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PC・Xbox独占タイトル『Cuphead』がNintendo Switchへ移植、「Microsoftの提案」だった。ハードを超え“Xboxユーザー”の拡大狙う

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 先日、任天堂とMicrosoftはNintendo Switchで『Cuphead』をリリースすることを発表した。2017年に海外フォーラムで開発スタッフは「同作はXbox OneとPCのみの一生独占販売なのか?」という問いに「Yes」と答えていたが、ここに来て大きく方針を転換した形だ。

 さらに驚くことに、ゲーム動画チャンネル「Easy Allies」の主要メンバーであるDaniel Bloodworth氏は、『Cuphead』を開発したStudio MDHRに直接話を聞いた上で、この決定はMicrosoft側からデベロッパーに持ちかけられたものだとTwitter上で明らかにしている。

※Daniel Bloodworth氏の発言。「『Cuphead』の開発のひとりに聞いたんだけど、実際にはMicrosoftが彼らにアプローチしてて、Switch版を作る気はあるかと聞いてきたらしい。ヤバイね」

 ゲームハードを展開するほかの企業と同様に、Microsoftはこれまでプラットフォーム独占などによるXboxコンソール市場を強化してきただけに、独占タイトルを他プラットフォームへ展開するよう呼びかけるのは非常に異例な動きと言える。しかし実は同社は、2018年に入り大きく方針を転換している。2018年3月にgameindustry.bizでも幹部らが語ったその新たな方針は、簡単に説明すれば「Xboxユーザー」の定義の拡大だ。

 これは2020年までに20億人にのぼると言われるゲーム人口全てに、Microsoftや同社の製品が関連したコンテンツをリーチさせることが狙いだと見られている。XboxやWindows PCは依然リッチなゲーム環境を提供するビジネスとして展開されるが、そこに作品やサービスを集約するのではなく、自社コンテンツやサービスを幅広く展開させ、それらを利用する人をXboxユーザーと定義する。

 たとえば、XboxコンソールやWindows PCでゲームを遊ぶ人はもちろん、『Rainbow Six Siege』はマルチプレイにMicrosoftのクラウドプラットフォームAzureを利用している。スマートフォンやNintendo SwitchでXbox Liveにログインして『Minecraft』を遊ぶ人も、Xboxユーザーと言えるだろう。そして開発元のMojang自身がMicrosoftの傘下のため、PlayStationコンソールで『Minecraft』を遊ぶ人も、Xboxユーザーに数えるかもしれない。

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(画像はMicrosoft 『Minecraft for Windows 10』より)

 Nintendo Switch版『Cuphead』は、Xbox Liveを搭載することも発表されている。つまり、この移植もやはり新たに定義されたXboxユーザーを増やすための施策のひとつだ。Xbox LiveはXboxコンソールだけでなく、すでにiOSとAndroidでのサポートも発表されている。今後はNintendo Switch向けのXbox Live SDKも展開されていくだろう。

 また、3月13日に発表されてPC版『Halo: The Master Chief Collection』(以下、Halo TMCC)が、Microsoft StoreだけでなくSteamでも販売されるのも、このXboxユーザーの定義の変更が大きく関わっていると考えられる。まだ詳細は明らかにされていないが、先の方針を鑑みれば、Steamでも『Halo TMCC』をXbox Liveに接続することで、何らかの恩恵が得られる可能性もある。

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(画像はMS Blog 「Project xCloud: Gaming with you at the center」より)

 なおMicrosoftは2016年に、PCとXboxでリリースされたゲームを、片方で買えばどちらのプラットフォームでも遊べる「Xbox Play Anywhere」というプログラムをスタートさせた。このプログラムの概念がさらに拡大されれば、Xboxはさまざまなサービスやプラットフォームの中に浸透し、Xbox OneやPCはゲームを遊ぶデバイスの選択肢のひとつとなるだろう。

 2月に発表されたMicrosoft StudiosからXbox Game Studiosへの社名変更や、クラウドゲーミングプラットフォーム「Project xCloud」、かねてから噂が流れている月額遊び放題サービス「Xbox Game Pass」の他プラットフォームでの展開など、多くのニュースがMicrosoftの方向転換を示唆している。コンソール機だけでなく、クラウドゲーミングやオンラインサービスでもしのぎを削るビデオゲーム業界は、今後どのような形になっていくのだろうか。

ライター/古嶋誉幸

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ライター
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一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
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