2026年11月13日、『マジック:ザ・ギャザリング』(以下、『MtG』)に、最新セット『マジック:ザ・ギャザリング | スター・トレック』が登場します。(公認店舗では11月6日に先行販売開始)
本セットは、作品世界の垣根を超え、他作品と『MtG』が夢のコラボを果たす「ユニバース・ビヨンド」の最新作。今回コラボする『スター・トレック』とは、1966年9月8日にアメリカで放送が始まったSFドラマです。これまでにアニメを含む10作品以上のテレビシリーズと14本の映画が制作されており、今年は記念すべきシリーズの60周年でもあります。
遠い未来を舞台に、宇宙船の乗組員たちが新しい生命や文明との出会いを求めて、まだ誰も行ったことのない星々を探検していく……そんな『スター・トレック』の60年におよぶ歴史が凝縮されているのが、本セットの醍醐味と言えるでしょう。
ちなみに、『MtG』に初めて「宇宙船」メカニズムが登場したのは、2025年8月1日に発売された『久遠の終端』でした。実は、『MtG』のデザインチームが『スター・トレック』の制作に取りかかったのは、別のチームによって『久遠の終端』が開発中のことだったそうです。
両チームとも独自に宇宙船のギミックを考えていましたが、最終的には『久遠の終端』の形にそろえたとのこと。偶然から生まれた連携って、エモくないですか?
今回電ファミでは、WotC様に提供を受け、エモさと歴史をたたえた『スター・トレック』に収録されたカードを世界最速にてプレビューさせていただくことになりました。さっそく、カードの性能を見ていきましょう。
新カード:《ホロ・エンジニア》
《ホロ・エンジニア》 2(緑)(緑)
クリーチャー 人間・工匠
このクリーチャーが戦場に出たとき、無色の3/3のイリュージョン・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。
あなたのコントロール下で1つ以上のトークンが生成されるなら、代わりに、その数に等しい数の無色の3/3のイリュージョン・アーティファクト・クリーチャー・トークンを生成する。
《ホロ・エンジニア》に描かれている人物は、その特徴的な髪型から考えるに、フレーバーテキストにも記載されている「ルイス・ジマーマン医師」だと思われます。このキャラクターは、自分の姿をもとに医療用ホログラム「ドクター」を作った人物。1993年から1999年にかけて放送されていた『スター・トレック:ディープ・スペース・ナイン』で初登場したそうです。
作中では、宇宙ステーションに勤める医師をモデルとした、新たなホログラムを試作しているシーンが存在するようなので、そちらを元に制作されたカード、ということでしょうか。ちなみに本カードのフレーバーテキストは、試作品の目に「生気がない」とモデル本人から言われたことを受け、ジマーマン医師が改善を約束したときのセリフだとか。
さて、肝心のカード性能を見ていきましょう。4マナで3/3が二体並ぶわけですから、実質6/6のスタッツと言えます。筆者の初見での感想は「リミテッドで強くね!?」でした。
「緑はクリーチャーの色」という格言もあるほど、コストに比して大きなサイズが割り当てられる傾向にある緑においても、4マナ6/6というのはかなりの高パフォーマンスです。
たとえば、2011年に登場した《生命の接合者》が、《ホロ・エンジニア》と同じく4マナで3/3のトークンを生み出す能力を持ちつつも自身のサイズは1/1だったことを思えば、15年の月日とともに、どれほどクリーチャーの性能が向上しているかが一目瞭然です。これが令和の『MtG』か……。

しかも《ホロ・エンジニア》は自身が戦場にいる限り、プレイヤーのコントロール下で出てくるトークンがすべて3/3になるという、無視するにはあまりにインパクトの大きい常在型能力が存在しています。
白のカードがよくおまけで出してくる1/1や、《宝物》《手掛かり》《食物》まで3/3になるのは、盤面の取り合いにおいてかなりの脅威でしょう。イリュージョンやアーティファクトを強化する手段があれば、なおさらです。
ただし、トークンの置換効果は強制なので、「マナ加速をしたかったのに、宝物が3/3になってしまった!」など、思いがけない事故が生じる可能性もあることには要注意です。
トークン生成以外で、リミテッド目線で相性のいいカードの種類としては、いわゆる「アーティファクト・シナジー」が挙げられます。今回のセットでも、アーティファクト・クリーチャーの性能を向上させるカードが入っています。たとえば《強襲ドローン》。

修正値自体は+1/+0と微々たるものですが、リミテッド環境ではパワーが4になると大抵のクリーチャーを相打ち以上に持っていけますから、見た目以上の恩恵を感じられるかもしれません。
そして、《ホロ・エンジニア》は環境を定義しそうなボムレアと相性がいいのも熱いです。

戦場に出るか攻撃するたびに1/1を出すことができる、強力な効果を持つ神話レア《ジェイムズ・T・カーク船長》。《ホロ・エンジニア》と組みあわせることで、出てくる1/1トークンが3/3になります。継続的に能力を使うことができれば、ボード・アドバンテージは盤石でしょう。
神話レアとレアの組み合わせということで、なかなかデッキに組み込むのは難しそうですが、一度は決めてみたいコンボです。
この常在型能力……“悪さ”をする気しかしない! とりあえずモダン以下で使える3枚コンボ見つけました
続いては、《ホロ・エンジニア》の構築戦における活用法を考えてみましょう。スタンダードであれば、マナカーブに沿って動いていける《グルメなク族、クイナ》との相性がよさそうです。

《クイナ》には、トークンが出てきたときに追加で1/1のカエル・クリーチャー・トークンを出すという効果があります。
なので《クイナ》のいる盤面に《ホロ・エンジニア》を出すと、《ホロ・エンジニア》のトークン生成に誘発して《クイナ》からカエルが生成される……はずが、《ホロ・エンジニア》によって置換されて3/3のイリュージョンが出てくるので……最終的に、《ホロ・エンジニア》を含めて3体の3/3クリーチャーが場に出てくることになると思われます。(ややこしい!)
逆に、相手にした時、相性の良くないカードとして真っ先に思いつくのは《金色の守護者、セントリー》でしょうか。

5/5飛行、警戒、破壊不能という、マナコストからは想像もできないような化け物じみたスタッツを持つこのカードですが、戦場に出た時、対戦相手の盤面にも5/5飛行、破壊不能のトークンを出してしまう強烈なデメリット能力を持っています。
しかし、こちらの盤面に《ホロ・エンジニア》がいると、せっかくのトークンが3/3という可愛らしいサイズに化けてしまう、かなしい“友情コンボ”が成立してしまうんですね。
……などと、スタンのカードとの組み合わせをいくつか考えてみましたが、このカードの本領が発揮されるのは、より多くのカードが使える下環境でしょう。軽くカードプールを見渡しただけでも、《ホロ・エンジニア》を利用した無限コンボを発見してしまいました。
キーになるのは、《無慈悲な略奪者》です。

《無慈悲な略奪者》は、自分がコントロールしている、ほかのクリーチャーが死亡するたびに宝物を生成します。よって、《ホロ・エンジニア》とともに場にいると、
① 自軍クリーチャーが死亡
② 《無慈悲な略奪者》の宝物生成が誘発
③ 《ホロ・エンジニア》の置換効果で宝物の代わりに3/3のイリュージョン・アーティファクト・クリーチャー・トークンを生成
つまり変換されたクリーチャー・トークンを無制限に生け贄に捧げる手段があれば、そのたびに②と③が繰り返されるので、無限コンボの完成です。
いやしかし、クリーチャーやアーティファクトを生け贄に捧げてプレイヤーにダメージを与える、そんな夢のようなカードがあるわけ……

ありました。
《ゴブリンの砲撃》はクリーチャーを生け贄に捧げることで対象に1点のダメージを与えることができます。そしてクリーチャーをサクれば《無慈悲な略奪者》の能力が誘発し、それを《ホロ・エンジニア》が置換して、またクリーチャーが出てきます。
つまり、3枚揃えば無限ダメージ。相手のライフがいくつだろうが関係ありません。
3枚を揃えてダメージの無限ループを完成させて、
「このループを1兆回くり返して1兆ダメージです」
と宣言すれば勝利です。
同様の理屈で、《ファイレクシアの供犠台》などを利用した無限マナも可能です。まあ、さすがにモダンやレガシーでこんなコンボを成立させている余裕はなさそうなので、コマンダー向きのコンボかもしれませんが、筆者がちょっと考えただけでも無限を成立させてくれるわけですから、広大な多元宇宙にひしめくデッキビルダーの皆様なら、きっとさらなる悪用方法を発見してくれるでしょう。
ちなみに、コマンダーで上記のコンボをやろうと思うと《ホロ・エンジニア》が緑、《無慈悲な略奪者》が黒、《ゴブリンの砲撃》が赤ということで、黒赤緑のジャンドカラーが要求されます。その色の統率者として、筆者が個人的に相性がよさそうと感じたのは、以下の2枚です。


《カーの空奪い、プローシュ》と《焼却するもの、ジアトラ》は、どちらもトークンを出しつつクリーチャーを生け贄に捧げられます。つまり、3枚の無限コンボに固執せずとも、それぞれのカードと単体で相性がいいわけですね。
《プローシュ》は、唱えると支払ったマナの数だけ0/1のトークンを出し、クリーチャーを生け贄に捧げて+1/+0できます。出てくるトークンはかなり貧弱ですが、《ホロ・エンジニア》がいれば3/3というそこそこのサイズになりますし、《無慈悲な略奪者》とあわせれば無限サクリによって《ブローシュ》のパワーを無限に上げられます。
《ジアトラ》は、自分のターンの終わりにクリーチャーを1体生け贄に捧げてそのパワーぶんのダメージを与え、宝物を3つ生成します。宝物は3/3に置き換わるので、3/3を捧げれば3点を与えながら3/3が3体ずつ増えていきます。
また、《ホロ・エンジニア》の出すトークンがイリュージョンであることに着目すると、《非実在の王》のようなイリュージョンをサポートするカードと併用したイリュージョンデッキを考えてみるのも、面白いかもしれません。

ややマイナーなカードですが、《翼の疾風》というカードとの併用も面白そうでした。

《翼の疾風》は緑白青のインスタントで、攻撃しているクリーチャーの数だけ、1/1飛行の鳥トークンを出します。
自身のアタックにあわせてキャストしてブロッカーを立てることもできますし、相手のアタックに対してブロッカーを並べることもできますし、このカードは面白ことに誰が誰に攻撃しているか、という部分を問わないので、他人同士の殴り合いを横目に自身の盤面を強化することもできます。
出てくるトークンは1/1と貧弱なのですが、《ホロ・エンジニア》がいればサイズが一気に3/3に。飛行こそ消えますがスタッツ的には大幅な強化です。
以上、《ホロ・エンジニア》を紹介させていただきました。最初にこのカードを見たときは、「リミテッドでは強そうだけど、なかなかいぶし銀な能力だなー」と思ってました。ですが、調べていくうちに、下環境で3枚の無限コンボを見つけることができ、なかなか悪用しがいのある、面白い性能をしていると感じました。
『マジック:ザ・ギャザリング | スター・トレック』は11月13日より発売予定(公認店舗では11月6日に先行販売開始)です。それでは多元宇宙の皆さん、長寿と繁栄を。

