2027年への延期は「やりきるため」。ジャンルを決めずに作り、あとから名前をつけた
──発売日が2027年に定まったとの発表もありました。クオリティアップのための期間、ということですよね?
河合氏:
そうですね。当初は2026年発売を目指していましたが、理由としてはすごくポジティブなんです。ここまでお話したように、『UN:Me』は現在にいたるまでに、開発ではいろいろと紆余曲折がありました。
モーションキャプチャーを取り入れたこともそうですし、ヒストリアさんがさまざまなことを積み重ねていただいた結果、かなりいいものにできるという手応えがあります。
そうなってくると、「ここまでやりきりたい」というポイントが出てきたといいますか。花守さんのお芝居、ゲームの体験もそうですし、モーションキャプチャーによるキャラクター表現など、見えてきたところがたくさんあります。
ここまで積み重ねてきたものがつながったらすごくいいものになる。そこがすごく綺麗に見えてきたんですね。それをやりきるために、少し時間をいただきたいというところで、2027年発売のアナウンスをさせていただきました。
【#UNMe 発売時期変更のお知らせ】
— UN:Me【公式】 (@UNMe_JP) September 17, 2026
本作の完成度をさらに高め、皆様に最高の体験をお届けできるよう、スタッフ一同全力で開発を進めてまいります。
今しばらくお待ちいただけますよう、お願い申し上げます。 pic.twitter.com/gPkKA4w5i7
──手応えがあるからこそ開発期間をもう少し、と。
河合氏:
ゲームを作っているときにすごくいいものができるときって、謎の高揚感とか「これ、いいものになるぞ」という予感めいた感覚があるんです。それが今年になってから、すごく高まっていったんですね。だからこそ、夏くらいから、さまざまなものをみなさんにお届けできるようになってきたんです。
遊んでくださった方々に強い何かを残せるコンテンツになる。その確信、根拠が見えてきたというのが、発売までちょっとお時間をいただいた理由としてはいちばん大きいところです。
佐々木氏:
以前のインタビューでもお話させていただきましたが、『UN:Me』の開発がスタートするときに、山中さんと「作り方が見えてないものを作りたいよね」という話をしていたんですよね。
でも、思った以上にそのハードルは高くて(笑)。自分たちなら乗り越えられる、と思っていたんですけど、いや、もう苦労の連続で(笑)。
山中氏:
最初にジャンルを決めなかったというのは、こだわりではありつつも、ゲーム制作における「人類の叡智」を捨てているわけですよね。つまり、ジャンルを定めることで、作り手側も、売る側も、宣伝する側も、共通のゴール、ビジョンが持てるわけです。ですが、今回はそれを捨てて「作っていった先にジャンルがある」という形で進めていったんですね。
河合氏:
ジャンル名をあとで付けたのは、初めてかもしれないですね。
山中氏:
通常、大きな会社さんの稟議を通すには、ターゲットとジャンルが絶対に必要なんです。ですから、そういう意味でもすごく贅沢ですよね(笑)。
佐々木氏:
「ジャンルよりも体験から作りたかった」という思いがすごく強くて。「人間ってこう感じるよね。じゃあ、これをビデオゲームというメディアにしよう」という考え方。
そのほうがゲームの可能性はもっと広がると思いますし、「人間がどう感じるか」というのはすべての事象が行き着くところじゃないですか。『UN:Me』では、そういうものづくりをしたかったんですね。
じつは、最初に山中さんとは「セリフがなくてもいいよね」と話していたんです。「演技だけで表現できたらいいよね」と。たとえば、キャラクターの表情や目の動き、うしろ姿だけで魂の違いを見せられたら、ゲームの新たな可能性を示せるんじゃないかと。
──なるほど。
佐々木氏:
最初はそういう話をしていました。ですが途中から、それぞれの魂をしっかりと伝えていくには、シナリオがあったほうがいいと考え方を変えたんですね。
気高い理想をひとつひとつ、別の要素にも伝わるように形を変えつつ、バランスをとっていきました。これは「まずジャンルがあって、そのジャンルの中でどう変えようか」というところとは真逆だと思います。
──ひとりで作っている個人制作のゲームであれば、この作り方はできると思うんです。でも、『UN:Me』は複数の会社、多くの人が携わっているタイトルなわけで……この作り方ができているのは本当に稀有だなと。
山中氏:
お金を出してくれるパブリッシャーさんがいるのはありえないですよね(笑)。制作側の自己責任なら好きなだけ蛇行すればいい。でも、パブリッシャーがいる状態でこの作り方が許されるというのは……。
河合氏:
通常であればプリプロダクションでプロジェクトがなくなる可能性があったわけですから。
佐々木氏:
当初は謎のゲームでしたからね(笑)。
山中氏:
ある意味、自分がやっていることって、つねにフォーマットとか記号からの脱却を目指しているんですよね。それって、初めてご一緒する相手だとやっぱり「?」なんですよ。なんでわざわざこんなことをするのか、と。
でも佐々木さん、花守さんとは『Caligula -カリギュラ-』で一緒に仕事をさせていただいて、「わざわざそんなことをした先に出る味」を知ってくれていたというか。
──最後に、発売を楽しみにしている方々へ、改めて見どころを含めてメッセージを……。
花守さん:
やっぱり人間って、おもしろいんですよ(笑)。
──(笑)。花守さんは、ふだんから人間観察を自然としてしまったり、人に対しての興味がすごく強いというのがあるのですか?
花守さん:
うーん、どうなんでしょう……。でも、私は「そんなことは成就できないよ」と言われることを掲げるというか……。人間のエゴも願いも……そういった感情に分解できない、カテゴライズできない感情のようなものに、すごく惹かれる人間だとは思っていて。
怒りと悲しみという感情がありますけど、じゃあそのあいだにあるのはなんなのか、とか。感情は、なんとなく言語化されたりしていますが、たとえば喜怒哀楽の名前がつかない、もっとこう、原初って言えばいいんですかね。人間が抱く、根源的なものがあると思うんです。
──言葉にできない感情というか……。
花守さん:
そういうものと向き合って、声に思わず乗ってしまうものの中に、その根源的なものが含まれていると私は思っているんです。『UN:Me』では、フィクションと言われてしまう魂たちにそういったものを与えられたらすごくおもしろい結果が生まれるんじゃないかと……。
多分、私はそういう変態なんだと思うんですよ(笑)。……その、私が本当に興味を持っている部分と、『UN:Me』でお声がけいただいた、人間というものへの向き合い方がとてもマッチしていたんですね。
──ふとしたときに人間が出す本質みたいなところを、『UN:Me』では演技、芝居として求められて、それが入っているということですね。
花守さん:
そうなんですよね。本当にそういうものへ挑戦しているのが『UN:Me』なんです。ですから、プレイした方が何を受け取ってもらえるのか、本当に楽しみです。
努力やこだわりが積み重なった作品。「きっと皆さんの中に残る作品になる」
──では本作を楽しみにしてる方々へ、それぞれメッセージをいただけますか。
河合氏:
すごく理想の高いゲームで、「本当にこれは実現できるのかな」と思いながら紆余曲折したところもありました。
でも、制作に携わったみなさんの努力とかこだわりみたいなものが積み重なっていって、それがちゃんとゲームになっている。もちろん、エンタメにならなきゃいけないところはあるんですけど、そういったところも担保したうえで実現できることが感じられる手応えになっています。
もっともいい形でユーザーのみなさんに届けられるという自信も持てる状態になってきましたので、そこはすごく期待していただきたいなと思っています。
TGS以降、ゲームに触れていただく機会も設けたいと思っていますし、それをまた楽しみにしていただければと思います。発売まで全力で取り組んでいきますので、引き続きお待ちいただければと思っております。
佐々木氏:
作ってきた中で、これまで話したとおり、すごく苦労の多い、しかも先が見えないプロジェクトではありました。なんとかそこを抜けて「いい形で皆さんの手元にお届けできる」というのが我々も見えてきて、リストアップができている状態です。
あとはもうそれを早く、きちっとしたクオリティで作り上げて、皆さんにお届けするだけという状態です。これまで突き詰めたものを丁寧に、かつ、そこまでお待たせしすぎないところでお届けできたらと思っておりますので、もう少々、楽しみにお待ちいただければと思います。
山中氏:
僕はゲームクリエイターとして以外に、もう5年くらいずっとお芝居に向き合ってきました。それは脚本をアウトプットする芝居まで監督することでより、連動した体験を生み出すためです。『UN:Me』ではゲームという自分の本職に、培ってきたお芝居の形をぶつけることができている状況なんですね。
ゲームとしてはもちろんなんですけど、これまでなかなかゲームには持ってこられていなかった文脈、文法みたいなものを『UN:Me』では表現できています。そういったところに興味がある人にも振り向いてもらえたらうれしいですね。
ゲーム全体として見れば、わかりやすいものではないとは思います。ですが「わかりづらいものがわかる」という気持ちよさみたいなものがあると思っていて。いま、世の中にはたくさんのゲームがあふれていますが、「ちょっと変わったゲームをしたいな」と思ったときに選んでもらえるタイトルだといいなと。
花守さん:
私がお話をいただいたときには、まだ「トリアージ」という言葉は『UN:Me』にはなかったんですね。
でも、あとでその単語を聞いて、すごく自分の中でしっくりくると同時に「なんて酷なテーマを打ち出したんだ」と感じたんです。本当の身体の持ち主を見つけるために「魂を切り捨てる」というのは、本作の最大のテーマなんですよね。
でも、それってあくまでもプレイヤーさんの責任だと思っていて……。だからこそ、私は4つの魂たちの人生を、全力で演じさせていただきました。魂たちにとっては、自分が生きることって当たり前なんです。「トリアージ」という選別は彼らの中にはないんですね。
ふだん、日常を生きていて、魂や命に順位をつけるという行為は、ほとんどの人は経験しないと思うんですよ。そんな中で『UN:Me』は、その順位を明確につけて、誰を捨てていくのかを決めていく……。でも、このテーマに惹かれる人は、きっと日ごろから、命について考えてる人だと私は思うんです。
「生きるってなんだろう」とか、逆に「死んじゃうってどういうことなんだろう」って。少なからず心の中でそういったことを考えてる人たちには、とても響くテーマだと思っています。
答えを示すというよりは、そういう「なんで?」と思って生きてる人たちの背中を押してくれたり、手を引いてくれたり、なんだったら前を歩いていってくれるような作品なんじゃないかなって。
私からは、魂たちと話してみて「いま何を思いましたか?」と問いかけたいというか、そんな作品なんですよね。
さきほど話したように、「死んじゃう」とか「生きたい」という気持ちは、どういうところから生まれてきて、どこに行くんだろう。そこを考えてる人に手に取ってほしい作品だと思います。
きっと皆さんの中に残る作品ですので、私たちの思いを受け取っていただけたらうれしいなって思います。(了)
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※画面は開発中のものです。








