『AION』と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
天族と魔族に分かれての大規模PvP。翼を広げての自由な飛行と空中戦。MMORPGの歴史に名を残した伝説的な一作として記憶している人が大半だろう。
筆者もそのイメージを胸に、正統続編『AION2』の事前テスト「Launch Scale Test」に参加した。
ところが2日間のテストを終えて振り返ってみると、いちばん時間を注ぎ込んでいたのは戦闘でも飛行でもなかった。
ペット集めである。
『AION2』は、NCが手がけるMMORPGで、『The Tower of AION(タワー オブ アイオン)』の正統続編にあたる。天族と魔族の戦い、自由な飛行移動といった前作の魅力はそのままに、Unreal Engine 5によってグラフィックが大幅にパワーアップしている。超大作と呼ぶにふさわしい一作だ。
そんな本作で、なぜ筆者はペットにのめり込んだのか。本作のペットは、ただ集めて愛でるだけの存在ではなかった。それが冒険そのものをどう変えてしまったのかを、お伝えしていこう。
執筆/まちけん
編集/kawasaki
ペットは“眺めるもの”だと思っていた。その思い込みが、ひっくり返った
筆者にとって、MMORPGのペットといえば、後ろをちょこちょことついてきて、眺めて愛でるものだった。乗り物はまた別枠で、コンテンツをクリアした報酬として手に入れ、コレクションしていくもの。以前遊んでいたMMORPGで、筆者はずっとそうやって遊んできた。
だから本作でも、ペットはそういうものだと思い込んでいた。
本作のペットは、フィールドのモンスターを倒していくと手に入る。筆者の場合、同じ種類を10体ほど倒したあたりで、ピロリンという音とともに「ペットになりました」という通知が届いた。
さっそく呼び出してみると、小さくかわいくなったモンスターが後ろをついてくる。やはり、眺めて愛でるタイプのペットだ。かわいいのはいい。
ただ、一緒に戦ってくれるような相棒を少し期待していただけに、やや肩透かしを食らった気分だった。
少し物足りない気持ちを抱えながら次の目的地へ向かおうと、乗り物を呼び出したそのとき……。
なんと、後ろをついてきていたペットが、そのまま乗り物に変身したのだ!
眺めるための存在だと思っていたペットが、自分を乗せて走り出す。ペットと乗り物は別物という筆者の中の常識が、あっさり崩れた瞬間だった。
しかもこの乗り物は、報酬としてもらったものではない。いま目の前のフィールドで、自分の手で倒して手に入れたものだ。そう思うと、ただの移動手段にはない愛着が湧いてくる。
こうなると、話が変わってくる。虫型のモンスター、人型の鳥のモンスターと、目についたものを片っ端から倒してみた。
結果、フィールドにいるほとんどのモンスターがペットになることがわかった。
これに気づいた瞬間、見える景色が一変した。さっきまでただの経験値だったフィールドのモンスターが、すべて“まだ手に入れていない乗り物”に見えはじめたのだ。
筆者は某モンスター収集ゲームなどを遊ぶときは図鑑をコンプしながら進む派だ。RPGでは、その街で買えるいちばん強い装備を金策してそろえてからでないと、次の街へ進めない性分でもある。
報酬を待たなくても、倒せば手に入る。筆者にとっては目の前のフィールドそのものが、埋めるべき図鑑のように思えてきたのだ。
乗り方を見るために、キモいモンスターを狩りに行く
あれも欲しい、これも欲しいと無我夢中で集めていくうちに、モンスターごとに乗り方が違うことに気づいた。
カブトムシのようなモンスターなら、角にまたがる。
キノコのモンスターなら、傘の上であぐらをかく。
このあたりから、ペット集めの動機が変わりはじめた。最初は「あのモンスターが欲しい」だったのが、「あのモンスターにはどう乗るんだろう」に変わっていったのだ。
テスト後半になると、その興味はかわいいモンスターよりも、むしろキモいモンスターに向いていった。スライムに、エイリアンのような虫。見た目はお世辞にもかわいいとは言えないのに、どんな格好で乗ることになるのかが気になって、わざわざ探しに行ってしまう(ペットとはいったい……)。
かわいいから集めるのでも、強いから集めるのでもない。乗り方を見たいから集める。自分でも予想していなかった動機で、筆者はフィールドを駆け回っていた。
そして、プレイ中いちばんペットにしたいと思えるモンスターに出会ってしまう。
ネームドモンスターだ。フィールドのヌシのような、通常のモンスターとは一線を画す強さを持つ特殊なモンスターである。
周囲には、同じくこいつをペットにしたいと考えたらしいプレイヤーたちが集まっていて、即席で討伐隊を組んで挑むことになった。
見知らぬ者同士が、同じ獲物を目当てに自然と集まる。これもMMORPGの醍醐味だ。こいつをペットにできたら、堂々と乗り回して周りに自慢できるぞ!
そんな期待に胸を膨らませて挑んだ結果……。
あっさり負けた。ダメージがまったく通らず、歯が立たなかった。
不思議なことに、戦闘に負けた悔しさはほとんどなかった。代わりにこみ上げてきたのは、ペットにできなかった悔しさだ。そもそもネームドモンスターは、倒せばペットにできるのだろうか。乗り心地はどんな感じなんだろう。次こそは絶対に倒して、ペットにできるか確かめてやる。
負けたことで、かえって収集欲をあおられる結果となった。
ペットが“足”になって、移動の時間が変わった
『AION』シリーズといえば、自由度の高い飛行移動が代名詞だ。筆者も期待を胸に翼を広げてみたのだが、序盤のスタミナではすぐに力尽き、高所から海へ真っ逆さま。
Unreal Engine 5で描かれたリアルな海中は、高所恐怖症で海洋恐怖症でもある筆者にとって、恐怖以外の何物でもなかった……。
それ以来、筆者の移動はすっかりペット頼みになった。
そうしてペットに乗ってみると、移動の時間そのものが別物になった。
ペットは、ダッシュでスタミナこそ減るものの、切れても降ろされずに走り続けてくれる。オートランを使えば、移動はペットに任せきりにできる。その間に筆者がやっていたのは、アイテムの整理や装備の更新。そして、道中ですれ違うモンスターのチェックだ。
「あれはまだ持っていない」「あいつの乗り方はまだ見ていない」。移動中も、頭の中はペット図鑑のことでいっぱいだった。
ペットの恩恵がいちばん大きかったのは、ダンジョンだ。
本作のペットは、ダンジョンの中でも乗って移動できる。ダンジョンには当然、敵がわんさか待ち構えている。それでもペットに乗っていれば、倒す必要のない敵は無視して突っ切れてしまう。
試しに飛んでみたこともあったが、天井の低いダンジョンでは思うように飛べなかった。敵から逃げようにも、スタミナの回復待ちで逃げ切れなかった。
そして今回試した範囲では、ダンジョンの敵は倒してもペットにならなかった。
気づけば筆者の中には、「ペットにできない敵=倒す優先度が低い」という価値観ができあがっていた。本来なら、ダンジョンの敵を倒すのは報酬や経験値のためのはずだ。それがいつの間にか、倒すかどうかの基準が「ペットになるかどうか」に置き換わっていた。
そんな筆者にとって、足の速いペットで敵を振り切れるダンジョンは、ひたすら快適だった。
ただ、天族や魔族としてのランクが上がれば、飛行スタミナも増えていくらしい。今回はそこまで到達できなかったが、いつかは空に浮かぶ島や巨大なクジラのもとへ、自分の翼で飛んでいってみたい。……海に落ちない程度に。
他のプレイヤーのペットは、次の探索への“手がかり”だった
見渡す限りのモンスターをペットにし終え、ようやくメインストーリーに着手しようとしたときのことだ。
クエストを受ける場所には多くのプレイヤーが集まっていたのだが、その中に、筆者の知らないモンスターに乗っている人がいた。
あれ? あのモンスターは捕まえたはずだけど、少し見た目が違う?
急いでそのモンスターの生息地へ向かうと、なんと子連れのモンスターがいた。
心苦しいながらも子どものほうを倒してみると、子どもは親とは別の個体としてペットになった。なるほど、さっきのプレイヤーが乗っていたのは子どものペットだったのか!
この発見は、筆者にとってかなり大きかった。子どもを連れていたり、親分と子分のような関係があったりと、フィールドのモンスターたちはそれぞれに生態系を築いている。
ペットを集めるには、その生態を知る必要があるわけだ。ペット集めが、ただの“狩り”から“観察”に変わった瞬間だった。
他のプレイヤーのペットの見え方も変わった。
乗り物を見せびらかされても、普通なら「いいなあ」で終わりだ。報酬でしか手に入らないものなら、羨ましがるしかない。でも本作では、他のプレイヤーが乗っているペットは、一部を除いてすべてこのフィールドのどこかにいる。
つまり他人のペットは、自慢の種であると同時に、「このフィールドには、まだこんなモンスターがいる」という手がかりでもあるのだ。
そこからは、ひととおり集め終えてメインストーリーに戻ろうとするたびに、通りがかったプレイヤーの見知らぬペットが気になって探しに行く。その繰り返しだった。
さっき見かけたのはトカゲのようなモンスターだった。だとすれば、水辺に棲んでいるのではないか。あの川や湖が怪しい。
生態から当たりをつけて探索に出かけ、目当てのモンスターを見つけたときは、思わず声が出た。
調べれば、生息地はすぐにわかるのかもしれない。でも、あえて調べずに推理しながら探すからこそ、「この先に何が待っているんだろう」というワクワクが生まれる。情報が出そろっていない、サービス開始直後ならではの楽しみ方だろう。
結局、2日間のテストで、メインストーリーはほとんど進まなかった。
眺めて愛でるものだと思っていたペットは、本作では乗り物であり、フィールドを観察する理由であり、他のプレイヤーのペットを探索の手がかりに変えてくれる存在でもあった。
倒したモンスターが相棒になり、その相棒を探すためにフィールドを歩き回る。『AION2』は、フィールドそのものが図鑑になるゲームだった。
実は本稿の執筆にあたって、電ファミの担当編集からはこう聞かされていた。
「超大作MMORPGなんですよ。超大作の、超なMMORPGなんですよ。超が付くMMORPGって、つまり超大作じゃないですか。だから超大作なんですよ」。
正直に言うと、筆者はその“凄さ”の大半をまだ知らない。2日間のテストで触れたのは、ほとんどペットまわりのシステムだけだったからだ。それでも、十分すぎるほど満足してしまった。ペットを集めるだけで、これほどの満足感が得られるMMORPGが、これまであっただろうか。
裏を返せば、ペットだけで2日間が溶けたこのゲームには、種族同士の大規模な戦いも本格的な空中戦も、まだ手つかずのまま残っているということになる。そのすべてに触れたとき、いったいどれほどのボリュームになるのか。今回初めて本作を遊んだ筆者には、想像すらつかない。
だからこそ、10月5日の正式サービス開始が待ち遠しい。
……とはいえ、サービスが始まってまずやることは、もう決まっている。あのネームドモンスターを、今度こそペットにすることだ。





















