『エターナルアニマ』誕生のきっかけは、プロデューサー・塩田氏の企画書が“つたなかった”から!? 樋口氏「今思えば、塩田の罠に嵌った」
──本作の開発がどのような形で始まったのか、その経緯についてお聞きしたいです。樋口さんが「新作RPGを作りたい」という形で主導されたのでしょうか。それとも、塩田さんの方から樋口さんにお話を持ち掛けたのでしょうか。
塩田氏:
新作JRPGを作りたくて企画書を書いたところ、あまりに稚拙な企画書を見て不憫に思ったのか樋口が仲間になってくれたのが生い立ちです。
樋口氏:
最初はJRPGに対する塩田の思いを実現するためにアドバイスするつもりが、気づけば本腰を入れていました。今思えば塩田の罠に嵌ったんだと思います。
──シナリオの野島一成さん、ストーリー原案の牧野圭祐さん、シナリオディレクターの福田弘直さん、音楽のベイシスケイプ/崎元仁さんなど、本作には非常に個性豊かなクリエイターが多数参加しています。このメンバーはどういった基準で選定されたのでしょうか?
また、ディレクター/プロデューサーとして、一本の作品を作るにあたって、スタッフをまとめあげるためにどういった手法が取られましたか? 目指すべき「作品のビジョン」をどのような形で共有し、また制作の過程で目指すものからズレていないかを、どのように確認していたのでしょうか。
塩田氏:
JRPGという枠組みが定まっていたことや、私と樋口の趣向が近かったこともあり、メンバーは自然と決まっていきました。中でもベイシスケイプ/崎元さんとは『朧村正怪奇譚』でもご一緒することになり、タイミングにもご縁を感じます。本当に素晴らしい方々に参加いただけて感謝しています。
私は目指す場所を示す役割ですが、実際に開発チームを動かすのは樋口ですので、もっぱら樋口と話しながら進めてきました。
樋口氏:
野島さんと崎元さんはスクウェア時代のつながりもありますが、何よりおふたりが手掛けられた作品が大好きなのでお願いしました。
ディレクターは最初に夢を語り、その夢を実現するためにスタッフを集めます。その後、スタッフの手を経て変化したものを、より良いものであれば採用し、大きく外れていれば方向修正する仕事です。最終的に完成したかたちが最初の夢にどれだけ近づけたかを味わえるのがディレクターの醍醐味だと思います。
──本作の開発中、制作チーム内で意見の割れたシステムや仕様などはありましたか? もしあれば、その意見をどのようにまとめ、最終的にどういった形へ落ち着けたのか、お聞かせください。
樋口氏:
バトルシステムはかなりの変遷がありました。開発初期は移動の要素があるなど、現在のものとは大きく異なりました。プレイヤーに何をして楽しんでもらうのかを整理しながら、試行錯誤を繰り返して現在の「未来予測バトル」に終着しました。
──坂口さんとの対談動画のなかで、坂口さんは「崎元に1曲でも多く曲を書かせること」と冗談交じりにお話しされていました。もし差し支えなければ、最終的に崎元さんが何曲を手掛けられたのか、お教えください。
樋口氏:
開発がスタートした頃、崎元さんは「曲数が多い」とおっしゃっていたのですが、都度話をする中で崎元さんから「この場面でこんな曲が欲しいですよね」と提案をもらい、気がつくと当初よりかなり曲数が増えていました。
最終的には何曲なんでしょう。まだ作られているのでわかりません。笑
JRPGの面白さは“バトル”で決まる。目指したのは、「開発陣が思いつかないような戦術が出てくる」工夫しがいのありすぎるバトルシステム
──樋口さんがディレクターとして本作のバトルシステムを構築するうえで、「絶対にここだけは実現したかった」というようなこだわりのポイントがあれば、お聞かせください。
樋口氏:
個人的にJRPGの面白さの7,8割はバトルで決まると思っているので、絶対にバトルを単純作業にしたくありませんでした。そこでバトルの開発チームには「カスタマイズによってプレイヤーごとに使えるスキルコマンドが変わるので、我々が思いつかないような戦術が出てくるものにしよう」と伝えました。
難易度設定があるので、物語を楽しむバランスも選べますが、バトルに自信があるひとにはぜひ一番難しいモードに挑戦してもらいたいです。スキルセットのカスタマイズによってさまざまな攻略法が出てくると思うので、どんな風に攻略されるのか楽しみです。
──坂口さんとの対談動画のなかで、見下ろし型のグラフィックで、どれだけ「刺さる映像」を作れるかが課題としてあげられていました。本作のグラフィックを“刺さる”ものとするために、どのような工夫がおこなわれたのでしょうか?
樋口氏:
「ふかん視点」だからこそできる映像表現を模索しました。テクスチャの綺麗さだけではなく、空気感や光の見せ方を含めた空間としての美しさを追求しました。本作の世界の特徴である「水」の存在感もこだわったポイントです。
──本作の物語のキーとなる「読思術」は、物語上の能力であるだけでなく、フィールド探索、ジョブやスキルの獲得、さらにバトルの未来予測にまで結び付いています。このようなデザインは読思術を使ったゲーム性を考えていくうえで実現されたのでしょうか。それとも、まず「さまざまな要素と結びついたシステム」が求められ、その結果として読思術が解決策となったのでしょうか?
塩田氏:
企画の段階で、樋口に「主人公には外連味のある特殊能力を持たせてほしい」とお願いしました。物語だけでなくキャラクターの育成やバトルシステムにまで結びつくとは想像していなかったので驚きました。
樋口氏:
はじめに「読思術」を考えました。最初のアイディアは、物に宿った記憶を自分の能力に変えながら旅をする古物商が主人公というものでした。かつての持ち主がどんなことを考え、どんな生き様だったのかが知れたら素敵だなと思ったのがはじまりです。
その後、主人公の設定は変わりましたが、「読思術」の基礎部分は変えずにカスタム要素やバトルシステムに発展させることでゲームシステムを決めました。本作のテーマである「継承」を象徴する能力にできたと思います。
──本作では、かつて沈んでしまった大陸に対し、その過去へとアプローチをおこなっていくことになりますが、過去と未来はプレイヤーの意志によって、ある程度自由に移動できますか? それとも、シナリオごとに「今は過去、今は未来」と指定された時間帯を体験するのでしょうか?
樋口氏:
シナリオに沿って過去と現代を巡るかたちで、タイムパラドックスが起きないようにしています。それぞれの大陸の過去から現代を一方向で体験することで、物語のテーマである「継承」を強く感じてもらえると思います。
──過去改変について、プレイヤーに「自分が歴史を変えた」と実感してもらうために、現代側ではどの程度の変化を用意しているのでしょうか? 景観だけでなく、人間関係やゲームプレイにも影響するのでしょうか。
樋口氏:
もっともわかりやすいのは「滅びたはずの大陸が現代に存在するようになること」ですが、過去の時代の住人の「子孫が現代に息づいていること」も大きいと思います。例えば、過去の時代で仲間として戦った人物の子孫が新たな仲間になるのですが、先祖と性格が全然違うのにどこか共通の意志を持っていたりします。
ほかにも、過去のダンジョンがそのまま残っていたり、地形が変化していたり、大陸によっても文化の変化や変わらないものなどさまざまです。中には、宝箱の中身をあえて持ち帰らないことで現代に戻ると中身が変化しているなんてこともあります。
──アンブリスでは、科学的に問題を解決しようとするマルティと、伝承や儀式を重んじる村人たちの対立構造が描かれていました。本作では4つの大陸を巡るとのことですが、それぞれの大陸で「何を受け継ぎ、何を変えるべきか」という異なる問いを描いていく構成なのでしょうか?
樋口氏:
大陸ごとに異なる問題、異なる継承を描いています。プレイヤーは主人公のウェイドとなり、過去の人びとが何を大事にして何を託そうとするのか、現代の人びとが何を受け継ぎどう生きるのかを見ることで、継承することの意味を考えることになります。
──本作のボリュームについて、お聞きしたいです。本作は4つの大陸を巡り、それらが沈んでしまった理由を探る、壮大な物語が用意されています。このストーリーのメイン部分は、ボリュームとして何時間ほどでクリアされることを想定してますか?
また、メインストーリーを進めるために必ずしも必要ではないサイドストーリーや、なんらかの収集要素、ゲームクリア後に解放されるコンテンツなどはどの程度存在しますか?
樋口氏:
遊びかたによりますが、サイドストーリーやキャラクターのカスタマイズも豊富にありますので、全部を遊びつくそうとするとそれなりのボリュームがあると思います。
──本作はさまざまなRPGの魅力を受け継ぐ一本であると同時に、さらに未来のゲームへとバトンを繋ぐ作品でもあります。本作を通じて、未来のRPGに対して、どういったものを継承していきたいとお考えでしょうか?
樋口氏:
「継承」には不変的なものもあれば革新していくものもあり、さまざまな叡智を過去から未来へつなぐものです。ゲームも同様に、進化や原点回帰をくり返しながら、より良いかたちに継承していけたらと思っています。
──最後に、本作の発売を心待ちにしているRPGファンの皆様へ、メッセージをお願いします。
塩田氏:
完全新作への挑戦ということもあり学ぶことの多い日々ですが、我々と同じようにJRPGが好きなひとがたくさんいることに心強さを感じています。ぜひ一緒に『エターナルアニマ』の船出を楽しんでもらえたら嬉しいです。
樋口氏:
JRPGを40年間作り続けてきた開発者が、旧知のメンバーと、そして若いクリエイターと挑む完全新作JRPGにご期待ください。(了)






