中国発の「実写インタラクティブ作品」が人気を集めはじめている。
俳優が演じるドラマをプレイヤー自身の選択で分岐させていく、実写表現のゲームだ。こうした作品が中国からも生まれ、多言語に翻訳され国外にも広がっている。
『盛世天下:女帝への道II』も、そのジャンルに名を連ねるゲームのひとつである。
本作は陰謀がうずまく王朝を舞台に、敵味方を見極めながら生き抜き、女帝を目指すアドベンチャーゲーム。
そんな本作は、配信からわずか5日で100万本を売り上げるという勢いを見せる。Steamでも7000件を上回るレビューが集まり「非常に好評」を獲得。さらに、シリーズの累計売り上げは500万本を突破している。
プレイヤーの皆さまへ
— 盛世天下:女帝への道 (@RoadtoEmpressjp) June 30, 2026
『盛世天下:女帝への道』シリーズの全世界累計販売本数が500万本を突破いたしました。
本作は実写インタラクティブ映像作品として世界最高の累計販売本数を記録いたしました。… pic.twitter.com/oSZ675PGVg
宮廷を舞台にサバイバルするアドベンチャーゲーム……ヒリつく人間模様を満喫できるであろう魅力的なコンセプトだ。しかしそれを実現するため、なぜ本作はアニメやCGではなく「実写」を選んだのだろうか。
実写でのゲーム作りは、CGやアニメを用いるものとは勝手が違う。どちらも大変な面はあるだろうが、その質は異なるように思える。
今回電ファミでは、『盛世天下:女帝への道』シリーズのプロデューサーであるDemi氏にメールインタビューを実施する機会を得た。
回答を通して伝わってきたのは、実写だからこその価値だった。
実写ゆえに、キャラクターの葛藤は、役者の表情や息遣いからも伝わる。その生々しい臨場感が、プレイヤーの選択の重みを支える体験になっているという。実写インタラクティブゲーム、その最前線に立つ作り手に手応えをうかがった。

取材・文/竹中プレジデント
「鑑賞」から「体験」へ。「実写インタラクティブドラマ」が急成長している理由とは
──まず、『盛世天下:女帝への道』シリーズの見どころを教えてください。
Demi氏:
『盛世天下:女帝への道』は、中国の伝統文化をモチーフとし、架空の古代宮廷を舞台に実写で撮影されたインタラクティブドラマ作品です。本作の最大の魅力は、3つのキーワードで表現できます。
1つ目は「選択と結果」です。プレイヤーは決められた物語をただ観るのではなく、主人公の視点に立ち、みずからの決断によって運命を切り拓いていきます。すべての選択が、あなただけの物語を形作っていきます。
2つ目は「人間性の描写」です。あらゆるキャラクターやストーリーは、「その人物が何者で、どのような境遇にあり、何を大切にし、何によって変化するのか」を起点に設計されています。作中に登場するキャラクターは単なるストーリー進行の道具ではなく、それぞれが独自の感情と立場を持った存在として描かれています。
3つ目は「実写ならではのクオリティと表現の密度」です。衣装、礼儀作法、美術セットから時代考証の細部に至るまで、画面を構成するすべての要素が「物語を語る」役割を果たせるよう作り込んでいます。
プレイヤーにとっての最大の醍醐味は、「ひとつのドラマを鑑賞しながら、同時にそのドラマの世界を生きている」かのような、唯一無二の没入体験にあります。
──New One Studioは、中国で実写インタラクティブ作品がジャンルとして広く注目されるひとつのきっかけをつくったチームだと受け止めています。作り手として近くで見てきたお立場から、このムーブメントに火が付いた瞬間と、そこからここまで広がった要因を、あわせてお聞かせください。
Demi氏:
いくつかの成果を得られたとはいえ、私たちはいまも自分たちを「新人」だと思っています。ただ幸運にも、皆がともに切り拓いている道の上を歩ませてもらっているに過ぎません。
もしこのジャンルの広がりの「きっかけ」を挙げるとすれば、それは特定の1作品の成功ではなく、「プレイヤーのエンタメに対するニーズの構造的変化」にあると考えています。
現代のエンタメに対するニーズは、「鑑賞」から「体験」へと移り変わっています。「誰かが選択するのを眺める」だけでは物足りず、「自分自身が選択の主役になりたい」──そうした想いにもっとも応えられるメディアのひとつが、まさにインタラクティブドラマなのです。
このジャンルが急成長を遂げた理由は、大きく3つの要因があると考えています。
(1)映画レベルのクオリティ、ゲームの仕組み、そして複雑なストーリー分岐を作るツールが、現実的なコストで作れるようになったこと
(2)ただ作品を観るだけでなく、「自分の手でいろんな展開や結末を試してみたい」という楽しみ方が広まってきたこと
(3)ドラマのプロとゲームのプロがタッグを組むケースが増え、作品としてのクオリティや表現の幅がどんどん上がっていること
ただ客観的に見れば、インタラクティブドラマはまだまだ始まったばかりのジャンルで、進化の伸びしろがたくさん残されています。初期段階を乗り越えたいま、業界の皆さんといっしょになって、このジャンルの可能性をさらに広げていきたいですね。
役者の息遣いひとつでも「キャラが生きている」臨場感を味わえる
──俳優の生の演技が、アニメやCGとは違う形でプレイヤーの感情を直接動かす。そんな実写ならではの強みに、ぜひアプローチしたいと考えています。『盛世天下:女帝への道II』の中で「この表現は実写だからこそ成立した」と感じるシーンをひとつ挙げ、その理由を教えてください。
Demi氏:
『盛世天下:女帝への道II』の見どころとなる重要なシーンは、どれも「実写」だからこそ表現できたものばかりです。
たとえば、緊迫した場面で主人公が瞬時に決断を下すシーン。プレイヤーが見るのは「3秒迷った」という字幕ではなく、役者さんの微小な表情の変化や息遣いです。また、大勢の役者が空間で演じる朝廷のシーンも同じです。役者同士の息遣いや反応から生まれる緊張感は、CGではけっして表現しきれないリアリティがあります。
実写だからこそ、プレイヤーに「この人物はいま、この世界で確かに生きている」と実感していただけるのだと信じています。
──『盛世天下:女帝への道II』では約1000分もの実写映像を収録しています。CGやアニメと違い、実写は俳優、撮影、衣装、美術など多くの人と工程が同時に動きます。この物量を、どれくらいの制作体制(期間や環境)で撮りきったのか、そのなかでとくに難しかった点とあわせて教えてください。
Demi氏:
『盛世天下:女帝への道II』の制作規模は、実写映像は約1000分、全32話、分岐ルートは100種類以上と、前作のほぼ倍に達しています。
この巨大な規模を支えるために、約3年をかけて作品のクオリティを限界まで磨き上げてきました。礼服一式の製作だけに45日以上を費やすなど、古代の盤上ゲーム「双六(すごろく)」や伝統的な仕掛け箱の復元に至るまで専門家とともに細部まで徹底的にこだわり抜き、さらに自社開発の専用システムで約1000分にも及ぶ複雑なストーリーと選択肢を整理して組み上げています。
制作中でもっとも難しかったのは、「妥協を許さないこだわり」そのものです。以前の取材でもお話ししましたが、当初の予定より完成が遅れてしまったことを大変申し訳なく思っています。これほど巨大な規模の作品を磨き上げるスピードを過信していましたし、「チェックを重ねるたびに見つかる改善点を、少しでも良くしたい」という自分たちの熱意の強さを甘く見ていました。
「これで完成だ」と思うたびに、「もっとクオリティを引き上げられる場所」が見つかってしまう──それとの戦いこそが、『盛世天下:女帝への道II』において最大の難所でした。
──数ある作品のなかでNew One Studioが大切にしている“譲れない一点”と、それが本作のどこに具体的に表れているのかを、あわせてお聞かせください。
Demi氏:
「キャラクター起点の物語作り」──これが何よりも大切で、譲れないこだわりです。
どの人物を描くときも、「どんな環境で、どんな悩みを抱え、何のために変わるのか」を徹底的に掘り下げます。そうすることで初めて、ストーリーや選択肢に本当の説得力が生まれると考えています。
『盛世天下:女帝への道II』に登場するある妃嬪の三日月の首飾りもその一例です。これは単なる飾りではなく、彼女の過去や失った娘との絆を表す重要なアイテムです。プレイヤーの選択によってその描かれ方が変わるのも、キャラクターを第一に考えた結果です。
また、前作から登場する高揚(こうよう)も、今作では独立したひとりの人間として、守るべきものや葛藤がより深く描かれています。
どのキャラクターも単なる脇役ではなく、それぞれの人生や成長を感じられる作りにしています。
ユーザーに届けたいのは「鑑賞権」ではなく「体験権」
──似た作品も増えたこのジャンルのなかで、映像を“観るだけ”の作品と、『盛世天下:女帝への道』をどう違うものにしようとしているのか、教えてください。
Demi氏:
他の作品ともっとも大きく異なるのは、私たちが届けたいのが単なる「鑑賞権」ではなく「体験権」だという点です。
従来の映像作品が視聴者に与えていたのは「鑑賞の権限」──あらかじめ決められた旅を眺める権限でした。一方でインタラクティブドラマが与えるのは「体験の権限」です。体験の細部、キャラクターとの関係性、支払った代償、そして残された悔い──そのすべてがプレイヤーごとに異なります。
『盛世天下:女帝への道』において、私たちは特に3つの要素に注力しました。
(1)「選択と結果」の重み
「見かけ倒しの選択肢」は作らず、一つひとつの決断がその後の関係性や局勢、そして結末をリアルに変化させます。(2)「思い出」の醸成
インタラクティブドラマの本質は、インタラクティブな体験を通して「思い出」を作り出すことにあります。作品を終えた後に残るのが単なる「ストーリー」ではなく、「自分が重ねてきた選択の記憶」であってほしいのです。(3)実写ならではの感情の質感
映像そのものがひとつの言語です。役者の目線や間(ま)の取り方こそが、選択肢の裏側にあるもうひとつの物語だと考えています。
人の感情に寄り添う作品には、まだまだ大きな可能性が秘められていると感じています。『盛世天下:女帝への道』が歩んできた道のりが、それを証明する一助になれば嬉しく思います。
──それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
Demi氏:
まずは、『盛世天下:女帝への道』にご注目いただき、ご体験くださった日本のメディアの皆様、そしてプレイヤーの皆様に心より感謝申し上げます。
インタラクティブドラマというジャンルは、まだ誕生して間もない若いコンテンツ形式ですが、ドラマ本来が持つ強い感情の揺れ動き(ドラマチックな緊張感)を保ちながら、「プレイヤーの選択」を加えて、映像表現の新たな可能性を切り拓こうと挑戦を続けています。
私が皆様にお伝えしたいのは、「物語は画面の中で紡がれ、人生は画面の外で輝く」ということです。
作中の物語で至らない点がありましたら温かい目で見守っていただけますと幸いです。ストーリーには十人十色の受け止め方があります。どうぞ皆様も、ご自身の現実の人生において、誰よりも自分らしく輝く「最高の主役」であってください。
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