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「カンフーパンク」を謳う高速剣戟アクション『Phantom Blade Zero』を遊んできたら、アドレナリンが爆発して手の震えが止まらなかった【先行プレイレポート】

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手が震えていた。

本作『Phantom Blade Zero』について、まず何から書くべきなのかかなり迷ったのだが、まずは筆者自身の率直な体験からお伝えすることにしたい。

ボスを倒した後、手が震えていた。何度もリトライし、立ち回りを調整し、試行錯誤を重ね、見切ったと思った技を何度も喰らい、限られた試遊時間の中で早く倒さなくてはと焦り……倒した。

アドレナリンが爆発したあとの余韻が、なかなか収まらない。こういう経験は、ゲームをやっている人なら誰しも味わったことのあるものだろう。アクションでもRPGでも、極限まで張りつめた緊張の糸が切れた瞬間の心地よい疲労と気持ちよさは、なかなか忘れられるものではない。

ちなみに隣でプレイしていた別の記者さんは、ボスに負けるたびに唸りながら拍手をしたり、両手を上げて「お手上げ」のポーズを取ったりしていた。わかるよ、勝てねえんだもんこのゲームのボス。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_001

本作は、中国のゲームスタジオS-GAMEが手がけるアクションRPG。中国の伝統的な武侠的物語をベースに、スチームパンクなどの要素を融合させた「カンフーパンク」の世界観と、目にも留まらぬ高速剣戟アクションを特徴としたタイトルだ。

とにかく画面がカッコいい。戦っていても走っていても、ただぼんやり立ち止まっているだけでも、サマにならない瞬間がない。

映像はもちろん綺麗なのだが、それは“リアル”ですごいというのではなく、むしろ嘘のつきかたが非常に巧みであるというたぐいの凄さだと思う。戦闘システムもかなり歯ごたえがあり、その一方で探索やリトライまわりは驚くほど親切に作られている。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_002

今回遊んでいてとくに印象に残ったのが、このゲームは「死ぬ」ことのコストが非常に安い一方で、それゆえに「勝ち方」をどこまでも追求させられるような仕組みになっていたことだ。

別に上手に戦わなくてもいい。勝てさえすれば先には進めるし、そのための手段もふんだんに用意されている。けれど「どうせならもっとカッコよく戦いたかった」なんて気持ちが後味を引く。

今回はそんな『Phantom Blade Zero』の先行プレイで感じたことを、順を追って紹介していきたい。

カメラをちょっと上に向けるだけでカッコいい。画面づくりに「匠の技」を感じる

本作は、とにかくサマにならない瞬間がない。
戦っている最中はもちろん、歩いていても走っていても、誰かと会話していても立ち止まっていても、イベントシーンはもちろんあらゆる画面が「サマになっている瞬間」になっている。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_003

プレイしてみて改めて思い出したのが、過去に行われていたインタビューの中で、開発陣が本作の目指すプレイ体験を「誰もがカンフーマスターになったように感じられる」ことだと語っていたことだ。

カンフーマスターとはどんなモノか?
筆者はカンフーにも「武侠モノ」というジャンルにも、それほど詳しいわけではない。けれどその言葉からイメージするのは、いわゆる山水画のような世界観だ。かなり乱暴な言い方をすれば、それはウソの世界観だということになる。

たとえば近代の西洋絵画では、遠近法などを用いて、現実の空間をいかに整合的に描くかということが重要な課題のひとつだった。一方で、伝統的な山水画では、必ずしも特定の視点から見た空間を正確に再現することが目的ではない。山や川、風や木々といったものが持つ気配や、その景色から立ち上がってくる感覚そのものを表現しようとする側面がある。

要するに、「現実の山」ではなく「一番キマっている山という概念」を描こうとする試みである。筆者の感じた『Phantom Blade Zero』のカッコよさは、それに近い。「このシーンはこう見えるのが一番カッコいい」という美意識を猛烈に感じさせるのだ。

ただ主人公が立ち止まっているだけのシーンでも、ちょっとカメラを上に向けてみるだけで、なんだかものすごく絵になる。奥に山や空などの遠景が広がり、その手前に主人公が立っていて、画面の手前には植物などが配置されている。そうした画面の組み合わせが、いちいちキマっているのだ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_004

たぶんこれは「リアル」な風景ではないかもしれないが、真に迫る「リアリティ」がある。それは戦闘アクションについても同様だ。

たとえばワイヤーアクションを多用したカンフー映画などでは、登場人物が信じられない高さまで跳び上がったり、空中でありえない動きを見せたりと、重力を無視した現実離れしたアクションを平然と繰り出したりする。

こうした演出は、物理法則に忠実かと言われればもちろんそうではないのだが、だからといって作品の説得力を損なうわけではない。むしろ、現実離れした動作を取り込むことで、武術の凄みや達人の超人的な強さが、いっそう鮮やかに表現されている。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_005

本作は『仁王』シリーズや『隻狼』などからの影響が指摘されているが、アクションのケレン味の強さは、それらよりも遥かに強い。剣を振るい、飛びかかり、飛び退り、敵の攻撃を受け流す。ひとつひとつの動作は大きく誇張されているのだが、けれどそれらが連続したアクションとしてつながると、不思議なくらい違和感がない。めまいがしそうなほどのめくるめく達人の妙技に、惚れ惚れしてしまう。

本作は香港映画のカンフースターであるドニー・イェン氏をクリエイティブコンサルタントとして招き、モーションキャプチャーなどの指導にあたってもらったというが、どう動けばカッコいいのか、そしてどう動けばそれが自然に感じられるのか、というところまで考え抜かれているからなのだと思う。

どんなプレイヤーでもカッコよく戦える。でも、勝つためには技術がいる

「カッコよさへのこだわり」は、実際の戦闘システムにも強く表れている。本作では、プレイヤーがそれほど意識していなくても、戦闘が自然と見栄えのするものになっていく。

たとえば雑魚戦などで複数の敵に囲まれたとき、特に攻撃ボタンの操作を変えていなくとも、自然と周囲の敵を巻き込むような派生動作につながる。複数の敵を相手取るカンフー映画の主人公のような動きになっていくのだ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_006

敵を派手なアクションで仕留める、いわゆる「処刑アクション」もある。これは相手の体力が一定以下になった状況で、おそらく特定の態勢などの条件を満たしたときなどに発生するものだが、画面に表示されたボタンを押すだけで、専用のフィニッシュ演出が繰り出される。

操作自体は非常に簡単で、別に処刑アクションを使わず通常の攻撃で敵を倒しても問題はないのだが、使えるなら使いたくなってしまう。だってカッコいいので。

こうした仕組みのおかげで、本作は戦闘中も「サマにならない」場面が非常に少ない。プレイヤーがそれほど高度な操作をしていなくても、画面のなかでは超人的な剣戟アクションが繰り広げられる。アクションゲームが苦手な人でも、少なくとも自分の操作でカッコいい動きを繰り出す楽しさには、比較的簡単に触れられるはずだ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_007

ただし、誰でもカッコよく戦えることと、誰でも簡単に勝てることは、まったく別の話だ。端的に言うと、本作のボス敵はとにかく強い。

普通に剣を振るっているだけでは、まともにダメージを与えることさえ難しい。こちらの攻撃をガードしたり、回避したりして平然といなし、なかなかダメージが与えられない。

ここで重要になるのが「殺気ゲージ」というシステムだ。本作では主人公にも敵にも殺気ゲージが存在し、これが戦闘の駆け引きに大きく関わってくる。敵の殺気ゲージを削りきると、相手の体勢が崩れ、一定時間無防備な状態になる。こちらの攻撃が通じにくい強敵であっても、ゲージさえ削りきれば、確実に攻撃のチャンスが生まれるわけだ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_008

このゲージはこちらの攻撃をガードさせることでも削れるが、より重要なのが相手の攻撃をガードすることだ。相手の攻撃をガードすることでも殺気ゲージを削ることはできるため、極端な話、ガードボタンを押しっぱなしにしていても、相手の攻撃を受け止めつつゲージを削ること自体は可能になっている。

ただし、当然ながらそれだけでは上手くいかない。敵の攻撃をガードする際には主人公側の殺気ゲージも削られてしまうからだ。こちらの殺気はガードによって消費するほか、強力な攻撃を繰り出す際にも使用する。そしてゲージを使い果たせば、自分自身も無防備になってしまう。

攻撃に使えば防御の余裕がなくなり、防御に使いすぎれば反撃する余力がなくなってしまうという、なかなか悩ましい関係になっている。

そこで必要になるのが、タイミングよく攻撃を弾くジャストガード(パリィ)や、回避行動だ。ジャストガードを成功させれば殺気を消費せずに攻撃を受け止められるし、敵に特定の予備動作が発生する攻撃をジャストガード/回避することで発動する「幽歩」を決めれば殺気ゲージが完全に回復する。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_009
赤い光はガード不可で、回避によって避けなければいけない
『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_010
「幽歩」が発動すると一瞬で相手の背後に回り込み、攻撃のスキが生まれる

こちらの攻撃中に殺気ゲージが切れてしまった場合は、武器を切り替えることでもゲージが完全回復。流れるような連撃を叩き込むことで、手を止めずに攻め続けるといった、まさにアクション映画さながらのワザマエを披露することもできる。

攻撃がガードや回避によっていなされてしまえば、なかなか体力へのダメージにはつながらないし、そのぶんだけ自身の隙を晒すことにもなる。そのため、強敵を相手にしたときほど、敵の攻撃をどう受け止め、どう崩すかということが重要になってくる。

ガードや回避の精度が低いと、いずれこちらの殺気が尽きてしまう。とくに高難易度では、敵の攻撃を正確に見極める技術が要求されるため、漫然とガードし続けているだけでは勝つことは難しい。ギリギリの緊張感を常に要求してくるゲームなのだ。

「必ず続きから始められる」親切さと、「絶対に続きからしか始められない」厳しさ

さて、そんな本作だが、実際に遊んでいて意外だったことがもうひとつある。それが、探索やリトライに関する設計だ。

これだけ戦闘が難しいゲームなのだから、探索もかなり厳しいのではないか。最初はそんなふうに思っていたのだが、少なくとも今回遊んだ範囲では、むしろ逆の印象を受けた。本作の探索はかなり親切に作られており、その象徴ともいえるのが、各地に存在する「鐘」だ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_011

これは『ダークソウル』シリーズでいう「篝火」のようなもので、探索中のチェックポイントとして利用できる。体力などを回復させたり、ファストトラベルの起点になったりするものだ。ただし大きな違いとして、本作では、鐘を使っても一度倒した敵が復活しない。

一般的な高難度アクションゲームでは、回復地点を利用すると道中の敵も復活し、また同じ場所で戦い直さなければならないことがあるが、本作では一度倒した敵は基本的にもう二度と出てこない。つまり鐘は、単純に使い得なのだ。

おかげで道中の雑魚敵との戦闘で多少失敗しても、その後の探索に失敗の影響が長く残ることは少ない。敵を倒したら回復し、準備を整えて次へ進めばいいし、死んでしまっても過去の戦闘を何度もやり直す必要がない。この快適さは、思っていた以上に大きかった。

一方で、こうした仕様は単に親切なだけではないとも感じられた。一度倒した敵が復活しないということは、その敵との戦闘が「一度きりの体験」になるということでもあるからだ。

強敵を倒せれば、単純に嬉しさはある。
けれどたとえば、せっかく派手な処刑アクションが用意されているボスでも、それを見ずに倒してしまえば、同じ戦闘をもう一度やり直して確認することはできない。あるいは、ものすごく苦戦した末にどうにかボスを倒せたとしても、その勝ち方があまりにも泥臭かった場合、「いや、もうちょっと上手く戦えたんじゃないか……?」という気持ちが残ってしまうこともある。

しかし、もうその戦闘は終わってしまった。勝ってしまったのだから、仕方がない。
どんな敵でも、一度倒してしまえば、新たにゲームを始め直さない限り、もう同じ場所で戦えることは二度と無いのだ。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_012

一度倒した敵が復活しない、というのはボス戦においてもそうだ。本作では、ボスの第1形態を倒して第2形態で敗北した場合、次の挑戦では第2形態から再戦できる仕組みになっていた。しかも、再戦時にはこちらの体力や回復アイテムなどが整えられた状態から始められる。

ただでさえボスが強いゲームなので、第1形態を何度もやり直さずに済むのは非常に助かる。助かるのだが、こうなってくると今度は別の感情が湧いてくる。というのも、第1形態に勝ってしまったということは、もうその形態には戦えないということでもあるからだ。

あんなに苦労したのに、あの攻撃をようやく避けられるようになってきたところだったのに、もう一度挑戦してみることはできない。もちろん、先へ進めることは嬉しい。それでも、自分のなかではまだ納得できる戦い方ができていなかった、という気持ちが少なからず残ってしまったのである。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_013
勝利すると「斬」の1字が陽炎のように現れる。めちゃくちゃ気持ちいい

もちろん、これは非常に贅沢な悩みだ。本作はいわゆる「死にゲー」で、死ぬことで敵の行動を憶えていくゲームだが、プレイヤーが死ぬことを過度に罰することはない。

けれど、あらゆる戦闘において、それが「1度きりの戦い」であることを突きつけてくるゲームでもある。本作は「必ず続きから始められるゲーム」であると同時に、「続きからしか始められないゲーム」でもあるのだ。

だからこそ、死ぬことのコストは低いはずなのに、いざ戦闘が始まると中途半端な「逃げ」のプレイはできないという感覚に導かれる。「できることなら、この一戦をカッコよく終わらせたい」と思わされるのだ。

これは、死ぬことに大きなペナルティがあるからこそ緊張感が生まれる、という一般的な高難度ゲームの設計とは少し異なる感覚だと思う。本作では、プレイヤーに失敗を許容する一方で、常に一度きりである戦いにどのような形で勝利するのか、という部分に重みをもたせているのだ。

どうしてもボスに勝てません → 太古より伝わる人類の必殺戦術「囲んで棒で叩く」

さて、ここまで本作のアクションがいかにカッコいいかという話をしてきた。だが、実際のところプレイヤーである筆者が、毎回そんなにカッコよく戦えていたかというと、もちろんそんなことはない。何度も言うけどこのゲームめっちゃ難しいんだって。

その代表例が、PVなどにも出てきた獅子舞風のボス。こいつが本当にめちゃくちゃ強かった。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_014
画像はEnter the Wulin: Gameplay & Story Deep Dive of Phantom Blade Zero – YouTubeより

本作はプレイ中いつでも難易度を変更できるようになっていたので、恥を忍んで一番下の難易度で挑んでみたが、それでもまだ勝てない。

まず動きが読みにくい。動物的な荒々しい動きをしたかと思えば、次の瞬間には妙にトリッキーな動きを見せてくる。吐き出される炎は煙幕のように視界を遮って混乱させるし、獅子舞らしい(?)予測のつかない挙動で、こちらの攻撃のタイミングをずらしてくるのだ。最低難易度とは言え、一部の攻撃はガードをトチれば普通に即死。

正面から戦うなら相手の攻撃を見切り、適切にガードや回避を決めて反撃していく必要があるのだが、そんなことができるならはじめから苦労はしていない。どうしたものかと考えていたところで、ふと思い出したのが、本作に用意されている「副武器」の存在だった。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_015
今回の試遊範囲で使用できた副武器のひとつ。盾などの耐久力を一撃で大きく削れる

副武器にはさまざまな効果を持つものが存在しており、相手の盾などを一撃で粉砕できる巨大な斧から、遠距離攻撃が可能な弓まで、その種類は幅広い。中には、ゲーム中で敵としても登場する僧侶のようなキャラクターを3体召喚し、一緒に戦わせるものまである。

そこで思いついたのが、太古より人類に伝わる必殺の戦術「囲んで棒で叩く」である。

いかなるワザマエであろうとも、四方を囲まれてぶっ叩かれればひとたまりもない。なんかエラい人もそんなことを言っていたような気がする。というわけで、さっそく副武器で仲間を召喚し、獅子舞のボスをみんなでボコボコにすることにした。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_016
画像はEnter the Wulin: Gameplay & Story Deep Dive of Phantom Blade Zero – YouTubeより

で、結果から言うとこれはうまくいった。やはり戦争は数なのである。

「できることなら、この一戦をカッコよく終わらせたい」みたいなことを言った口で言うのはなんだが、それでも勝ちたい瞬間は誰にでもある。特に試遊の時間が迫っているときとか。

もちろん、それですべてが簡単になるわけではない。相手は依然として強敵だし、攻撃をモロに受ければあっさり死ぬ。けれど正面からの剣戟だけでは突破できなかった敵に対して、別の戦術を持ち込むことで勝機を生み出せるのは、それはそれでなかなか気持ちがいい。

武術の達人としてはどうかというのはさておいて、「困ったらゴリ押しする」という選択肢があるのは、アクションRPGとしての懐の深さを感じるところでもある。

もちろん、「こんなダセえ戦い方でいいのか?」 という問題は残る。
もちろん、いいのである。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_017
ちなみに、第1形態を倒すと、棒に乗って戦う中国獅子舞の舞踊さながらの第2形態戦が始まるが、足場が悪いので坊主は召喚できない(n敗)|画像はEnter the Wulin: Gameplay & Story Deep Dive of Phantom Blade Zero – YouTubeより

敵を倒せたのだから大成功だし、実際にゲーム側が用意している戦術なのだから、何も問題はない。ないのだけれど、あれほどカッコいいアクションができるゲームで、仲間を呼んでタコ殴りにするというのは、なんだか少しだけもったいないような気もしてしまう。

強敵と激しい剣戟を繰り広げ、ギリギリのタイミングで攻撃をいなし、鮮やかな反撃で仕留める。そんなカッコいい勝利を収められるかもしれなかったのに、筆者が選んだのは「みんなで囲んでボコボコにする」ことだった。

別に後悔しているわけではないし、勝てたことは素直に嬉しい。ただ、それと同時に、もう少し自分の腕で戦いたかったという悔しさも残っている。相手があれだけ強かったのだから仕方がない、と頭では理解しているのだが、どうにも釈然としなさも残る。

そして、この「勝ったのに悔しい」という感覚こそが、個人的には『Phantom Blade Zero』のおもしろさを象徴しているように思う。

本作には、プレイヤーが苦戦しているときに力を貸してくれる仕組みがいくつも存在する。そうした仕組みを活用すれば、純粋なアクションの腕前だけでは勝てない敵にも勝利できる。だが、その一方で、ゲームのあらゆる演出が「もっとカッコよく戦える」という可能性を提示してくるのだ。

1度きりだからこそ、最高のアクションを自分自身で目指したくなる

本作では一度倒した敵は基本的に復活せず、ボスも途中まで倒せば続きから挑戦できる。これは初回プレイを快適にするための設計であると同時に、ゲーム中で体験する戦闘のひとつひとつに、ある種の取り返しのつかなさを与えている。

まずは自分なりの方法で戦い、勝利して先へ進む。そして戦いが終わったあとに、「もっと上手くできたのではないか」「あの攻撃はこう処理すればよかったのではないか」と振り返る。そんなことを繰り返していると、自然ともう一度最初から遊びたくなってくる。少なくとも筆者は、今回の試遊を通じてそんな気持ちになった。

ちなみに、本作には通常よりさらに難しい高難度モードも用意されている。開発者が別途行ったインタビューによれば、最高難度ではAIがプレイヤーの行動に応じて攻撃の組み立てを変えることもあるという。つまり、敵の行動パターンを丸暗記すれば必ず勝てる、というわけでもないらしい。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_018

さらに本作には、2周目以降に解放される特別な高難度モードも存在する。これは最高難度と同等の敵AIを相手にしつつ、死ぬたびに残り時間が1日ずつ減っていくというものだ。物語上、主人公はあと66日しか生きられないと語られており、このモードではその残り時間が死ぬたびに減ってゆく。

最低難易度ですら血反吐を吐きながらプレイしていた筆者にとっては気が遠くなりそうだが、こうした仕組みも「一度きりの戦闘体験」という本作の方向性と、どこか通じるものがあるように思う。

同じボスに挑んだとしても、プレイヤーの行動によって相手の戦い方が変化するのであれば、そこで繰り広げられる戦闘は必ずしも同じものにはならない。戦闘のたびに異なる判断を要求されるという点で、本作の武侠アクションをより深く味わうための仕組みになっているのだろう。

『Phantom Blade Zero』先行プレイレポート|評価・感想・レビュー_019

考えてみれば、これほど映像の美しさにこだわったゲームなのだから、プレイヤーが「自分もカッコよく戦いたい」と思うのは、ごく自然なことだ。しかも本作では、そのためのアクションがしっかり用意されている。複数の敵を流れるように斬り伏せる動作も、強敵の攻撃を華麗にいなす瞬間も、派手な処刑アクションも、実際にプレイヤー自身の操作で繰り出せる。

最初はただ見ているだけでカッコいい。やがて、なんとなく操作しているだけでもカッコいい。そして最後には、自分の技術によって、もっとカッコよく戦いたくなってくる。それが1度きりの体験なのだとしたらなおさらだ。単なる映像表現としてのカッコよさが、いつの間にかプレイヤー自身の目標に変わっていくところに、『Phantom Blade Zero』の持つ大きな魅力があるのだと思う。

本作『Phantom Blade Zero』は、PS5/PC向けに2026年10月29日発売予定となっている。

編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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