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『グランド・セフト・オート』第1作目が誕生した経緯は開発中に発生した些細なバグがキッカケという、現代のファンタジー【マスク・ド・UH 連載第1回】

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ENTER THE VI ~第1回:『GTA』温故知新 知られざる原点の魅力

地上最高峰にして、全世界のゲーマーが注目する『グランド・セフト・オートⅤⅠ』(以下、『GTAⅤⅠ』)。その四半世紀に及ぶ歴史を、ロックスター・ゲームスの過去作を通じて特徴を紐解き、『GTAⅤⅠ』に至るまでの道程を解析する集中連載。

プロローグに引き続き、第1回目となる今回は、偉大なるオリジンにして始祖となるシリーズ1作目、1997年リリースの『グランド・セフト・オート』【※】をフォーカス。怪物級タイトルの原点に迫りながら、徐々に構築され、骨格を表す『GTA』シリーズの世界観について解説したい。

※『グランド・セフト・オート』……1997年10月21日、BMG Interactive(制作はDMAデザイン)からPC向けに発売されたシリーズ第1作目。見下ろし型ドライブゲームの形態でありながら、ギャング組織のチンピラがミッションを実行していくという内容。日本ではPC版とプレイステーション版が発売された。「ナムアミダブツ」「メッタ殺しタイム」など、日本語版は妙な翻訳が特徴。

文責/MASK DE UH(マスク・ド・UH)

GRAND THEFT AUTO(1997年発売)

記念すべき『グランド・セフト・オート』第1作目が誕生した経緯は、開発中に発生した些細なバグがキッカケという、まさしく現代のファンタジー的なスタートとして申し分ない逸話だ。

『グランド・セフト・オートⅥ』マスク・ド・UH氏の連載企画|第1回_001
筆者所蔵のポスター

DMA Design(Rockstar Northの前身)という小規模なゲーム開発会社の新規IPタイトルとして開発中だった『グランド・セフト・オート』は、最初から犯罪を目的とするゲームではなかった。しかし、偶然発見された予測不能な混乱から、新たなゲーム性が見出された。フリーマップ上に点在する公衆電話からミッションを引き受け、指定の車両を盗んで引き渡す。このように『グランド・セフト・オート』は、じつにシンプルなゲームデザインだった。

当時のコンソールはマシンスペックの事情もあったが、上空から見下ろす俯瞰視点の2Dグラフィックが、アメリカ合衆国のニュース速報でよく見かける「猛スピードで逃げる犯人を追う警察車両の空撮中継」を彷彿とさせ、逃げる(または追う)臨場感につながっていく。

そして、ここがもっとも重要だ。筆者が知る限り、1997年の時点で明確に「現代が舞台」で「犯罪者」もしくは「反社会的存在」を主人公としたゲームは皆無だった。せいぜい泥棒、またはホラー映画のキャラクターぐらいしか思いつかない。

『グランド・セフト・オートⅥ』マスク・ド・UH氏の連載企画|第1回_002
画像はロックスター・ゲームス公式サイトより

『グランド・セフト・オート』登場以前までは、「犯罪行為をゲーム=遊戯化する行為に対して──明確な倫理規定が存在しなくとも──市場全体でタブー視」されていた空気が存在していたのだ。『グランド・セフト・オート』は単なる暴力ゲームではなく、来るべきデジタルカルチャー全盛時代に向けた旧態依然とした倫理感覚に対するリセット行為だったのかもしれない。そんな大それた思想はなかったとしても、結果的にそうなった。

シリーズ1作目である『グランド・セフト・オート』もまた、ポップでシンプルなグラフィックにも関わらず、激しいバイオレンス描写が展開された。

とはいえ、ゲームとしての完成度はまだまだ試行錯誤の段階で、運転感覚の重さや独特の視点に慣れなければならないものの、簡素な画面構成でありながら犯罪アクションとしての迫力に満ちている。

また、最初期の段階ですでにLIBERTY CITY(リバティーシティ)、VICE CITY(バイスシティ)、SAN ANDREAS(サンアンドレアス)【※】の3つのエリアが登場している点も見逃せない。以降の『グランド・セフト・オート』シリーズは、つねにこの3つのエリアのリノベーションを繰り返すことで続編を積み重ねてきた。

※リバティーシティ、バイスシティ、サンアンドレアス……『グランド・セフト・オート』でおなじみの都市。リバティーシティはニューヨーク、バイスシティはマイアミ、サンアンドレアスはサンフランシスコがモデルと言われている。このほか、『GTAV』にはロサンゼルスをモデルにしたロスサントス、『GTA:サンアンドレアス』にはラスベガスをモデルにしたラスベンチュラスという都市も登場する。

ちなみに、『グランド・セフト・オート』は日本版リリースもアッサリと実現している。この時代にはまだCEROが存在していなかったため、シスコン エンタテイメントがリリースしたプレイステーション版は、ほぼ無修正の移植が実現。

東京ゲームショウでは、シスコンブース内の巨大液晶ビジョンに「メッタ殺しタイム!」という乱暴なキャッチコピーを散りばめた予告編映像をエンドレスで流すなど、かなり攻めのプロモーションを展開していたが、やはりというか当然というか、この時点で『グランド・セフト・オート』は海の向こうの無名タイトル。攻めの姿勢は当時はあまり話題にならず、セールス面でも苦戦してしまった。

多くの方がご存じのとおり、タイトルの『グランド・セフト・オート』とは直訳すると「偉大なるクルマ泥棒」という意味だが、これには元ネタがある。1977年に公開された『GRAND THEFT AUTO』(日本公開時の邦題は『バニシング IN TURBO』)は、その後『コクーン』、『バックドラフト』、『アポロ13』などのヒットにより一流監督の仲間入りを果たし、『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞監督賞を受賞した映画監督、ロン・ハワードの初監督・主演によるカースタント・アクション映画だ。

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筆者所蔵のポスター

父親のクルマを盗んで恋人と駆け落ちを企み、ロサンゼルスからラスベガスまで爆走の逃避行を繰り広げる若きカップルの物語で、アメ車がドッカンドッカン飛んだり跳ねたり横転する1970年代USA感フルスロットルな内容(クルマを盗んで恋人と逃げるなんて、まるで『GTAⅤⅠ』のジェイソンとルシアじゃないか!)。

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筆者所蔵のポスター

「GTA」という3文字の元祖は間違いなくこの映画、ということからわかるとおり、ロックスター・ゲームスは無類の映画好き。直接的にも間接的にも、多くの映画作品からのインスパイアをゲームの中に散りばめる手法は、すでにこの第1作目から顕著であった。

決して熱狂的なヒットではないにせよ、『グランド・セフト・オート』は、ゲームに込められた野心の匂いを嗅ぎ取ったファンを中心に北米市場で支持を集めた。そして1998年、親会社であるテイクツー・インタラクティブがBMG Interactiveを買収。その際、ハウザー兄弟らによって新しい独立ブランドとして立ち上げられたのがRockstar Games(ロックスター・ゲームス)であり、ここから北米ゲーム市場に怒涛のリリースラッシュを仕掛ける。

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ロックスター・ゲームスを象徴するロゴ。(画像はRockstar Games – Wikipediaより)

1999年4月から2000年1月にかけて、ロックスター・ゲームスは『グランド・セフト・オート』の拡張シナリオパック2本を含む、合計8タイトルを発売。そのうち6本が新作という快進撃だった。たしかにロックスター・ゲームスの本格的な成功は『グランド・セフト・オートIII』以降かもしれない。しかし、彼らが狙う頂上作戦は1990年代終盤から開始されていたのである。

『グランド・セフト・オート London 1969』、『London 1961』(1999年発売)

『グランド・セフト・オート』の拡張シナリオパックについても触れておこう。前作のセーブデータからの引き継ぎでプレイ可能となる『グランド・セフト・オート London 1969』と『London 1961』【※】は、DMA Design/Rockstar系スタジオによって制作された。1969年にロンドンで発生した大規模な若者たちの暴動「モッズ・メーデー」をテーマにしたシナリオ拡張パック。アメリカ以外の他国の、しかも実在する都市が舞台となっているのは本作のみとなっている。

※『GTA London 1969』、『London 1961』……1999年4月に発売されたPC、プレイステーションの拡張パック。舞台は1960年代のロンドン。1999年7月には『Grand Theft Auto Mission Pack #2: London 1961』がリリースされた。

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画像はロックスター・ゲームス公式サイトより

そして、1999年10月、正統続編にして早くもシリーズ4作目、ナンバリング2作目となる『グランド・セフト・オート2』(以下、『GTA2』)【※】がリリースされる。

※『グランド・セフト・オート2』……1999年9月30日、PC向けに発売。『グランド・セフト・オートIII』以降からはナンバリングタイトルはローマ数字になっている。3つの犯罪組織が対立しており、特定の組織に気に入られると報酬の高い仕事をもらえるが、敵対する別の組織から報復を受けるという「信頼度」システムが導入された。

『グランド・セフト・オート2』(1999年発売)

1999年、PC向けに発売された『グランド・セフト・オート2』(その後、プレイステーション、ドリームキャスト、ゲームボーイカラーで発売)。リアルタイムで遊んだことのある方の中には、独特のヌメっとしたグラフィックで展開する新たな『GTA』の世界に新鮮さを感じたことだろう。『GTA2』はシリーズで唯一、ほかのナンバリングタイトルとは無関係の独立したマップ「エニウェア・シティ」が舞台となっている。

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画像はロックスター・ゲームス公式サイトより

プレイヤーはシティの支配を目論む3つの敵対勢力を渡り歩きながら、無慈悲な犯罪ミッションをこなしていくのだが、特筆すべきは周辺組織からの「評価・信頼度」によってステータスが変化するゲームデザインが採用されていたことだ。

「信頼度」という概念は『レッド・デッド・リデンプション2』から本格実装され、『GTAVI』においても重要な役割を担うシステムとして発表されているが、その原点がすでに四半世紀前に思考され、実行されていたことに『GTA』というゲームデザインの思想が垣間見える。

さらに、『GTA』のゲームシステムを代表する、無敵、弾無限、残酷表現マシマシといった悪ふざけ要素満載の「CHEAT CODE」【※】も初代に引き続き実装。『GTA2』ではカーラジオがさらなる発展を遂げており、Lo-fi FM、Futuro FM、HEAD Radioなど、後年にも継続してゲーム中に登場するラジオ局がすでに存在しているところにも注目したい。

※CHEAT CODE……『GTA』シリーズおなじみの要素。ゲーム内で特定のボタン操作やコマンドを入力することで、無敵化や武器の入手、乗り物を目の前に呼び出すなど、特殊な効果を発生させる裏技機能。

オープニングムービーにも言及せねばならない。本作ではオープニングにて実写映像によるドラマが採用されている(ゲーム内に実写映像が使用されているのは『GTA2』のみ)。ここで繰り広げられるアクションと世界観からは、『GTA』が目指す完成形が伝わってくる。

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筆者所蔵のポスター

また、画面デザインには、のちにシリーズのパッケージ共通イメージとして採用される幾何学模様のコマ割りが取り入れられている。さらに言えば、ここに登場する主人公らしき人物の容姿は、『GTAIII』のクロードを彷彿させる容姿である。

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つまりは、こういう流れである。『GTA』シリーズは、ベースとなるPart 1の基礎工事と、第2作の外装工事によって、そのスタイルを完成させつつあったのだ。繰り返しになるが、『GTA』への道は1日にして成らず……である。過去作品を紐解くことで見えてくる歴史の真実は、いつも我々に大きな感銘と発見を与えてくれる。

惜しむべくは、『GTA London 1969』、『London 1961』、そして『GTA2』が日本語版未発売であること。日本だけシリーズの歴史に断絶が発生してしまい、タイトルの連続性を再確認できないという状況は、じつにもったいないと思う次第だ。

そしてこの後、2001年の『GTAIII』発売によって、ビデオゲームの歴史に大変革が起きるわけだが、その話は次回以降に譲りたい。

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画像はSteamストアページより

補足情報として、初代2D見下ろしスタイルは、2004年にゲームボーイアドバンス用ソフト『GRAND THEFT AUTO Advance』【※】で復活を遂げている。リバティーシティが舞台なのだが、『GTAIII』の1年前を舞台にした前日譚で、新主人公Mikeを軸に『GTAIII』の人物も登場する内容となっている。

※『GRAND THEFT AUTO Advance』……シリーズで唯一、ゲームボーイアドバンスで発表されたシリーズ第6作目。2004年10月26日に北米、欧州で発売された(日本未発売)。『GTAIII』のゲームシステムで遊ぶ初代『GTA』、というプレイフィール。

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また、2009年に発売されたニンテンドーDS用ソフト『グランド・セフト・オート・チャイナタウンウォーズ』【※】は、一見3Dでありながら、初代『GTA』を彷彿させる2D見下ろし型スタイルのアップグレード版のようなグラフィックデザインが採用されている。

※『グランド・セフト・オート・チャイナタウンウォーズ』…… シリーズ第10作目となるスピンオフ作品。2009年3月にニンテンドーDS用ソフトとして北米で発売。その後、日本でもサイバーフロントより発売された(その後、プレイステーション・ポータブル版も発売)。『グランド・セフト・オートIV』の翌年の出来事が描かれるが、ストーリー的なつながりはほとんどない。デフォルメされながらも3DCGで描かれたリバティーシティが舞台。

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ちなみに、2027年は『グランド・セフト・オート』1作目の発売から、ちょうど30周年となる。

次回は、いよいよ『GTAIII』が登場し世界に激震が走った、プレイステーション2ユニバースにおける3部作について解説していく。新ジャンルの開拓がゲーム市場に及ぼした影響についても考察したい。

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