思います。

髙井氏:
 もちろん、街もしっかり設定やビジュアルを考えた上で作っています。

 ただ、あの……我々としては、最初から「RPG」だと宣言していたので、「RPGなんだから、そりゃ街あるさ!」と考えていたのです。我々としては「RPGに街がある」のは当たり前の感覚で、今ようやく「街があるかないかで、ここまで不安に思われていた」ということに気づきました。申し訳ありません……。

 普通に広めのフィールドもあるし、街もございます! 楽しめる施設やイベントも多数ありますし、街の人も生活の中で会話をしています。もちろんシナリオ進行に合わせてNPCの会話の内容が変わったり……とにかく、「普通にRPGとして楽しめる街」は点在しています!

 とにかく、キチンとRPGしていますので、どうぞご安心ください。

──どの作品がどうこうという話ではないのですが、人の営みを感じたり休憩できる街があまりないRPGはちょっと疲れてしまう感覚があるんです。だから、あの街を見た時に「あぁ、良かった……『FF16』がちゃんとRPGになってる……」と思いました。

髙井氏:
 もちろん「クライヴの寄るところ」として存在している街もあります。そこでもやっぱり街の人々がその人たちなりに生活している絵を描けていると思っています。当然、その街の人々に大きく紐づいたクエストで、「この街の人はこんな生活をしている」という理解をより深めたりできます。

 そういった「街の楽しみ」は存分に体験できると思っているので、街などの各要素にもご期待ください。

──なにか他に「街っぽいこと」はできたりしますでしょうか?ご飯を食べたりとか。

髙井氏:
 お酒を振る舞ったりできますね。
 あとは、クライヴにお手紙が届いたりもします。

前廣氏:
 買い物もできれば、街の人の悩みだって聞けます。いわゆる「RPGの街」はしっかり作っています。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_020
「『FINAL FANTASY XVI』- State of Play 4K」より

──サブの遊びで言うと、『FF16』に「モブハント」が用意されていることも明かされていました。なぜ、モブハントが用意されているのでしょう?

前廣氏:
 『FF16』はシナリオをガンガン進めていくタイプのゲームなので、そこまでたくさん寄り道をするような余裕はないかもしれないですが、その中でのちょっとしたアクセントとして用意したのがモブハントですね。ちょっと暇な時に、自分の腕試しにモンスターを倒しに行く感じです。

髙井氏:
 やはりアクション主体のゲームなので、モブハントなどのメインストーリー以外でもアクションを楽しめるところがないと、それはそれで困ると思ったのです。

祖堅氏:
 ただ、あのモブハントを紹介するモーグリがね……まぁ偉そうなヤツで……。

前廣氏:
 そうそう、モブハントを紹介するモーグリにだけ特別なSEもついているんです。

祖堅氏:
 その特別なSEをちょっとやりすぎてしまったことがあって……。

 モブハントのモーグリがいる場所には、他のNPCも結構配置されているんです。そこで、他のNPCが結構深刻な話をしているのに、モーグリ専用のSEがずっと聞こえてしまうことがありました。

 他のNPCと「おいクライヴ!世界がヤバいぜ!」みたいな話をしている最中に、近くから「クポー!」という音が聞こえてきてしまったので、最初よりモーグリのSEの範囲はだいぶ小さくなりました(笑)。

──その辺りの「距離とSE」もかなり細かく設定したのでしょうか?

祖堅氏:
 そこはもうリアルタイムで処理しています。

前廣氏:
 めちゃくちゃ細かく設定しています。

 とにかくSEがプレイヤーの邪魔にならないことを徹底してはいるのですが、逆にSEがないとそれはそれで「街っぽさ」がなくなってしまう。このギリギリのラインを、NPCひとりひとりに調整しています。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_021
「『FINAL FANTASY XVI』- State of Play 4K」より

──これまでのお話を聞く限り、『FF16』はシナリオの横軸よりかは、ひとつの大きな縦軸のストーリーを追うような形になっていると感じています。

前廣氏:
 そうですね。オープンワールドが横に広がるイメージだとすれば、『FF16』はストーリー主体で、しっかりとした縦軸のシナリオを追うようなゲームになっています。とはいえ、もちろんサブクエストなどの横に広がるお話も用意されています。横軸があるというより、縦軸の幅が広いようなイメージですね。

──サブクエもしっかりあるんですね。

髙井氏:
 サブクエの量は結構多いです。

前廣氏:
 サブクエにもひとつひとつシナリオが用意されてるので、楽しんでいただけると嬉しいです。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_022

──同じく「State of Play」発表された米津玄師さんの主題歌「月を見ていた」ですが、実際に音楽を担当している祖堅さんはあの曲を聞いてみていかがだったでしょうか?

祖堅氏:
 詳しくは別の機会にプロデューサーの吉田が話すと思うので、さわりにさせていただきますが、米津さんご自身の歌唱の説得力がすごかったんです。それに尽きます。

 だからこそ、「どうしたらこの曲の良さを最大限引き出せるのか」「どうすればFF16の中で、米津さんの表現力を最大限に出せるか」といった点に、本当に最後までこだわりました。

前廣氏:
 実際にゲームの中で聞いていただくと、「もうFF16の主題歌はこの歌しかない」と思えるはずです。

 米津さんは『FF16』をプレイした上でこの曲を書き上げてくれているので、「月を見ていた」はいわゆる「タイアップ曲」みたいな感じではないんです。本当に『FF16』のために作っていただいた曲なんです。だから、ゲームの中でこそ聞いてほしいと思っています。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_023
「FINAL FANTASY XVI テーマソング / 米津玄師『月を見ていた』ティザー映像」より

血を吐くような緊張感で作り上げた、FF16

──実際、『FF16』の発売が近付いてきているとは思うのですが、こういった発売の1~2ヶ月前って開発者のみなさんはどんな気持ちになるのでしょう?

髙井氏:
 発売が近いと……やっぱりプレイヤーのみなさんに遊んでいただいた感想をお聞きしたい、と思います。

前廣氏:
 我々としては、現状で出せるものは全て出しきったつもりです。本当にゲーム体験として、深く遊んでいただけるものができたと思っています。もちろん、当然売れた方が良いのですが……正直、売れる売れないよりも「早く遊んでいただきたい」という気持ちが強いです。

 それと同時に、「あぁ、こんなに長々と作ったけど、あと2ヶ月で発売しちゃうんだなぁ……」という妙な感覚もあり、不思議なものですね。

祖堅氏:
 いちサウンド担当の立場からすると、やはり「いつもよりサウンド大きめで遊んでね!」と言いたいところですけど……やっぱりまずはゲームを遊んでほしいですね。そして、できれば物語の最後まで遊んでほしいです。

 今回はずっと遊び続けたくなるようなプレイフィールで進んでいくゲームとして完成していますし、とにかくプレイヤーの方には物語の最後の1シーンまで遊んでほしいですね。

──『FF16』が中々やめ時がなさそうなゲームに仕上がっているのは、このインタビューでさらに伝わりそうです。

前廣氏:
 自分たちで遊んでいても、中断しどころが難しいな、と感じてはいます。

髙井氏:
 実際に遊び、「これは一体、どこでコントローラーを置けばいいのかな?」と感じていただけると嬉しいです。

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_024

──最後に、今作のマスターアップが完了した上で、長年の開発を改めて振り返った感想や、『FF16』の開発チーム全体を振り返ってみてどうだったか……ということをお聞かせいただければと思います。

髙井氏:
 マスターアップした時は、正直もう「ホッとした」という思いしかなかったです。

 『FF16』のチームは、ゲームの開発環境を独自に作るところからスタートしています。もう最初は「やらなきゃいけないことすら、わからない」ような状態でしたし、スタッフ全体としてもチャレンジの多いプロジェクトでした。

 そんな中で、最終的にゲームの完成度を叩き上げた上で、クオリティを担保することができました。内容的にも納得の行くものを作り上げられましたし、長年参加してくれた多くのスタッフのみなさんには非常に感謝しています。あとは、発売日になるべく『FF16』をたくさんのお客様にプレイしてもらい、その人たちの「面白かった」という感想がいっぱい並んだら嬉しいな……と思っています。

前廣氏:
 先ほども触れましたが、これまではMMORPGである『FF14』を作り続けていた中で、『FF16』で久しぶりにひとつのパッケージの開発に携わりました。締め切りを守りつつもマスターアップギリギリまでクオリティを上げ続ける中で……久しぶりに血を吐くレベルのピリピリ感がずっとありました。

 ですが、本当に多くのスタッフが、僕たち自身も含めて一生懸命作ってきましたので、良いゲームができたと思っています。ひとりでも多くの方に『FF16』を触っていただけると嬉しいです。

祖堅氏:
 さっきも言ったように、サウンド担当の僕はここで「良い環境で、いつもより大きいボリュームで遊んでください」と言うのが役目だと思います。

 ただ……とにかく遊んでみてください!

 新しいフィーリング、手触り、世界観、シナリオ……全てがサウンドに結び付いています。何はともあれ、最後まで楽しんで遊んでくれればいいなと思います。そこで何か思うことがあれば、感想とかもらえると嬉しいですね。

 とにかく、遊んでください!!

──私も早く遊びたいです! 本日はありがとうございました!(了)

『FF16』完成後の開発チームにインタビュー。同じ部署で“2つのFF”が並行開発されていた舞台裏_025

 ……さて、いかがだっただろうか。

 あまりインタビューの締めに余計な言葉をダラダラ書いても仕方ないので、もうシンプルに「この開発チームは、本当に死ぬ気でFFを作った」ことが読者のみなさまに伝わっていれば幸いだ。

 死ぬ気でゲームを作った。だからきっと面白い。これほどのメンバーが集まって、その上、血を流してしまうくらいの覚悟でRPGを1本作り上げた。じゃあ面白いのだろう。ここまで「とにかく遊んでください」と念押しされてしまったので、私も「とにかく遊んでください!」としか言えなくなってしまったではないか。

 とはいえ、「なんかゲームがすごいとか音楽がすごいとかいろいろ書いてあるけど、実際そんな大したことは……」と思う方もいるかもしれない。わかる。その気持ちはよくわかる。なぜなら『FF16』はまだ発売していないから。発売していない以上、実際のところどんなゲームなのか知りようもない。そんな方のために『FF16』を先行体験した私が、ここで宣言しておこう。

 書いてあること、大体本当です。嘘じゃないです。

世界初の『FF16』実機プレイをしてきたらマジですごかった。今まで謎に包まれていた「ゲーム部分」を1万文字使って解き明かす

 そんな『FF16』は2023年6月22日にPS5にて全世界同時発売!

 予約とかもいろいろ受付中!!

 とにかく……遊んでください!!!

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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