『遺失物統轄機構』が目指すのは「画的なかっこよさ」。よく考えると“ゲームとしては失格”な画作りであっても、キャラを最大限魅力的に描く
──先ほど、こだわりとして「バックパックの傾き」を監修されたという話がありましたが……。
ほし氏:
リアリティよりも、全体的に「画的なかっこよさ」を重視しているのかな、と思います。
バックパックの傾きについては、なんと言ったらいいんでしょうか……まっすぐだと、ちょっと気持ち悪いんですよね(笑)。感覚の話になってしまいますが、傾いていたほうがかっこいいと感じて監修を入れさせていただきました。
城所氏:
たとえば、ホラー作品のポスターって、あまりまっすぐ貼られていないですよね。傾いている理由はわからないけれど、記号としてそういうものがありますから、ほしさんの感性はわかる気がします。
ほし氏:
ゲームで言うと、たとえば『Control(コントロール)』であれば、物が整然と並んでいるイメージがあるので、合っていると思うんです。でも、日本が舞台だったり、レトロ感を描くのであれば、傾いていたりとか、ふらついていたほうがいいのかなと……。
あとは……ちょっと話が変わりますが、絵に関する私の勝手なこだわりがあるんですけど……。
──ぜひ聞かせてください。
ほし氏:
『遺失物統轄機構』のイラストは、実際のゲームの画角やキャラの大きさと比べると、だいぶ独特だと思います。たとえば、アクションゲームだったら、もっとキャラが小さかったりしますよね。
実際にゲーム画面と並べてみると、多分これがこのまま動いていたら遊びにくいだろうなと思うんです。でも、キャラがいちばん魅力的に見える大きさを目指すと、どうしてもこのサイズになってしまう。ゲームとしては失格なんだろうけど、「イラストだからこうしている」というバランスが結構あります。
──1枚の絵として見せるための「嘘」ということですね。
ほし氏:
そこには結構こだわっています。
──そういったこだわりを詰め込んで制作された『遺失物統轄機構』のキャラクターが、『アノマリス』のなかで実際に動いているのをご覧になって、新たな創作意欲が湧いてきたりはするものですか?
ほし氏:
すごく湧いてきました。
体験版で遊ばせてもらって実感が出てきたのですが、ゲーム制作に少しでも関われているのが、すごくうれしかったです。
──「『遺失物統轄機構』をゲーム化しませんか」というストレートな依頼は、これまでにたくさんあったと思うのですが……。
ほし氏:
そうですね、お話をいただいてはいました。ただ、規模感的に、『遺失物統轄機構』のイラストをそのまま3Dゲームにするのは相当難しい。私自身もそう思いますし、お話をくださる方も、同じ認識だったと思います。
だから、ゲーム化するにしても、そもそもジャンルが違うノベルゲームだったり、「違う媒体でやりませんか」という話は、結構いただいていました。でもそのときはイラストどおりのゲーム化ということに固執しすぎてしまっていて、お断りしていたんです。
そういう意味でも、今回のコラボは実現可能な形でのご提案だったので、うれしかったですね。
発売前から話題を呼んだ新作ゲーム『アノマリス』。さらなるコラボ展開の可能性は「ユーザーからの反響次第」
──今回のコラボを受けて「『遺失物統轄機構』をゲーム化して」という声がさらに大きくなりそうですよね。『アノマリス』でもう一歩踏み込んだコラボ第2弾を……という声も出てきそうですし。
ほし氏:
たしかに、『アノマリス』のフォーマットであれば可能な気がします。
城所氏:
やろうと思えばやれてしまうような気がしますね。本当に『アノマリス』と『遺失物統轄機構』は奇跡的なぐらいマッチしているんです。
『遺失物統轄機構』ファンの方には、ぜひ『アノマリス』のコラボミッションをプレイしてほしいです。期間限定ではありますが、予約販売だけでなく、発売から2週間以内であれば手に入れられますので、ぜひ試してください。
コラボ衣装そのものは、ある程度ゲームが進んでからじゃないと手に入りません。ゲームの仕組み上、サブミッションをクリアした報酬で衣装が手に入るものなので、まずサブミッションが受けられるようにならないといけないんです。
コラボのサブミッションを受けて、それをクリアして、初めて衣装が手に入る。だから、ステージ的に言うと第2ステージぐらいまではクリアしていないといけないんですけど、ぜひそこまでプレイしてください。多分、そんなに難しくないので(笑)。
また、『アノマリス』には着せ替え機能があって、ステータスの反映される衣装とは別に「見た目衣装」というのが存在しているんです。「攻略的にはこっちのほうが強いんだけど、でもつねに名無ちゃんでいたいんだ」という希望も叶えられるように作っています。
──ちなみに、『遺失物統轄機構』から登場するキャラクターは、名無だけですか?
城所氏:
現状は名無ちゃんのみですね。ええと……どこまで言っていいのかな(笑)。
──もし反響が大きくなって、その声がフリューさんやほしさんの耳に入ってくれば、もしかしたらさらなる展開も……?
城所氏:
そうですね。フリューとしては、「『遺失物統轄機構』のほかのキャラクターも入れられないか」というのは、一応検討はしているんです。ただ、実際にどれくらいユーザーさんのモチベーションがあるのかは、まだ測れていないので、まず反響を見て次第かなと思っています。
──「『遺失物統轄機構』の世界がもしゲームだったら、こういうことなんだろうな」というのを体感できるのは、唯一無二だと思いますので。
城所氏:
『遺失物統轄機構』との違いをあげると、おそらく名無ちゃんは、基本的に近接がメインだと思うんです。でも『アノマリス』では、あくまで主人公である玲緒奈の着せ替えなので、銃をぶっ放します。ある意味では、『遺失物統轄機構』にはならない絵がつねに提供され続けるという(笑)。
ほし氏:
じつはそこについても、企画当初に話をさせていただいたんですね。
「『遺失物統轄機構』では銃器は使わないんですか?」とご質問いただいたんです。たしかに、『遺失物統轄機構』のイラストには銃が出てきていません。理由はシンプルなんですけど、私があまり銃に詳しくないんですね。だから、そもそも絵にほとんど使っていないんです。
結果的に「近接で殴る」というキャラ付けのようになったので、そこは良かったのですが……。
──日本を舞台にしているから「日本に銃はないよね」ということだと思っていました。
ほし氏:
それも自分を納得させている材料ではあるんですが、単純に知識不足な面があって、描けなかったというところが大きいですね。詳しい人から見ると、粗が目立ってしまうと思うので。
だから、この『アノマリス』で銃をぶっ放せるのは、かなりおもしろいんじゃないかと。
──コラボ発表前のほしさん描き下ろしイラストも話題になりましたよね。
ほし氏:
1枚目は『遺失物統轄機構』の世界という想定で、もう1枚はほぼ『アノマリス』の世界。そういう設定の2枚です。
完全新作ゲーム『アノマリス/ANOMALITH』に、遺失物統轄機構と世界観が交わるコラボミッションを実装していただいております…!
— ほし (@HOSHIBACKYARD) May 22, 2026
任務完了すると、名無装備とドローンが手に入ります。
主人公・玲緒奈さんに着てもらえば遺失物機構職員になりきれます。 https://t.co/BIOYBdOtIW pic.twitter.com/KLUcGPfqZY
城所氏:
コラボシナリオの始まりのワンカットをイメージして描いていただきました。1枚目は『遺失物統轄機構』の世界へ『アノマリス』に出てくる敵が迷い込んできているイメージですね。
『遺失物統轄機構』から「名無ちゃん」はゲームには出てこないんですけど、サブシナリオでドローンは出てくるので、『アノマリス』に出てくる瞬間をもしイメージするならこんな感じかなと。この画角は実際には存在しないんですけど、イメージを膨らませて描いていただきました。
ほし氏:
多くの反響をいただけてよかったです。
城所氏:
先に出していただいたイラストに大きな反響がありましたね。うれしい反面、内心「どうしよう」と不安にもなりました。
蓋を開けたら「コラボかよ」とガッカリされたらどうしようと思っていたのですが、コラボイラストもしっかりと伸びてくれて……。「なんて暖かいユーザーなんだ」と感激しました。
ほかにも、ほしさんにはSteamのウィッシュリスト数が8万を超えたときにもイラストを描いていただいています。すべての設定を無視して、好きなように要素を盛り込んで描いていただいて。
ほし氏:
名無が玲緒奈さんを殴っているように見えないか、不安だったんですよ(笑)。でも、そうは見えないようになったのかなって。
コラボ衣装とフォトモードの併用で「『アノマリス』をプレイしながら『遺失物統轄機構』ごっこ」もできちゃう
──あらためて『アノマリス』と『遺失物統轄機構』のコラボの内容をご説明いただけますか?
城所氏:
『遺失物統轄機構』コラボのサブミッションがあり、そのミッションに挑むものとなります。本作のサブミッションは「ちょっとした異変があったから探索してきてほしい」というものなんです。『遺失物統轄機構』のミッションも、導入はまったく同じです。「不可解な異界の反応がある」というところから始まります。
拾った取得物が本来の「異物」という名前ではなく、このミッションだけ「遺失物」という名前で記録されるんです。アイテムを収集していくうちに『遺失物統轄機構』の物語が垣間見える、という感じになっています。
そして、サブミッションをクリアすると、名無ちゃんのコラボ衣装が手に入ります。
──身につけるとキャラクターの顔が名無に変更されるんですね。
城所氏:
『アノマリス』は顔の扱いは少し特殊で、顔のカラーのパーツだけが用意されていたりします。顔の目とか髪をまるっと変えるようなものもあるので、それらの一種として、コラボ衣装を用意しています。
あとは、シャツとパーカーと靴とスカート。これらがすべて入手できますし、パーカーを単体で着用することもできます。
『アノマリス』にはフォトモードもあるので、ファンの方にはぜひ各所で撮影してもらえるとうれしいですね。ドローンも専用のアニメーションでくるっと回る仕様になっていますので、ぜひ実際の動きを見てほしいです。
ほし氏:
『アノマリス』を楽しみつつも「『遺失物統轄機構』ごっこ遊び」ができる、というか。本当にいいですね。
三人称視点だと、怪異を前に少女が怯えればプレイヤーも恐ろしくなり、少女が毅然と立ち向かえばプレイヤーも勇気づけられる
──城所さんはもともと『遺失物統轄機構』がお好きだったとのことですが、どの辺りが琴線に触れたのでしょうか。
城所氏:
イラストの雰囲気ですかね。かわいい女の子が、暗い世界観というか、薄暗い世界観で戦っているというもの自体が、そもそも好きなんです。そういった作風は意外と数が多くないんですよね。
ほし氏:
たしかに、最近は増えてきてうれしいですが以前はあまりなかったような……。
城所氏:
美少女感が強くて、ホラーテイストで……と考えると、最近だと『サイレントヒルf』だったり、それより前だと『零』だったり。
ほし氏:
でも、どちらもフォトリアル調ですよね。
城所氏:
そうなんです。アニメっぽい雰囲気のものはほとんどないんですよね。
ほし氏:
インディー系だと、『近畿霊務局』という、女の子がめちゃくちゃなことをしながら霊を倒す作品がありまして、「いいな……!」と思っていましたが(笑)。
城所氏:
先ほどほしさんがおっしゃったように、「実際にこれをゲーム画面に当て込む」と考えると、たしかにカメラが正面を向いちゃっているので、遠近は取れないと思います。もし本当にアクションでやるんだったら、多少は見下ろし視点にする必要があるでしょうね。
でも、ゲーマーであれば多分、状況が勝手に脳内で補完されていくと思うんです。だから「ゲームとしてどういう画角が正しいか」ということに固執する必要はまったくないというか。むしろ、イラストのほうが、動きの想像ができますよね。
ほし氏:
たしかに、そうかもしれないですね。
──『アノマリス』では、プレイ中ずっと女の子の姿が見えるわけですが、「少女を背後から描く」という画作りで意識されたことはありますか。
城所氏:
『アノマリス』ではセクシーさや「肉感」みたいなものは、意図的に排除しています。
肉感があるゲーム自体は、私も好きなんです。ただ、『アノマリス』はどちらかというと、硬派な雰囲気を持ちつつも、キャラクターのかわいさだったり、やり取りだったり、アニメっぽいところを出したかったんです。
せっかくリミナルスペース的な、違和感のあるホラー描写があるところに、「悪い違和感」が出ちゃうともったいないですし、悪目立ちしちゃうと思うんです。
──なるほど。では、少女を配置するフィールド描写についてはいかがでしょうか。ひとつのシーンだけを見ても、密度のある作り込みになっています。
城所氏:
たとえば、商店街ステージはとてもプロップ(小道具)が多いんです。ですから、密度感があるのは間違いありません。ありがたいことに、開発を担当されているモデラーさんが、意気揚々と大量に作っていたらしいんですね。
室外機とかバイクとか。植木とかも、「ワンオフ」で作ってくださったらしくて。さすがに全部ではないと思うんですけど。
「昭和っぽい商店街」というところで、開発会社さんが『アノマリス』の企画にすごく共感してくださって、がんばっていただけたからこその仕上がりになっています。
ほし氏:
さきほど質問にあった「女の子を配置しての画面作り」というお話で、私が考えていることがあるんです。
一人称視点だと、プレイヤーからキャラクターが見えないですよね。ある意味で、プレイヤー自身が恐怖体験とか戦闘体験をする、というものになると思うんです。
でも、奥にある背景や怪異の手前に女の子がいることで、たとえば女の子が堂々と立っているのか、怖がっているのか、という見え方になる。それだけでも背景との関係性が結構変わってきますよね。
女の子が怖がっていれば、やっぱり見ている側も怖いですし、逆に堂々としていると「この子でも勝てそうな相手かな」という雰囲気になる。そういうものがまとめて伝わるのが、「女の子を配置する」ことの強みなんじゃないかと思っていて。
ただ怖い背景とか怪異ではなく、いろんなストーリーやキャラクター性を味わえるというか。それが女の子を配置する最大のメリットなのだと思います。
「怖い」と「かわいい」は対極にある要素なので、そのギャップ感がつねに画面に生まれているのも、おもしろいところだと思いますね。











