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『SILENT HILL: Townfall』シリーズお馴染みの「ラジオ」が「ポケットテレビ」になったのはなぜ?【開発者インタビュー】

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9月24日に発売を控える『SILENT HILL: Townfall』を世界最速で試遊できる体験会が実施された。約4時間の試遊にくわえて制作陣によるゲーム紹介と囲みインタビューが行われ、さまざまな新要素やエンディングについても語られた本イベント。

会場には『SILENT HILL』(以下、サイレントヒル)シリーズのプロデューサーを務める岡本基氏、開発を手掛けるScreen Burn(スクリーンバーン)にてライター兼ディレクターを務めるジョン・マケラン氏が登壇した。

これまでの『サイレントヒル』シリーズにおいて、「ラジオ」はプレイヤーに異界の接近を告げる伝統的な象徴であったが、一人称視点へと進化を遂げた本作でその役目を引き継いだのは、異質な存在感を放つ「CRTV」というポケットテレビ型のデバイスだ。

「受動的な道具ではなく、プレイヤーが能動的に活用できるものにしたかった」とジョン氏は語る。

定番アイテムの単なる置き換えにとどまらない、この新たな「答え」に込められた独自の設計思想について、世界中から集まったメディアに両氏からの説明があった。そこで本稿では、制作陣から直々に語られた本作の特徴や魅力について紹介していく。

『SILENT HILL: Townfall』開発者インタビュー:「ラジオ」が「ポケットテレビ」になったのはなぜ?_001
左からジョン・マケラン氏、岡本基氏、通訳さん

文/柳本マリエ


一人称視点で描く『SILENT HILL: Townfall』の “サイレントヒルらしさ” とは

──本作は長編シリーズでは初めての、一人称視点で進む『サイレントヒル』です。『SILENT HILL: The Short Message』(以下、ショートメッセージ)の開発会社はヘキサドライブ【※】さんだったため直接の関連はないかもしれませんが、そちらで培われたノウハウが今回の作品作りに影響しているのでしょうか。また一人称視点で作るうえでどのような部分に “サイレントヒルらしさ” を出そうと考えたのか、教えてください。

※ヘキサドライブ
『SILENT HILL: The Short Message』を開発した日本のゲーム会社。

岡本基氏(以下、岡本氏):
開発会社も開発時期も違うので、直接的にノウハウをやり取りしたということはありません。たまたま偶然、一人称視点で作ってみようという気になったものが『ショートメッセージ』と『SILENT HILL: Townfall』の2本あった、というところです。 一人称視点についての詳細はジョンさんからお願いします。

ジョン・マケラン氏(マケラン氏):
両作において直接的な接点はなかったため、我々スクリーンバーン【※】のチームも、今日ご来場くださった皆さまと同じ新鮮な気持ちでプレイさせていただいておりました。

※スクリーンバーン
スコットランドを拠点とするゲームスタジオ。2015年設立、11年の歴史を持ち、代表作『Stories Untold』などで物語性とゲームプレイの融合を追求してきた。

一人称視点でないとできない要素としては、やはり「CRTV」というデバイスのゲーム性かと思います。このデバイスは、一人称視点でなければ実現できないものでした。

それ以外の部分については、一人称視点になることでゲーム性にさまざまな変化が出てくるところはありつつも、これまでと同じように『サイレントヒル』らしい体験になっているのではないかと考えております。

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──実際にプレイさせていただき、これまでの作品以上にクリーチャーが手ごわいと感じました。今回は、倒して進むというよりステルス重視のゲームバランスになっているのでしょうか?

マケラン氏:
本作では、プレイヤーの皆さんにさまざまな攻略手段を用意しており、ステルスはその選択肢のひとつに過ぎません。ステルス以外にも、近接武器や多様な武器を使った戦闘など、状況に応じた選択が可能です。たとえばステルスを選んだ場合は、より注意深く敵を観察しながら立ち回るおもしろさを味わっていただけます。

プレイヤーの皆さんには、ご自身が最も効果的だと感じる手段を模索しながら、「この局面をどう切り抜けるか」を楽しんで試していただければ幸いです。

シリーズの定番であったラジオから生まれ変わった「CRTV」

──今回、シリーズの定番であったラジオが「CRTV」というポケットテレビに変わった狙いと、その着想を得たきっかけを教えてください。

マケラン氏:
ラジオをCRTVというデバイスに進化させる構想は、開発のかなり初期段階からありました。最初期は従来のラジオで、実際にダイヤルを回してチューニングする機能を備えていたのですが、本作における我々の課題は「ラジオを受動的なアイテムではなく、いかにプレイヤーが能動的に活用できるものにするか」という点でした。

そこで、音声だけでなく映像も見られる視覚的なデバイスへと発展させたところ、ストーリー上の演出やゲームシステムへの組み込みにおいて、演出の可能性が爆発的に広がったと感じています。これにより、物語体験(ナラティブ)やステルス要素をはじめ、さまざまなゲーム性においてデバイスを積極的に活用できるようになりました。

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また、こうしたレトロなアナログ技術や、VHSをはじめとするひと昔前のテクノロジーを扱う手法は、私たちのチームがもっとも得意とするところでもあります。これまでの作品にもそうした色合いが表れていますが、実際に試してみて、やはりチームの性にいちばん合っていると実感しました。

ストーリー展開やゲーム性の広がり、そしてチームの強みがとてもわかりやすく伝わるようになったかと思います。

──先ほどお話に出たCRTVですが、「これなしでは絶対に成立しなかった」という象徴的なシーンをひとつ挙げるとしたら、どこになりますか?

マケラン氏:
CRTVは開発のかなり初期から存在していたデバイスのため、特定のシーンというよりは、本作の品質やゲーム性のあらゆる部分がCRTVの機能を前提に構築されています。そのため、「CRTVでなければできないシーンを作る」という意識よりも、「このデバイスをどう活かせばいちばん魅力的になるか」という観点で制作にあたっていた感覚のほうが強いですね。

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──本作では赤と黒が印象的に使われていますが、この2色を選んだ理由を教えていただけますか?

マケラン氏:
単純に「いちばんかっこいい色だから」という理由ももちろんあります(笑)。

ただそれ以上に、ゲームを進めていく中で、この2色が主人公「サイモン」にとって非常に象徴的で重要な意味を持っていることが、ストーリーを通して描かれていきます。プレイを重ねていくうちに、「なぜこの2色だったのか」という理由が自ずと見えてくるはずです。

古いガジェットへのこだわりと “ノスタルジー” を逆手にとる演出

──スクリーンバーンさんは『Stories Untold』【※】のころからレトロなガジェットにこだわり続けている印象があります。その理由と、それが今回の『サイレントヒル』の世界とどのような相乗効果を生むと考えているのか教えてください。

※『Stories Untold』
スクリーンバーンの過去作。レトロな機器を使った謎解きが特徴のADV。

マケラン氏:
私たちチームにとって、少し古いガジェットやテクノロジーは思い入れがあり、大切な要素です。これらを採用する大きな理由は「ノスタルジー」にあります。自分が昔触れてきたものだからこそ、どこか懐かしい気持ちが芽生えますよね。しかし私たちは、その「懐かしさ」でプレイヤーの心を掴んだ上で、その気持ちをあえて “悪用” するという、逆手にとるような演出を心がけてきました。

本作の文脈においては、「セントアメリア」【※】という舞台設定に加え、その時代設定も関係しています。現代の感覚からすると、こうしたアナログ技術は少し不安定で頼りなく、完全には信用しきれない印象があるのではないでしょうか。

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※セントアメリア
『SILENT HILL: Townfall』の舞台となるスコットランドの港町という設定の架空の孤島。1990年代の閑静な雰囲気を持つ町として描かれる。

その感覚を前面に押し出しています。どこか頼りない機械にすがり、頼り続けていても助かるわけではない。そうした逃げ場のない心理的な状況を作り出すうえで、このアナログなテクノロジーが非常に大きな効果を発揮していると考えています。

──そもそも、本作の舞台がスコットランドになった理由を教えていただけますか?

岡本氏:
『サイレントヒル』シリーズでは、世界各地の開発会社とタッグを組む機会が多くあります。さまざまな地域の文化やカルチャーが混ざり合うことで、これまでにない新しいサイコロジカルホラー体験を提供できると考えているからです。

マケラン氏:
開発側の視点でお話しすると、スコットランドは私たちが生まれ育った土地であり、もっとも馴染み深く描きやすい場所だからです。細部まで説得力のある精緻な舞台を作り上げるには、自分たちが熟知している環境を選ぶことが不可欠だと考えました。馴染みの薄いアメリカのニューヨークなどを描こうとするよりも、プレイヤーに見せたい世界を完璧に表現するために、このスコットランドという舞台を選んでいます。

──ご自身にとってもっとも馴染みのあるスコットランドを、『サイレントヒル』という凄惨なゲームの舞台にすることについて、物語を書くうえでなにか思うところはありましたか?

マケラン氏:
じつはスコットランドは非常に霧が深く、クリーチャーがたくさん潜んでいる場所なので、もとから『サイレントヒル』に完璧に適した環境なんです。

一同:
(笑)。

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マケラン氏:
という冗談はさておき、ネット上のミームにもなっているように、実際にスコットランド周辺は霧が非常に深い日が多くあります。濃霧の日に外に出て写真を撮ると、「いま自分たちがいる場所は『サイレントヒル』なのではないか」と感じることがよくあるくらいに。そういう意味でも、本作の舞台として適した環境だったと感じています。

──正直なところ、日本人としては “スコットランドらしさ” と言われてもあまりピンとこない人も多いと思います。現地に住んでいる人が見たら「ぜったいにここはスコットランドだ!」と直感するようなポイントや、象徴的な要素はあるのでしょうか?

マケラン氏:
じつは、ゲーム内にはそうした要素をかなり細かく散りばめました。あまりにディープすぎて、制作チームの若いメンバーですらピンときていなかったものもあるほどです(笑)。

たとえば、物語序盤で訪れるゾーイの家での仕掛けがまさにそうでした。当時のスコットランドでは、電気を使うためにチャージ式の電力カードをメーターに挿す必要があったのですが、若いスタッフからは「本当にそんな仕組みだったの?」と驚かれましたね。

もちろん電力カードは分かりやすい一例ですが、それ以外にも家屋の間取りや台所のレイアウト、家具のサイズ感に至るまで、屋内のあらゆる部分に「当時のスコットランドならではの光景」がリアルに落とし込まれています。

隠しエンディングを含めた合計5つのマルチエンディング

──今回、シリーズ恒例の「UFOエンディング」はあるのでしょうか? また、マルチエンディングに対するスタンスやゲームデザインの狙いについてもお聞きしたいです。「1周目からどの結末になるか自由」と言われると迷ってしまうプレイヤーもいるかと思いますが、どのように遊んでほしいと考えていますか?

マケラン氏:
UFOエンドが存在するかどうか、また具体的な内容については、ぜひご自身で到達したときの楽しみに取っておいていただきたいので、ここでの言及は控えさせてください(笑)。隠しエンド自体はしっかりと用意しています。

マルチエンディングの仕組みについては、単なる選択肢の2択などで決まるものではありません。そこにいたるまでのプレイヤーの行動の積み重ね──「どんなサイモンとして、どのような方法で立ち回ってきたか」というプレイ内容の集大成によって、たどり着く結末が変わります。ご自身のたどってきた体験にもっとも納得感があり、腹落ちするような結末を迎えていただけるよう自由度を持たせています。

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岡本氏:
メインエンディングに関しては、1周目からプレイヤーの行動次第でどの結末にも到達できるようになっています。一方で、隠しエンディングは2周目(ニューゲームプラス)以降で到達できる設計になっており、構造としては従来の『SILENT HILL』『SILENT HILL 2』に近いです。

前作『SILENT HILL f』のように、メインエンディングをすべて見るために何周もプレイしなければいけない作りではございません。

演出や仕掛けのすべてが物語の根幹と直結している構造作り

──スクリーンバーンさんはこれまで中小規模のタイトルを手掛けてこられたと思います。その知見やノウハウが、『サイレントヒル』という世界的に人気のあるIPにもたらした視点や影響があれば教えてください。

マケラン氏:
私たちの11年間にわたるスタジオの歴史を振り返ると、例えば『Stories Untold』などの過去作においても、一貫して「物語性(ナラティブ)とゲームプレイの融合」を意識し続けてきました。これが今作にもっとも大きな影響を与えていると感じています。

過去の作品でも、ゲーム内で発生する出来事はすべてナラティブと必然的に紐づくよう設計してきました。単に「ゲームを進行させるためのギミック」や「進行を阻む障害」として置くのではなく、描かれる演出や仕掛けのすべてが物語の根幹と直結している。そうした構造作りこそが、本作に活かされた最大の知見だと思っています。

──本作が最初に発表されたのは2022年10月頃だったと思いますが、実際の開発はいつごろから動き出していたのでしょうか? また、開発初期から大きく変化した点などがあれば教えてください。

岡本氏:
具体的な時期はお答えできないのですが、2022年より前の段階からプロジェクトは動き出していました。

初期からの変化で言うと、じつは企画段階の時点では「CRTV」の構想はありませんでした。ですが、開発初期のプロトタイプを組み、スクリーンバーン、Annapurna Interactive【※】、コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)の3社でゲームの方向性を議論・評価していく中で、新たなアイデアとしてCRTVが誕生しました。

※Annapurna Interactive
『SILENT HILL: Townfall』のパブリッシャーの一社であり、本作ではKONAMIと共同パブリッシングを担当。数多くのインディー系タイトルを手掛ける。

マケラン氏:
岡本さんの言うとおり発表は2022年でしたが、KONAMIへ最初にプレゼンした基本構想や描きたい物語の軸自体は、最初からブレることなく一貫しています。

開発を進めるうえでも、「最初にチームと共有した原点から大きく逸れてしまっていないか」を常に意識しながら制作を続けてきました。

──本作をプレイして、『SILENT HILL 2』のような「自分自身と向き合うストーリー」と、『サイレントヒル』初期作のような「町に隠された惨劇や真実に迫るストーリー」の双方が組み込まれていると感じました。ジョンさんが思う『サイレントヒル』シリーズの魅力と、本作に込めた思いを教えてください。

マケラン氏:
本作をプレイする際は、ぜひ「もし自分がサイモンの立場だったらどうするか?」という視点で体験していただきたいと思っています。

この極限状態に置かれたとき、自分なら何を感じ、どのような行動をとるのか。プレイヤー自身が主人公の境遇に深く没入し、葛藤や恐怖を我が事として感じてもらえるような体験を目指して制作しました。それこそが、私たちが『サイレントヒル』という作品を通して届けたかった思いです。(了)

※映像・画面は開発中のものです
©Konami Digital Entertainment
©2026 Annapurna Games, LLC
©2026 Screen Burn Interactive Ltd. “Screen Burn” is a registered trademark of Screen Burn Interactive Ltd.

編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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