家でゲームばかりやっていると健康に良くないので、たまに街を散歩することがある。
散歩の達人から言わせてもらうと、体を動かすことは散歩の本質ではない。散歩の本質とは、街に残された“痕跡”を見つけるところにあるのだ。
街がどう変化してきたのか。誰がそこに生きていたのか。何が通り過ぎていったのか。散歩とは、路地を通り抜けることで、そこにある様々な記憶を読み取る営為なのである。
『Tokyo Stories』をプレイした時の感覚は、この散歩に近いと感じた。
ゲームの内容自体は、テキストを通じて物語が紡がれるアドベンチャーだ。しかし実際にプレイしてみると、むしろ、そこにあるだけで多くを表現する街の景色の雄弁さや、歩くことによって語られる物語が伝わってくるのである。そして、それがこのゲームの魅力だろう。
今回、東京ゲームショウ2026で『Tokyo Stories』をプレイすることができたので、その内容を紹介しよう。
無人の渋谷が、二人だけの物語を語る
本作の舞台は、誰もいない夜の渋谷だ。主人公の少女スズは、いなくなってしまった親友のユノとの思い出を追って、なぜか無人となっている渋谷の街を歩き回る。
渋谷は、スズにとっては、ユノと出会った大切な場所のようだ。そこかしこに、ユノとの思い出がある場所が存在する。
やがて、スズはユノに再会する。しかし、ユノは、本当にいるのか、幻影なのか、記憶の中の存在なのか、それすら曖昧に描かれている。街も次第に、記憶と現実が交じり合ったような、幻想的な世界とオーバーラップしていく。
そして、スズはふたりの出会ってからの思い出を辿りながら、ユノの影を追うように渋谷を遊歩する。試遊では、ゲームセンターや公園など、渋谷の様々な施設に赴く様子を確認することができた。
この無人の夜の渋谷は、スズがユノと一緒にいた時間と空間が、丸ごと切り取られてしまっているかのようだった。渋谷という巨大な都市が、ふたりだけの物語を語るためだけに使われている。その大胆な語りに、惹き込まれるような魅力を感じた。
一度惹かれると、さらに奥が気になってくるものである。スズは、なぜユノに、そしてこの渋谷に囚われているのだろうか。それらがさらに語られる前に、惜しくも試遊は終わってしまった。
歩くだけで物語を感じる世界
このゲームを魅力的にしている大きな要素のひとつに、そのアート表現がある。
本作の世界は、ピクセルアートと3DCGが合わさったようなビジュアルで描かれる。夜の気配を画面越しにも届ける儚い雰囲気は、画面を見るだけでも十分伝わるだろう。実際に動く画面でプレイすれば、よりノスタルジーと寂寥感を感じられるはずだ。
渋谷の街も、細かいところまで作りこまれており、都市の記憶を雄弁に語っていた。ついさっきまで人が息づいていたようなその空気感は、今そこに誰もいないこととのギャップで、より喪失感を搔き立てる。
本作が、ただ歩いているだけで「ゲームを遊んでいる」と実感できるのも、感性に訴えるアート表現と、丁寧に作られた世界の賜物であろう。
はっきり言って試遊では『Tokyo Stories』の一部に触れたに過ぎない。しかし、その短い時間でも、その魅力が確かに伝わる作りになっていた。
『Tokyo Stories』はSteamでの発売に向けて開発中だ。








