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堀井雄二氏×鳥嶋和彦氏のラジオ『KosoKoso放送局』の公開収録に、坂口博信氏・植松伸夫氏・松野泰己氏が参戦。「いちばん好きなゲームは何ですか?」「ゲーム作りにはなにが大切ですか?」『ドラクエ』『FF』生みの親に聞いてみた【TGS2024】

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鳥嶋氏の思い出に残る『クロノ・トリガー』制作秘話。本作が鳥山明氏の「ベスト」だったと思う

Naz氏:
鳥嶋さんのいちばん好きなゲームは。

鳥嶋氏:
いろいろ好きなゲームはあるんですけど、ここはやっぱりね、堀井さんと坂口さんに組んでもらった『クロノ・トリガー』。 やっぱりこれが僕にとって、仕事の中の記憶に残る1本なんでね。

(壇上に用意されたスーパーファミコンと『クロノ・トリガー』に気づく)

あらあら。そこに用意されてるの?あ、僕がやれと。

堀井雄二氏×鳥嶋和彦氏のラジオ『KosoKoso放送局』の公開収録に、坂口博信氏・植松伸夫氏・松野泰己氏が参戦_039

坂口氏:
『クロノ・トリガー』があるんだ。

鳥嶋氏:
じゃあ、堀井さんにやってもらおうかな。

坂口氏:
懐かしいですね。

鳥嶋氏:
これね、途中のロムがあって、「いまひとつのできだな」と思いながら鳥山さんに見せに、名古屋に行ったんですよ。

そしたら、鳥山さんに見せる直前に坂口さんから電話がかかってきて。「鳥嶋さん、そのロム、鳥山さんに見せましたか」って。「いや、まだ見せてない」って言ったら、 「悪いけど、それをそのまま持ってきてください」って。

「いまから自分が制作に入って立て直すから」って。

Naz氏:
えー。やり直し……?

坂口氏:
まあまあ、ある程度はもちろんできていたんですけど、やっぱりちょっと完成度が低かったので。ちょうど『FF6』が終わったんですよね。で、北瀬とかみんなに、「さあ、もう1個働きますよ」って言って(笑)。

『FF6』チームの半分ぐらいが合流して、もう1回完成度を上げたって感じです。

Naz氏:
(堀井氏が『クロノ・トリガー』をプレイしているのを見て)……この豪華な状況、どうしたらいいんだろうね。すいません、私。ちょっともう今日はこれで……満足。

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鳥嶋氏:
たぶん、このシーンを見たいために仕込んでるからね。

Naz氏:
私は仕込んでないです。私は鳥嶋さんに言われた通りやってるだけで。

鳥嶋氏:
いやでもね、その時の、坂口さんから電話かかってきて、次にこう立て直しに入るっていうの聞いた時にね。僕、坂口さんとは長い付き合いですけど、生まれて初めて「こいつは信頼できるかも」って

坂口氏:
ひどいですよね。それまで僕のことを信用してなかったんですよ。

Naz氏:
初対面からさんざんダメ出しをされてた仲で(笑)。

坂口氏:
だって、最初に会った時に会議室に呼ばれて、ずっと『FF3』の文句ですからね。初対面ですよ?

「君が坂口くんか、いまから僕が『FF3』のダメなところをいくつか挙げていく」とか言って、ずっと1時間喋っているんですよ。「なんだこのオヤジ」とか思って(笑)。

鳥嶋氏:
(笑)。

Naz氏:
だってもうこれ(『クロノ・トリガー』)、平成のナンバーワンタイトル……

坂口氏:
懐かしいですね。

鳥嶋氏:
それでここにね、いまここに鳥山くんがいればいちばんいいんだけど。

いろんな要素が入った仕様書を鳥山さんに渡して、1枚の絵を書いてもらうんですよ。それを元に開発の人がそれを見て画面に落としてくって。そういう作り方をしたんで。

坂口氏:
鳥山さんのあの絵はどれも、もう驚きでしたね。驚愕ですね。もう……そこから来たインスピレーションは大きいですよね。

Naz氏:
鳥嶋さんをこう……「言わしめる」というか、この時の鳥山先生の、画力がやっぱりすごかったっていう。

鳥嶋氏:
そうですね。僕は担当としての感覚ですけど、この時がベストだったんじゃないかなって。

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4人が考える「ゲームを作る上で大切なこと」

Naz氏:
もう1問ぐらいちょっと会場の方を当てたいんですけど。……黒いTシャツの方、お願いします。

来場客:
よろしくお願いします。某ゲーム会社で運営業をやっています。

鳥嶋氏:
(笑)。

来場客:
いまゲームっていうものが多岐にわたっていて、すごく複雑化してるような気がすのですが、今後ゲームを開発したりプランニングしていくなかで、「こういう考え」とか「こういうものを持ってた方がいいんじゃないか」みたいなアドバイスがあれば、いただきたいなと思います。

坂口氏:
なんか、重い質問でございますね(笑)。僕はもう世代が古いので、たぶん現代のAAA級とかっていうのは作り方ももちろん違うと思うんですけど。

ただ、未だにちょっと思うのは、やっぱりプログラムの知識っていうか、自分である程度組み上げられるまで、プログラムはやった方がいいのではないかと。どんな職種でも。

で、さっき言ったように、最後、プログラムが全部を吸収してまとめていくので、 どうしてもそこのコンピューターの癖みたいなのありますよね。

しかも、なんていうのかな、並列処理じゃないから、やっぱり1本のこの流れの中で、プログラムで流れていくので。……くらいですかね。すいません。

松野氏:
たぶんそういうことを聞きたかったわけじゃないのかなと思いながら。

クリエイティブに何が必要かとかいう話ではなくて、単純にどういうゲームが……って感じだと思うんですけど。ビッグタイトルで、世界で1000万本売って、巨額なお金を稼ぐということができる市場になってしまったので。

当然、お金を持ってくるという、その方たちはそういう大ヒットを狙っていくと思うんですよ。それはそれで作り続ければいいと思ってまして。

いっぽう、ゲームの市場はほんとに世界に広がっていて、それはさっき、イタリアに行ってみて思ったんですけど。イタリアという、狭い言語の世界でも成立していて、それを中東でも、 今戦争してますけど、ロシアやウクライナといったところでもゲーム市場ってあるんですね。

で、そういう市場に向けて、たとえば日本では10万、20万とか、50万しか売れないゲームでも、世界という市場を見た瞬間に、それなりのシェアを勝ち取ることができるな、っていうことはわかっていて。

ちょっと話がそれちゃうんですけど、「大ヒットしてみんながやるゲーム」で、だけどゲームシステム的には目新しさがなくて。要は「よくできてるんだけど、エポックメイキングではない」。「パイオニアになっていないな」ってゲームは、個人的にあまり興味がないんですね。

たとえクソゲーでも、アバンギャルドの方が僕は好きですし、それがひとつの種になって、その次に作る人たちがそこからヒントを得て、それをよりよくしたゲーム。

結局それが大きな市場になって、 そっちの方に興味がある。そういう意味では、僕はいまインディーゲームとかとにかく新しいもの、しかもそれが次世代につながるゲームっていうのに非常に興味がありますね。

それは決してビジネスにならないかもしれませんけど、その種を撒き続けるということは必要なのかなって僕はずっと感じてます。

Naz氏:
ありがとうございます。

堀井氏:
じゃあ僕が行きますか。

僕ね、ゲーム作りで考えて注意してるのは、まず「操作性」なんですよね。 操作性というのは要するにコントロール、扱い方なんですよ。

たとえば、車を運転するときって、 慣れてくれば「ここでハンドルを回して、ここでブレーキを踏んで、ここでアクセルを踏んで」って、もう体が覚えてやってるんですよ。そういう風なコントローラーの操作性がまず大事だなと思って。

プラス、「このゲームはいったいなにをするゲームだ」ってことがわかるってこと。

「こういうことやればいいんだ」ってわかったあとにですね、「これやったらどうなるんだろうっていう」期待感を持たせるっていう、 このレースだと思うんですね。

「なにをやっていいか」「これをやったらどうなんだ」っていうことをずっと続けていけば、そのゲームをやめないで、ずっとおもしろく遊べるんじゃないかと思います。

Naz氏:
ありがとうございます。

鳥嶋氏:
なんだろうな、ゲームのよさって。コントローラーを持って、キャラを起こした瞬間からそのキャラになれるんですよね。

ってことはその、1歩歩くボタンを押す時のドキドキが感じられる、そこをやっぱり作ってほしいかなって。やっぱりそれが、ゲームをやるときの醍醐味だと思うんだよね。

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エンディング・HD2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の発売と、次の公開収録に向けて

Naz氏:
ということで、東京ゲームショウ自体がそろそろクローズの時間になってきましたので、このあたりで公開収録もラストになるということなんですが。

堀井さん、最後に。じつは来たる11月14日に、HD2D版、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売になります。おめでとうございます。

堀井氏:
ありがとうございます。おかげさまで、前評判も高くて。僕自身も期待してるので。皆さんも楽しんでもらえたらと思いますね。

Naz氏:
テストプレイ版がSNSで拡散されてて、「早くやりたいな」という気持ちになりました。

堀井氏:
今日もスクエニの方(ブース)では、体験版の試遊台も出ていると思うんですよ。もうやった人もいると思うんですけども、やった人っていますか、これ。

(来場客が挙手)

……けっこういますね。ありがとうございます。

Naz氏:
堀井さんからぜひ、まだ体験してない皆さんにメッセージを。

堀井氏:
今日は終わりだけども、明日もやってると思うんで。11月までちょっとありますけども、やってくれればと思います。ありがとうございます。

Naz氏:
ありがとうございました。鳥嶋さん、最後に総括付けを。いかがだったでしょうか。

鳥嶋氏:
はい。今日、植松さんを含めてこのメンバーで集まって、皆さんの前でやったっていうのは、本当に貴重な機会だし、楽しかったです。また来年やってほしいと思うかと。拍手してもらう?

(会場、拍手)

鳥嶋氏:
じゃあ、やっぱりこのメンバーで来年も来なきゃいけないね。

Naz氏:
来なきゃいけないね。

坂口氏:
はい、頑張ります。

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まさに「TGS特別編」といった、レジェンドクリエイターたちの青年時代のエピソードトークや、公開収録ならではの、観客との質疑応答が行われた本イベント。

ゲームショウの催しとしてもそうだが、ゲーム業界や、それに関連する人々にとっても、歴史的に貴重な対談であったように思う。

今回の収録内容は、2024年10月26日(土)25時からの放送でオンエア予定だ。会場の空気や、出演者の語り口が気になる方は、ぜひ、本放送の方もチェックされたい。

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ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
編集者
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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