DIPスイッチから互換性、誕生秘話まで。開発スタッフに『NEOGEO AES+』の気になるポイントを聞いてみた
ひと通りプレゼンが終わったあと、コマーシャルディレクターのBen Jones氏とテクノロジーディレクターのBruno Steux氏も加わり、実機を触りながら自由に質問できる時間が設けられた。
本来であれば、ここでは実際に『NEOGEO AES+』でゲームを遊びつつ「これすごいですね!」といった具合に、和やかに感想を交わす時間になっていたのかもしれない。ところが筆者はハードそのものへの興味があまりにも強かったため、気が付けば質問攻めに。結果として、やや脱線気味の展開になってしまった。
そんなわけでここからは、両氏に『NEOGEO AES+』について気になっていたポイントを、インタビュー形式であれこれ聞いてきたので紹介していこう。

──本体の底面側にDIPスイッチが設置されていました。こうした設定はソフトウェアではなく、ハード側で行うのでしょうか?
Ben Jones氏:
DIPスイッチはふたつあり、底面側では主に映像関連の設定を行います。解像度は1080p/720p、出力はアナログ/HDMI、アスペクト比は16:9/4:3、リフレッシュレートは59.6Hz/60Hzから選択できます。また、オーバークロックの設定も用意しています。

──ハードウェア側のDIPスイッチは、画面設定とオーバークロック以外にも何か用途があるのでしょうか? また、ほかに隠された機能などはありますか?
Ben Jones氏:
ハードウェア側については、そのふたつが中心です。……ただし(笑)、MVSモードではソフトウェアDIPも利用できます。

──画面設定を本体側のDIPスイッチで行う仕様になっているのは、オリジナルのNEOGEOを再現するうえで必要だったからなのでしょうか? ソフトウェアから簡単に変更できるようにする方法もあったと思いますが、あえてDIPスイッチにすることで、MVSやアーケード筐体らしい雰囲気も感じられます。
Ben Jones氏:
DIPスイッチ自体は、ASICチップを採用した設計上必要になるものでした。一方で、あえて物理的なスイッチを操作することで、レトロな感覚や直感的な操作感も味わってもらいたいと考えています。ゲームセンターの筐体を裏側から調整しているような感覚をイメージしています。
それに加えて、これは個人的な好みでもあるのですが、私は隠し要素や、普段は目立たないところに用意された“秘密のアクセス方法”のようなものが好きなんです。そうした遊び心も含めて、ハードウェア側にこうした仕掛けを用意しました。たとえばスーパーファミコンにも、本体の裏側に拡張ポートが付いていましたよね。そうした感覚も今回の設計に取り入れています。

ここでBen Jones氏がコントローラーのテスト画面を出して、ボタンを連打。
──有線接続とワイヤレス接続では、入力遅延にほとんど差はないのでしょうか?
Ben Jones氏:
数ミリ秒程度の差はあるかもしれませんが、ほぼ同時といっていいレベルです。おそらく人間が認識できるほどの差ではありません。
──それでも、気分的に有線でコントローラーを使いたい人もいそうですね!
Ben Jones氏:
そうした方のために、ワイヤレスコントローラーには有線接続用のケーブルも同梱しています。そのため、好みに応じて有線とワイヤレスのどちらでも使うことができます。
──発売が10ヵ月ほど延期されました。今回、新たに5タイトルが追加で発表されていますが、それらを含めたUltimate Edition的なものは発売されるのでしょうか?
Ben Jones氏:
Ultimate Editionには、新しいゲームは含まれません。まずは生産数と受注数で購入された方に届けることを優先しています。その後で、サードパーティーのソフトについても生産していきます。すでに発表されている10本のソフトについては、カセットの生産も始めているので、ここから動かすことはありません。
──『ゼロウィング』が出るのは、いい意味でちょっとおかしいですよね(笑)。
Ben Jones氏:
ハッハ(笑)。これは本当に幸運が重なりました。SNKには多くのタイトルがありますが、『NEOGEO AES+』では既存タイトルだけでなく、新鮮さも出したいと考えていました。
そんなとき、私が普段からYouTubeでNEOGEOのホームブリュー系チャンネルなどを見ていて、Ian “Hoffman” FordさんがアーケードゲームのNEOGEO移植を手掛けていることを知ったんです。ちょうど彼が、開発中だった『ゼロウィング』のNEOGEO移植版を動画で公開していました。
ちょうど私たちが開発を進めていたとき、『ゼロウィング』の権利を持つTATSUJINが同じEmbracer Group傘下にあったため、「これなら実現できるのではないか」と考えました。そこで、もともとファン活動として制作されていた移植版にこちらから声をかけ、「一緒に正式な作品として作りませんか」と話を進めた結果、今回のリリースにつながったという経緯です。
──すでにNEOGEOで発売されているゲームなら、そのまま再現しやすそうですが、『ゼロウィング』のようにホームブリューとして作られた移植版を、実際にカートリッジとして製品化するのは大変なのでしょうか?
Ben Jones氏:
実際に移植作業を行ったのはIan “Hoffman” Fordさんです。もともとの『ゼロウィング』とNEOGEOには、Motorola 68000系のCPUを採用しているなど、ハードウェア構成に共通する部分があります。そうした部分を活かしながら移植を進めています。
とはいえ、実際にコードを書き換え、NEOGEO上で正しく動作させる作業の大部分は彼が担っています。彼はいわゆるコードハッカーでもあるので、一番大変な部分を引き受けてくれていると思います。
──日本版『サムライスピリッツ零SPECIAL』の家庭用はROMに問題があり、後にメーカー修正版が出ました。その辺りはどうなっているのでしょうか?
Ben Jones氏:
ファンの希望に忠実にということで、ショールームで展示しているのは違うバージョンですが、最終的にはMVS(アーケード)版のROMになります。
──過去作の互換性は100パーセントなのでしょうか?
Ben Jones氏:
はい。すべてのタイトルのカセットを差してプレイしたわけではありませんが、106本のうち問題があるタイトルは一切ありませんでした。あと、コンバーターさえあればMVSのカートリッジを差して遊ぶこともできます。
──コントローラーも、昔のNEOGEOで使っていたものが使えるんですか?
Ben Jones氏:
はい。麻雀コントローラーも試して、うまくいきました(笑)。
──この企画自体がかなり狂っていると思いますが、どうしてこんなものが生まれることになったのでしょうか?
Ben Jones氏:
私自身、これまでレトロゲームの制作やリマスターなどに携わってきた人間です。そうした中で、いつか自分にとってのレトロゲームを復活させたいとずっと考えていました。それが『NEOGEO AES+』です。私にとってNEOGEOは世界最高峰のゲーム機であり、いわばゲーム界の“ロールス・ロイス”のような存在なんです。
親会社にはゲームのアーカイブがあり、そこには日本版も含めたSNKのさまざまなタイトルが揃っていました。それを目の前にして、「これはやるしかない」と思ったのが始まりです。
そこから幸運にもSNKの方々と話をする機会を得て、交渉もうまく進みました。そうして、このプロジェクトが立ち上がり、現在に至っています。
──ミニサイズではなく、1:1というところがいいですよね。
Ben Jones氏:
そうです。NEOGEOですから、ほかの選択肢はありません。1:1しかないんです。


発売は少し先になってしまったものの、ハードに関してはすでに十分に仕上がっている印象だ。今後、さらにどのようなタイトルが追加されていくのかも楽しみなところである。いずれにせよ、しばらくは『NEOGEO AES+』の今後の展開から目が離せそうにない。






