オーストラリア放送協会の「ABC News」は、同国の新興企業Cortical Labが“人間の脳細胞”で作成された生物学的コンピューター「CL1」を開発したと報道した。
本製品は現地時間3月5日(水)にスペインのバルセロナで開かれた、世界最大級のモバイル関連技術展示会「MWC Barcelona 2025」にて発表されたもの。初の商業化された生物学的コンピューターとして注目を集めているという。
An Australian start-up has launched the "first commercialised biological computer" made of human brain cells at a conference in Barcelona. https://t.co/Sg4FS7mx1n
— ABC News (@abcnews) March 5, 2025
「CL1」は、シリコンチップ上で生まれ、デジタル世界の中で生きるプログラム可能な生物学的ニューラルネットワーク。生物の構成要素を部品として組み合わせる合成生物学の新たな形として、知能の限界を押し広げるという。
本製品では、培養した人の脳神経細胞・ニューロンの集合体を一種の生物学的なAIとして扱うが、Chat-GPTやDALL-Eほどの性能は期待されていない。「CL1」を開発したBrett Kagan博士でさえ、その期待は小さいようだ。
またBrett博士は、人間のニューロンがどのような役割を担っているのか正確には想像できないという。活用例として「病気のモデル化、あるいは薬物のテスト」などを挙げ、“まだ想像もできない”方法で本製品を使用することに興奮しているとのこと。

本製品のほとんどは、ニューロンを収容し、生存させるために作られている。ニューロンの管理はとても難しいようで、老廃物の除去、栄養の供給、不要な微生物の侵入防止など、最適な条件で維持する必要があるとのこと。
そのなかで、最も重要な部品が「チップ」だ。実験室で培養された数十万個の人間のニューロンが互いに接続される小さなシリコンデバイスを搭載し、その中で成長しながら神経構造に電気インパルスを送受信するという。

なおこの研究は2022年に発表された、培養皿の中で生きている脳細胞がテニスゲームのような『ポン』の遊び方を学習した、という内容の論文で使われていた方法が使われている。論文の発表以降、システムは更新され、ニューロンを収容してその精度を向上させるソフトウェアとハードウェアが作成されていた。
「CL1」の詳細な概要およびCortical Labがこれまで研究してきた論文は同社の公式サイトにて紹介されている。