いま読まれている記事

「とにかく頭がおかしいものを作ってほしい」。ホラー専門会社・株式会社闇のゲームブランドが、たったふたりのチームに出したオーダーがそれだった。配信でバズった『たろうくんはいってきました』制作陣に作品に込めた狙いを聞くインタビュー

article-thumbnail-261030o

1

2

3

最初のオーダーは「炎上は一切気にしないので、とにかく頭がおかしいものを作ってほしい」

──ちなみに松明さんとTさんが好きなホラーコンテンツは、どのような作品になるのでしょうか?

松明氏:
黒沢清監督の映画など、じわじわくる系の作品が好きですね。あとは最近だと背筋さんの作品が好きです。ゲームだと、『Alan Wake』などの、Remedy Entertainmentさんの作品がすごく好みですね。

T氏:
じつは、正直に言うと、ホラーはあまり得意ではないんです。というか、ほとんど触れてこなかったので、何かを参考にしたことはありません。

ですから、このゲームの中でどこまで「ホラー的な怖がらせ方」をやっていいのかなど、悩みながら制作していましたね。

『たろうくんはいってきました』開発者インタビュー:配信でバズったゲームの制作陣に作品に込めた狙いを聞く_008

──でも、それはバランスがとてもいいですよね。制作中、Tさんからホラーを知らない人の意見があがるわけですから。

T氏:
そうだと思いますね。僕は本当に「ゲームシステム的にどうなのか」という意見をずっと伝えていました。松明さんが「設定がこうなっているんだからこうだ」というときには、意見が対立することがありましたね。

松明氏:
ありましたね。

──ちなみに、いちばん対立したところはどの辺りだったのでしょうか?

T氏:
いっぱいあったので……(笑)。

松明氏:
お互いにいい塩梅を探る、みたいなところでしたね。

T氏:
最後のメタ展開については、とくに議論しましたね。

松明氏:
話しましたね。「どうなって、どういう流れでオチまで行こうか」と。いきなりアクセル全開じゃなくて、徐々にやっていく、という点は話し合って決まりました。

T氏:
「3回の法則」を作って。

松明氏:
そうです。RPGでは、ラスボス戦で敵が3段階変身するような形式があるじゃないですか。そこをすごく意識しました。

あと、作っている途中で『Split Fiction』【※】という協力プレイ型のゲームで遊んでいたんです。そのゲームのラストがすごくカオスな展開なんですけど、「こんなふうにはっちゃけていいんだ」って思ったんですね。

そんな展開を本作でもできたらいいねと、ふたりで興奮して話したこともありました。

※『Split Fiction』
Hazelight Studiosが開発し、Electronic Artsが発売した2人プレイ用アクションアドベンチャー。自分たちが創り出した荒唐無稽な物語の世界に閉じ込められた小説家たちが、協力して脱出を目指すゲーム。

──予定調和をぶっ壊していいんだ、というところですよね。

松明氏:
そうですね。あれはすごく刺激になっていました。

T氏:
「最後にぶっ放しちゃおう」っていうのは、もう『Split Fiction』を遊んだあとに決まりましたね。

──YAMI GAMESさんも「それでいいよ」と言ってくれたわけですよね。

藤田氏:
そうですね。そもそも、パートナーとしていっしょにやりましょうというタイミングから「あまりテンプレにとらわれたものはやらないでほしい」と、ずっと言っていました。

せっかくふたりの最少数チームでゲームを作っているのに、安全パイを取るような発想で作っては、おもしろくならないと考えたからです。

「僕たちは炎上とか一切気にしないんで、とにかく頭がおかしいものを作ってほしい」というのをお伝えしました。それを踏襲してブラッシュアップしていただいたのかなと思いますね。

「3Dホラーにありがちなもの」は、できるだけやめてほしかったんです。最初のプロトタイプもそういったものだったんですけれど、「違うことをやらないと埋もれちゃうだけですよ」という話はさせていただきました。

そこから生まれたのが検索システムなどで、どんどん良くなっていったと思っています。

『たろうくんはいってきました』開発者インタビュー:配信でバズったゲームの制作陣に作品に込めた狙いを聞く_009

クリアした人は呪いにかかっている!? オチはわかっていても、ストーリーテリングのおもしろさで惹きつけたい

──最後に、『たろうくんはいってきました』について、「ここを伝えておきたい」という点はありますか?

藤田氏:
クリアした人に伝えたいのは、「クリアしたら呪いにかかっちゃっているので、解くために別の人にゲームを買わせてください」ということです(笑)。

──『リング』方式ですね(笑)。

藤田氏:
(笑)。エンディングまで見ると呪いにかかるので、ぜひ嫌いな人にプレイさせてください。

──本作は、ネタバレに関しては許容されているのでしょうか?

藤田氏:
実況者さんの実況があんなにバズっちゃったので、もういいかなとは思っています(笑)。

──でも、オチがわかっていても、そこに至るまでの体験のおもしろさがちゃんと担保されていますよね。

藤田氏:
ここまでお話してる内容から想像いただけると思いますが、オチは現実世界に侵食するものになっています。ですから、そこに至るまでの「どうしてそうなったのか」というストーリーテリングが本作のおもしろさだと思っています。

ストーリーはテキストで直接説明するのではなく、断片的に提示しています。そしてプレイした人それぞれで「こうなったんじゃないかな」と考察できるものになっています。そこはぜひプレイしたうえで感じてほしいですね。

次回作『報連喪症候群』はスマホで写真を撮っていく異変探しゲーム

──YAMI GAMESさんとしては次作に『報連喪症候群』が控えています。現在お話できる範囲で、本作の狙いや魅力をお聞かせ願えますか?

藤田氏:
『報連喪症候群』は、合同会社ウィザードトータスゲームスさんといっしょに制作しています。

パワハラとか、病的に働く日本人なら一度は経験があることをホラーにするとおもしろいのでは?と二人で議論していく中で出てきました。その発想を受けて「報連相」という言葉自体を、一種の病気だと捉えてみたんです。

ゲームとしては、異変探し系のシステムになっています。そこに、スマホで写真を撮って物語を進めていくというゲームになっています。

近日中にSteamで体験版を公開する予定です。体験版に合わせて実写PVも用意しています。

あとは、来年には新作として、つぎのゲームの発表もできるんじゃないかなと思っています。できるだけいまの『たろうくんはいってきました』や『報連喪症候群』のベクトルとはまた別の、違った方向性のホラーゲームを出したいと考えています。

『たろうくんはいってきました』開発者インタビュー:配信でバズったゲームの制作陣に作品に込めた狙いを聞く_010
(画像は『報連喪症候群』Steamストアページより)

──YAMI GAMESはすごくスピード感がありますよね。

藤田氏:
ありがとうございます。そうは言っても人員としてはほぼ僕ひとりでやらせていただいています。ですから逆に言うと、「スピード感がないなら何してんねん」という話で(笑)。このスピード感は大事にしていきたいですね。

──独自性のあるタイトルをスピード感を持って出すというのは、なかなかできないことだと思います。

藤田氏:
インディーであるからこそ、今回の松明さんとTさんのような「こういうことをやりたい」「こういう怖がらせ方をやりたい」「こういう表現がしたい」というものがある作家さん、クリエイターさんじゃないと、尖ったおもしろいゲームは出てこないと思います。

目利きと言うと語弊があるかもしれませんが、僕としてはいっしょにやっておもしろいものを生んでくれそうだな、っていう人たちを、どんどんプロデュースできたらいいなと思っています。

もちろん、今後いいお話があって、中規模のスタジオさんといっしょにやる機会があるかもしれません。そういった展開も含めて、YAMI GAMESがどんどん大きくなっていったらいいなと思いますね。

ホラー好き以外にも「闇」をもっと知ってほしい

──企画の公募は、引き続き続けていくのでしょうか?

藤田氏:
公募自体はもうずっと開けておこうかなと思っています。ただ、あそこから応募してくれる人ってなかなかいないんですよね。ですから僕から声をかけたりというアクションもしていこうかなと思っています。

闇およびYAMI GAMES自体の認知度が、まだ高くないんです。ホラー界隈だと知名度はありますが、ゲーム業界やそれ以外のエンタメの分野だと「株式会社闇ってなに?」という人のほうが大多数なんです。

ホラーが好きだったりとか、昔から「怖いウェブサイト」を作る人達みたいな文脈で知ってくださってる人はいます。ファンがすごく強くて、コアなファンがついてる会社ではあるんです。

「感想をシェアしながら、呪いを広めていただければ」。怖いだけじゃなくておもしろい、今までにないゲームを体験してほしい

──松明さん、Tさんとして、YAMI GAMESさんといっしょにやって良かったのはどういったところですか? また、おふたりの今後についてもぜひお聞かせください。

松明氏:
YAMI GAMESさんといっしょに仕事ができたのは、独立したてのデベロッパーとしてはすごくありがたかったですね。

まず、僕らはまだまだデベロッパーとしては駆け出しです。そういった中で、知名度がある会社さんといっしょに第1弾としてタイトルを開発し、発売していただけたという経験は、とてもありがたいことだと思っています。

いっしょに並走して開発を行えましたので、僕らの中にはなかった視点もいただくことができました。実際、ゲーム自体が良くなっていったわけで、そういったサポートはすごくありがたくて、かつおもしろい経験でした。

次作に関して言うと、ホラーに関してはまだいくつかアイデアがあるので、そういったもののプロトタイプを作っていきたいと思っています。

またもうひとつ、ホラーとぜんぜん関係ない、変なことをしようとも思っています。もう本当に変なことを考えていて(笑)。これに関しては、プロトタイプを作って、それを完成形まで、ユーザーの皆さんといっしょに作っていけたらな、と考えています。

T氏:
YAMI GAMESさんとお仕事できてよかった点ですが、とにかく動きが早かったです。僕らが何か質問を投げたときのリアクションも早く、スピーディーに開発が行えました。

あとは、かなり自由に僕らのやりたいことをやらせてもらえたんですね。ですので、とても制作しやすかったです。

次回作については、松明さんが言ってくれたこと以上のことはまだ話せないので(笑)。

──最後に、『たろうくんはいってきました』をもうすでに遊んだ方、実況などで見られた方、さらにこの記事で知った方に向けて、それぞれメッセージをお願いします。

松明氏:
『たろうくんはいってきました』は、ほかのゲームと比べるとユニークなゲームだと思います。実況で楽しんでくださったこともありがたいですし、実際にプレイして最後まで遊んでいただいたことにもすごく感謝しています。

まだ遊んでない方に関しては、いままでにないタイプのゲームですので、最後まで遊んでいただいて、感想をシェアしながら呪いを広めていっていただければ(笑)。

T氏:
このゲームは、検索システムと動画を見るという、ふたつのシステムを行き来する形ですので、独特なゲーム性になっていると思います。

そのふたつを行き来する中で、「現実なのか、ゲームなのか」という境界線が曖昧になっていく感じを、プレイしながら楽しんでいただければなと思います。

藤田氏:
実現できるかはまだ未定ですが、『たろうくんはいってきました』についてのアップデートも考えています。ですから、少し先にはなりますが、買ってくれた方は、またタローくんに会えます。期待していただきたいですね。

あとは新作についても、ただ怖いだけじゃなくて、おもしろくもあるという点は意識してやりたいなと思っています。

会社全体もそうなんですけど、YAMI GAMES自体がまだ小さくて、挑戦者側にいるブランドです。ですから応援していただきたいなと思っています。その期待に応えられるゲームを出していきたいですね。(了)


1

2

3

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ