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堀井雄二氏×鳥嶋和彦氏のラジオ『KosoKoso放送局』の公開収録に、坂口博信氏・植松伸夫氏・松野泰己氏が参戦。「いちばん好きなゲームは何ですか?」「ゲーム作りにはなにが大切ですか?」『ドラクエ』『FF』生みの親に聞いてみた【TGS2024】

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『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏と『ドラゴンボール』担当編集で知られる元「週刊少年ジャンプ」編集長の鳥嶋和彦氏がホストを務める『ゆう坊&マシリトのKosoKoso放送局』。ラジオ局 J-WAVEで、毎月第4土曜日に放送される、ゲームファン・エンタメファン垂涎のラジオ番組だ。

過去には『チェンソーマン』担当編集の林士平氏や、『ファイナルファンタジー』初期シリーズの開発チームのような豪華メンバーをゲストに迎えるなど、濃厚なエピソードトークの数々を聞くことができる当番組。今回は東京ゲームショウ2024にて公開収録が実施された。

収録には、司会進行役のラジオパーソナリティ・Naz Chris氏と、番組準レギュラーで『ファイナルファンタジー』シリーズの坂口博信氏、おなじみのふたりも参加。

前半パートでは、坂口氏とのタッグで『FF』シリーズ音楽面での生みの親である作曲家の植松伸夫氏、後半パートでは『伝説のオウガバトル』『タクティクスオウガ』で知られるゲームクリエイターの松野泰己氏をゲストに迎え、本メンバーならではのトークが繰り広げられた。

オール立ち見席にも関わらず、大勢の観客を釘付けにした特別対談。本記事では、その模様を文字起こし形式でお伝えする。

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左から、Naz Chris氏・鳥嶋和彦氏・堀井雄二氏・植松伸夫氏・坂口博信氏

文/なからい
編集/柳本マリエ


パート1開始・植松伸夫氏を迎えた今回は「音楽」がテーマ

Naz氏:
ということで、まずはパート1を始めていきたいと思いますが、 早速お呼びしましょう。

まずは、『KosoKoso放送局』のレギュラーホスト・ナビゲーターでゲームデザイナーの堀井雄二さん。『ドラゴンクエスト』の生みの親でございます。皆さん、拍手でお迎えください。

堀井氏:
こんにちは。

Naz氏:
堀井さんです。皆さん、よろしくお願いします。

堀井氏:
すごい人ですね。

Naz氏:
すごいんですよ、堀井さん、いかがですか。こちら。(背景の似顔絵)

堀井氏:
似てますね。

Naz氏:
そっくりです。 ありがとうございます。よろしくお願いします。

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Naz氏:
ということで、続いてはこの方です。元少年ジャンプ編集長、漫画編集者、『ドラゴンボール』『ダイの大冒険』などの担当編集、鳥嶋和彦さんです。皆様、拍手でお迎えください。

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Naz氏:
よろしくお願いします。鳥嶋さん、コスプレですか。

鳥嶋氏
はい、生まれて初めての白衣です。

Naz氏:
ドクターマシリト爆誕。ありがとうございます。

鳥嶋氏:
生まれて初めてのコスプレ。ほんとそうだね。

Naz氏:
はい。ドラゴンボールも持っていただいてるっていうね。ありがとうございます。

ということで、続きまして、この方です。『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親、ゲームクリエイターの坂口博信さんです。ただ今、『FANTASIAN Neo Dimension』が話題となっております。坂口さんでございます。堀井さんの隣にお願いいたします。

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坂口氏:
こんにちは。

Naz氏:
坂口さん、今回の東京ゲームショウはいかがですか。

坂口氏:
(坂口氏がプレイを開始して)昨日『FF14』が3周年を迎えたので。『FF14』を見にきました。

Naz氏:
(笑)。さすがです。ということで、『FANTASIAN Neo Dimension』の展示ブースもありますし、皆さんぜひぜひ楽しんでいきたいと思います。

続いてこの方をお呼びしたいと思います。『ファイナルファンタジー』シリーズの、音楽における生みの親で、 その世界的な評価から「ビデオゲーム界のベートーヴェン」と称される作曲家、音楽家の植松伸夫さんです。

植松氏:
こんにちは、よろしくお願いします。

Naz氏:
植松さん。デブチョコボがかわいい。ありがとうございます。

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Naz氏:
ということで、とんでもないメンバーがステージに集結したというところなんですが、まずは鳥嶋さんから改めてひと言ずつご挨拶をお願いします。ラジオ収録もやっておりますので。

鳥嶋氏:
いつも『KosoKoso放送局』を聞いていただいてる方、ありがとうございます。いつもはスタジオでゲストを迎えて、箱の中でやっているんですけど、こういう風に聞いてらっしゃる方、ファンの方がいる前でやるってのは初めての経験なので。

「おお、すごいな」っていう、皆さんの圧を感じます。よろしくお願いします。

Naz氏:
よろしくお願いします。圧には強い鳥嶋さん。堀井さん、いかがでしょう。

堀井氏:
そうですね。僕ね、あんまり喋るのが得意じゃないんですけども。いつもね、「トリちゃん」って言うんですけど、「トリちゃん」に助けられて、なんとか番組を放送しています。

鳥嶋氏:
いえいえ、そんなことはないです。

堀井氏:
今日はどうもよろしくお願いします。

Naz氏:
よろしくお願いします。坂口さん。『KosoKoso放送局』準レギュラーの立場としていかがですか。

坂口氏:
はい。ご存知の方もいると思うんですが、鳥嶋さんは毎回、言っちゃいけないことを言うんですね(笑)。

いつもはラジオ番組なので、そこに「にゃーん」とか効果音がかかるんですけど、今日は「にゃーん」ができませんので、 多分やばいことを言うと思いますが。そこはどうなることやら。

Naz氏:
よろしくお願いします。

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Naz氏:
植松さん、ラジオの公開収録ということで、ラジオ番組も含めて、我々としてはずっとお呼びしたかったなって思ってまして。

植松氏:
ありがとうございます。

鳥嶋氏:
はい。ようやく念願かなって。

Naz氏:
念願かなってですね。今日のパート1は、鳥嶋さんの餌食になるっていう。

植松氏:
そうなんですか(笑)。僕、ここへ来たら「きっと台本があるんだろうな」と思ったら、台本も渡してもらえない。

坂口氏:
なにもない。

鳥嶋氏:
あってなきがごとし。

植松氏:
了解です。

Naz氏:
はい。そしてなんですが、今先ほど「デブチョコボ」のお話させていただいたんですが、坂口さんにもチョコボを持っていただいてて。ちょっと開けていただいて。

鳥嶋氏:
開けてください。

坂口氏:
開けるんですか。

Naz氏:
開けて出していただければ。

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坂口氏が、袋からメッセージ入りのチョコボぬいぐるみを取り出す

Naz氏:
……坂口さん、ジジイになりました、おめでとうございます!

鳥嶋氏:
はい。ジジイ誕生おめでとうございます。

坂口氏:
9日前に孫が生まれました。

Naz氏:
おめでとうございます。

鳥嶋氏:
僕、それこそ約30何年前、Vジャンプの創刊編集長なんですけど。その時に、 スタイリストやプロのカメラマンをつけて、坂口さんや堀井さんのグラビア撮影をしたんですよ。そしたら坂口さんが、生まれたばっかりのお子さんの写真を撮ってほしいって。

坂口氏:
せっかくスタジオで、ライティングとかもしっかりしていたんで。娘がまだあの時3歳とかですか。スタジオに連れてきて、「撮ってください」って。

その娘が、もはやもう母親でございます。

Naz氏:
この娘さんの誕生で、『ファイナルファンタジー』のエンディングも変わったっていう。

坂口氏:
はい、『FF6』のエンディングが。そのまま終わるはずが、「いやいや、これ普通、子どもが生まれるでしょ」みたいな。

Naz氏:
鳥嶋さんがそれに対して、坂口さんのウェットなところをけっこう言ってらっしゃって。

鳥嶋氏:
そうそう、坂口はメロドラマが大好きだからね。本当に甘いところが味ですから。おめでとうございます。

Naz氏:
おめでとうございます。

坂口氏:
ありがとうございます。

Naz氏:
『KosoKoso放送局』レギュラーチームからメッセージを入れさせていただいております。

坂口氏:
メッセージ入りで。ありがとうございます。

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Naz氏:
ということで鳥嶋さん。今回、このメンバーでどんな話をしようかというところなんですが。

鳥嶋氏:
そうですね、『KosoKoso放送局』でいろんなゲームの話、『ドラクエ』『FF』の話もしてきたんですが、残念ながら音楽の話はしてこなかった。

今回、植松さんをお呼びしたからには、やっぱ音楽の話を是非ちゃんとしたいなと。

偶然の重なりがもたらした、坂口氏と植松氏タッグ誕生秘話

Naz氏:
それこそ坂口さんが先日『ファイナルファンタジー』の開発チームの皆さんをスタジオに呼んでくださったときに、 どういう出会いをしたかっていう。

「フロムエー」で天才【※】が釣れてた時代があった、みたいな話があったんですけど、坂口さんと植松さんの出会いをお聞きしたいです。

※『KosoKoso放送局』過去回で放送された、『FF』シリーズ初期の開発チームに、求人誌の「フロムエー」から応募したメンバーがいたというエピソード。

植松氏:
もう何十年前ですかね。僕がまだ25ぐらいだから、40年ぐらい前かな。

日吉に「スクウェア」っていうゲーム会社があった。噂は聞いていたんですけど、でも当時の僕は、ファミコンもなにも持ってない。ゲームなんか遊んでいないから、僕にとってはそんな大したアレじゃなかったんですよ(笑)。

その頃は日吉に住んでたんですけど、僕の住んでる部屋に、食えない絵描きさんとか、将来小説家になりたいやつとか、芸術家になりたいやつが、毎晩僕の部屋に集まって酒を飲んでたの。

鳥嶋氏:
(笑)。

植松氏:
毎晩5、6人ぐらいで飲んでたんですけど、そのうち誰かが女の子を連れてきて。その女の子が「私、スクウェアっていう会社で企画の仕事をしてるんです」って言うので、「えー、なんか音楽の仕事あったらちょうだいよ」って。

そういう話をしてて、スクウェアさんに出入りするようになったんですね。 で、当時からスクウェアで(坂口氏は)ボスなの。

坂口氏:
ボスっていうか、それも話すと長いんですけど、一応プロジェクトチームがあって。僕はそこに新人として入ったんですけど、ある日突然解散して。自分でやらざるを得なくなったんです。

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植松氏:
なるほど。

坂口氏:
だから植松さんが来たときは、そういう状態ですね。

植松氏:
まあでもみんなを引っ張ってましたね。

Naz氏:
そのときでもまだ弱冠20代前半っていう。

植松氏:
大学生ですか。

坂口氏:
大学生ですね。22とかですね。

Naz氏:
大学生でボスですか。

植松氏:
みんな若かったですからね。

Naz氏:
いや、いいですね。

植松氏:
僕がたぶん25歳ぐらいで、あの中では上の方だった。

鳥嶋氏:
うん、25歳が最年長。若いチームだな。

植松氏:
そんな感じですね。

Naz氏:
それで、「スクウェアっていう会社があるんだ」って知って、そのあと……

植松氏:
やっぱりほら、家も近いし、年齢も近い人たちがいっぱいいるんで、ちょくちょく遊びに行くようになるわけですよ。

それで、アルバイトみたいな、作曲のお仕事をもらえるようになったのかな。『ブラスティー』で。

坂口氏:
『(クルーズチェイサー)ブラスティー』って、PCの。サンライズさんと組ませてもらって。

オリジナルでロボットを作って、途中で変形するんですけど、その変形が当時のパソコンだとなかなか難しいところを、プログラマーが優秀で、やれるようになったんですよ。

で、それを使った3D迷路系のRPG。それを植松さんにお願いして。

植松氏:
それは僕はメインじゃなかったんだけど。「曲が足りないんで、何曲かお願いします」って。

坂口氏:
いやいや、そんな失礼な言い方(笑)。

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植松氏:
そう。で、当時はね、そのソフト、ソノシート【※】がついてた。

※「ソノシート」:塩化ビニール製のレコード盤。安価で作れ、薄くて柔らかい材質のため、雑誌などの付録として用いられた。

鳥嶋氏:
え、ソノシートがついてたの。植松さんの曲だよね。

坂口氏:
つけました。赤いソノシートですかね。

鳥嶋氏:
たぶんね、聞いてる人は知らないと思います、ソノシート。

植松氏:
ソノシートはね、ご存じないかも(笑)。

鳥嶋氏:
ソノシート、知ってる方いらっしゃいますか。

(会場、数名が挙手)

Naz氏:
……いらっしゃいますね。

植松氏:
そう、そういうバイトをさせてもらってましたね。

Naz氏:
それで、デモテープを坂口さんにお渡ししたことがあるっていう。「こんな音楽を作ってるんだよ」みたいな。

植松氏:
うん。デモテープを持って、スクウェアさんに行ったりしていましたね。そうこうしてるうちに、日吉の町を歩いていたら、坂口さんが向こうから来て、偶然道の途中で会って「おお」とか言って。

「植松さん、最近何やってんの」「いや、相変わらず売れない音楽ばっかり書いてます」みたいな。

で、「スクウェアをちゃんとした会社にしたいから、うち来る?」って言われたので「あ、行きます」って。これでもう面接終わり。

坂口氏:
面接終わり(笑)。

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鳥嶋氏:
でもあれでしょ。ってことは、植松さんを引っ張るつもりはちゃんとあって、たまたま会っちゃっただけなんでしょ。

植松氏:
だから偶然だよね。

坂口氏:
まあ偶然っていうか。いや、言おうとは思ってたよ(笑)。けど、道端だったから、「いま言っちゃえ」みたいな感じ。

鳥嶋氏:
そう。そういう感じなんじゃない?

坂口氏:
まあ、みんな若かったですしね。

植松氏:
これは本当の話なんですけど、僕、不思議な話とかそういうのが好きで。よく周りにね、占い師さんとか霊能者さんとかがいるんですよ。

Naz氏:
なんか『ムー』とかけっこう好きだったとか。

鳥嶋氏:
えっ、『ムー』が好きなんですか。

植松氏:
大好きです。で、そのうちのひとりに言われたの。「植松くんはね、来週人生変わるよ」って。

Naz氏:
それ、本当の話なんですね?

植松氏:
これで翌週に、日吉の町で坂口さんと会ったの。「確かに変わったわ~」。

鳥嶋氏:
で、植松さんからすると、天使なわけですね。

植松氏:
もう天使ですよ。「エンジェル」です。

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坂口氏:
まああの、悪魔も天使ですからね(笑)。

鳥嶋氏:
(笑)。

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ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
編集者
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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