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「とにかく頭がおかしいものを作ってほしい」。ホラー専門会社・株式会社闇のゲームブランドが、たったふたりのチームに出したオーダーがそれだった。配信でバズった『たろうくんはいってきました』制作陣に作品に込めた狙いを聞くインタビュー

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実況者の「リアクション」を狙って開発を進めた。タローくんのキャラは「憎めなさ」がカギ

──『たろうくんはいってきました』は、ゲーム実況との相性が非常にいいと感じました。本作は当初から「ゲーム実況での映え」や、配信での「撮れ高」を狙って制作されたのでしょうか?

藤田氏:
プロトタイプをもらったときは、正直「これはどうなんだ」と思ったんです。

ただ、さきほど話があったように、タローくんというキャラクター自体は当初からいたんですね。そこで、「このタローくんをゲームサイクルの中心に据えてやれないか」という話をおふたりにさせていただいたんです。

最後のオチを提案していただいたときには「じゃあ、これをここに持っていくには、よりプレイヤー自身に襲いかかってくるような何かがないといけないよね」という相談をして。そういったコミュニケーションから、現在の形が生まれました。

また、配信者の方々が撮れ高があるかどうかを判断するのは、「自分が叫べるか」とか「『ぎゃー!』とリアクションしてコメントで反応があるか」といった視点になると思います。それを踏まえると、やはりジャンプスケアが多いほうがいいと思いました。ですから、リアクションを取りやすいタイミングを僕から提案し、うまく組み込んでもらっています。

『たろうくんはいってきました』開発者インタビュー:配信でバズったゲームの制作陣に作品に込めた狙いを聞く_002
(画像は『たろうくんはいってきました』Steamストアページより)

松明氏:
プロトタイプのときから「実況者さんに遊んでほしいな」と思いながら作っていました。最終的な完成形に関しては、実況者さん自身、つまり現実に影響があるようなギミックを用意したらリアクションしやすいだろうと考えて作ったんですね。

最後に、電話するというシーンがあるのですが、実況者さんが想像していないところで起こることだからリアクションしやすいかな、と考えながら作っていって。

T氏:
僕らが当初想定していた段階では、「配信者自体をテーマにした作品であれば、配信者の方々にも取り上げてもらいやすいのでは」という考えがありました。そこから制作を進めていったんです。

さらに、タローくんに関しては、「彼が、ただの普通のキャラクターだとおもしろくない」と考えたんです。そのため、最初からくだらないことばかりを言う、あえて強烈なキャラクター付けを行いました。それを、「短いイベントの中でちゃんと印象づけられるようにしましょうね」と作り上げていった形です。

──たしかに、タローくんは「うざいんだけど、どこか憎めない」と感じたので、設定の妙ですね。

松明氏:
タローくんに関しては、プロトタイプの時点で「最後は死ぬ」と決めていたんです。ただ、死んでも悲しまれないように、僕の偏見をキャラクター性に少し込めていて。あえてイラッとさせるキャラクター、「こいつだったら死んでも仕方ないか、あんなところに行っているし」といった感想になるように作っていたんですね。

藤田氏:
最初はそのような感じで、ただただ「うざい配信者」という、松明さんがいちばん嫌いなタイプのキャラクター設定でやっていただいたんです(笑)。そこで僕から「単純に嫌われるだけのキャラクターだと、プレイヤーに絶望を引き寄せられない」と言いました。「好きになってもらって、そのうえで死ぬほうが苦しいよね」という話をしたんです。

そして、「じつはこういうキャラクターなんですよ」という深掘りをゲームに入れ込んでもらいました。お母さん思いだったという設定はあとから足されたものなんです。家族思いなんだけど、解決手段が「配信でバズろう」という(笑)。そんなズレたキャラクターが生まれて、いい塩梅になったんじゃないかなと思っています。

『たろうくんはいってきました』開発者インタビュー:配信でバズったゲームの制作陣に作品に込めた狙いを聞く_003

検索システムは「ラストのオチ」から逆算して生まれた

──本作からは既存のホラーゲームの文脈に当てはまらない、ユニークなものをあえて作ろうという気概を感じました。

松明氏:
そのいちばんの要素が検索システムだと思うのですが、じつは検索システムを入れたのは開発の終盤のほうで、割と最近というか、今年に入ってからなんです(笑)。

藤田さんと「ここまでにアルファ版【※】をやりましょう」と決めていたのですが、その1ヵ月前ぐらいに検索システムを提案し、「スケジュールを少し伸ばしてください」と相談させていただいたんですね。

検索システムを思いついたきっかけというのが、ラストのオチです。そのオチに関して、検索システムがない状態だと唐突感があったんですね。「いきなりプレイヤーに来たな」とか、「ゲームをしていたのに、なんで現実に?」という感覚があって。

いかにしてオチに違和感を持たせないようにするか。そう考えて、僕とTで喫茶店で閃いたのが検索システムです。ですから、オチに違和感がないように、逆算して追加した、という形になります。

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※アルファ版
ソフトウェアなどの開発段階において、実際に使用してテストをするために用意されたバージョンのこと。

──最初にストーリーのプロットがあって、オチが決まっている状況で、いかにいいシステムにしていくかという考え方で進めていかれた、と。

松明氏:
そうですね。おおまかなプロットがあって、それをYAMI GAMESさんに見ていただいて、「それで行こう」という話になったので、そこに補強するシステムを新しく考えていきました。

──ちなみに、クリエイティブに際して、影響を受けた映画はありますか?

松明氏:
『呪詛』や『近畿地方のある場所について』とか、『回路』の影響が強いですね。本作はけっこう、映画とか小説とか音楽とか、その辺りの影響が強く出ていると思います。

──映画やゲームのいいとこ取りをしているなと思ったんですね。いいバランスで、オマージュやリスペクトをされていると感じました。

松明氏:
これまでさまざまなエンタメに触れてきた中で「いつかオマージュしたいな」と思っていたアイデアを取り入れています。

──ちなみに松明さんとTさんって、いまおいくつなんですか。

松明氏:
僕が今年31で、Tさんは……。

T氏:
3つ下の28ですね。

──なるほど。若いからこその思い切りのよさだったり、アイデアだと思います。

実況でバズった結果、「タローくんガチ恋」の女性ファンまで現れた

──発売から約1ヵ月ほどが経過している状況ですが、手応えやユーザーの反響はいかがですか?

藤田氏:
初速という点では、Steamの人気のランキングにも一瞬ですが入ったり、出だしは好調でした。多くの配信者の方々に取り上げられていて、それがバズったのかなという印象があります。

そこはすごく良かったと思いつつ、配信を見て満足するだけでなく、実際に買ってほしいという気持ちもあります(笑)。これがホラーゲームの難しいところですね。

お化け屋敷と同じように、ひとりでやるのは嫌だけど、自分よりも怖がってる人といっしょにいるとすごく冷静になって楽しいんですよね。多分、ゲームもそれと同じなんだろうなと思います。

──どの層に響いている感覚がありますか?

藤田氏:
もともとホラーファンは女性が多いのですが、本作もやはり女性が多いですね。

9月に「東京ホラー特区!!2026」というホラー専門のリアルイベントに出展したのですが、タローくんの「ガチ恋」勢というか、「本当に好きでたまらないんです」という女性の方が結構いらっしゃって困惑しました(笑)。

──それは想定外ですね。

藤田氏:
ダメンズのタローくんが、母性本能をくすぐるという感想をいただいて。そういった反応も含めて、女性の方が層としては多いのかなと思います。

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松明氏:
SNSなどで感想を見ていると、刺さる人には刺さっているのかなと感じています。「今年いちばんおもしろかった」と言ってくださる人がいたりして、そこはすごく手応えを感じていますね。

T氏:
僕も基本的には同じです。いろんな配信者の方々が扱ってくださり、TGSや「ホラー特区」にも出展させていただいたり、うれしかったです。

ゲーム自体は、正直まだまだポテンシャルがあると思っています。ですから、まだプレイしていない方には、ぜひ遊んでいただきたいですね。

締め切りギリギリで気づいた、タイトルのダブルミーニング

──『たろうくんはいってきました』というタイトルはいろいろ意味深ですよね。これは早い段階から決まっていたのでしょうか?

藤田氏:
プロトタイプのタイミングでは別のタイトルだったんです。ただ、商標の関係で使用が難しく、僕のほうからいろいろ提案をさせていただきました。

現在のタイトルに決まる前にも候補が2〜3あって。「たろうくんは行ってきました」と、「行く」が漢字になっていたり。

配信者の投稿する動画のタイトルのような雰囲気にしようということで、そうなっていたんです。でも、ふと「いってきました」とひらがなで書いてみたら「あれ、これダブルミーニングになるぞ」ということに気づいて。これを活かしたい、ということで相談して決めさせてもらったんですね。

ですから、タイトルに関しては、締め切りギリギリのタイミングでした。

──なるほど。

藤田氏:
本当にやばい状況で、火事場の馬鹿力で出たものですね(笑)。

──ちなみに英語版だと、どういうタイトルになっているのでしょうか。

藤田氏:
海外版は『TARO IS BACK』というタイトルです。これは直訳だと「たろうくんは戻ってきた」という意味になります。クリアまで遊んだ方はわかると思うのですが、オチの意味にもかかっています。「たろうは後ろにいる」という意味にも捉えることができると。

──たしかに!

藤田氏:
つまり、英語名もダブルミーニングになっているんですね。

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(画像は『たろうくんはいってきました』英語版Steamストアページより)

巨大な何かに翻弄される人々を描きたかった

──心霊や怪異といった要素だけではなく、「人間の身勝手さ」や「人間自体の怖さ」が描かれている点も本作の魅力だと感じました。怪奇的な現象の恐怖と「人が怖い」という要素のバランスは、どのように定めていったのでしょうか?

松明氏:
感覚的に作っていました。プロットの段階では、各キャラクターのことは何も考えていなかったんですね。作っていく段階でシナリオ、各キャラクター、登場人物などを考えていったんです。

そもそも僕は個人的に、人間が到底太刀打ちできないようなシステムとか、「巨大な何か」に強く惹かれていて、そういった存在に翻弄される人々を描きたかったんです。その「翻弄されていく様」を書いていく中で、登場人物たちが身勝手な、ちょっとろくでもない人たちになっていったんですね。

ただ、人物を描くにあたって、ルールを自分の中では決めていました。僕が好きな、影響を受けている伊藤計劃さん【※】という作家さんがインタビューでお話しされていた中に「切実なロジックが切実なキャラクターを生む」という言葉があるんですね。そのことを意識しながら書いていきました。

登場する人物はいずれも、その人にとって切実な欲求があるキャラクターになっています。

※伊藤計劃
日本のSF作家。『虐殺器官』『ハーモニー』などで知られる。

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──本作の注目してほしい点や「こう遊んでもらいたい」というポイントはありますか?

松明氏:
検索で得た情報を見なくても、なんとなくタローくんのストーリーはわかるようになっています。ただ、検索で得た断片的な情報を組み合わせていくとひとつの大きなストーリーが浮かび上がってきますので、そこを楽しんでいただけたらなと思います。

プレイした結果、現実の自分自身に影響があるような演出になっているので、そこを含めて楽しんでもらえるとありがたいですね。

T氏:
ゲーム全体の遊び方としては、松明さんが言ってくれた通りですね。

人それぞれの遊び方という点では、最初にアカウントを作成する場面で、アンケートのように自分の情報を打ち込める部分があります。

そこで、なるべく実際の自分に近い情報を入力してもらったほうが、あとあと何かおもしろい体験ができるんじゃないかなと思っています。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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