『遺失物統轄機構』は2冊目の画集を制作中。「そこでいったん、“この町での話”はひと段落」する予定
──『遺失物統轄機構』を制作され始めた当初、「ストーリーはなかった」とおっしゃっていましたが、いまもその方針は貫いているのでしょうか。
ほし氏:
最初の1枚を描いた時点では、本当に考えていなかったんです。でも、画集を作るにあたって物語を考えています。
現在は続刊を制作中なのですが、そこで一応「この町での話」はひと段落というか、解決する想定で進めています。
そういう意味では、ストーリーを肉付けしている最中ですね。もちろん、最後まで完全に考えられているわけではないので、小説やマンガのようにはいかないのですが、「ストーリーがまったくないわけではない」という感じです。
城所氏:
いちファンの立場から質問したいんですけど、『遺失物統轄機構』のストーリーの作り方を教えてください。シナリオは、セリフベースで組んでいるんでしょうか。それとも情景描写ありで作られているのですか?
ほし氏:
形としては「プロット」ですかね。もともとスプレッドシートに「こういうシーンがあって、こういう展開があって」という筋書きを書き出して、全体の流れを作っていたんです。割と穴だらけの状態だったので、必要な場所をまず埋めてから、と進めていきました。
ただ、『遺失物統轄機構』はストーリーを作りはじめる前に、すでに描き溜めていたイラストが大量にあったので、それを「どう並べるか」が大変でした。
城所氏:
画集のネタバレになっちゃうんですけど、『遺失物統轄機構』には「2周目」の設定があるじゃないですか。それが、すごく好きで。
ほし氏:
ゲーマーは「2周目」が好きですよね(笑)。
城所氏:
同じ構図だけど「未来が変わって」というのがとてもいいなと感じました。
ほし氏:
私も昔から「2周目」要素が好きで、憧れがありました。さまざまなゲームで味わってきた部分だったので、自分でも入れちゃいましたね(笑)。
少女の造形にも、制作者の“ヘキ”が見え隠れ。ほし氏「スカートは履いていてほしい。ソックスも白で」
──『遺失物統轄機構』も『アノマリス』も、どちらも少女を主人公とした作品です。作品の主役を飾る、魅力的な少女を作るうえでのこだわりがあれば、それぞれうかがいたいです。
ほし氏:
単純に、私が描いていていちばん楽しいのは、「これくらいのデフォルメ感」というのが前提にありますね。
じつは、最初に考えていた主人公は白い髪のツインテールの女の子だったんです。ただ、制作した背景にキャラを立たせたときに、「主人公っぽくないシルエットだな」という感覚がありました。そこから調整していくうちに、没個性的な黒髪とリボンをあしらったシルエットにたどり着いたんです。
──ちなみに、スカート姿というのは最初から定まっていたのですか?
ほし氏:
最初からですね。スカートは履いていてほしい(笑)。
ソックスも白にしていて……。かわいい子には、自分の「ヘキ」みたいなものが、ちょっと出てしまっています。
確率で路地に出現する神社 pic.twitter.com/POL8DteZRx
— ほし (@HOSHIBACKYARD) September 15, 2024
──一方でパーカーは意外なチョイスだと思いました。
ほし氏:
「危険な任務に赴く人は、ジャケット的なものは絶対着ているよな」というところから考えて、パーカーを着せました。
城所氏:
『アノマリス』は、「メインキャラクターが女の子しすぎちゃうと、あまり良くないかも」というところからのスタートでした。
やっぱり、かっこよさだったり、強さだったりといった、「ヤンキー気質」のようなところを出すとなると、なるべく女の子の弱さみたいな部分は見せずに……でも、女の子らしい柔らかさはちょっと入れつつ。
結構難しい調整だと思うんですが、キャラクターデザインのMONさんといっしょに作り上げていきました。
フリューのタイトルは「かわいらしい女の子が暗い世界観でがんばって戦う」というものが多いですよね。そのなかで『アノマリス』はちょっと異色というか。ジャンルからしても異色なので、どうなるのかなと思ってはいたんですけど、すごくいい形に着地しましたね。
ほし氏:
MONさんの一枚絵は本当にかっこいいですよね。バチバチにかっこよくて、でもかわいさもあって、本当によいバランスです。
城所氏:
企画当初、「MONさんの描き込みをゲームで再現する」と最初にディレクターから聞いたときは、私もほかのメンバーも「本当に!?」と聞き返してしまうぐらい、驚きました。結果的に、すごくいい形で落とし込めましたね。
『8番出口』、『Backrooms』のヒットにより、ゲームやネットに留まらず「リミナルスペース」の輪が広がっている
──直近ですと、映画『Backrooms』が公開されて世界的に話題となりました。リミナルスペースやSCPのような作品が、非常に人気のあるコンテンツになっている印象がありますが、こうした世間の流行をどう受け止めていらっしゃいますか?
城所氏:
『アノマリス』は、『Backrooms』とプロモーションコラボを実施させていただいていますし、『SCP』からも強い影響を受けた作品です。
フリュー新作サバイバルTPS『アノマリス』期間限定で体験版が配信開始。映画『バックルームズ』とのプロモーションタイアップも発表https://t.co/oeAUZEgbUt
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) August 1, 2026
体験版では、マップ中のどこかに『バックルームズ』に登場する青いテープの扉が出現。Steamウィッシュリスト登録“5万件”を超える注目作 pic.twitter.com/I6DTSZPTEY
といっても、「『Backrooms』のおかげでめちゃくちゃバズった」といったものではなく、「『アノマリス』を理解してもらうための「土壌」ができているな」と感じています。
ひと昔前ですと、ホラーと言ったらとにかく暗くて怖いものでした。映画だと『呪怨』に代表されるように、ああいった雰囲気がないと「これはホラーと言うべきか」、「ぜんぜんホラーじゃないじゃん」と言われてしまったというか。
現在はSCPや『Backrooms』、『8番出口』などの影響もあり、メジャーとまでは言わないですけど、リミナルスペースが世間に浸透していきましたよね。「日常に侵食していく怪異たち」みたいなところを受け入れてくれる土壌があったからこそ、『アノマリス』もそこの記号を踏まえて読み取れるようになってくれたのかなと。
ほし氏:
私も、『遺失物統轄機構』がある程度受け入れてもらっているのは、やっぱりその土壌があったからだと思っています。
『Backrooms』、私も映画を見てきてすごく好きだったんですけど、怪異だけじゃなくて、空間そのものが怖いんですよね。「明るくても怖い」というか。そういったものがいま、ブームというか、受け入れられていると思うんです。
ですので、『遺失物統轄機構』のような背景を主体にした作品であっても、想像以上に見てもらえたりする。その影響はすごく感じます。その流れに助けられていると思います。
城所氏:
リミナルスペースって知らない人に説明するのが難しいんですよね。「それはなにが怖いんですか?」と言われると……「そうですね、なにが怖いんでしょうね」って(笑)。
ほし氏:
たしかに、「怖い」と思ってもらえなかったら、そもそも話が進まないですね。
──体験の不思議さなども、なかなか言葉では伝わらないですよね。
城所氏:
「めちゃくちゃだだっ広いところに、椅子がぽつんとひとつあったら怖いじゃないですか」と言っても「そうですか?」という反応しか返ってこなかったら、もうお手上げですから(笑)。
架空のゲーム攻略が綴られる『遺失物統轄機構』の原点は、ほし氏の「攻略本好き」にあった。いちばん好きな攻略本は『FF8』のアルティマニア
──ほしさんは、ゲームの攻略本を見るのもお好きだったのですか?
ほし氏:
それはもう、大好きです。
──自分が実際に遊んだゲームの攻略本でなくても、楽しめるタイプだったのでしょうか。
ほし氏:
遊んでいないゲームでも攻略本を買って読んでいましたし、クリアしたあとに攻略本を買うこともあります。攻略本自体が好きなので、なんでも買っていましたね。
──ゲーム攻略本のどういうところに心惹かれたのでしょうか?
ほし氏:
もとをたどると、そもそも私はゲームの「説明書」が好きだったんです。遊ぶ前に説明書を読み尽くして、内容を想像するのがすごく好きで。私の創作意欲が、そういった「説明書」的なものに起因しているんだろうなと思います。
攻略本も同様で、そのゲームを遊んでいなくても読んでいました。昔はホラーゲームが苦手で遊べなかったのですが、『バイオハザード』などは攻略本だけ読んで「こんなやばい敵がいるんだ」、「こんな武器があるんだ」と、遊んでいないんですけど、想像してワクワクするということが結構あったんです。
そういった「想像する楽しさ」みたいなものが、『遺失物統轄機構』の根幹を作っているんじゃないかと思います。
──攻略情報や知識とはまた別で、想像力を掻き立てるものとして楽しんでいたと。
ほし氏:
攻略要素よりは、むしろそっちをメインで読んでいたのかな、という気はしますね(笑)。
──いちばん好きなゲーム攻略本はなんですか?
ほし氏:
『ファイナルファンタジーⅧ』のアルティマニアです。アルティマニアを読んで、「この攻略本には本編では読めないショートストーリーも載っているんだ」と、とても驚いたんですね。
読んで想像するのは好きなんですけど、アルティマニアで本編のストーリーを補完している要素を読んだときに、「攻略本って、ここまでおもしろくしていいんだ」と思ったんです。
とくに、『FF8』は「すごく難解なゲームだ」と言われていて、いまだに考察が語られている作品なんですけど、アルティマニアを読むと本編を補完する小説や小話、世界観の設定資料が載っていて、『FF8』がさらに好きになったんです。
10月29日に発売を迎えた『アノマリス』。ユーザーからの反響次第では、そのまま『遺失物統轄機構』のゲーム化、なんて可能性も…!?
──『遺失物統轄機構』は、今後ゲームとのコラボの予定はありますか?
ほし氏:
いまのところはないんですけど、『アノマリス』とのコラボのように、双方の魅力がより上がるような機会があれば、ぜひ実施したいと思っています。
──『アノマリス』のエンジンを流用して『遺失物統轄機構』をゲーム化してもらうのがいちばんいいんじゃないかな、と(笑)
城所氏:
じつは、ほしさんと近い話をしたことがあります。
ほし氏:
以前、ちょっとだけ話しましたね。
城所氏:
今回の対談を経て、改めてフリューとしても考えたいですね。『アノマリス』に関しては、開発会社さんがもうめちゃくちゃがんばってくれたので。
──では最後に、今回のコラボを楽しみにしている『アノマリス』、『遺失物統轄機構』のファンの方々へそれぞれメッセージをお願いします。
城所氏:
『アノマリス』は、基本的にはTPSというジャンルになっているんですけど、いままでTPSを遊んだことがない人でもすごく遊びやすいように、かなり気をつけて作っていますし、難易度も細かく分けています。
「TPSが初めて」、「TPSをやったことがない」、「苦手だから尻込みしてしまう」という方でも、ぜひ飛び込んでみてください。本当に遊びやすく作っていますので、気に入っていただけると思います。
そして『遺失物統轄機構』のコラボイベントでは、画集をしっかり読んでいる方であれば、より楽しめる要素を散りばめています。きっと満足できる内容になっていると思いますので、ぜひ手にとっていただければと。
ほし氏:
『遺失物統轄機構』の作者としては願ってもない、本当にすばらしいコラボです。
非常に丁寧に作っていただいたので、ぜひプレイしてみていただけたらと思います。





