懐かしい。とにかく懐かしい。
『アストラエ・オラティオ』(以下『アスオラ』)のクローズドβテスト(CBT)をプレイして、まずそう思った。
舞台は「89年」の東京。背景に目をやると、オフィスにはラジカセやブラウン管のパソコンが置かれている。ガチャを引けば8ミリビデオのテープがデッキに差し込まれ、物語の区切りにはテレビアニメでおなじみの「提供」画面が出てくる。

ところが、よく見ると時代があっていない。そのオフィスの窓から見える東京タワーが、まだ建設中なのだ。ほかの小物も年代はまちまちで、ひとつの時代をきっちり再現した東京というわけではない。
それでも、昭和の終わりから平成にかけて子ども時代を過ごした我々30~40代なら、家の中かテレビの向こうかで一度は見ていたものばかり。だから首をかしげながらも、懐かしくてたまらなくなってしまうのだ。
この記事では、CBTで遊べたプロローグと港区編 、新宿区編から、そんな懐かしさを拾っていく。
もちろん、懐かしいだけのゲームではない。物語にも引き込まれたし、バトルは見た目からは想像できないほど本格的だった。そちらもあわせて紹介したい。
※この記事は『アストラエ・オラティオ』の魅力をもっと知ってもらいたいNC Corporationさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
ラジカセにブラウン管、なのに東京タワーはまだ建設中。時代がごちゃ混ぜのファンタジー東京が、なぜか懐かしい
『アスオラ』を遊んでいて最初に目がとまるのは、背景に描かれた小物だ。
たとえば、このオフィスの背景。テーブルにはラジカセと東京タワーのスノードーム、奥の机にはブラウン管のデスクトップパソコン、壁際にはやたらと大きなコピー機が置かれている。
このラジカセ、世代によってはピンとこない人もいるかもしれない。ラジオを聴いたり、カセットテープで音楽を聴いたりできる機械だ。大きなラジカセをテーブルの上にどんと置いて、家で楽しむ。自分にとって、ラジオや音楽はそうやって聴くものだった。
それがいまでは、ラジオも音楽もスマホひとつで聴けてしまう。「あんなに大きな機械が担っていたことが、いまは手のひらに収まるんだなあ」と、思わずしみじみしてしまった。
ブラウン管テレビも同じだ。食卓のすぐそばにブラウン管テレビがある部屋を見ると、家族でごはんを食べながらテレビを観ていたころの記憶がよみがえる。
こうした小物は、昔の暮らしのなかにあっただけでなく、当時(1990~2000年代)のアニメに描かれた部屋のなかにも当たり前のように置かれていたものだ。だから見つけるたびに、「あったあった!」と声が出る。
ただ、よく見ていくと、ツッコミたくなるところも出てくる。
ふと窓の外に目を向けると、そこには東京タワー。じつは『アスオラ』の世界の東京タワーは、まだ竣工前なのだ。
現実の東京タワーが完成したのは1958年で、ラジカセやブラウン管のパソコンが広まるよりも前のことだ。ところがこの世界には、ラジカセもパソコンもすでにそろっている。それなのに、窓の外の東京タワーはまだ完成していないのである。
しかも舞台は「89年」の東京で、作中の元号は「令成」という架空のもの。そう、ここは、私たちの知っている東京とは少し違う、パラレルワールドの東京なのだ。
部屋のなかの小物も、時代がばらばらだ。昭和を思わせるものもあれば、平成を思わせるものもある。時代設定どおりに再現するのではなく、昔どこかで見たような懐かしいものが、ぽんぽん放り込まれている。それも、画面のあちこちに、これでもかというほどの量で。
「いや、時代がごちゃ混ぜすぎない?」と、思わずツッコミたくなる。史実どおりではない、いわばファンタジーの東京。トンチキジャパンと言ってもいいかもしれない。
それでも、懐かしい気持ちのほうが勝ってしまう。どれも、昔の暮らしやアニメのなかで一度は見たことがあるものだからだ。この不思議な東京こそが、『アスオラ』ならではの味わいになっている。
懐かしいのは小物だけじゃない。キャラクターのノリや演出にも、昔どこかで見たものが顔を出す
懐かしいのは、背景の小物だけではない。キャラクターの表情や会話のノリ、ちょっとした小ネタにも、昔どこかで見たものが顔を出す。

たとえば、主人公の上司にあたる「長官」。
主人公が「この人、本当にちゃんとした人なの?」と疑いの目を向けると、それまで落ち着いた表情だった長官が、急に子どものようにむきになって「私って、結構すごい人なんだぞー!」と言い返してくる。
そのときの目が「><」だ。両目を不等号のような形にぎゅっとつむった、あの表情である。
自分にとって「><」の目は、昔のアニメでよく見た表情だった。とくに『らき☆すた』で、よく見かけた気がする。最近のゲームではあまり見かけなかったので、急に出てくると思わず笑ってしまった。

プロローグのあとに始まる港区の物語にも、同じような懐かしさがある。
女子中学生の魔法使いたちが、わちゃわちゃと騒がしい日常を送り、主人公がそこに巻き込まれていく。このにぎやかで明るい空気は、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』を観ていたころを思い出させる。
キャラクターとの出会いひとつとってもそうだ。港区の魔法使いのひとり、田中えりんとの出会いを見てみよう。
主人公は、魔法使いを管理する行政の立場として、連絡先を渡しただけ。ところがえりんは、それをナンパだと勘違いする。
こうした恋の勘違いを見ると、『らんま1/2』や『うる星やつら』といった高橋留美子作品を思い出してしまうのは、自分だけではないはず。(どちらもマンガの連載開始は昭和なのだが)

そして、小ネタ。
ひとつは、ガチャの演出に登場する8ミリビデオだ。8ミリビデオとは、昔の家庭用ビデオカメラで使われていた、小さなビデオテープのこと。自分も運動会などで、家族に勝手に撮られていた記憶がある。
ガチャを引くと、まずこの8ミリビデオのテープがデッキに差し込まれる。映し出されるのは、ホームビデオのような映像。そのなかで、長官がしゃべりだす。まさか、あの8ミリビデオがガチャの演出で出てくるとは思わなかった。
もうひとつは「提供」の画面だ。テレビアニメの放送で「提供」の文字の下にスポンサーの名前が並ぶ、あの画面である。テレビでアニメを観てきた人なら、見覚えがあるはずだ。
『アスオラ』では物語の区切りにこの画面が出てきて、「提供」の下に運営・開発会社の名前が並ぶ。こうした細かいところまで、テレビアニメのお約束を押さえている。この画面が出てくるたびに、ついニヤリとしてしまう。
上司が血まみれになるプロローグのあとは、学園コメディに事件の調査。区ごとの章で、物語の雰囲気がガラリと変わる
配属されたばかりの職場で、上司が目の前で血まみれになる。『アスオラ』のストーリーは、そんなシリアスなプロローグで幕を開ける。
主人公は、ごく普通の公務員として働く男性だ。物語は、その主人公が水の中に身を投げるという衝撃的な場面から始まる。
目を覚ますと、そこは「東京都裏令指定特例区域管理庁」、略して「特区庁」の前。一般には秘匿されている魔法使いたちを管理する行政機関だという。
主人公は、そのトップである長官になかば強引に「主任」の役職を押し付けられることになる。
その後、主人公と長官は、特区庁を設立した「裏内閣」と呼ばれる存在に呼び出され、ヘリコプターで会談の場へ向かう。
道中、長官と話すうちに、主人公はここが自分の暮らしていた東京とはどこか違う世界だと気づいていく。
この世界は何なのか? 「裏内閣」とは何者なのか?
そんな疑問を抱えたまま会談の場に向かうと、そこで恐ろしい出来事が起きる。長官が裏内閣に反逆を疑われ、「粛清」されてしまうのだ。そして、主人公にも裏内閣の手が迫る。このあと一体どうなってしまうのか……!?
……と、かなり気になる怒涛の展開でプロローグが進んでいく。

ジェットコースターのような展開が続くプロローグを終えると、物語は区ごとの章に分かれて進んでいく。
CBTで遊べたのは、港区編と新宿区編だ。どの区にも魔法使いたちのグループがいて、主人公は章ごとに、その区の魔法使いたちと出会っていく。


おもしろいのは、区が変わると雰囲気までガラリと変わることだ。絵のタッチは、港区が『まんがタイムきらら』を彷彿とさせるのに対し、新宿区はかつての『週刊少年サンデー』のよう。
シナリオも、港区はドタバタの学園コメディ、新宿区は頭を使って事件を調査していくストーリーになっている。しかも、どの章も起承転結がしっかりしていて、きちんと完結している。そのため、1章ずつ、まるでひとつのアニメ作品を観ているような感覚で楽しめる。
美少女ゲーでここまで本格的で大丈夫!? 敵の攻撃を見て先を読み、組み立てた戦略がハマると気持ちいい
『アスオラ』は、ノスタルジーを感じさせる世界観やビジュアルにこだわった作品だが、戦闘にも独特の映像表現が取り入れられている。
戦闘画面の3Dグラフィックは、まるでフィルムで撮影した映像のような質感になっており、一般的な3Dゲームとはひと味違った雰囲気を作り出している。
そんなビジュアルに目を奪われつつ戦闘を始めてみると、こちらもなかなかに新鮮だ。
まず珍しいのが、4人パーティなのに、表に出て戦うキャラクターは1体だけという点。状況に応じて、魔法使いたちを適宜切り替えて戦う形式となっている。
一見すると、キャラクターに指示を出して戦うコマンドバトルだ。しかし、実際に遊んでみると、ただコマンドを選んで眺めているだけでは勝てない独自の戦闘となっている。

このゲームでは「判定フェーズ」というものがあり、相手の通常攻撃に対してはスキルを選択したり、特定の攻撃には防御ボタンをタイミングよく押したりと、適切な行動を取ることで判定勝ちすることができる。
この「判定フェーズ」で勝利してはじめて、相手に攻撃できるのだ。

その後は、残ったAPの数だけ行動が可能。スキルや通常攻撃、さらにはキャラクターを切り替えての追撃などで、攻撃を畳みかけよう。
ただ、これらの攻撃もリアルタイムでの操作が求められるため、ぼーっとしていると追撃のタイミングを逃してしまうぞ。

また、QTE(クイックタイムイベント)のような要素によってとっさの入力が必要になる場面があったり、APに加えて、スキルにはクールタイムもあるため、戦況に応じたキャラクターの切り替えが必要になったりと、本作ならではのおもしろさが詰め込まれている。
QTEでは、失敗すると一発で1キャラが退場してしまうようなドギツイお仕置きが待っていて、緊張感のある戦闘が楽しめた。
そして、上述のとおり、表に出て戦うキャラクターは1体だけというターン制バトルのスタイルが新しい。「どのキャラで敵の攻撃を受けるべきか?」「敵のこの攻撃に合わせて特定のキャラを出す必要があるから、クールタイムを考えてこの順番で攻撃して……」などなど、あれこれ考えながら戦う本作独自のゲーム体験がおもしろい。
CBT時点ではかなり歯ごたえのある戦闘になっており、美少女ゲーでここまで本格的なバトルで大丈夫なの!? と、おもしろさと驚きが同居した印象を強く受けた。

さらに、スキルを6回使用する、アルティメットスキルを2回使用するなど、キャラクターごとに決められた特定条件を満たすと「領地宣言」を発動できる。フィールド効果によって味方が大幅に有利になるため、条件こそ厳しいが、積極的に狙っていきたいところだ。
敵の攻撃を見て「どの順番でスキルを使っていくべきか」と先の展開を読みながら、どのタイミングで何をするのかを考える必要があるため、なかなか気が抜けない。
そのぶん、先を読んで組み立てた戦略が思いどおりにハマったときは気持ちいい。狙った攻撃や防御がきれいに決まった瞬間には、「よし!」と思わず声が出そうになるほどだ。

ここまで紹介してきたように、『アスオラ』の東京は、昭和を思わせるものと平成を思わせるものがごちゃ混ぜで、史実どおりではない。
それでも、懐かしさのほうが勝ってしまう。背景の小物から、キャラクターの表情、ガチャの演出や「提供」画面といった小ネタまで、昔の暮らしやアニメで見たものに次々と出会えるからだ。

その一方で、ゲームとしての遊びごたえもしっかりある。物語は区ごとに絵のタッチもシナリオも変わり、1章ずつ、ひとつの作品を楽しむような感覚で遊べる。バトルは、敵の攻撃を見て先を読み、キャラクターの切り替えやスキルを使う順番を組み立てていく本格派だ。
CBTで遊べた物語は、港区編、新宿区編まで。区が変わるたびに雰囲気がガラリと変わるだけに、この先の章でどんな区の物語が描かれるのかも気になる。
昔の暮らしやアニメに覚えがある人はもちろん、歯ごたえのあるバトルを遊びたい人にも、今後の続報をチェックしてほしい作品だ。
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