そもそも、「ゲームを作りましょう」から始まっていない──花王の担当者はそう振り返る。
音に反応する敵が徘徊する危険な状況下で「マジックリン」や「クイックルワイパー」といった花王の看板商品を使い、静かに掃除をさせられる花王のホラーゲーム『しずかなおそうじ』。
そのあまりの独自性の強さから2025年にSteam版が無料配信されるやいなや、爆発的な話題を呼んだ。「あの花王がホラーゲームを!?」と、多くの人が思ったのではないだろうか。
ブランドイメージを重視する大手メーカーが、本来「清潔・安心」の象徴である自社製品を、あえて「不気味・恐怖」の文脈に置くことは異例なことだろう。勝手なイメージで申し訳ないが、“花王ってそういうことしなさそう” なのに。
ところが驚くのはそこだけではない。このゲーム、じつはそもそも「ゲームを作る」という企画としてスタートしたわけではなかったという。
えっ、そうなの? ゲームを作る企画じゃなかったのにこんなに話題になるゲームを作っちゃったということ?
もしかして、とんでもない天才の “思いつき” だったのだろうか。
そのうえ、このゲームはただのネタゲーで終わっていない。「トイレは泡パックをして待つ」など、実際の商品の待ち時間をゲームの緊張感の演出に変換させるというホラーゲームとしての設計自体も優れているため、ゲームファンからもちゃんと愛されている。

そんな『しずかなおそうじ』が、2026年7月23日にNintendo Switch版を発売した。価格は200円(税込)で、売上は子どもの教育支援に取り組む団体などに寄付を予定しているという。
……いや、利益を目的としないのであれば、どれだけ掃除させたいんだ。花王はいったい、なにを企んでいるんだ。気になることは、ひとつやふたつではない。
冒頭の言葉はそれらすべての謎を直接ぶつけた相手、今回の企画に携わる花王の担当者3名によるものである。

実際に話を聞くと、そのすべての決断は驚くほど真摯なものだった。そこにあったのは、普段私たちがなんとなく共通認識として持っている “ド真面目な花王” の姿だ。もしかしたら、真面目と狂気は隣り合わせなのかもしれない。「狂気」というのは、どこまでも純粋な「真面目」を愚直に積み重ねた先に生まれるものなのかもしれない。
この “狂気の企画” が、花王という大企業でいかにして実現にいたったのか。本稿では座談会形式でその様子をお届けしていく。
聞き手・文/柳本マリエ
※この記事は『しずかなおそうじ』の魅力をもっと知ってもらいたい花王さんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「ゲームを作りましょう」から始まっていない意外な出発点

松田氏:
ああーっ! うしろから来てる、逃げて!
杉本氏:
わっ、ちょっと待って(笑)。
松下氏:
見つかっちゃう(笑)。
──あっ、あの……すみません……めちゃくちゃ盛り上がっていますが、皆さんこれ、ご自身が携わったゲームですよね?(笑)
一同:
(笑)。
──2025年にSteamでいきなり無料配信されたときは「あの花王がホラーゲームを!?」と驚きました。本作は「敵に見つからないようにマジックリンやクイックルワイパーで掃除する」という独自性の高い “花王にしかできないゲーム” だと思います。どういう経緯でこの企画が立ち上がったのでしょうか。
杉本氏:
じつは、「ゲームを作りましょう」と始まった企画ではないんですよ。
──えっ、そうなんですか!?
杉本氏:
もともとホームケアというカテゴリーにおいて「これまで主戦場にしてきたCMなど、マス広告が特に若年層に効かなくなってきてる」という課題がありました。そのため、僕らとしては「いまはまだよくても今後は怪しくなってくるかもしれない」という危機感があったんです。
僕らが価値を届けきれていない層に対してなにか新しいコミュニケーションでアプローチすることはできないか。中でも、これまでSNSやウェブなどデジタル上での施策の実績が弱かったこともあり「若年層向けにデジタルを使った新しいコミュニケーションのやり方を開発しなさい」という任務がおりてきたんです。
──なるほど、「ゲームを作りなさい」という指示ではないですね。
杉本氏:
花王のホームケア カテゴリーが抱えている課題に対して、これまでにない新しいやり方を開発する、というのがプロジェクトチームに与えられたものでした。
そして、「その課題を一緒に解決していただけそう」なおかつ「我々にはない発想やアイデアを出してくれそう」ということで、今回クリエイティブエージェンシーのワットエバーさんにお願いをする流れになりました。個人的に、ワットエバーさんの過去のお仕事は、いち生活者としていくつも記憶に残っているものがあり、そうしたクリエイティブを作れる会社さんとはぜひとも一緒にお仕事したいなというのもありました。
──過去にたまたま見かけて記憶に残っていた施策をされていたのがワットエバーさんだった、と。ホラーゲームという案はどのように決まったのでしょうか。
杉本氏:
はい。そうして座組が決まりました。そこからワットエバーさんと、「若年層を対象としたホームケア」においてなにが課題になっているのかをワークショップみたいなかたちで意見交換を行い、一緒に検討した結果、実況を前提としたホラーゲームがいちばん波及力がありそうと思ったんです。
──ただのホラーゲームではなく実況を前提とした案だったんですね。
杉本氏:
そうなんです。『しずかなおそうじ』をローンチしてから皆さんに「よくゲームを作る企画を通したね」とか「どうしてホラーゲームを選んだの?」など聞かれることが多いのですが、そもそも最初に出てきたところが「拡散されやすいホラーゲームを作って実況をしてもらう」という案だったんです。
──ちなみにほかにはどのような案があったのでしょうか。
杉本氏:
「イベントをやる」「SNSのインフルエンサーに紹介してもらう」「ドラマを作る」みたいなものもありましたね。ほかになにがあったかな?
松田氏:
公共の汚れを落とすという慈善活動みたいな施策もありましたね。
杉本氏:
「ゲームを作ろう」という話ではなく「僕らが抱えている課題を解決するためになにができるだろう」という枠組みの中のひとつとして、ホラーゲーム実況がありました。なので、皆さんが思い描いてるような「花王のゲームを作りましょう」から始まってないんです。
──確かにそれは意外です。『しずかなおそうじ』はゲーム設計も優れているので、てっきりゲームを作る企画として動いていたのかと思っていました。数あるジャンルの中で、「なぜわざわざ “花王という爽やかなイメージ” の真逆をいくホラーゲームを選んだんだろう」と疑問を持った人は多いと思います。
杉本氏:
そうですよね(笑)。僕らとしてはまず課題があり、「その課題を解消するための手法を出す」という流れだったんです。
──とはいえ、複数の候補があった中でどのように「ホラーゲーム実況」に行き着いたのでしょうか。そこには議論の末の決断があったかと思うのですが。
杉本氏:
ありました。でも正直なところ、するっと決まりました(笑)。さまざまな案が出ていた中で「もう圧倒的にこれがいいよね」と。
──では満場一致に近いような感じだったのでしょうか。
松田氏:
「せーので指を差しましょう」って決めましたよね(笑)。
一同:
(笑)。
杉本氏:
といっても、ただの直感だけで決めたわけではないんです。マーケティングとクリエイティブ双方において、みんなそれぞれ自分の中でちゃんと理屈に合ったものを選んだ結果でした。
松下などのマーケターは「数字」「生活」「お客さま」を見ていて、僕や松田などクリエイターは「広告」という視点から見ています。
広告的にいうと「新しいことをしなさい」と言われたときに、イベントを行う・ドラマを作るという施策は、この長い広告業界において目新しいものではありません。なおかつ僕自身が課題として感じているのが、イベントをしても盛り上がった “ふう” で終わってしまうことでした。
もともと僕らはエンタメの会社でもないので、イベントをしても通り過ぎてしまうというか……。
その中で「花王がホラーゲームを作る」となったら、おもしろいのではないかと思いました。そしてこれは、花王がやるからおもしろいと思ったんです。
──というと?
杉本氏:
たとえば、デジタル施策で話題になるエンタメ性の強い施策を連発されている他社さんがホラーゲームを作るのは、あり得そうと思うんです。
だけど花王って正直 “堅そう” じゃないですか。そういうことしなさそうじゃないですか。だからこそホラーゲームを作ったらおもしろいのではないかと思いました。
──そうですね。2025年にいきなりSteam版が配信されたとき真っ先に「あの花王が!?」と思いました。多くの人がイメージする花王は、“真面目” だと思うんです。たとえばCMでも商品の魅力をストレートに伝えているじゃないですか。社員にしても、真面目な人が多い会社なんだろうと勝手に思っていました。なので、この企画が通ったことに驚いた人は多いと思います。
杉本氏:
そういった反応をしていただけるのではないかというのが見えたことは大きいです。また、僕自身は普段そこまでホラーゲームをしないのですが、YouTubeで実況を見ることはよくあるので、実況の力が加わればそこから広がっていく伸びしろを感じました。
なによりいままで自分が経験してきた広告業界の中でこういう取り組みは見たことがなかったため、新しくも見えるな、と。僕としてはすごく真面目に判断しているんです。
企画を通すうえで “いちばん” 聞いた説得材料とは?
──いまのお話をうかがって理論的に選択されていることが理解できました。とはいえ、現場で「これがいい」という判断にいたっても今度はそれを上層部に報告していきますよね。現場に近い方はどういう議論の末にこの選択にいたったのか理解できても、いわゆる稟議を通すときの説明はかなり特殊だったと思います。そのときの反応はどういう感じだったのでしょうか。
松田氏:
そもそも求められていたのが、おもしろい企画だったのでいつも通りのプレゼンだったかなとは思います。
──しかし承認する側も、まさか「ホラーゲームを作って実況をする」という案が出てくるとは思わなかったのではないでしょうか。
杉本氏:
ここはちょっと花王っぽいかもしれないですが、僕はこういうとき “理論武装” をするんです。
僕らも日々、社内外のパートナーと企画を磨き上げる中で、「クリエイティブとしてはとてもいいけど、そのあと生活者はどう動くの?どんな効果が得られるの?」というところまで描けないとGOは出せません。だから自分たちがプレゼンしたら、それを受けた側は同じことを思うはずなんです。逆にいうとそこを提示すれば納得して選択してもらえる。
今回だと「ゲーム界隈はこれだけの母数がある」「実況の力でゲームをしない人にも届けられる」「つまり今回の課題をこうやって解決できる」といったことを具体的に数字でも示しました。
ホラーゲームというアウトプットが特殊だからこそ、「実況者も視聴者も反応がしやすいホラーゲームを作りましょう」ということを言えたんです。
このようにガチガチに固めて挑んだので否定的な反応はなかったですね。
──なるほど。ちなみにあらゆる方向からの理論武装をした中で、いちばん効いた説得材料やひと言はなんだったのでしょうか。
松田氏:
“いちばん” かどうかはわからないですけど、ホラーというジャンルは拡散が見込まれるからだと思います。ゲームを作って終わりではなく、実況者さんが配信をして、さらにその切り抜き動画がたくさん出ていますよね。私はホラーゲームを自分でプレイするタイプではないのですが、ゲーム実況はつい見てしまいます。
ホラーゲームを作ることで、そこからいろんな人に広がっていく魅力がコンテンツとしてすでに確立している。そういう話がプレゼンで効いたのかもしれません。
杉本氏:
そうそう、「ホラーゲームじゃなきゃダメなんです」みたいな説明をしました。そこから拡散されるという切り口は強いですから。
松田氏:
イベントだったらイベントに来た人にしかリーチできないけどホラーゲームだったら動画でどんどん拡散していくよね、と。
杉本氏:
私たちが求めている若年層にも届くでしょ、と。それに、ホラーと汚れの相性はいいですから。
──「それでもダメだ!」みたいなことを言う方はいらっしゃらなかったのでしょうか。
杉本氏:
そう言ってた人いた?
松田氏:
決裁者の中にはいませんでした。ただ、ローンチして反響を得たあと個人的に「いや、私の見る目がなかったわ」と言われることはありました(笑)。
──かなり鋭い企画なので、懐疑的に思うのは自然なことだと思います(笑)。
「SNSで商品名なんてまず言ってもらえない」──バズった瞬間、怯える現場
──Steam版が出たとき、ものすごい反響があったじゃないですか。その反響を受けて、どういうふうに感じましたか。
松田氏:
みんなでチャットしながら見てましたよね。そしたらSNSでトレンドにも入って!
杉本氏:
もちろん反応をしてもらいやすくなるような設計はしていましたが、正直こんなに反響をいただけるとは思ってなくて。実際にワットエバーさんにはいろいろと修正やお願いをして、ゲームの作りにもこだわっています。だけど過去にこんな施策はやったことなかったので、蓋を開けてみるまでどういう結果になるか本当にわかりませんでした。
このような反響をいただくことができて安堵しました。それこそガッチマンさん【※1】にお願いしていた実況配信の日【※2】もチャットが飛び交ってました。
※1 ガッチマンさん
ホラーゲームを主戦場とし、YouTubeチャンネル登録者数は206万人を数えるゲーム実況者。「ホラゲ実況界の重鎮」とも呼ばれ、独自のスタイルで人気を集めている。
※2 実況配信の日
『しずかなおそうじ』の配信当日(2025年8月8日)に行われた実況配信。実在のお掃除アイテムを駆使して謎を解く異色の内容が話題を呼んだ。
配信のコメント欄もすごかったんですよ。うっすらと「こういう声が出るといいな」と思っていたら、想定をはるかに超える量のコメントが流れていました。「クイックルワイパーって天井も拭けるんだ」「網戸も拭けるんだ」とか。「マジックリンって花王だったんだ」という声もありました。
そういったコメントが流れているのを見てすごく感動しました。そういうの、いままでなかったんですよ。
松田氏:
X(旧Twitter)でもすごい反響になっていて。普通、SNSで商品名なんてまず言ってもらえないんです。
──確かに、日常的にマジックリンを使っていたとしてもわざわざ「マジックリンが〜」という投稿はしないかもしれませんね。
杉本氏:
ガッチマンさんの実況配信後はみんなで「言ってもらえたね」「実況すごかったね」などと話していたんですけど、そのあと夏休みに入って実況してくださる方がどんどん増えていったんです。中にはものすごい数のフォロワーを抱えている方もいらっしゃいました。
ありがたいことにそうして反響はどんどん大きくなっていったのですが、同時に僕らはどんどん怖くなってしまって。「人はバズると怯える」ということがわかりました(笑)。
松田氏:
表記ミスあったらどうしよう、とか(笑)。
一同:
(笑)。
──ちなみにバズった要因はどこにあると分析されてますか? 清潔・安心の象徴であるマジックリンやクイックルワイパーを “恐怖” に反転させても、なぜ成立したのでしょう。
松下氏:
やっぱりガッチマンさんの実況の力ではないでしょうか。ホラーゲーム界隈から信頼性が強いガッチマンさんが配信してくれたのは大きかったと思います。
杉本氏:
そうですね。「ガッチマンさんがやってるからちゃんとしたゲームなんだ」というお墨付き感かもしれません。それこそ、企業がゲームを作っても “広告目的だから本気のゲームではなさそう” と思われる。
なおかつ花王はゲーム会社ではないので、ただ出すだけではいわゆるネタゲーだと思われてしまいがちなんです。それをガッチマンさんが実況してくれたことによって視聴者の皆さんが「いいゲームなのかもしれない」と思ってくださったのではないかと思います。
また、先ほどお伝えしたとおり『しずかなおそうじ』は実況前提の企画なので「ゲーム実況をしやすいゲーム」であることも意識しました。実況者さんが話せるようにあえてボイスを入れなかったり、リアクションしてもらいやすいような仕掛けを入れたり、プレイ時間も実況しやすい配分にしています。
それをガッチマンさんがゲーム実況のお手本みたいにやってくれる。それを見たほかの実況者さんたちも配信をしてくれる。その配信を見た視聴者さんがSNSで発話してくれる。そして実際にゲームをプレイしてくださる方も増える。そうして広がっていったのだと思います。
──実況に適しているだけでなく、「ゲームの時間をあまり取れない大人」にも適した仕様ですよね。
杉本氏:
ゲーム界隈の方々に「花王がホラーゲームを作った」というおかしさを受け入れてもらえたように感じました。いままでの広告の作り方は自分たちが作ったものを見てもらう感じだったけど、今回は僕らが “向かう感じ” を作れたのがよかったのかなと。
松田氏:
ゲーム界隈にお邪魔させていただく、みたいな。いきなり私たちがお邪魔しても拒否感が生まれないように、私たちがゲーム界隈の方々のところにお邪魔させていただいております。
松下氏:
私たちが普段作っている動画広告などは「冒頭5秒以内に商品を投入する」「ブランド名を大きく表示させる」といったことが定石ですが、『しずかなおそうじ』は商品がなかなか手に入らない。探索をして探し出す必要があります。
そういう、これまでの考え方から離れても「ゲームとして楽しい」に振り切ることができたことが、受け入れていただけた要因なのかと思います。最大限のリスペクトを持ってお邪魔させていただいている気持ちです。
「明日ちょっと掃除してみようかな」という気持ちになってもらいたい
──『しずかなおそうじ』はマジックリンやクイックルワイパーといった看板商品がたくさん出てきますが、企画自体が通っていたとしても「こんなふうに商品を出さないで」「こういうゲームにはしないで」といった花王さんのこだわりや議論はあったのでしょうか。
杉本氏:
そこはすごくしてますよ。花王っぽいところですね。
先ほどいろいろと「若年層向け」や「新しい取り組み」といった任務の話をしましたが、そもそも大前提として僕らはこのゲームを通して掃除に興味を持ってもらいたいんです。普段あまり掃除はしていなくても、このゲームを体験してもらったあとに「明日ちょっと掃除してみようかな」という気持ちになってもらえたらと。
なので、掃除をするゲームであることはぜったい的な条件でした。
といっても、たとえばスプレーで汚れ(敵)を攻撃するシューティングゲームやアクションゲームみたいなこともできるとは思うのですが、僕らがやりたいこととは少し離れてしまいます。それをしてもきっと「明日掃除をしよう」とは思わない。
ちゃんと掃除をして綺麗になる、綺麗になったときちょっと気持ちいい。「明日やってみたくなるような体験であるべき」というのは最初から一貫してありました。
ただ、僕らは掃除をしてもらいたいけど、掃除が苦手な人、できない人、嫌いな人を悪にはぜったいにしたくないんです。だから、「掃除をしないと呪われる」みたいな方向性にはしたくない。そのあたりはすごく気をつけました。
苦手な人が、ちょっとでも「やってみようかな」と思えたら、それだけでいいんです。
──確かに、掃除をしない人の肩身が狭くなるような演出や印象はまったくないですね。ちなみにゲーム内の “汚れ” についてのこだわりや議論はあったのでしょうか。けっこうリアルな汚れ方だと思います。
杉本氏:
そこはもちろんありました。汚れの見せ方、落ち方、表示の仕方など各部署の商品担当に来てもらって「これで大丈夫ですか」と確認してもらっています。
──へええ、どういうフィードバックがあったのでしょうか。
杉本氏:
「この色だとこの商品じゃ落としきれないからこれはダメですね」や「この汚れはやりすぎ」といった指摘をもらいました。
松田氏:
法的な観点からも、マーケティング担当や作成部だけでなく、法務にもゲームを一緒にプレイしてもらいながら慎重に制作を進めました。
杉本氏:
自社製品が出てくることもあり、怯えながらといったらアレですが、石橋を叩きながら細かく進めていきました。たとえばスプレー剤の噴射量や噴射音なども議論しています。
あとは、使用時に手袋の着用が必要な洗浄剤もあるのでそのあたりをどうクリアしていくかも課題でした。花王からの注文が多かったのでワットエバーさんは苦労されたと思います。
パッと見はネタゲーのように見えるかもしれませんが、商品が関わるところはテキストやキャラクターなどかなり真面目に議論しました。特に商品の使い方では誰も傷つけないように気をつけています。
──誰も傷つけない商品の使い方、というのはどういうことでしょうか。
松田氏:
最初は「敵にスプレーを噴きかけるとちょっと弱る」というアイデアをいただいたんですけど、それだと子どもが真似して人に噴射してしまう危険性があるので採用できませんでした。
ちゃんと軍手をつけないと進めない」のような、掃除の裏技の紹介を入れたのもひとつのこだわりです。
──なるほど。ゲームに登場する商品は厳選された商品だと思いますが、どういう基準で選定したのでしょうか。
杉本氏:
最終的に「インターネットで話題になるような特徴がある商品」に決まりました。あとはどこでも洗えてしまうマルチクリーナーみたいなものを出してしまうとゲームとして破綻してしまうので、トイレ用や水アカ用など専用のものに絞っています。
松下氏:
トイレやお風呂はスプレーするだけでこすらずに汚れが落ちる仕様になっていますが、これは実際(実生活)もこすらずに放置して流すタイプの商品となります。ゲームと現実が連動するおもしろさもふくめて選定しました。
杉本氏:
そういえば待ち時間のカウントについても社内でやり取りを重ねましたね。というのも、放置して流すタイプの商品はゲーム内でスプレーしたあと一定時間の待ち時間が発生するんです。
──ゲーム内では実際の放置時間より早くカウントされますよね。
松田氏:
最初は本当に待つことも考えました。たとえば「5分放置」だったら5分待つ、といったように。
杉本氏:
でも「ゲームとして本当にそれでいいのか」と考えると、実況してもらう前提のゲームとしては不向きだと思いました。
松田氏:
社内で議論を重ね、最終的に「ちゃんと待つ分数がわかるように表示をしたらOK」と落ち着きました。

──なるほど。ホラーゲームとして「待ち時間」があるのは緊張感を与える演出としてすごくいいなと思いました。「汚れはしっかり落としたいけど待ってたら敵に見つかっちゃう」という緊張感はほかのゲームでは味わったことがなかったので(笑)。
松田氏:
そうそう、実生活では数分放置するだけで汚れがしっかり落とせる、というのがうれしいポイントなのに、このゲームの中ではそれが “逆” になるんですよ。
──その体験を経たうえで、再び実生活で商品を使うとよりいっそうありがたみを感じるという現象が起こりました(笑)。
松下氏:
それでいうとゲーム内に「掃除の裏技」も入れていまして、それも実際に再現できる内容になっています。
杉本氏:
先ほど言ったことと重複してしまいますが、「明日自分でやってみたい」と思ってもらえるよういろいろと工夫しました。そうしたら「五徳って軍手をつけると掃除しやすいんだ」「これならこすらずに洗えるんだ」みたいなこともたくさんコメントしてもらえたんです。いままでいろんな施策をしても届かなかったのに。
──これまでの課題が一気に解消されていったわけですね。
杉本氏:
そうなんです。感動してしまいました。























