オーダーは「現状考えうる限り、最強のスマホ音ゲーにしてくれ」
──興さんご自身がこの『ホロライブドリームス』を作るうえで一番大事にしていたことは何ですか?
興氏:
「ホロライブのゲームを作る」となったときに、このゲームを通して、ファンの方々にどうなってもらえたらうれしいのか。そこを一番に考えました。
くり返しになりますが、ひとつはこのゲームを通してホロライブのファンが増えること。もうひとつが、楽曲に注目が集まって「この曲、新しく好きになったな」と思ってもらえること。
もともとのファンの方にとっても、これまで知らなかったタレントさんの名曲を知る機会になりますから。そうやってホロライブという存在をより好きになってもらえたら……ということをすごく考えていました。
──その理想は、開発の現場でもすんなり共有されるものだったのでしょうか。
興氏:
そうですね。クオリアーツさんもその意図を汲んでくださって、同じ思いで並走してくださったんです。
ただ、理想を目指すには難しさもあって。開発会社としては、売り上げのことをいっさい考えないわけにはいきませんから。それでも個人的には、儲けるだけではなく、タレントさんと一緒に「二人三脚」でやっていきたい。そういう思いが私にはありました。
──実際、クオリアーツさん側にはどういうメンバーが集まっているのでしょう。
興氏:
これまで数々の作品を手がけてきたクリエイティブ制作メンバー、開発メンバー、リズムゲームに精通したメンバーや、ホロライブが好きなメンバーも集まって結成してもらっています。
リズムゲームのシステムも、担当の精鋭メンバーたちが一番作りやすいように全部組み立ててもらっているんです。「リズムゲームの遊びやすさに関しては、ほかのタイトルに絶対負けないものを作る」という気概でやってくださっているので、リズムゲーム部分のクオリティは完全にお任せしている感じですね。
私からは「現状考えうる限り、最強のスマホ音ゲーにしてくれ」とオーダーしたんですけれど、本当にその心積もりで作ってくださっています。
──すごいオーダーですね。
興氏:
それに応えられるだけの、「音ゲーリテラシー」の高いメンバーが集まってくれているんです。
たとえば「譜面を見られる機能」。ほかのスマホゲームにはなかなかなくて、従来は外部の有志サイトなどが担っていたものですが、それを公式としてゲームのなかに取りこみました。
ほかにも、クリエイト譜面のような世界中のユーザーさん同士で譜面を作りあえるようなUGC的な機能など、「音ゲーオタクがほしいもの」を入れています。
──開発のなかで「一番作り直した」あるいは「一番議論を重ねた」といった箇所はありますか?
興氏:
根本から作り直すような大きな路線変更は、そんなになかったんです。クオリアーツさんと目指すイメージが最初から共通していた部分が大きかったと思います。
その代わりに時間をかけたのが、「細かいところをどこまで詰められるか」という部分でした。とくに「ミニキャラをどれだけかわいくできるか」はすごく重要だったので、そこには時間をかけています。
──ミニキャラのかわいさというのは、何をどう調整すると変わるものなんですか?
興氏:
「モデルとしてかわいい」と「動いてかわいい」は、また別なんですよね。今回はフィールドを歩き回りますし、ミニゲームもあります。そうなったときに「どの画角でどれぐらい動くと一番かわいいのか」は、クオリアーツさん主体で色々な検証を重ねながら決めていってもらいました。
頭身も、そのなかで決まっていったものです。もともとの案はもう少し頭身が低かったんですが、そのままだとモーションが潰れてしまったり、手の可動域に限界があってかわいらしいニュアンスが表現できなかったり。だからこそ、手もしっかり動かせる今の頭身に落ち着きました。
ミニキャラは少し大げさに動かさないとかわいく見えなかったりもするので、動きに合わせて頭身を微調整する。そういう作業をずっと続けていました。
タレント本人の意思を最大限に尊重する。VTuberでゲームを作るという特殊性
──カバーさんとは、どのような役割分担で進めているのでしょうか。
興氏:
ゲームの内容については、基本的には私とクオリアーツさんにお任せいただいている形になっています。
カバーさんにお願いしているのは、私たちが作ったものをタレントさんにつないでもらったり、タレントさんご本人に監修していただいたり。カバーさんの社内にはスタイルガイドのようなものもあるので、そこを通してもらうなど、「IPとしての見えかた」をチェックしていただいています。
──カバーさんとして「ここは譲れない」「ここは守ってほしい」と大事にされていた部分はどこでしたか?
興氏:
カバーさんのご要望以上に強く感じたのは、タレントさんご本人のこだわりです。最初のうちは、タレントさん側とやりとりさせていただき、その意思を最大限に尊重しながら作っていった、という形でした。
これはホロライブ、あるいはVTuberという存在の特殊性でもあるのかなと思うんですが、ある種「タレントさんひとりひとりがプロデューサー」なんですよね。それぞれに強いこだわりを持たれている。
もちろん、システム的にすべてを実現できたかというと、そうではありません。ただ、やりとりをくり返すなかでタレントさんの好みも少しずつわかってきたので、今後はよりよいものが作れていくのかなと思っています。
──やりとりを重ねるなかで、タレントさんの反応が直接伝わってくることもあったのでしょうか。
興氏:
タレントさんからご意見自体はいただいていたものの、開発中は細かいニュアンスや生の感情までは見えていませんでした。
実際の反応に触れられたのは、リリース後、タレントさんが配信でプレイしてくださっている姿を見てからだった気がします。多くの方が遊んでくださって、喜んでくださっていて……本当によかったな、と。
直近でも、フブキさんやぼたんさんが主宰されたゲーム大会など、我々も楽しく拝見させていただいています。
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──興さんはフリーランスというお立場ですよね。実際、そのポジションだったからこそ結果的にうまくいったこと、あるいは大変だったことはありましたか?
興氏:
ゲームにとっては、いいことのほうが多かったと思います。特定の立場に偏りすぎず、ゲームとユーザーさんのことだけを見て判断できますから。だからこそ、カバーさん、クオリアーツさんと議論を交わしながら、いいものを作れているという実感がありますね。
推しは無料でもお迎えできるようにしたい。プレイヤーに「圧」をかけないための設計
──ちょっとお答えしにくいことをおうかがいするのですが……。ガチャの実装ペースがはやいじゃないですか。推しだけ回すスタイルでないと、なかなか負担が大きいと感じているユーザーさんも少なくないと思うんです。
興氏:
おっしゃるとおり、ペースとしてはどうしてもはやくなってしまっています。
ホロライブのファンには「箱推し」の方もいますけれど、「単推し」の方、あるいは箱推しだけど最推しがいる、という方もいらっしゃいます。ですので私たちとしては、「それぞれのタレントさんに、年に2回はカードやイベントが来る形にしたい」というのをすごく考えているんです。
ただ、そこを基準にスケジュールを組むと、なにぶん登場人数が54人と多い。半年で全員を回すとなると、月に10枚近く追加される計算になります。
最高レアリティの排出確率を高めに設定していたり、ピックアップ対象を選べるガチャなどで推しが出やすい工夫をしたりと調整はしていますが、それでもお客さんに少し「圧」を与えてしまっているかもしれません。
──では、そのプレイヤー側の負担については、どうお考えですか?
興氏:
私たちの基本的な考えかたとして「推しは無料でもお迎えできるようにしたい」というのがあるんです。ゲームの設計上、推しの追加が年2回だとして、1年間しっかりダイヤを貯めていただければ確実に獲得できる、そういうバランス感ですね。
もしかしたら実感できていないユーザーさんもいらっしゃるかもしれないのですが、イベントランキングが高くなくても1年で10万ダイヤ以上獲得できるバランスでもともと組んでいました。ここから還元の意味も込めて、さらに配布数を増やしていっているところです。
──なるほど。イベント面ではいかがですか?
興氏:
イベントの仕様についても、特効(該当カードでポイントが伸びる効果)は用意していますが、それがなくても十分に報酬を取りきれるバランスにしています。
ランキングでも、あまりユーザーさんに「圧」はかけたくないなと思っています。そのため、1位や2位など順位ごとに細かく称号を出すのではなく、メインのランキングは1000位までをひと括りにした称号の設計にしました。
もちろん、ご自身の推しのタイミングで頑張っていただくのは、ひとつの楽しみかただと思います。ただ、そうではないタイミングまで「全部そろえて走らなきゃ」とはならないようにしています。
──ほかにも、そうした配慮をしている部分はありますか?
興氏:
タレントさんの記念日には、あまりガチャを被せたくないと思っているんです。配信を見るなり、グッズを買うなり、記念日は「タレントさんご本人を直接お祝いしてあげてください」と。
今後スケジュールを組むうえで、どうしても記念日とガチャのタイミングが近くなってしまうことは発生すると思います。ただ、「誕生日と直接紐づけてガチャを実装する」といったことは、タレントさんのためなどの意図がない限りはやらない方針です。
そういった意図で設計しているので、「もう全部獲得しなきゃ!」と圧を感じることなく、ゆっくり遊んでいただければと思っています。私たちから言うのもあれですけれど、ぜひ気長に付き合っていただけるとうれしいですね。
ゲームで知った子が、配信で動いている。その驚きを体験してほしい
──ゲームがあって、タレントさんご本人がいて、さらにそのタレントさんがご自身のゲームを配信で遊んでいる。不思議でおもしろい状況ですよね。
興氏:
そうですね。タレントさんたちとも一丸となって、そういうふうに盛り上げていけたらと思っています。
ただ、新規の方にも一定は広がっているものの、私たちとしてはまだまだ広げられるチャンスがあると思っているんです。このゲームをきっかけに、新しくホロライブやタレントさんのファンになってくださる方が増えてほしい。その思いはすごく強いですね。
──ホロライブを『ホロドリ』で知る、という入りかたを作りたいわけですね。
興氏:
『ホロドリ』をプレイしてホロライブのタレントさんを知った方は、まずは「ゲームのキャラクター」として彼女たちに触れることになるわけじゃないですか。その状態でご本人の配信を見たら、なかなかない体験になりますよね。
「あれ? ゲームのキャラクターだと思っていた子が、YouTubeの配信で生きて動いているぞ?」と。普通なら「えっ!?」って驚くじゃないですか。
そういう現象が起きたらおもしろいなというのは、最初から考えていました。このゲームなら、もしかしたらその体験を起こせるんじゃないか、と。今後はそこを広げていきたいなと思っています。
──数字だけ見れば十分に届いているようにも思えます。それでも足りないと感じるのはどのあたりからでしょうか。
興氏:
やはり、ゲームユーザーの中には「VTuberに対するバリア」のようなものがある人もいると思うんです。それに加えて、リズムゲームはとっつきやすさもある一方、「音ゲーだったら自分はいいや」と敬遠されることもあるジャンルなんです。それもあってか、まだ外側へ広げきれていない感覚はあります。
ホロライブファン以外でもかわいいと思えるキャラクター、ゲームのスケール感などをフックに、ホロライブファンもまだファンでない方も楽しめるゲームにしていけるんじゃないか。そこは課題感として持っていますね。
──そのうえで、今後とくにプレイヤーに期待してほしい部分はどこでしょうか?
興氏:
まずは、新しいエリアの追加ですね。このエリア追加こそが、ほかのタイトルにはない本作のひとつの目玉だと思っています。コンセプトにあるのは、「エリアごとにまったく新しい体験をしてもらいたい」ということです。
次の3つめのエリアでは「釣り」が加わり、さらに「対戦型のミニゲーム」も入っています。エリアの追加はリズムゲームではなかなかない要素ですし、私たちとしても、エリアごとに毎回新しい遊びへ挑戦できる。「次はどんなエリアが来るのかな」と楽しみにしていただけたらうれしいです。
また、先日アンケートをさせていただいたのですが、たくさんの熱い想いやご意見をいただきました。
そういったご意見も取り入れながら、より楽しく魅力的なゲームにしていきたいなと思っております。
──遊びの幅が広がるほど、音ゲー部分の存在感は薄まっていきそうにも思えますが。
興氏:
もちろん、リズムゲームの部分をおろそかにするつもりはいっさいありません。先ほどお話ししたとおり、クオリアーツさん側の体制が整っていますから、今後もできる限りしっかり追加していけたらと思っています。
というのも、開発チームがもう「音ゲーオタク」の集まりなんですよ。スマホゲームに限らず、アーケードの音ゲーにもアンテナを高く張っている方々です。
「最高の音ゲーにしてやろう」を目標に作り続けてくださっているので、そのあたりの進化にもぜひ期待していただければと思います。
──リアルの活動とゲームが連動していけば、まさに先ほどの「両輪」になっていきますね。
興氏:
タレントさんの音楽活動との連動についても、やれることはやっていきたいですね。もちろん、ゲーム開発と現実のスケジュールの兼ね合いで難しい部分は出てくると思います。それでも、可能な限りリアルタイムで連動させていきたい。
このあたりはカバーさんともしっかりお話ししているところです。ファンのみなさんにとってはもちろん、タレントさんにとっても「すごくいい体験になるような実装」ができればと思っています。
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