マルチプレイ型の探索ホラーアドベンチャー、『プロジェクト:ドア』。
世界各国に出現した謎の扉の内部を調査するエージェントとして雇われたプレイヤーは、仲間と共に数々の脅威をやり過ごし、迷宮内に散らばる異常アイテムを回収しつつ生還を目指す……。
はずなのだが。
その実態は、未知の恐怖を「遊ぶ金欲しさ」でねじ伏せ、いっしょにプレイする味方と叫びまくる異空間探索ホラーの顔をしたドタバタ協力型トンチキパーティーゲームだ。
「私の死体なんか拾うな!売れるアイテムだけ拾って帰れ!!」
「ギャアア!この装備買ったばっかだったのに!」
プレイ中のボイスチャットには、守銭奴たちの叫び声が響き渡る。
さらにその奥でプレイヤーを待ち受けるのは恐ろしいクリーチャー……以上に恐るべき、若干不安になるほど愛あるオマージュの嵐だった。
仕事内容は「異常空間での金品強奪」。誰でも稼げる簡単なお仕事です(装備は自費負担)
プレイヤーを出迎えてくれるのは、お団子ヘアがキュートな案内役のリリーちゃん。
彼女いわく、プレイヤーたちは「迷宮プロジェクト」に参加するエージェントとなり、ドアの向こうに広がる各エリアから「バグったアイテム」と呼ばれる異常物品を回収し、キャンプで売却して調査資金を稼ぐこととなる。
クリーチャーの猛攻をかいくぐり、規定数のバグアイテムを売却できれば遠征は無事終了だ。

……え?売却?
保護の間違いじゃないの?と思ったかもしれない。

売ります。
ゴミだろうがバグアイテムだろうが、ゲーム内で拾えるものは(ほぼ)ぜんぶ売れます。
バックルームから盗んできたアイテムを片っ端から売り飛ばす、激ヤベぇバイト風味の探索ホラーアドベンチャー……と言えば大体の雰囲気は伝わるだろうか。
確保、収容、売却。どっかの財団が白目をむいて倒れそうな世界観だ。
探索自体は、野良やフレンドでマッチングしたプレイヤーと共にダンジョンを歩き回る、というシンプルなシステムだ。マッチングの際のターゲットも「初心者」「完全クリア」など細かく分かれていて助かる。
廃墟のようなバンカー(エリア同士を繋ぐ地下壕。すげえ暗い)で遭遇するクリーチャー達は粗めのグラフィックがかえって恐怖心を煽るし、死角からなんの前触れもなくヌッと出てくることも多いのでわりと本気で怖い。ああ、ちゃんとホラーしてる。進みたくねえ。
だがそこにお金稼ぎという動機が絡んだ途端、とてつもないリアリティの欲望が一気に恐怖をねじ伏せに来る。
なんたってここに落ちてるもの全部カネになるのだ。
工具箱だろうがガムテープだろうが使い終わった救急キットだろうが、拾って帰って売却スペースにぶち込めば、出品・梱包・発送の手間ナシでメルカリより楽に稼げちゃうのだ。
収支帳簿や所持金はキャンプのパソコンからばっちりチェックできるので、儲かってる感が余計に増してゆく。クリーチャーから逃げまどいつつの迷宮探索、という苦労の成果がガッポガポの所持金になって現れるのはたまらない。
怖い、けどそれ以上にめっっっちゃカネ稼ぎたい。
ここまで下卑た欲望を刺激してくれる探索ホラーもそうそうないのではないか。
さらに、このゲームにおいて所持金は単にノルマクリアのための要素ではない。
というのもこのゲーム、探索に必要な装備を整えるのにマジで安くないカネがかかるのだ。
懐中電灯はひとつ45ドル、日本円にして約7000円。さらに性能のよいヘッドライトは130ドル、約2万円。当然のように使い切りだし、ダンジョン内で死ねばもちろんロストする。エリア内に落ちていることもあるが、運が良ければの話だ。
一応はゲーム開始時に初期費用が支給されるのだが、しょぼいので懐中電灯をひとつ買うのがせいぜいである。
すげえ!カネを貯め続けることが許されねえシステムだ!
どれだけ小金を稼いでも、運悪く死に戻りを繰り返せば見る間にジリ貧になってゆく。無常すぎる。
ガラクタ売りでちまちまゼニを稼ぎつつようやく本命アイテムと出会えた途端、作中最凶クラスのクリーチャー・ウェンディゴに閉所で狩られた瞬間の絶望は今でも忘れられない。
プレイ中何度も叫ぶハメになるが、その内訳は、「怖い死ぬ」、「せめてこのアイテム持ち帰らせて」、「ふざけんな総額いくら突っ込んだと思ってんだ」の3つだ。
ホラゲーなのに、恐怖以外の理由もふくめて叫ぶと思わなかった。
アイテムがロストする前に回収しようとしたらまた死んで、損失を取り返すために突入したらまた死んで……。ああ、カネが、カネが溶けていく……。
想定外のボロ儲けをしたときの脳汁がヤバい。死んでも蘇生できるから福利厚生もバッチリ
一文無しでさまよっていたところ、その辺の棚に放り捨てられていたスパナを発見、なんの気なしに売却してみると……。

おお、95ドル……!
日本円に換算すると1万5000円弱。か、懐中電灯なら2本買える……!
「これを元手に、もうすこし探索したら巻き返せるのでは?」とついつい欲を出したところ、
なんと245ドル。
日本円にして4万円弱と想定以上のボロ儲けをしてしまった。脳から変な汁が出てくる。
ちょっぴり遠出して拾い集めたアイテムだけでもこれだけの稼ぎが得られるし、クエストをクリアして得られるアイテムはもっと高値で売れる。仲間と共に迷宮内を荒らしつつ金目のアイテムをかき集めて回る様は、まるでDクラス職員まみれの強盗団だ。
カネだカネだと仲間と共にギャースカ騒ぎながら、迷宮内を死に物狂いで(まれによく死につつ)駆けずり回るのが、このゲームを楽しむ正しいお作法である。
え?どれだけ稼げても死ぬのは怖い?ご安心ください!
迷宮内で死んだ仲間の死体はアイテム枠として拾えるので、キャンプまで持ち帰れば蘇生可能!持ち帰れなくても、ひとり200ドル/3万円の培養ポッドで仲間のクローンを生成できるので、福利厚生もバッチリだ!カネさえ出せれば。
(ちょっと不安になるほど)ホラー愛が深すぎるエリアやクリーチャー
カネに目が眩んだプレイヤーを待ち受けるのは、雰囲気やギミックも多種多様なエリアの数々だ。
いかにもリミナルスペース然とした巨大オフィス、高い壁が築かれたゾンビ都市、サンドワームが襲い来る砂の惑星、頭上に広がるニューヨークの摩天楼……。
ぜんぶ、うっすら観たことある光景な気がする。某有名洋画の数々が脳裏をよぎる。
いや、なんでもかんでも「なんとなく〇〇っぽい」と安易にこじつけるのはよろしくないかもしれない。
なんとなくどころじゃないエリアに出てしまった。
異変か。引き返したほうがいいのか。というかなんだこの異様なまでの外観の作り込み。
これだけ再現度が高いならおじさんのひとりやふたり出てきてもおかしくないぞ、曲がり角の向こうから襲ってきても驚かないぞ、と思っていたところ、

顔面の風通しがよすぎる駅員の霹靂一閃で、あえなく死亡。私鉄の刃?
この鉄道侍(原文ママ)をはじめ、いろんな意味で危険な各エリア内にいろんな意味で怪しいクリーチャーが無限に出てくる。
霧の町にいそうな三角頭や、人間を改造して作ったらしい超人兵士。なおこの謎のクリーチャーは「研究所」と呼ばれるエリアに出現する。
元ネタ不明のクリーチャーもたくさんいるが、筆者が元ネタを把握できていないだけかもしれない。ワンチャン目に映る全てがパロディである疑惑すらある。

ちなみに筆者のマイベストはトレンチコートと射撃の腕がイカす単眼クリーチャー「オブザーバー」。通称オブおじ。
こちらの視線を強制的に固定してくるため初見はかなりビビるのだが、キノコのような勢いでぽこぽこ湧き出てくるのですぐ慣れる。
落ち着いて対処できるようになれば、発砲後のモーションを眺めながら、そのクールな姿にキュン……♡することだって可能だ。
多少ふざけた紹介になったが、体験版でこのボリューム感と完成度、作り込み具合は、ほんとうにすごい。各クリーチャーにはそれぞれ違った攻略法があるため、試行錯誤しているうちに立ち回りが掴めてくるし、なにしろネタが多すぎて永遠にプレイしていられる。
最初はビビったものの、すっかりこのゲームの突飛な仕掛けの数々にも慣れた。もう何があっても驚かな……
え?
拠点に戻ろうとしたらバックルームに落ちた。
どうやらこのゲーム、意図的に妙な挙動を起こしたり普通にドアを通って帰還しようとした際などに、かの有名な「Level 0: “The Lobby”」のような場所へ落ちてしまうことがあるらしい。ノークリップの理不尽さまで再現しているとは驚きだ。
追い打ちをかけるように、背後からは不気味なオルゴールの響きと共にクソデカ石仮面が追ってくる。怖いやら理不尽やらで笑いながら逃げ続けること数分、ガラクタに紛れて立っていたドアから無事脱出に成功した。
本作は、この予想できないことが起こり続けるドタバタ感がめっちゃクセになるのだ。
高めの難易度とシュールな笑いが交互にパンチを食らわせてくるおかげで、たとえ遠征を断念しようとまたプレイしたくなってしまう。
ド広いマップの端々に見え隠れする不穏要素。そういやこれ、『ホラーゲーム』だったよね……?
何度もプレイを重ねて気づいたのだが、キャンプのテントで迷宮内のマップを確認できることをすっかり忘れていた。
実はこのゲーム、遠征中に行ったエリアや位置関係を立体マップで確認できるのだ。チュートリアルで聞いていたはずなのにうっかりしていた。
今回は運よくいろんなエリアを巡れたので、各エリアの位置関係がどんなもんかいっぺん見てみようか、とマップを開いたところ──クソデカマップが突如出現。
アリの巣のように層状に重なる膨大な数のエリアを網羅したマップが、いつの間にか出来上がっていた。
最下層の砂の惑星エリアから最上部のニューヨーク摩天楼エリアまで、どのエリア同士が繋がり、どこへ通じているのかがよく分かるのだ(めちゃくちゃ見づらいが対応するドア同士も緑の点線で繋がれている)。これまでの探索や恐怖の蓄積あってこそのデータ量なので、メッチャうれしい。
そしてこのゲーム、経験値を貯めてレベルを上げることで様々なアーティファクトを獲得できる。装備することでバフ(やデバフ)を得られる上に、それまで行けなかった新規エリアも出現するようになるのだ。
どのアーティファクトを持っていくか、どんな容姿にするか、カスタム要素がなにげに多い。
……ん?
リリーの幽霊?
リリー、そして本部によって「100%の安全」を保証されているはずの遠征。
エージェントの死をかたくなに否定する本部と、存在するはずのないエージェントの幽霊。
メモに残された再生液の存在と、謎のクローン技術で何度でも生成されるエージェント。
ああそうだ。これ、ホラーゲームだったんだ。
端々にじっとりと漂い始めた不穏な気配。
徐々に情報の断片が現れ始めたが、体験版の時点ではその全貌はいまだ不明だ。
トンチキ風味のパーティーホラーの裏にとてつもない闇と陰謀を秘めた『プロジェクト:ドア』。ここからが本当の「迷宮への入り口」なのかもしれない。




















