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『ロックマンエグゼ』シリーズはなぜ面白かったのか?──20周年を迎えた今、「難しいゲーム」という『ロックマン』のイメージを塗り替えた偉大な名作を振り返る

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途絶えた『エグゼ』の系譜。しかし、『ロックマン』は今も「答え探し」を追求し続ける

 しかし、残念ながらこの『エグゼ』が打ち立てた系譜は今現在、途絶えてしまった。2001年の第1作発売以降、それまでの『ロックマン』に倣うかのように『エグゼ』も続編を発売するなりしてシリーズ化を遂げた。
 ところが、2005年発売の『ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ / 電脳獣ファルザー』をもってシリーズは完結。それまで続いた宿敵との因縁まで決着させて、綺麗に終わってしまった。

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『ロックマンエグゼ6 電脳獣グレイガ』

 その後、『エグゼ』のシステムを継承した後継シリーズ『流星のロックマン』がニンテンドーDSで展開された。
 しかし、世界観の一新や『エグゼ』の縮小版のような見た目の戦闘システム、そして第1作目にして3つのバージョンに分けて販売するという、言ってしまえば露骨な販売戦略は『エグゼ』ファンからも困惑を招くこととなってしまう。
 その結果、『流星のロックマン』シリーズは『エグゼ』に匹敵する人気を獲得するまでは至らず、第3作『流星のロックマン3 ブラックエース/ レッドジョーカー』を最後に打ち止めとなってしまった。【※】

※厳密にはその後、『ロックマンエグゼ オペレートシューティングスター』という、初代『エグゼ』のリメイク兼『流星』のコラボ作品が発売されたのが最後となっている。

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『流星のロックマン3 ブラックエース/ レッドジョーカー』
(画像は流星のロックマン3 ブラックエース/ レッドジョーカーより)

 とはいえ、『流星のロックマン』シリーズにも『エグゼ』流の「答えを探す面白さ」はしっかりと引き継がれている
戦闘画面はロックマンの動きと攻撃により集中しやすい設計になったほか、「シールド」「ロックオン」と言った新システムも相まって、独自の戦術・戦略性が生まれているのだ。
 さらに続編ではさまざまな新要素も追加され、最終作となった3作目では『エグゼ』とは全く路線の異なる高度な戦術・戦略性を持ち合わせたアクションRPGへと進化を遂げるに至っている。
 そのような独自性に到達したにもかかわらず、打ち止めとなってしまったのは残念でならない。

 こうして『エグゼ』が「答え」を探す面白さを積極的に伝え、幅広いプレイヤーを獲得する一方で、アクションの『ロックマン』シリーズは難しさを追求する先鋭化路線を走っていたように思われる。
 前述の『ロックマンX』、『エグゼ』と同じ時代を戦った盟友『ロックマンゼロ』、そのゼロの後継に当たる『ロックマンゼクス』は、作品を重ねるたびに高度な操作技術が試されるアクションゲームへと進化していった。

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『ロックマンゼロ3』(『ロックマンゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』より)

 2009年、電撃的に発表された初代『ロックマン』の続編『ロックマン9 野望の復活!!』と、その続編である『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』でも、その方向性は継続している。

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『ロックマン9 野望の復活!!』(『ロックマン クラシックスコレクション2』より)

 前者は特殊武器で突破口を開く面白さを備えていたが、相応にギリギリの操作が試される場面が大量に設けられているなど、「答え」を探す楽しさ以上にアクションゲームとしての難しさや無慈悲さが強調されており、「難しいゲーム」としての印象はもはや覆しきれないほど凝り固まったものになってしまったきらいがある。

 しかし、2018年のナンバリング最新作『ロックマン11 運命の歯車!!』では「難しいゲーム」という方向性からの転換が随所に見られるようになったのだ。
 『9』『10』的な作りはまだ残ってはいるものの、特殊武器で難所をやすやすと突破できたり、強い中ボスを数発で鎮められるなど、初代シリーズ屈指とも言える「答え」を探す楽しさを強調したゲームデザインを踏襲。
 何より新システム「ダブルギア」難易度選択機能、救済アイテムを購入するショップ機能といった、現代特有の手段を駆使して「答え」を探す面白さを突き詰めているのは特筆に値する。
 史上最も、ロックマン生みの親であるA.K氏が掲げた思想に近い魅力を持つ、「答えのあるアクションゲーム」として完成されていると言えるだろう。

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『ロックマン11 運命の歯車!!』

 ただ、それでも導線の曖昧さなどいくつかの弱点は残っており、『エグゼ』シリーズの完成度に魅了された筆者からすると、惜しい気持ちもある。
 しかしながら、さまざまな事情を経て制作陣が変わっても、『ロックマン』は「答え」を探すことが醍醐味のゲームであるとの考えがカプコンに根付いているのは、ひとりのファンとしてはとても嬉しく思うばかりだ。

 それにシリーズに対する支持は国内外を問わず根強く、『エグゼ』もまた、続編の制作が熱望されている。筆者は初代『ロックマン』、アクションゲームの『ロックマン』と共に育ってきた世代ではあるのだが、本稿で述べたように『エグゼ』が残した功績は本当に偉大なものだと考えている。
 『ロックマン』本来の魅力を伝えて気づかせ、「答えを探す」面白さを突き詰めたあの戦闘システムの系譜は決して過去のものではなく、現代でも十分に通用する面白さを持っているはずだ。
 現在、『ロックマン』はアクションのシリーズを中心に復刻が続いている。『エグゼ』はRPGであり、後期のシリーズからはバージョン別に発売された関係もあり、復刻するのも容易にはいかないのかもしれない。

 だが、そのような背景があろうが、『エグゼ』は21世紀初頭に当時の小中学生を熱狂させ、『ロックマン』の最も面白い部分を突き詰めた偉大な名作であることは間違いないだろう。その路線を引き継ぎ、「答え」を探す面白さを突き詰めた新作と、その歴史の復活に期待を寄せたい限りだ。

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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