人間、だれしも認めたくない「負の側面」は持っていると思う。
それらはふだん、心の奥底に押し込めているからなかなか直視しない。もし浮かんできても、気持ちを切り換えて無視できたりもするだろう。
でもそれが実体をもって「お前、本当はこんなこと思ってるんだぜ?」と面と向かって詰めてきたらどうなるだろうか。

いや、怖いって! こんなに目玉がグリグリ動いてワナワナする状況、日常ではまずない。しかしこれは、負の側面であれ「自分の一部」を突きつけられているから、完全には否定できず動揺してしまう……といった状況だ。
『ペルソナ4 リバイバル』は、2012年の『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(『P4G』)をフルリメイクした作品で、2027年2月18日の発売を予定している。
あらすじをざっくり説明すると、田舎の高校生たちが町で起きた連続殺人事件を、「マヨナカテレビ」という異世界をも介して捜査。そこに現れる「シャドウ」たちを、ペルソナ能力を駆使して戦っていく……というRPGだ。
『P4G』は非常に完成度の高い名作だ。遊んだ人はかなり多いかもしれない。筆者もストーリーは覚えている。
だからこそ、15年ぶりに刷新されるにあたり「そこまで大きく変える点ってあるのか?」と気になってはいた。ただ、そんな懸念は試遊してすぐに打ち砕かれた。
すみません、もはや別モノでした。
全面的に刷新された中でもっとも印象的だったのがキャラクターの表情だ。「ここまでやるか?」というほど迫真の作り込みとなっており、キャラクターの心情も痛いほど伝わってくる仕上がり。ストーリーへの没入感も格段にアップしていたので、ぜひ紹介させてほしい。
文/世界のザキヤマ
陽介シャドウに詰められてストーリーの重みをあらためて知る
仲間の1人、花村陽介は顔だけでなく性格もいい。明るく気さくで、周囲にいたら「あいつめっちゃいいやつだよな~」とか言われるタイプだ。
ただ、そんな人間であったとしても、心には闇を抱えていた。その心の別側面であるシャドウが、マヨナカテレビの世界で実体化した姿がこちら。

では、なんでこんなシャドウが現れてしまったのか?
陽介は、都会から田舎町「八十稲羽」に引っ越してきた少年だ。父親は大型スーパー「ジュネス」の店長を務めている。そのジュネスが進出したあおりで、地元の商店街は寂れてしまった。
もちろん、本人は何ひとつ悪くない。ただ、八十稲羽は田舎のイヤなところをグツグツと煮詰めたような部分もあって、これみよがしな陰口もふつうに叩かれる。自分が陽介の立場だったら、ふだんから明るく振る舞えないと思う。

とある事件をきっかけに、陽介のメンタルは凹みまくっている。そんな折にマヨナカテレビの世界で陽介は自分のシャドウと対峙。言わんでほしいことをズケズケとまくしたてられてしまう。
なお、このシーン自体は『P4G』でもやっているし、アニメ化もされている。筆者も内容は把握していたものの、悪意全開に歪んだシャドウの表情が、ここまでストーリー本来の重みを際立たせてくるとは想像していなかった。
「えっ……陽介のエピソードって、ここまでエグかったっけ……?」と困惑したほど容赦のなさが伝わってくる。
こうなると、いやおうにも陽介に感情移入してしまう。「がんばって乗りこえてくれ……!」とコントローラーを握りながらめちゃくちゃ応援していた。
だからこそ、ここからシャドウを受け入れてペルソナを覚醒させる流れも本当によかった。真に迫るエグさがあるからこそ、既知の話なのに没入感がまったくと言っていいほど違っていたのだ。

千枝シャドウのゲス顔に情緒が狂わされる
続けて仲間の1人、里中千枝のシャドウのご尊顔をご覧ください。
何食ったらこんな禍々しい表情になるんだ。いっぽうでゾクっとするような妙な色香もあり、好きな人にはたまらないかもしれない。筆者も好きです。
千枝は、八十稲羽で育った地元の女の子で、明るくさっぱりとした性格をしている。恋愛対象というよりは友人感が強いポジションで構えず接しやすい。
そんな千枝には、天城雪子という友人がいる。こちらは千枝とはタイプが異なる清楚な和風美人。性質は逆に見えそうな2人だが親友と呼べる間柄だ。
ところが、マヨナカテレビの中で、千枝は自身のシャドウと対峙する。
うん、本当に悪そうな顔をしている。ちなみに表情は左右非対称でヌルヌル動き、狂気っぷりもどんどん加速していく。
これは千枝とシャドウだけの対話ではなく、仲間たちに聞かれている。本人ですら自覚したくないことを突きつけられ、さらにそれを友人たちにバラされるのは、いくらなんでもキツすぎる。

筆者はまたもや感情移入してしまい、「女子高生にこんな思いさせるなよ……かわいそうすぎだろ」と心が痛んだ。
いっぽうで、「いや、むしろ高校生だからこそ、こういう葛藤を乗りこえていくことが大切なのか……?」とも思うところがあった。
かつてストーリーを追ったときはここまで思いが及ばなかった。映像表現が進化した結果として、同じ内容なのに吸引力がまったく違ったのだ。
非日常の表現が極まったからこそ日常をより尊く感じられた
ここまでマヨナカテレビの世界を中心としてきたが、今回の試遊では、特別に日常パートもふれることができた。
そこで声を大にして言いたいのだが、マリーがものすごくかわいくなっていた。
いや、マリーはもともとかわいい。ただ、マヨナカテレビ内での表現があまりにハードすぎたため、相対的にかわいさがブーストして手が付けられなくなっていたのだ。
マリーは主人公だけが訪れることができる「ベルベットルーム」という場所の住人のひとりだ。田舎では浮くようなパンクファッションに身を包んでいるが、正直なところ原宿でも浮くとは思う。
そのうえで過去の記憶がないこともあって、主人公に外の世界を案内してほしいと伝えてくる。
なお、このシーンもフルボイスである。CV:花澤香菜さんによる「行こ?」はあまりに破壊力が高すぎて、正直なところ悶絶した。
そんなマリー、とにかく無垢である。記憶を失っていることに起因していることもあり、表現に幼い部分が残る。

たとえば、この商店街の惣菜屋でビフテキ串(320円)を食べるシーン。陽介曰く「相変わらずボリュームは満点」というあたり、質より量といったことがうかがえるが、マリーの返答の感想はこちら。ちなみに陽介に奢ってもらっている。
いやわかるよ。そういう肉あるよね、硬くて噛めないようなやつ。そのうえで「美味しかった」というのが、またズレている。
つまるところ、満足感はあるものの、食べにくかったということを伝えたいのだろうが、表現方法が非常に拙い。だからこそ、純粋すぎてかわいい。マヨナカテレビの世界との温度差がすごいことになっている。
ちなみにマリーはポエムが趣味だが、そのシーンもしっかり楽しめた。むずがゆさを感じてからの、「ばかきらいさいあくさいてー」のコンボもありがとうございます。いやもう、本当に愛おしすぎる。
マリーには、この時点で振り返る過去がない。世間にも揉まれておらずしがらみもないため、純粋さがより引き立っている。主人公に対してはある程度の信頼を見せてくれる点もいい。筆者は製品版で、マリーとのイベントを最優先に進めることを決意した。

本稿ではおもに「表現」のパワーアップについてふれてきたが、あくまでフルリメイクの一部だ。バトルまわりも全面的に刷新され、スタイリッシュさにより磨きがかかっていた。


さらに、BGMもすべてアレンジされているとのこと。すでに完成され切った名曲たちにさらに手をくわえるってどういうこと……!?
バトルまわりの曲は『I’ll Face Myself -Battle-』をはじめ、生楽器によるバンド演奏でリファイン。
さらに通常戦闘曲は『Reach Out To The Truth』をはじめ計3曲を確認できた。『P4G』では通常戦闘が2曲だったが、さらにバリエーションが増えているのは豪華すぎる。
試遊ではそこまで通常バトルをさわれていないものの、いちいち違うBGMが聞けることもあって非常にワクワクした。
『P4G』を磨き上げてのフルリメイク。少しさわっただけでも、「あっ、名作がもっと名作になるヤツだ」と確信できた。
未プレイの人はもちろん、すでにストーリーを知っている人にも、ぜひ改めてプレイしてほしい作品になりそうだと感じている。
『ペルソナ4 リバイバル』は、2027年2月18日に発売予定だ。続報とあわせ、発売を楽しみに待ちたい。

©ATLUS. ©SEGA.
















