あのコントローラーが筆者の手元にやってきた。
そう、世界中で売り切れ続出中の“あの製品”だ。
PCゲームのプラットフォーム「Steam」を運営するValve社がSteamのゲーム用に開発した「Steam Controller」である。それが今、手元にある。そして使ってみた。
こ、これは、次世代型の”モンゴリアン”コントローラーなのでは……!?
このコントローラーの特徴は、なんといってもスティック下に配置されたふたつの「トラックパッド」。その存在によって、キーマウ操作とボタン&スティック操作がフュージョンしている。ゲーマー向けに言いなおすと、擬似的な「モンゴリアンスタイル」【※】が実現できるのだ。
先に結論をまとめてしまうと、Steam Controllerはこのトラックパッドの存在によって、SteamのPC用ゲームを、キーマウの感覚を維持しながらパッド上で遊べるようにしたデバイスだ。そのため、使っていると極めて自然にモンゴリアンスタイルに行き着いてしまう。
※
モンゴリアンスタイル……FPSやTPSなどのシュータージャンルにおいて、一部のゲーマーから支持されるプレイスタイル。ゲームパッドとマウスの双方を用いて、直感的な移動と精密なエイム操作を両立させたハイブリッド操作。
なお本製品は、5月5日にSteamハードウェアを販売する正規代理店「KOMODO STATION」で販売開始されたものの、瞬く間に完売してしまったことでも話題になっている。喉から手が出るほど欲しかったゲーマーはたくさんいたはずだ。
ということで、本稿では今話題沸騰中のSteam Controllerを実際に使ってみたので、その所感についてお届けしていこうと思う。

右スティックさん、出番減るかも。Steam Controllerのトラックパッドがエイムを変える!
「モンゴリアンコントローラー」などと形容せずにはいられない理由が、本製品最大の特徴と言える「トラックパッド」の存在だ。
本来ジョイスティックや方向キーのある位置に、クソデカトラックパッドが2つも鎮座している。右側の用途はなんとなく想像できるが……左側はまだ模索中で使いこなせてはいない。でも2つでお得感はあるからヨシ!
薄々勘づいている方も多いとは思うが、右側のトラックパッドこそ、本製品の”モンゴリアン”たる所以である。そしてこのトラックパッドがこれまた普通ではない。指先をほんの少しパッドの上で滑らすたびに「ポコポコッ」と、小気味の良い振動が伝わる。これは「HD触覚フィードバック」という機能によるもの。
実はこうしたHD触覚フィードバック機能は、2015年発売の旧型モデルにもあったらしいのだが、筆者が触れたのはこれが初めて。そのおかげでいたく感動してしまった。

そもそもトラックパッドは、物理的な機構でポインター制御を行っているわけではない。そのため、どこまで操作が入力されているかが曖昧になりがちで、操作の実感もマウスやトラックボールと比較して弱い。
そこで本製品の場合、Steam Controllerのトラックパッドに内蔵されたモーターが、微細な振動効果を演出し、トラックパッドに仮想的なクリック感をもたらしてくれるというわけだ。
このHD触覚フィードバックがなんとも言えない気持ち良さで、特に意味もなくトラックパッドを触りたくなる。もはやプレイヤーの意図をアウトプットするというだけのデバイスじゃない……。“触りたい欲”が湧く。

試しに『ボーダーランズ4』や『バイオハザード RE:2』でトラックパッドを使ってみたところ、確かにエイムの微調整が行いやすい。
トラックパッド自体の大きさと、親指の位置取りが楽な箇所に配置されている点も大きいが、微細な振動のおかげで「操作している感」を得やすくなっているというのもありそうだ。振動の気持ち良さも相まって、エイムそのものも楽しい。


エイムなどの操作をジョイスティックで行う場合、親指に対して垂直に戻ろうと反発する抵抗力があるため、これがミリ単位の微妙なコントロールを難しくしている。レティクルをちょっぴり動かしたいのに「おいおい行き過ぎだよコラ!」なんてことが多々起きてしまうのだ。パッドにしばしばエイムアシストが備わる理由のひとつはこれだろう。
一方、トラックパッドは平らなセンサーをなぞるだけで、スティックほど物理的な抵抗力が発生しない。プレイヤーの繊細な操作がダイレクトに伝わりやすく、指先で照準を制御する場合は、トラックパッドに明らかな分がある。HD触覚フィードバックのおかげで、数ミリ程度の微細な操作にも実感が伴う。
当然ゲームのカメラ操作も快適すぎるわけで、これに慣れてくると右ジョイスティックさんを使うことが減ってきてしまう。
とはいえ、ジョイスティックとトラックパッドでは、部品の構造からしてその機能・目的が異なるもので、安易な比較は早計だったかもしれない。物理的に操作できるジョイスティックには、アナログな安心感もある。
トラックパッドはジョイスティックの完全な代替品になるのか?と聞かれれば、それは違う気がする。
慣れの差もあるだろうが、たとえば筆者の場合、キャラクター移動などはジョイスティックの方が断然好みだ。シューター以外のアクションゲームにおいても、まだ右ジョイスティックのカメラ操作が手に馴染む。
本機において、トラックパッドは“マウス操作の役割を局所的に引き継いでいるポジション”ではあるが、ジョイスティックの代替品になっているわけではない。というのが筆者の考えだ。

また、Steam Controllerのデフォルト設定だと左トラックパッドの役割がイマイチパッとしない。
たとえば設定で左パッドに方向キーの役割を当てることもできるのだが、押し込みの感触は方向キーの物理的な感触には勝てない。何となく役割が迷子になりがちであり、いまのところ筆者は左トラックパッドについては持て余している状態だ。
こうした事情から、シューター系のゲームでは右側トラックパッドでレティクル操作を行い、左側のジョイスティックでキャラクター操作を行う“擬似モンゴリアンスタイル持ち”になっている。コントローラーってまだまだ可能性があるなぁとしみじみ思う。
Webブラウジングからノベルゲーまで、”PCでやりたいこと”への適正高し
コントローラーがトラックパッドを備えた今、「ゲーム↔︎Webブラウジング」のように、目的ごとにデバイスをあーだこーだと切り替える必要性がなくなりつつある。
筆者の場合、PCを起動してマウスで遊ぶゲームをクリックし、今度はコントローラーに持ち替えていざプレイ開始、とはもうならない。だって、全てSteam Controllerだけでできちゃうし。
ゲームの操作だけではなく、デスクトップ操作用にコントローラーのボタンレイアウトもバッチリ完備。ただ、快適性を追求するのなら、自分好みにキーカスタマイズすることが必須条件と言える。
慣れないうちはひとクセあるが、仮想キーボードを画面に出現させて、2つのトラックパッドでの擬似タイピングだってできてしまう。ということは、Webブラウジングさえもわざわざキーマウに持ち替える必要性がなくなってくる……。
さすがにキーマウほどの機動力を確保するのは難しいのだけれども、理論上はゲームからWebブラウジング、PCの簡易的な作業全般をSteam Controllerだけでシームレスに完結させられる。
ごろ寝プレイできるキーマウとかダメ人間が加速してしまうよ。ノートPCやARグラスと掛け合わせてみるなど、まだまだいろんな使い方が模索できそうだ。

Steam Controllerがキーマウとしての役割をこなせるということであれば、コントローラーの操作に不向きなゲームだって遊べる。
たとえば、パッド操作の正式対応を求めるファンも多い『エスケープ フロム ダッコフ』。MODを入れればパッドでプレイすることも十分可能だが……。

あれ、そのままでも結構遊べる!?
デフォルト設定では方向キーor左トラックパッドでキャラクター移動、右ジョイスティックor右トラックパッドでレティクル操作。そして射撃はR2トリガーといったキー配置になっている。
色々調整は必要そうだが、キーマウプレイが苦手で困っていた人には朗報かもしれない。Steam Controller凄い。かなり、やる。
他にも、元々スマートフォン向けに配信されて、パッド操作を想定していなかったタイプのゲームから、コントローラーは使えるけど必要最低限のキーマウ入力の方が遊びやすいノベルゲームなど、“トラックパッドがあるからこそ遊びやすい”といったケースは多かった。



ひらたく言えば、Steam ControllerはSteam向けのゲームをプレイするのに最適化されたデバイスだ。ただ逆に、それ以外のゲームについては検証が必要になると思う。……というのは、独自ランチャーから起動するタイプのゲームは現状向いていない様子だからだ。
『ゼンレスゾーンゼロ』、『アークナイツ:エンドフィールド』を起動したところ、どちらもSteam Controllerは正しく認識されなかった。ゲームのUIはキーマウ操作時のままで、ゲーム起動後、トラックパッドとボタンを含めてほとんどの操作を受け付けない。
ならばと思い、Steamの「ライブラリ」から「非Steamゲームを追加」でクライアントをSteamに追加してみる。が、これを試してみても思うように動作してくれなかった。有識者の方、ぜひ情報を求ム!


高機能な”持ち運べるキーマウ”。でも真価を引き出すには設定との格闘も必要かも?
Steam Controllerは持ち運べるキーマウで、モンゴリアンスタイル好きのプレイヤーにもぜひ、試してほしいデバイスである。トラックパッドばかりの紹介になってしまったが、トラックパッドを抜きにしてもコントローラーとして単純に扱いやすい。
高機能かつ多機能なのにバッテリーライフは公称値で「35時間以上」と、スタミナは十分だ。さらにコントローラーの背面には4つの割り当て可能ボタンが配置され、本体にはジャイロセンサーまで内蔵されている。
これらの機能をフル活用するには、Steamクライアントを立ち上げてから「設定」メニュー内の「コントローラー」で各項目をカスタマイズする必要がある。
ただ、この設定部分が現状は直感的とは言い難い。メニュー構成の複雑さに加えて、「どこにいけば何を編集できるのか?」といった導線が少々ややこしい。苦労して設定したつもりでも、実際にゲームを遊ぶと反映されていなかった、といったことが多々起きている。
正直なところ、コントローラーの機能を編集するUI周りに関しては、もう少し分かりやすくしても良いと思う。
また、コントローラー本体と同梱されている「Steam Controller Puck」は、コントローラーの充電器であり、コントローラーをワイヤレスで使うための送信機にもなるのが面白い。公式での紹介にもある通り“一台二役”なのだ。
充電しながら遊びたい時は、PCから伸ばしてきたUSBケーブルをSteam Controller Puckに接続し、コントローラー背面の端子接点に繋げれば良い。磁石でかっちりホールドされるので、プレイ中にポロリと落ちる心配もない。
振動するトラックパッドを2つも搭載した唯一無二の存在感を誇るSteam Controller。筆者にとってはまだ未踏の領域だが、もしかすると、ゲームだけではなくクリエイティブ方面で、便利な使用用途が見つかる可能性もありそうだ。
機能性を考慮しても17,800円という価格帯はそれなりに高級志向なハードウェアであると言わざるを得ないが、Steamのゲームを中心にプレイするなら、買って損することはないと思う。
価格帯に見合うだけのヘビーユースな使い込み、つまり、コントローラーのポテンシャルを最大限まで引き出そうとするこだわりさえあれば、どのようなゲーマーのニーズだって応えてくれるはず。
単なるトラックパッド付きコントローラーになるか、勝つための戦略投資となるか、ゲーマーライフを拡張する神器となるかは我々次第……!










