ある日、中国のとある町にとつぜん“西洋風の城”が出現した。
比喩ではなく、そこにはたしかに城があった。
なぜ、いきなり城が?
この城は、「円卓の騎士」を召喚して異世界と化したロンドンで生き抜く新作アクションゲーム『Tides of Annihilation(壊滅の潮汐)』を試遊体験できる会場であった。
体験会のためだけに本物の城を建ててしまうとは。その本気度にはおそれいる。
しかも、すさまじいのは外側だけではなく、中には重厚な扉があり、開かれた先には巨大な剣が刺さっていた。
その景色から、『アーサー王伝説』を再現してやるぜ!という熱意を感じるようであった。
いったい、いくらかけたらこんなステージになるんだ……。
天井知らずでお金をかけてるとしか思えないこの設備だが、いったいどのようなゲームを遊べるのか、期待を抱かせるには十分すぎる演出であった。
筆者は、この城で本作の世界初となる試遊体験会に参加してきた。
異世界と化したロンドンで円卓の騎士を召喚して戦う主人公「グウェンドリン」の活躍と、世界中の神話が入り乱れる世界設定。そして絶望的な強さを誇るボス戦の模様を届けさせていただきたい。

また、本稿には本作の開発陣に「なぜ円卓の騎士がテーマなのか」など聞かせていただく独占インタビューの機会もいただけた。
そこには、開発陣の日本のコンテンツに対する愛や、「グローバルな作品にしたい」という思いが込められていた。気になった方は、ぜひそちらも読んでみてほしい。
“円卓の騎士に護られる”安心感がすごい
さて、本作の主人公「グウェンドリン」は、異世界からの侵攻で壊滅したロンドンで行方不明の妹を探す旅に出ることになる。物語のなかで彼女は『アーサー王伝説』で名高い“円卓の騎士”を召喚し、従える不思議な力に目覚める。
廃墟を探索するひとりの美女を護るのは、伝説の騎士たちである。じつにロマンのある設定だが、筆者が目をみはったのは彼らのスタイリッシュな護りっぷりだった。
「グウェンドリン」を護る円卓の騎士たちは彼女が一声名前を呼ぶと姿を表し、敵に攻撃を繰り出す。
今回の体験会では、大鎌でグウェンドリンの攻撃にあわせて強力なコンボを叩き込む「Bedivere(ベディヴィア)」にはじまり、敵の注意をひきつけ、さらには追撃も得意とする「Gawain(ガウェイン)」、強力な吹き飛ばし攻撃で敵をひるませる怪力の騎士「Palamedes(パロミデス)」、弓矢で援護し、仕掛けも起動できる「Kay(ケイ)」、風の力を操る高機動の騎士「Gaheris(ガヘリス)」などの活躍を見られた。
どの騎士も『アーサー王伝説』を知る者であれば高名な人物ばかりで、“円卓の騎士”好きなファンにとってはこれだけでも楽しめる内容になっている。
グウェンドリンはこれら円卓の騎士を切り替えながら攻撃を繰り出し、コンボを繋いでいく。騎士はメインとサブを合わせて合計4体まで装備でき、いつでも自由に切り替えながら戦える。
騎士ごとに能力は異なるため、どの場面で誰を使うかという即座の判断力がプレイヤーには問われることとなる。
とはいえ、操作がむずかしいと感じることはなかった。というのも、本作は通常攻撃に騎士の攻撃を組み合わせるだけでスタイリッシュな技を繰り出せるシステムになっているからだ。
騎士たちに自分を護らせつつ、ゲージがたまったらド派手な必殺技でフィニッシュを決める。この一連の流れが、とにかく気持ちいい。
さらに、敵が赤く光ったタイミングでパリィを決めると敵がひるみ、そこに一気にコンボを叩き込める。このパリィの読み合いがバトルに骨太な緊張感と手応えをもたらしている。
また、騎士たちの力はフィールド探索でも欠かせない。
パロミデスの怪力で重い扉を開け、ケイの弓矢でギミックを発動させることも可能で、。探索中に新たな騎士が仲間に加わることもあるため、既存の騎士とメンバーを入れ替えながら自分だけの“円卓の騎士”を育てていく楽しさもある。
気づけば「次はどの布陣で行こうか」と、本気で悩んでいる自分がいた。
アヌビス、侍も登場。そして、“関羽”が師匠?
今回の体験会で探索できたのは、大英博物館をモチーフにしたステージ「ラッセルミュージアム」だ。そこでグウェンドリンは、さまざまな神話の世界へと降り立つことになる。
なかでも「おっ」と思わされたのは、チャイニーズギャラリーで出会う“関羽”をモチーフにした師匠キャラクターの登場だ。
そこに鎮座していたのは関羽をモチーフとした騎士。正直に言えば、「なんで関羽?」というのが最初に抱いた感想だ。
しかし後のインタビューで、開発者はこう語ってくれた。「世界中のプレイヤーに届けるグローバルな作品にしたかった」と。
大英博物館をモチーフにした舞台だからこそ、世界各地の文化が交差することに必然性があるということか。
最初は関羽が円卓の騎士を率いる女性の師匠を務めるという絵面の衝撃にしばらく頭が追いつかなかったものの、グウェンドリンがチャイナ風のお辞儀で礼を取る場面を見て、ようやくその設計の妙に納得がいった。
そして、ギャラリーを進むごとに行き先はさらに広がる。
ある展示室からは広大な砂漠へと落下する展開が待っており、エジプトのアヌビス神をモチーフにしたボスにも出会えた。
また、日本の甲冑に触れると、雷をまといながら猛烈なパリィを仕掛けてくる「侍の騎士」との死闘も体験できた。甲冑に触れただけで異世界送りにされるとは、この博物館の警備体制がいささか心配になる。
主人公と同じ「騎士を召喚する力」を持つ美女「モードレッド」との対決
そして体験版のハイライトが「モードレッド」との直接対決だ。
円卓の騎士の物語では、アーサー王に謀反を起こし致命傷を負わせた人物として知られている。その大罪人が、本作ではなぜか美女として登場する。
モードレッドも主人公と同じく騎士を召喚する能力を持っており、強力なボスとして目の前に立ちはだかる。互いを護る騎士同士が激突する胸熱な展開だ。
モードレッドとの戦いは、同じ力を持つ者同士の激突だからこそ相手の動きを先読みして戦略を練りながら立ち回る楽しさがあった。
なぜロンドンなのか。開発者へ独占インタビュー
先行プレイのあと、筆者は本作のディレクターを務めるAry CHEN氏とプロデューサーのKun FU氏への独占インタビューの機会をいただいた。
最初は、単刀直入に一番気になっていた「なぜロンドンが異世界と化したのか」を聞いてみることにした。ちなみに、城の予算のことはさすがに聞けなかった。

「現代に円卓の騎士を登場させたい」
──本作の舞台は異世界からの侵攻を受けたロンドンとなっていますが、なぜロンドンをメインの場所として選んだのでしょうか。
Ary CHEN氏:
本作は『アーサー王伝説』の物語をベースに作られています。
開発の初期段階から「主人公が騎士を連れて戦う」というバトルシステムを作ってみたいとは思っていました。
そのシステムに“アーサー王”というテーマが非常にマッチしていたんです。
アーサーの物語はイギリスの話でもありますので、ロンドンは舞台として理想的でした。
──円卓の騎士が現代を救うために登場するということですね。
Ary CHEN氏:
そうですね。現代のロンドンに異世界の設定を落とし込み、「現代のロンドンに円卓の騎士を登場させる」という想像を形にしました。
円卓の騎士たちが、チームに多くのインスピレーションを与えてくれたのです。
──『アーサー王伝説』といえばさまざまな人気の騎士が登場します。ちなみに、今回の先行体験では見かけませんでしたが、例えばランスロット卿は今後登場する予定はありますか?
Kun FU氏:
はい、もちろんです。
アーサー王伝説の有名な騎士たちは、今後さらに登場する予定です。騎士は本作のメイン要素なので、バトルシステムについても絶えず拡張を続けています。
リリース時に何人の騎士が登場するかはまだ完全には決まっていませんが、プレイヤーにより多くの選択肢を提供したいと思っています。
──すこし方向性を変えますが、『アーサー王伝説』にはロマンスや恋愛の要素も欠かせません。本作でもそうしたロマンチックなストーリー展開はあるのでしょうか?
Ary CHEN氏:
面白い質問ですね。我々は『アーサー王伝説』をモチーフにしつつも、「滅亡の危機に瀕したポストアポカリプス的なロンドン」を舞台にしています。
主人公とNPCとの間には様々な感情のドラマが描かれますが、それが恋愛要素かと言われるとすこし異なりますね。
Kun FU氏:
本作の軸は崩壊した世界での過酷な戦闘とアクションに置いています。
『アーサー王』をモチーフにしつつダークファンタジーとして再構築しているため、現時点では甘い恋愛要素は意図的に控えめにしています。
試遊版は「氷山の一角」
──今回の試遊版はバトルを中心に切り出した内容でしたが、製品版ではNPCとの対話や街でのアドベンチャー要素など、戦闘以外のコンテンツも充実していくのでしょうか。
Ary CHEN氏:
はい、その通りです。遊んでいただいた試遊版は、ゲーム全体のほんの一部をお見せしたものにすぎません。1〜2時間という限られた時間ですべての要素をお見せするのは難しいため、今回はとくにアクションと戦闘の爽快感にフォーカスして展示しました。
──アクションの手触りや演出の臨場感は非常に洗練されていました。アクション設計において、開発チームが特にこだわりや重点を置いたポイントはどこでしょうか。
Ary CHEN氏:
アクション面でのこだわりは大きくわけてふたつあります。
ひとつめは異なる騎士たちのスキルや戦術スタイルを自由に組み合わせることで、プレイヤーごとに異なるアクション体験を生み出せるようにしたバトルシステムです。
ふたつめは「ボス戦における演出と没入感」です。ボスごとにまったく異なるバトル体験を用意しています。
──主人公と同じ能力を持つ「モードレッド」と対峙したときはドキドキしました。
Ary CHEN氏:
ありがとうございます。「モードレッド」は純粋な難度よりもシネマティックな演出に重点を置いた構成にしました。一方で侍のようなボス「Gerant」は華美な演出を抑えて攻撃の見極めや立ち回りといった“駆け引きと高難度アクション”を楽しめる設計にしています。
Kun FU氏:
手応えのあるアクションに挑めるボス戦もあれば、大迫力の演出で圧倒する大仕掛けのボス戦もあります。この二面性とバリエーションの豊富さこそが、本作のバトルにおける最大の強みと言えるでしょう。
主人公のライバル。同じ騎士召喚の力を持つ美女「モードレッド」
──さきほどモードレッドの名前が出たのでぜひお聞きしたいのですが、なぜモードレッドは美女として登場するのでしょうか。
Ary CHEN氏:
私たちが描くのは「ファンタジーとして再解釈したアーサー王伝説」だからです。
主人公グウェンドリンと「対極となるライバル」を作り出したかったのです。
だからモードレッドは、グウェンドリンとは正反対のキャラクターとしてデザインされています。
──本作は主人公が円卓の騎士を召喚して戦いますが、「モードレッド」も同様の能力を持っています。なぜふたりとも同じ能力を持っているのでしょうか?
Kun FU氏:
モードレッドは本作において極めて重要なキーパーソンです。
彼女の役割は非常に重要なのですが、なぜ主人公と同じ能力を持っているのか。その理由はメインストーリーと密接に関わっています。
現時点では詳細をお話しできませんが、今後の発表やゲーム本編をプレイしたときを楽しみに待っていてください。
オープンワールドではなくストーリーメインのタイトルに
──試遊版に触れているとエジプトの砂漠や日本風の世界を見ることもできましたが、実際に製品版ではロンドン以外の地域も冒険できるのでしょうか。
Ary CHEN氏:
私たちは本作を世界中のプレイヤーに向けたグローバルな作品にしたいと思っています。そして、さまざまな文化を融合させたいと考えています。
この度、遊んでいただいた博物館のステージには異なる文化の展示室が数多くありますが、まさにグローバルな作品を創作する舞台としてマッチしていました。他国のステージは、ほかにも登場します。
──砂漠のエリアは広大で謎解きも複数仕掛けられていましたが、本作はオープンワールドのタイトルになりますか?
Kun FU氏:
本作はオープンワールドではなく、ストーリー主導のリニアなゲームになりますね。
ただし、おっしゃるとおりプレイヤーにはより多くの探索の余地を提供したいと考えています。
最高のシングルプレイ用アクションゲームを作りたい
──すこし質問の方向性が変わりますが、みなさまが集まってこのゲームを作りはじめたきっかけを教えてくださいますか?
Kun FU氏:
本作のプロジェクト自体は2023年1月に始動しました。当時のコアメンバーはまだ少数でしたが、全員がアクションゲームの愛好家であり、シングルプレイゲームの開発者でした。
その誰もが、「シングルプレイのゲームを作る」という夢のために集まりました。本作が、ひとりでも多くのプレイヤーに気に入ってもらえたら何より嬉しいです。
Ary CHEN氏:
チーム結成当初からの揺るぎない目標として、「世界中のプレイヤーに向けて、最高のコンシューマー向けのシングルアクションゲームを届けること」を掲げています。
「アクション」の核となるのは戦闘システムであり、「アドベンチャー」の部分は世界設定やステージの探索要素です。この2つを高い次元で融合させた体験をみなさまに提供したいと考えています。
『ジョジョの奇妙な冒険』の“スタンド”から着想を得た
──つぎはコンセプトについて伺いたいのですが、細身の女性が騎士に守られながら戦うという絵面は、どのようにしてインスピレーションを得たのでしょうか。
Ary CHEN氏:
ひとつは主人公が騎士を召喚してチームとして戦うという基本設計があります。
もうひとつは、チーム全体が日本のアニメやゲームの愛好家であることははずせないですね。
一例として『ジョジョの奇妙な冒険』の「スタンド攻撃」などからも、多くのインスピレーションを得ています。
日本のプレイヤーへ
──試遊ではキャラクター同士の掛け合いも見られましたが、日本語音声の対応予定はございますか?
Ary CHEN氏:
日本語音声が実装されるかどうかは現時点で決定していません。ただ、リリース時には日本語を含めた11言語のテキストに対応する予定です。
──最後に、日本で本作を楽しみにしているみなさまへメッセージをお願いします。
Ary CHEN氏:
日本のプレイヤーみなさまにも、私たちのゲームを楽しんでいただけることを心から願っています。
Kun FU氏:
クリエイターとしてゲーム文化の本場である日本のみなさまに私たちの作品を届けることができるのは、この上ない幸せです。
私たちがアクションゲームに注ぎ込んだすべての情熱とこだわりが、本作をとおしてアクションゲームを愛するすべてのプレイヤーに届くことを願っています。
──本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
Eclipse Glow Gamesの手がける『Tides of Annihilation』は、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games)に向けて開発中だ。
しかし、ひとりの美女が次々と騎士たちを呼び出して戦うその姿は、もはや「円卓サークルの姫」に見えなくもない。














