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【対談:「ゲームキッズ」渡辺浩弐×赤野工作】「そのゲームが面白くないなら、遊んでるヤツがつまらない」ゲームレビューの文学性とメタフィクションの可能性とは?

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物語の中に読者の居場所や未来を作る

ーー渡辺さんはVRなどを題材に、「現実と虚構が入り交じる」というテーマを書いていますが、赤野さんはその中に登場する人たちのように、つねづね「ゲームの中に入りたい」と語っていますよね。

赤野氏:
 ゲームを遊んでいると「自分はこのゲームの世界でどういう立ち位置にいて、どう関与しているの?」と思ってしまうことがあるんですよね。恋愛ゲームを遊んだときなどは、「主人公が自分なのか、それともキャラクターそのものが主人公で自分は見ているだけなのか」と考えてしまい、不思議に思ったんです。

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バイオショック……2007年にアメリカで発売されたアクションロールプレイングFPS。2K Boston/2K Australia(現:Irrational Games)が開発。レトロで未来的な美しいグラフィックと驚きのストーリー展開で話題となった。
(画像はSteamより)

 ですので、僕が好きなゲームは『バイオショック』『Ever17』【※】のような作品です。『バイオショック』はプレイヤーが主人公と心をひとつにしてゲームに従っていくという作品で、『Ever17』のほうも、ただ単に文章を読んでいるだけかと思ったらプレイヤーの立ち位置が用意されていて、その存在が大きく意味を持っているんですよ。

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※Ever17……2002年にKIDより発売された恋愛アドベンチャーゲーム。海の中に作られたテーマパーク「LeMU」に閉じ込められてしまった人々の物語が描かれる。現在はリメイク版も発売中。
(画像はMagino Driveより)

 そうした作品に触れたときに、「『VGNN』にも物語の中に読者の居場所があったらとても関わりやすいのでは?」と思いつきました。僕が『VGNN』を「未来のゲームレビューサイト」という体裁で書いている以上、これを読んでいる人たちも「未来のゲームレビューサイトの読者」という居場所からこの物語に関わることができる。自分がつねにゲームの中で居場所を探しているからこそ、そういう思いが自分の作品に現れているのかもしれませんね。

ーーゲームにプレイヤーの居場所があるというと、最近話題になっている『Undertale』【※】もそうですよね。あの作品はプレイヤーの行動によって展開やエンディングが分岐するのですが、プレイ方針によってプレイヤーの居場所が変わるというのが大きな特徴になっていて……。キャラクターが取った行動に対してプレイヤーに相応の結末を与えるという、メタフィクションとして挑戦しているゲームでもあります。

※Undertale
tobyfoxが開発したインディーゲーム。ジャンルはRPGで、海外では2015年に発売されている(日本語版は2017年夏発売予定)。プレイヤーは、とある人間の主人公を操作し、モンスターたちが住む地下から脱出するための冒険を繰り広げる。現れるモンスターは殺すこともできるし、友好的に接していくこともできる。後述する『MOTHER2 ギーグの逆襲』の影響が大きい。

渡辺氏:
 そういえば、『MOTHER2 ギーグの逆襲』【※】も、ラストでメタフィクションになりますよね。やはりそれができるのはゲームやオンライン小説の強さだと思います。たとえばふつうの小説で「じつはあなた(読み手)が犯人でした」という仕掛けを仕込むのはすごく難しいこと。もちろん、いろいろな方がさまざまな方法で挑戦はしているんですが、一筋縄ではいかないんですよ。

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※MOTHER2 ギーグの逆襲……1994年に任天堂から発売されたスーパーファミコン用タイトル。オネットに住む少年「ネス」と仲間たちが冒険を繰り広げるRPGで、現実世界寄りの描写や糸井重里氏の独特なテキストが話題になった。ゲーム中では、プレイヤーの好きな食べ物や名前を尋ねられたり、ゲームシステム上の機能についてゲーム内のキャラクターが言及したりなど、メタ構造を持つ部分も多い。
(画像は任天堂公式サイトより)

 でも、オンライン小説やゲームみたいなインタラクティブ要素があるものならできる可能性があるわけで、それらがもっと文学に影響を与えてくるといいですよね。だから赤野さんには悪いんですが、本当は本にできないくらいの作品のほうがおもしろいんですよ(笑)。もちろん、流動体である作品をパッケージングする価値もありますし、記念品にもなるという意味もありますが。

ーーパッケージングされたものを購入した方へのスペシャルとして、書籍版『VGNN』には、かなり加筆された『VGNN』の世界のテクノロジー年表がついてくるんですよね。これが話中の世界を深く掘り下げることにもなるでしょうし、年表に従う形で連載中の小説のほうもアップグレードされていくはずです。

赤野氏:
 されます。というより、頑張ってします(笑)。

渡辺氏:
 (笑)。カクヨムとしてはネットで収益を上げるスキームもあると思うんですが、そういう形ではないんですね。

ーー担当の方によると、やろうと思えばできるそうですが、「ユーザーが小説を投稿しやすい場を作る」ということのほうを優先して、利益は書籍であげるようにしているそうです。

渡辺氏:
 なるほど。そうなると、作家さんを応援できる投げ銭みたいなシステムがあるといいかもしれませんね。それこそ赤野さんが「次の話を書くためには金津園へ行かないといけない」とかで(笑)、クラウドファンディングみたいなことをする手もありかもしれません。

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赤野氏:
 僕、小説を書くために風俗へ行くキャラになっちゃってるじゃないですか!(笑)

メタフィクションを書くのは、読者との体験共有と新しい世界を生み出すため

赤野氏:
 『VGNN』で読者の方に居場所を作るという行為を進めていると、作品の中心は僕自身(主人公)ではあるものの、読者の皆さんも同じ体験を共有した人間になってくるんです。最初は作り話に付き合ってもらっただけなのに、いつの間にかコメント欄で「あのゲームが出たときはこういう事件もありましたよね」みたいに勝手に物語にかぶせて設定を書いてくれる人が現れ始めるんですよ。

 そういうとき、作品が単なる作り話から「どこかに存在する異世界」として確立されたと感じるんですよね。僕にとってメタフィクションを書くということは、読者と体験を共有できるうえに新しい世界を生み出す行為ということになるんです。

渡辺氏:
 ライブ感覚みたいなものがあるんでしょうね。ふつうの作家はミュージシャンと違ってライブができないじゃないですか。たとえば吉田拓郎さん【※】は、ライブ中に機材が壊れてしまいギターだけで『人間なんて』をその場で作って盛り上げたなんてことがあったわけですよね。

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※吉田拓郎……1946年生まれ。『旅の宿』、『結婚しようよ』などを手掛けたシンガーソングライター。1970年代にフォークをメジャーな舞台に押し上げた立役者のひとり。同時代と続く世代のシンガーたちに多大な影響を与えた。
(画像はAmazonより)

 ライブのできない作家にとっては、ああいうのがすごく憧れなので、読者といっしょに成長したり、架空の思い出を共有したりできるのは、ネット時代ならではという感じでいいですね。

赤野氏:
 確かにウェブ小説はライブですね。作中に「Acacia(アカシア)」というゲームの相手をしてくれるアンドロイドが出てくるんですが、設定的にあれは女性でも男性でもないんですよ。なので漠然としたイメージしか持っていなかったんですが、読者から「アカシアは中性的なので貧乳でしょう」と言われて逆に自分がそう思わされるようになったりなど、そういうことがよくあります。

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石黒正数……1977年生まれ。日本の漫画家。代表作は『それでも町は廻っている』、『木曜日のフルット』、『ネムルバカ』など。『VGNN』では表紙のイラストを担当している。かなりのゲーマーでもある。『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』の表紙イラストの作者。

 結局、石黒正数先生に表紙のイラストを描いていただいたとき、僕から「アカシアの胸は貧乳にしてください」と頼んだくらいですから(笑)。

渡辺氏:
 (笑)。ライブで著者や演者が参加者といっしょに作品を作るということにも、メタフィクションの手法に近いところがあるように感じているんですよね。僕がそう思うようになった原体験は寺山修司【※】の演劇で、あれに参加する観客は演者を見ているだけではなくて、そのうち舞台と客席の境界がなくなっていく感覚を味わうんですよ。

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※寺山修司……1935年生まれ。劇作家であり歌人。劇団「天井桟敷」を率い、挑戦的な実験演劇を多数制作したほか、著作や作詞、脚本、そして監督した映画も多数。演劇においては町そのものを舞台として演劇に巻き込むといった大胆な手法でも有名。47歳という若さで没している。画像は、『寺山修司劇場 『ノック』 』。
(画像はAmazonより)

 たとえば、隣に座っていた人がじつは演者で、いきなりセリフを喋り始めたり、劇場が外から閉鎖されて閉じ込められてしまったりなんてこともあったんです。ほかにも劇場にヘビやゲジゲジを放ったり、客に水をかけたりするので本当に大騒ぎになることもあったそうです。こういうシステムは、空間を物語として作り込んで客に共有させるという手法ですよね。いま同じことをやると大問題になりそうですが、VRシステムやSNSなどのデジタルメディアではむしろやりやすくなっていることだと思います。

ーー受け手との関わりといえば、ニコニコ生放送では「模範的工作員同志」という名前で赤野さんは活動されていますが、その名前は視聴者との関わりによって生まれたと聞きました。

赤野氏:
 そうですね。もともと低評価なゲームを再評価するということでニコニコ生放送のゲームレビューをやっていたんですが、あるときに視聴者さんから「お前は(ゲームメーカーの)工作員か!?」と言われたんです。「だったら皮肉として工作員と名乗ってやろう」となったのですが、最近では逆に「なんで工作員と名乗っているんですか?」と聞かれる始末です。

渡辺氏:
 いいですね、僕はそういう盛り上がるようなことは喧嘩腰でも意識的に仕掛けていいと思うんですよね。無視されるより攻撃されても意識してくれるほうが嬉しいですし、盛り上がってくれるなら何よりですから。

ーーただ、赤野さんは、読者から大きな勘違いをされたこともありましたよね。

赤野氏:
 ああ、第3回で『密友(ミーヨウ)』【※1】という話を書いたのですが、それを任天堂の『Miitomo』【※2】への非難だと、読者さんが意図せぬ指摘をしていたことがありましたね……。まったくそんなことは考えてなかったんですが。

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※2 Miitomo……2016年リリース。任天堂のスマートフォン向けコミュニケーションアプリ。自分の分身となる「Mii」から聞かれる質問に答え、それを友達どうしで共有して遊ぶというもの。
(画像はGooglePlayより)

※1 『密友』
『VGNN』第3回に登場する架空のゲーム。脳から記憶データを取り出して自分のコピーとなる人工人格を作り、いっしょにクイズを楽しむことができるというもの。渡辺氏も自分のコピーとなる人工人格についてのショート・ショートを書いているが、オチはまったく異なる。

渡辺氏:
 思い込みの強い読者の方もおもしろいですよね。ずっと僕にメールをくれる方の中に、僕が「自分の頭の中を読んで小説を書いている」と主張され続けている方がいたりするんです。Twitterでもいわゆるクソリプとかいうものもあるわけで、そういう角度からのアプローチともうまく付き合えれば、さらなる飛翔の可能性が生まれるかもしれません。

赤野氏:
 『VGNN』の話は基本的に誰かへの皮肉として書いていて、『密友』は読者への皮肉なんですよね。第1回、第2回を書いたところ「未来のクソゲーレビューです!」という評判が立って人が集まってしまったので、第3回はこの話を「クソゲーレビュー」だと期待して読みに来た人向けに書いた話のつもりでした。

 先ほど渡辺さんが仰ったように、ゲームは遊び手がおもしろければどんな内容でもおもしろくなるわけです。逆にプレイヤーがつまらないと『密友』のようなゲームもつまらなくなる。要は映し出されているのはあなた自身のことなんですよ……という内容を書いたのですが、そうは受け取ってもらえず、任天堂への皮肉だと勘違いされてめちゃくちゃ怒られたんですよ(笑)。

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渡辺氏:
 その人たちが任天堂の関係者かというと、おそらくそうでもないところもおもしろいですよね。そこもゲームの良さというか、やっているうちに自分とゲームを重ね合わせて見てしまうのはインタラクティブ性の高さなんでしょうね。

 でも、そういう作家性を前面に押し出すのはいいことですよ? それこそ炎上芸人みたいになるとか(笑)。キャラクターとして物語を演じ続けるというのはおもしろいと思います。

赤野氏:
 お恥ずかしい話なんですが、意識せずにそうなってしまってます。

傍から見るとホラーでしかない状況を読者はどう思うのか?

赤野氏:
 ただ、そういう自分の性格をキャラクターとしてそのまま作品に登場させられるのはいいことなんです。ただ……これはあまり言わないほうがいいのかもしれませんが、このところ自分が「ネット上の赤野工作」と「現実の自分」のどちらのつもりでこの作品を書いているのか、判らなくなってきているんですよ。『VGNN』を書き始めてからは、そこに「未来の自分」まで混ざってくるという。

渡辺氏:
 赤野さんの場合、「赤野工作」という人格をいかに暴走させつつコントロールしていくかが重要になりそうですね。

 いっそのこと赤野工作という存在を殺して葬式をやってもいいかもしれないし、逆に人を殺めても元が取れるかもしれないですよ! 顔も出していませんし、サイン会は橋本環奈似の美女に任せて、それを赤野工作ということにするのもいいかもしれません。

赤野氏:
 もうちょっと穏やかな方法でお願いします(笑)。

渡辺氏:
 現実の存在なのか赤野工作という存在なのか、曖昧なのはメタフィクション的でいいですね。それこそゲームキャラのように自分をうまく操作できるとそれが新しい作家性になると思います。

赤野氏:
 ネット上だと誰もがキャラクターを演じるというところはありますよね。『VGNN』の場合、どこまで僕の本心なのか、見ている人に疑ってもらえるとありがたいですね。

「死ぬまでゲームに飽きないんじゃないかなと」

ーーさて、そろそろ最後の話題に移りたいと思います。おふたりは今後どういった作品を書いていこうと考えていますか? 赤野さんはゲームレビューしか書けないと言っていましたが……。

赤野氏:
 ひとまず『VGNN』の後編【※】を書ききることになりますが、じつは次も考えているんですよね。Twitterのタイムラインを書き出して当時に起こった事件や人々が考えていたことを読者に読み取ってもらうというものです。

 たとえば乙女ゲーの舞台が終わったあとって、SNSの書き込みがまたすごいんですよ。「尊い……」とか「えっ、待って」とかあるんですが、そういうネット独自の簡単な表現で奥にあるものを描くと人を惹きつけることができると思うんですよね。

※『VGNN』の後編
『VGNN』は全42回構成。今回書籍化されるのは第21回まで収録された前編となる。

ーーそのときの題材はゲームになるのでしょうか?

赤野氏:
 うーん、僕が人生において興味を持った娯楽はゲームくらいなんですよね。ゲームはいつまで経っても飽きることがなくて、おそらく死ぬまで飽きることはないんじゃないかなと。ですのできっとゲームを題材に書き続けていると思っています。

渡辺氏:
 僕は「いまできることをやっていけば後に残るものになる」とわかってきたので、それこそ話題に出たネットのシステムを利用した読み物やライブ要素のあるものなどを、行き当たりばったりにでもやっていきたいですね。時代や世の中はどんどん変わっていくので、赤野さんの作品やカクヨムの人気作品からも勉強させていただきながらやっていこうと思っています。それこそ『VGNN』をパクって何か書くとかね(笑)。

赤野氏:
 いや、畏れ多すぎますって(笑)。(了)


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 「ゲーム・キッズ」『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』は、未来のテクノロジーやゲームという同じ題材を扱うため似ている作品と言われることもあるが、実際ところ方向性はかなり異なる。渡辺氏は未来への警告として可能性に溢れた物語を紡ぎ、赤野氏は発展したはずの科学技術を個人の中から見るという物語を書いている。

 方向性は異なるふたりのSF作家だが、互いのあいだには手法としてのメタフィクションが好きだという共通点が存在した。渡辺氏は読者を小説の世界にいざなうため入れ子構造のメタフィクションを用い、赤野氏は自分が好きなゲームの世界へほかの仲間を導くためにメタフィクションという技法を用いている。形は違えど、どちらも小説の読者やゲーマーがフィクションの世界を堪能するための背中を押している人物なのだ。

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『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』(KADOKAWA・2017/6/30発売予定、画像左)『1999年のゲーム・キッズ(上)』(講談社・2012、画像中央)『2999年のゲーム・キッズ(上) 』(講談社・2013、画像右)
(画像はAmazonより)

 対談中は、渡辺氏が赤野氏に対してとても興味深そうに接していた点も印象的だった。赤野氏はこれまで小説などほとんど書いたことがない人物なのだが、それでもゲームのみならず科学技術や政治への造詣の深さはかなりのもので、風俗から乙女ゲーまで趣味の幅もじつに広かった。渡辺氏はそんな赤野氏を見て、これからのSF小説やゲームで実現されるかもしれない可能性をたくさん思いついていたようで、楽しげに話していたのも忘れられない(記事で割愛した話がいくつも存在するくらいだ)。
 『VGNN』のフォロワーとして、未来のゲームに関する小説やそれに類推する思いもよらないようなジャンルのものが今後さまざまな形で登場するようになれば、それはゲームの世界を未来に牽引する力のひとつになるのかもしれない。それにより物語の中の世界が現実に広がっていくことになるだろう。それこそ、プレイヤーを本当に作品の中に取り込む、ふたりが描いた夢のようなゲームが出るきっかけになればーーそう願って止まない。

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インタビュアー・著者
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渡邉卓也
「マリオの乳で育った男」と自称するフリー・ゲームライター。いくつかのメディアでゲームニュース、レビュー、コラムなどを担当。自分が書いた記事で気に入っているのは「なぜこのゲームが「モンハン」の次に売れるのか…? 『Ice Station Z』から見る3DSという市場の特殊性とゲームの評価の難しさ」。好きなキャラクターは「しずえ」と「カービィ」。
Twitter:@SSSSSDM
インタビュアー
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週刊ファミ通、ファミ通.comなどを経て、電ファミニコゲーマーに参加。好きなメタフィクションは『仮面ライダーディケイド』。
Twitter:@koyamaondemand
インタビュアー
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新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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