1991年にシリーズ第1作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』が発売された「ソニック」シリーズは、今年で35周年を迎えた。
今年に入ってからは『ソニックレーシング クロスワールド』のシーズン2や世界大会の開催など、レーシングゲームとして既存ファンへ力強く「ソニック」らしさを届ける姿勢に加えて、インディー色の強い『SONIC PICO PARK』の展開や、『フォートナイト』とのコラボ、プロゲーミングチーム・ZETA DIVISIONへの“加入”など、予想外の領域にまでIPとしての広がりを見せている。
今回、東京ゲームショウ2026の会場で『ソニック』シリーズ総合プロデューサーの飯塚隆氏にお話をうかがった。「ソニック」シリーズが35周年を迎えて何を思うのか、IPに携わるゲーム開発の姿勢、これから向かう「目指す先」のビジョンなど、「ソニック」の“今”を聞くことができた。

ソニックが35年愛され続ける理由と、受け継がれてきた「ソニックらしさ」
──ソニックシリーズは今年で35周年を迎えましたが、本シリーズがここまで長く愛され続ける理由はどこにあるのでしょうか?
飯塚隆氏(以下、飯塚氏):
我々はずっと、ファンの皆さんに常に「驚きと新しい感動」を与えるという方針のもとで進めています。
というのも「ソニック」シリーズでは、単純にシリーズを1、2、3、4……と続けていくのではなく、毎タイトルごとに「今度のソニックはこんなことをやる」「つぎはこんなことをやる」とまだ体験したことのない、常に驚きのある新鮮な遊びを皆さんに届けたいからです。
ファンの皆さんに向けて「おもしろいものを届け続ける」という想いを大切にしてきたことが、35周年という記念すべき結果に繋がっていると思います。
──30周年のとき、飯塚さんはソニックの5年後をどのような姿として描かれていましたか。そして今、それはどこまで実現したとお考えですか?
飯塚氏:
5年前は、映画『ソニック・ザ・ムービー』【※】が公開されて、「ソニック」に対する知名度が飛躍的に上がったタイミングでした。映画を通してさまざまな人に「ソニック」を知ってもらい、そのタイミングで「手の取りやすいゲーム」を提供することでソニックの現状を知ってもらう。これが30周年時点での大きな目標でした。
※セガのゲーム「ソニック」を原作とする実写映画シリーズ。1作目『ソニック・ザ・ムービー』は2020年6月、2作目『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』は2022年8月、3作目『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』は2024年12月に公開。今後4作目の公開も控えている。
そこから次のステップへの導線として、より革新性のあるソニックタイトルで「ソニックのゲームはいまこんなに進化している」ということを伝えていく。
『ソニックフロンティア』では「オープンゾーン」【※】という、まだ誰も体験したことのない新しいソニックを提供することができましたし、『ソニックスーパースターズ』では「2Dのソニックがこんなに綺麗なグラフィックで再現できる」というところもお見せすることができました。

※『ソニックフロンティア』 2022年11月発売。従来のステージクリア型から一転し、広大なフィールドを自由に探索できる「オープンゾーン」システムを採用した。ワールド自体を「遊べるマップ」として拡張したもので、バトル・謎解き・サイドクエストなどを自由な順番で楽しめる。従来のステージクリア型の印象が強かったソニックシリーズにとって新境地とされた。
映画も2作目・3作目と続いて、来年には4作目も公開されます。この5年間で、ほんとうにいろんなすべての分野において、ソニックが大きく進化していった姿を見せられたのではないかと思います。
──35年という年月の中でソニック制作チームの顔ぶれや世代なども入れ替わってきたのではないかと思いますが、「ソニックらしさ」はどのようにして受け継がれてきたのでしょうか。
飯塚氏:
もともと私が『ソニックアドベンチャー』や『ソニックアドベンチャー2』【※】のディレクターとしてシリーズの開発に携わってきましたが、2010年にはディレクターを次の世代へと引き渡して、私が総合プロデューサーという形で全タイトルを見る立場に変わりました。

※『ソニックアドベンチャー』『ソニックアドベンチャー2』 1998年発売の『ソニックアドベンチャー』と、2001年発売の続編『ソニックアドベンチャー2』。ソニックシリーズが2D中心から3D中心へと移行した転換期の代表作で、飯塚氏は両作でディレクターを務めた。
そのときに、当時のディレクター陣に「ソニック作り」とはなにか、「ソニックの目指すべき方向性」を一緒に考えて『ソニックカラーズ』や『ソニックジェネレーションズ』【※】などを制作しました。当時のスタッフはいま、それぞれのタイトルのディレクター、あるいはリーダークラスで活躍しています。
全体を通して、一貫した「ソニック像」を持ったスタッフが、ソニックシリーズのゲーム制作に携わっています。
※『ソニックカラーズ』 2010年11月発売。Dr.エッグマンが作った宇宙遊園地を舞台に、カラフルな宇宙人「ウィスプ」の力を借りる新アクション「カラーパワー」を導入したタイトル。
※『ソニックジェネレーションズ』 2011年12月発売。シリーズ20周年を記念した作品で、懐かしい2D横スクロールアクションの「クラシックスタイル」と、超高速な3Dアクションの「モダンスタイル」のふたつの遊びを楽しめるのが特徴。
TGS2026、35周年の年に選んだのは「みんなで楽しめる」2作品
──今回のTGS2026では『ソニックレーシング クロスワールド』と『SONIC PICO PARK』が出展されています。35周年という年に、この2作を出すことにした理由を教えてください。
飯塚氏:
新作のゲーム開発は短くても3年、長くて5年のペースで制作期間を取るなかで、ちょうどいいタイミング、35周年のタイミングで狙っていた通りのタイトルを出すというのは難しくなってきています。
では35周年のタイミングでいったい我々に何ができるのか考えたときに、「35周年はソニックファンがみんなでお祝いできるような体験を展開しよう」という方針を決めました。
ですので、『ソニックレーシング クロスワールド』というオンラインで世界中のみんなが一緒に遊べるゲームに対して「シーズン2」という新コンテンツを発表したり、他社さんの『PICO PARK』【※】にソニックのIPをコラボレーションすることで、オンラインで楽しめる2Dのプラットフォームパズルゲームをリリースすることができました。
ほかには、ソニックのライブコンサートや、アメリカでやっている「カオスハント」【※】というリアルイベントなどもありますね。
※『PICO PARK』 元セガ社員の三宅俊輔氏が個人開発した、2〜8人協力型のアクションパズルゲーム。2021年にオンライン対応したことをきっかけに世界的ヒットとなった。
※「カオスハント」 ソニック35周年を記念したリアルイベント。全米各都市に隠された「カオスエメラルド」をファンが探し出していく形式で、2026年10月9日にニューヨーク・ブルックリンで開催される記念イベント「Club Chaos」につながる導線として展開されている。
「ソニック」シリーズは全世界のユーザーと交流するというよりはひとりでじっくり遊ぶようなゲームが多いですが、この35周年というタイミングでは「みんなで楽しめる」をひとつのキーワードとして、いろいろな施策を考えました。
──『ソニックレーシング クロスワールド』についておうかがいします。昨年の発売から1年たち、現在では世界大会の開催や『ゴジラ』『エヴァンゲリオン』【※】などのコラボも展開されています。本作を運営していくなかで、感じている手応えはどのようなものでしょうか。
※『ゴジラ』 1954年に東宝が公開した特撮怪獣映画を原点とする、日本を代表する怪獣キャラクター・シリーズ。以降70年以上にわたり多数の映画が製作されている。
※『エヴァンゲリオン』 1995年放送、庵野秀明監督のテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を原点とするSF作品シリーズ。社会現象を巻き起こした日本を代表するアニメ作品のひとつ。
飯塚氏:
このタイトルを出すときに、絶対に世界大会をやりたいという想いがありました。いま 今までのゲームでもタイムアタックでリスト上の1位や2位を決めることはできましたが、本作ではより踏み込んで、リアルな会場で対戦して最速の人間を決める「“リアルイベント”を絶対にやろう」と。そう意気込んで準備を進めていきました。
来月には無事ニューヨークで世界大会が開催される運びとなり、ひとつの大きなレーシングタイトルを作る上での目標を達成することができました。
『ゴジラ』『エヴァンゲリオン』とのコラボも発表しましたが、世界大会のタイミングで残りのコンテンツも紹介して、2年目となる本作をさらに盛り上げていきたいです。
──世界大会のような競技性のある展開を打ち出すというコンセプトは、開発の初期段階からあったということでしょうか。
飯塚氏:
そうですね。世界大会をやることがひとつの大きなアチーブメントだったので、『ソニックレーシング』の中で“最速”を決めるこの形式を「ようやく実現できた!」という気持ちです。
『ソニックじゃなくていい』──外部スタジオと作った『SONIC PICO PARK』
──『SONIC PICO PARK』についておうかがいします。本作は、ソニックというIPを外部のインディースタジオさんに自由に作っていいという形で預けた作品だと伺っています【※】。このような協業はこれから増えていくのでしょうか?
※過去電ファミが『PICO PARK』開発者の島津氏・三宅氏にインタビューさせていただいた際、「初期のプロトタイプがむしろソニック寄りだったところ、飯塚さんから“ソニックじゃなくていいからピコパークを作って”と言われて方向が定まった」という風に語られている。
飯塚氏:
インディーゲームの方たちからオファーをいただくことは結構ありますが、その中で実現したのが『ソニックマニア』【※】や、今回の『SONIC PICO PARK』です。
※『ソニックマニア』 2017年8月発売のドット絵2D完全新作タイトル。ソニックのファンゲームコミュニティ出身のChristian Whitehead(クリスチャン・ホワイトヘッド)氏が、開発スタジオのHeadcannon、PagodaWest Gamesとともに手がけた。隠し要素などのソニックネタが豊富に盛り込まれているのも特徴。
「ソニック」がインディーの方々と一緒にやるうえで考えるのは、そこの会社さんが持つ“良さ”をソニックファンにも体験してもらいたいということです。単にソニックのキャラクターをライセンスアウトしてソニックのゲームを作ってもらうのではなく、ソニックを利用してその会社さんが持つ特色や良さを“引き出してもらう”ことが大切なんです。
『PICO PARK』に関しても「ソニック」を意識しすぎて「ソニックのゲーム」を作ってしまうと先方の良さがなくなってしまいます。そこで『PICO PARK』というゲームのおもしろさ・良さを決してなくさないでほしいという思いから、三宅さんにも「ソニックじゃなくていいから『PICO PARK』を作って」というお話をしました。
──『SONIC PICO PARK』は会場で試遊させていただいたのですが、隣の方々と、知らない人同士で遊んでもすごく盛り上がりました。
飯塚氏:
そうですね。私もほんとうに『SONIC PICO PARK』を楽しんでいて、開発バージョンを見せてもらっていますが、ステージが増えるたびに楽しくなっていきますよね。開発者の三宅さんたちもソニックのことをすごくご存知なので、各キャラクターの良さをゲームの中にうまく取り入れてくれたなと感じています。
──『ソニックマニア』や『SONIC PICO PARK』のような外部スタジオさんとの協業で、「このパートナーならソニックを預けられる」と判断する基準はありますでしょうか。
飯塚氏:
基準は特に設けていませんが、その開発者さんが「独自の良さを持っているか」を見ています。なんでも作れるところだと、ソニックを預けてもソニックのゲームにしかならないじゃないですか。
その会社さんが持つ良さに、ソニックを“味付け”として加えることで、また新しいものが生まれる可能性を感じられるかが大事です。そういった意味では、『ソニックマニア』のチームもほんとうに根っからのソニックファンで、彼らが新作を作れば“真のマニアにウケる”ゲームができると確信を持てたので、じゃあやってみようとなりました。
また、プロジェクトをスタートする時に私がつけた『ソニックマニア』というネーミングは、そのまま製品名になりました。今回の『SONIC PICO PARK』に関しても、『PICO PARK』独自の良さをソニックを使って活かしてくれればいいなという思いで決めました。
キャラを大事にしていたら、フォートナイトのソニックは”アンドロイド”になった

──この夏、ソニックはプロゲーミングチームのZETA DIVISION【※】に加入しました。ゲームのコラボとは少し性質の違ったものと思いますが、キャラクター本人であるソニックをプロゲーミングチームの一員にすることにはどのような狙いがあったのでしょうか。
※ZETA DIVISION 2018年設立、東京を拠点とする日本の大手プロeスポーツ組織。VALORANT、Apex Legends、Call of Duty、第五人格などの部門を持つ。2026年7月8日、ソニックがCREATOR部門にひと夏限定で加入。同年2月に開催された配信対戦イベント「ソニックレーシング クロスワールド The k4sen」がきっかけとなった。
飯塚氏:
私は主にアメリカで欧米を見ているのですが、今回のZETA DIVISIONに関しては、日本側のセガが取り組んだ施策でした。
「ソニック」は欧米で売れるのはもちろん、日本、アジアでも広まってくれないと、真のグローバルIPとは言えないと思います。まだまだブランド力の弱い地域にどうやって広めるか、いろんなアプローチを日本の方では取り組んでもらっています。その一環として、ほかではやっていない話題性のあることとして、今回のコラボレーションが実現したところがあります。
プロゲーマーやYouTuber、VTuberの方々など、「ソニック」というIPの魅力を感じてもらうためにいろんなアプローチを検討しています。
──今後、ZETA DIVISION以外にも似たような取り組みをする可能性もあるでしょうか。
飯塚氏:
そうですね。まったく同じ取り組みを他とやることはないと思いますが、ファンの方が「こんなのありなの」と驚くようなコラボレーションとか、話題性のある取り組みはこれからも続けていきます。
──あわせて、映画や商品を含めたIP全体を見る立場として、「これはソニックとして出していい」「これは出せない」と最終的に判断する基準は何でしょうか。
飯塚氏:
今はいろんな会社さんと取り組みを行っているので、逆に言うとお断りしている案件もやはりあります。基準としては、ソニックのキャラクターに合っているか、ソニックの良さをそのコラボレーションで活かせるかというのが大切になります。

たとえば今年実現した『フォートナイト』【※】とのコラボレーションでは、じつは数年前から「ソニックとのコラボレーションをやらないか」というお話があったんです。
しかしながら銃撃戦がメインの『フォートナイト』なのにソニックは銃を持っていません。頭身についてもほかのキャラクターとずいぶん違います。そういう問題があり成り立たせるのが難しく、いままでなかなか実現しなかったんですね。
※『フォートナイト』 Epic Games制作の大人気バトルロイヤルゲーム。2026年8月20日開幕の「チャプター7 シーズン4」にて『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』とのコラボが実施された。
このとおり、コラボをするにしてもキャラクターや、「ソニック」というIPとの相性は、常にうまくすべてがうまく組み合うとは限らない。
今回のフォートナイトは、ソニック本人の代わりに「アンドロイドソニック」という、アンドロイドのソニックをテイルスが作ってフォートナイトの世界に送り込んだ、という設定で実現しています。こうした経緯もあり、必ずしも全てとうまくマッチングするわけではないですね。
「ソニック」の目指す先は「ディズニー」にある
──最後になりますが、今後のソニックシリーズの展望や、今後飯塚さんが挑戦したい「ソニック」シリーズの目指す先についてお聞かせください。
飯塚氏:
じつは1991年【※】の初期スタッフからずっと継承している思想ですが、「ソニック」をキャラクターとして世界中に広める活動の終着点は「ディズニー」なんです。
世界中に愛されるあのキャラクターを育て上げたウォルト・ディズニーはすごいと思っていて、我々も35年経ったいまでもぜんぜんたどり着けていませんが、そこを目指しています。
※1991年 シリーズ第1作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』が発売された年。
これからの「ソニック」もゲームがコアなので、皆さんに喜んでもらえるゲームを作るのが我々のいちばんのミッションです。ただし、キャラクターを広めるという意味では、もっといろんなメディアであったり、それこそテーマパークや、皆さんが日常生活で目にするようなところにソニックをどんどん進出させていきたい想いがあります。
──もしかしたら今後、ソニックテーマパークのようなものが実現することもありえるでしょうか。
飯塚氏:
それはもう最終ゴールです。100周年ぐらいの時にはたどり着きたいですね(笑)。
映画『ソニック・ザ・ムービー』を皮切りにソニックというキャラクターは世界に対してより幅広く知れ渡り、次に目指すのはゲームやコラボを通して「ソニックをより身近に感じてもらう」ことだった。飯塚氏をはじめとした開発陣が描く「ソニック」の未来は、「ディズニー」のような世界中あらゆるところから愛されるキャラクターとして受け入れられることだという。
東京ゲームショウ2026には『ソニックレーシング クロスワールド』『SONIC PICO PARK』が出展されている。35周年となる今年の出展では「みんなで楽しめるソニック」をテーマに、これまでスタンドアローンの作品が多い傾向にある「ソニック」シリーズの新しい姿を感じられた。
外部スタジオとの協業やプロゲーミングチームへの加入など、ときには意外すぎる話題もかっさらって、これまでになかった新しい「ソニック」の側面が日々開発陣の熱意によって生まれていく。
映画4作目の公開も控え、これから先も「ソニック」は拡大していく。40周年を迎えるとき、「ソニック」はファンコミュニティの枠を超えてより日常に浸透し、身近な存在となっているかもしれない。






