いま読まれている記事

セガの天才プログラマー中裕司が明かす「ソニック」「PSO」開発裏話。セガのネット対応は“ある男”のポケットマネーだった…?【ニコ生書き起こし】

article-thumbnail-sonic

1

2

3

4

5

6

7

SS1枚でビジュアルメモリひとつ使用!?

中:
 そうです。そこをセーブしたものをどうやって上げるか、っていうのが、当時ちゃんとなかったと思うんですよね。で、画像1枚分でビジュアルメモリ1個使っちゃうんですよ、当時。

NRK:
 ワオ(笑)。

中:
 当時JPEG圧縮とかできてなくて。

加藤:
 あー! なるほど。

中:
 作業時間が1週間ぐらいなので、JPEGでどうこうとか、そういうことができなかったので。なので、そのあと“ビジュアルメモリのバンク切り替えで4つスクリーンショットが撮れます”みたいなものがセガから後で発売されていると思うんですけど。まあ最初のは、すごく容量の食う撮り方だったからですね。無理やり入れたというのもあって。

 もっと前に気づけばいいんでしょうけど、作るので精一杯だったので。ギリギリ2000年の12月21日とかに発売になってるんですけど、「『21世紀RPG』って言いたいよね?」みたいなのがあってですね。

コノミ:
 カッコイイ(笑)。

中:
 「20世紀ギリギリで出したいよね」みたいなことで。「これはもう間に合わないといけない!」という気持ちが強くてですね。なんかカッコイイじゃないですか!(笑) 言ってみたくなるんですよね。21世紀で何かしたかったんですよ。

加藤:
 遅くちゃ意味がないってことですよね。

中:
 そこのお祭り感が欲しかったので。『PSO』はすごくそういうところで無理してもらって、さっきのシンボルチャットとか、ワードセレクトとかも、コミュニケ―ションをいかにしてとるか、みたいな。

 なので、“「初めまして」から始まるRPG”みたいなことを、キャッチコピーでやってるんですけど。「初めまして」っていうところから始まって進んでいくRPGを、できれば全世界でっていう。ネットワークで動くので。

 でも実際、そうしたら言葉が通じないわけじゃないですか。そうすると、こんにちはだったらわかるので、「ハロー」「ボンジュール」みたいなものをつないでおけばいい。

 担当の人はすごく苦労したと思うんですが、それはやってよかったなと。これは2つに分かれているんですけど、世界共通言語っていうものを、ネットワークのゲームの中で作ろうというのが始まりなんですよ。身体障がい者さん向けの、言語カードみたいなものを見つけて。それは世界全部共通の絵で出ているのがあるんですよ。それが割とヒントになっていて。

加藤:
 なるほど。

217:
 そうなんだ。

中:
 これすごいな! と思って。これをネットワークゲームに持ってこれないのか。みたいなところが始まりで。結局、シンボルチャットとワードセレクトの2つに分かれていますけど、本当は一体にして出したかったぐらいなんですよね。オンラインゲームでつながるからこその面白さっていうところをやりたかった、というのは大きいですよね。

加藤:
 いやぁー。すごいですね。

NRK:
 発想が普通じゃないですね。

217:
 天才です。

中:
いかにドリームキャストというハードがすごくて、面白くて、こんなに、っていうのを……。

加藤:
 オンラインのゲームに初めて対応したゲーム機ですからね。

プロバイダー代はポケットマネー!? 大川功会長の男気!

中:
 これは大川会長【※1】が、「これからはネットワークや!」と仰っていて、ドリームキャストにネットワークの機能がついたんですけど。でも、ネットワークのゲームを誰も作らないんですよ。社内で。実際誰もネットワークのゲームの作り方を知らないし、わからないし。誰か作るんじゃない? みたいな社内の雰囲気があるんですけど。『ぐるぐる温泉』【※2】ぐらいは作っていて。

※1 大川 功(おおかわ いさお)
1926年生まれ。大阪出身。日本のベンチャーの父であり、株式会社CSKの創業者。元CSK社長・会長、セガ・エンタープライゼス会長、ニュービジネス協議会会長。2001年3月16日、満74歳で逝去。

※2 あつまれ! ぐるぐる温泉
1999年セガ(現、セガゲームス)から発売されたオンラインテーブルゲーム。自分だけの分身キャラクター(アバター)を作成してネットで対戦したり、チャットで他のユーザーと交流して友達を作ることは当時としては斬新で人気を博した。

加藤:
 ありましたね(笑)。

中:
 あとは、『セガラリー』の対戦みたいなものはあって。でも、「これからはネットだ」みたいなことの象徴のようなものが欠けているなと思ったんです。ただ、ボクらはソニックチームだったので『ソニック』を作らなければいけないという役目があるんですよね。基本的には『ソニック』を作っているだけで手いっぱいなんですよ。

加藤:
 そうですよね。それはそうですよ。

中:
 だけど大川会長が、私財を投げうってまでネットワークだといって(ドリキャスに)つけてくれて。

加藤:
 本当に私財を投げうってますからね!

中:
 ドリームキャストって、当時ネットワークにつなごうとしたときに電話回線が必要だったじゃないですか。モデムも必要とか。その後にインターネットのプロバイダー契約が必要じゃないですか。そこにゲームの月額課金料とかも必要で、いっぱいお金がいりますよね。「誰もやんないよ」って思っちゃうじゃないですか。

加藤:
 はい。

中:
 それが、ドリームキャストを出す前の会議でいろいろあった中で、大川会長が、「だったらそのプロバイダー料金ね、俺が出したるわ」って仰って。ドリームキャストでプロバイダー料金、最初の1年か2年間は誰も払っていないと思うんですけど、大川会長のポケットマネーですからね。

217:
 えぇー!

コノミ:
 ありがとうございます!(笑)

中:
 ポケットマネーですよ? すごくないですか。そんなことをする人が上にいて、作らないわけにはいかないじゃないですか!

加藤:
 男気がありますよね!

中:
 もうネットワークゲーム作らなあかんわ! って。それで頑張って作ったんですよ『ファンタシースターオンライン』。だけど、そのときには、大川会長は癌で入院されていて。株価が下がるから、世間には癌だなんて告知できてないですよ。社内でも誰も知らないんですよ。でも、なんとなくボクはよくしてもらっていたから、本当に具合が悪そうみたいなトコロがわかったんです。

 そこで、大川会長が一瞬復帰してきたときに、「いまオンラインゲームを頑張って作ってますよ!」という話はしたんです。でも発売日をまだ迎えていない状態だったんですけどね。それで、発売日を迎えるじゃないですか。何人ぐらい同時接続者がいて、いくらぐらいお金が回って、これだけの賞を獲ったよ、みたいなレポートを作って、大川会長の秘書に渡すんですよ、ボクは。

 だけど、それを大川会長は結果的には見られずに……病室までは持って行ってもらっているみたいなんですけど……。

 見られずに、翌年の3月16日に亡くなっているんです。本当はすごく、ボクが会長のオンラインゲームをっていうものを、何とか頑張ってソニックチームで作りましたよ! みたいなことをちゃんと実績を言いたかったけど、たぶんわからずに亡くなられてしまったので。

コノミ:
 きっと空から見てますよ!

中:
 そのあと4月ぐらいに、日本ゲーム大賞があったんですよ。そこで日本ゲーム大賞を『ファンタシースターオンライン』が獲ったんですよね。これは本当に大川会長が見ているんじゃないかって思って、受賞コメントで「大川会長やりましたよ!」って。……すごくドラマみたいだな、と自分でも思ったけどね。

NRK:
 感動です!

中:
 どっかのテレビ番組になるんじゃないかと(笑)。

コノミ:
 プロジェクトXできますよ!

中:
 そうそう。でもね、そういう意味では、プロジェクトXとかそういう系の番組が、『ファンタシースターオンライン』を作るときに、密着させてくれって、実は言われていて。話はあったんですけど。なんかね、そういうのがずっといるよっていうのがイヤで、断っちゃったんですよね。

NRK:
 もったいない!

中:
 すごくそれを後悔していて、それが映像であったらどれだけよかったか! 最後にゲーム大賞を受賞したところまで行くだけで、報告していても伝わらないまま。でも賞はいっぱい獲って、最終的には日本ゲーム大賞まで獲ったっていうね。

NRK:
 映画1本できちゃいますよ!

中:
 その間には『ファンタシースターオンライン』が炎上とかもするわけですよ(笑)。

一同:
 (笑)

中:
 2月ぐらいですかね? NHKのニュースに流れたんですよ、サーバーがダウンした。みたいな。

217:
 鯖落ちしちゃったって(笑)。

加藤:
 ありましたね(笑)。

中:
 そう(笑)。あのNHKさんがですよ!? いちゲームのサーバーがダウンしていることが問題だ、と。お昼ぐらいに電話かかってきて。「夜の9時のニュースで流すけどいい?」みたいな。そんなの流しちゃだめだよ! と(笑)。ダメだと言ったんですけど、そのディレクターさんが、自分が遊んでいて、「これはみんながすごく楽しんでいるのに大変だ!」っていうことで(笑)。

217:
 中さんの良いお話を聞けた……。

加藤:
 みんな、涙流してますよ!

中:
 ほんとですか?

加藤:
 ファーストペンギンを地で行く話ばっかりですよ。

中:
 ファーストペンギンねぇ。

217:
 この番組がゲーム番組だったということを思い出させる(笑)。

加藤:
 やっぱ中さんすごいな!

1

2

3

4

5

6

7

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

Amazon売上ランキング

集計期間:2024年3月29日20時~2024年3月29日21時

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ