みなさま、こんばんは。黒木ほの香です。
このエッセイも二十四回目ということで、パソコンに向かってカタカタと打ち込むのもお手の物になってきました。
とはいえ細かい部分はいまだに色々と悩みながら連載していますが、中でも一番気になるのは、同じような表現が繰り返されていないか、伝わりきっていない部分がないか、ということです。
言葉って、使い慣れたものばかりがすぐに出てくるじゃないですか。
「やばい」とか、何にでも言っちゃうし。
いやー、まじで便利すぎてやばいよね。
この「やばい」を使うことが良い悪いではなく、 “どうやばいのか”ということをしっかり伝えられるようにしていたいのです。
そのためには表現をできるだけ増やしていきたいから、何か勉強…したいけど、どうせなら楽しみながら無理せずに学べるのがいいなと考えていた時。
ふと、『池袋ウエストゲートパーク』がとてもいい相棒になるのではないか、と思い出しました。
『池袋ウエストゲートパーク』は、池袋で母親が営む果物屋を手伝うマコトが、街で起こるあらゆるトラブルを解決していく一話完結型の物語。
マコトは、地道な聞き込みをしたり、池袋の悪ガキたちをまとめあげる圧倒的カリスマを持つキング・タカシの力を借りながら、自分が好きな池袋の姿を守っていきます。
現在既刊は二十巻で、略称は『IWGP』です。
好きなんですよね、IWGP。
「心に残る一冊」なら、原田マハさんの『奇跡の人』を挙げるだろう。
番組リスナーからのメールで「おススメの本は?」と聞かれた時は、浅葉なつさんの『どうかこの声が、あなたに届きますように』と伝えたこともありました。
でも、「好きな本」となると、最近の私はいつだって「『池袋ウエストゲートパーク』です!」と即答します。
(わたしのXにシンプルな投稿がありました)
警察ができないようなやり方で依頼人を守るので、少々怖い手も使うこともあります。
中でも、タカシが統率する池袋西口最大勢力のカラーギャング“Gボーイズ”が関わる時は、“目出し帽”とか“特殊警棒”なんかの物騒な単語が並ぶので、ちょっとワクワクするんですよね。
彼らは暴れ回るだけかと思いきや、計画を練ってから行動に移すし、敵を結束バンドで縛り上げる手際はなんとも鮮やかで、チームの連携が取れているところもギュンときます。
喧嘩って、フィクションの中だと最高にかっこいいですよね…!(※1)
話が少し逸れてしまった。
IWGPでは、マコト視点で物語が進みます。
彼から出てくる言葉は短いセンテンスも多いのに、クスッと笑えるものがたくさんあったり、比喩表現が豊かで読んでいて楽しいです。
例えば、マコトの電話にタカシが応答するとき、マコトは決まって、“タカシの声がクール”であることを読者に教えてくれるんです。
以下は、石田衣良先生の作品『池袋ウエストゲートパーク』からの引用です。
『王様の声はあたたかな冬でさえ、氷柱のようにとがっている。』
『製氷機からでてきたばかりの氷のように、やつの声はしゃんとしていた。』
『タカシの氷は四月の終盤になっても、すこしも角を丸めていなかった。』
『春でも溶けない山頂の雪。タカシの声にはあれくらいの冷たさとまぶしさが同居している。』
か、かっこいい…。
こんなの、なかなか思いつきません。
もしかして、作者の石田先生は寒い地域出身だから冷たさの語彙が豊富だったり?と思って調べてみたけれど、全然都内生まれでした。
比喩が尽きることはないのかな?
やっぱり、語彙を豊かにするために何かしてたりするのかな?
過去に書いた表現と被らないようにエクセルで管理していたりするのかな?
知りたいことがたくさんあります。

この間、友人と小説について話していた時に「“〜で楽しかった”みたいな表現ばかりにならないようには、どうしたらいいんだろうねぇ」と、こぼしたところ、こんな言葉が返ってきました。
「形容詞を動詞にしてみるといいって、何かで見たよ」
「感情表現なんかをする時、単に『恥ずかしい』じゃなく、『耳が熱くなった』『頭を掻いてから、鼻を擦った』とか、より具体的な情景が浮かぶようにするみたいな?」
か、かっこいい…。
そんなの、なかなか言語化できません。
これまで、文末表現に悩むたびに、それ一つずつに対して答えを探していたんですが、全てに対応する公式のようなものを教えてもらった感覚になりました。
向き合い方のベースがわかったというか、そんな、ちいさな手応え。
友人にアドバイスをくれたことの感謝を伝え、少しの間『恥ずかしい』の言い換えゲームで遊んで盛り上がりました。
これが結構楽しかったので、表現を豊かにするには良い方法かも。
さっそく、一緒に遊んでくれる人を探さなきゃ!
言い換えが得意そうな友の顔が二、三浮かんでいるので、会ったらこのゲームの話をしてみたいと思います。
目をらんらんと輝かせて。
一昨年の四月に連載が始まったこのエッセイ。
次回の更新をもって、最終回を迎えることになりました!
今まで楽しみに読んでいただき、そして応援していただき、ありがとうございます。持てる表現力と語彙を使い、わたしらしく綴りますので、どうか最後までお付き合いください。
黒木ほの香
※1…父の本棚に並んでいた『クローズ』に興味を示したり、藤沢とおるさんの『湘南純愛組!』や『GTO』も熱心に読んでいました。
喧嘩シーンがかっこよくって好きなのもあるけど、それ以上に、ちょいワルな物語にどうしようもなく憧れていたんでしょうね。今もその気持ちがどこかにあるから、IWGPが好きなんだと思います。
編集:川野優希

