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クトゥルフ神話「狂気の山脈にて」を“ペンギン視点”で見届けるゲーム『ペンギン・コロニー』プレイレポ。狂っていく人間と平常運転のペンギンがかみ合わない「温度差」こそが、このゲームの正体だった

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私はペンギンである。

今、目の前で人が死んだ。
それなのに私は、そっぽを向いている。

『ペンギン・コロニー』は、かわいいペンギンとなって1939年の南極を歩き、ラヴクラフト作品をベースにした狂気の物語を目撃するゲームだ。

クトゥルフ神話「狂気の山脈にて」を“ペンギン視点”で見届ける『ペンギン・コロニー』プレイレポ_001

古の存在を求めて南極の奥地を目指すナチスの科学者たちと、それを封じるために向かった守護者カイティアキ。ペンギンは、この人間たちが狂気に堕ちていく姿を、ただ見届けることになる。

ナレーションを務めるのは、『ディスコ エリジウム』のナレーターとして知られるLenval Brown氏。開発はIGF 2021で大賞を受賞した『ウムランギ ジェネレーション』のORIGAME DIGITAL、パブリッシャーは『1000xRESIST』のFellow Travellerだ。

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プレイ前は「なぜペンギン? かわいさで怖さが和らぐのか、それともギャップで怖くなるのか?」と気になっていた。

実際に感じたのはどちらでもなく、狂っていく人間と平常運転のペンギンがかみ合わない「温度差」だった。

文/花山みみか
編集/kawasaki

30分、南極を滑り回っても誰にも会わない

ゲームを始めて最初に目にするのは、広大な南極大陸だ。プレイヤーはペンギンとして、南極大陸を走り回ることになる。

ペンギンはよちよち歩きするだけでなく、大地を「滑る」こともできる。一般的なゲームのダッシュにあたるのが「滑る」で、よちよち歩きも滑走も意外と速く快適だ。

操作できるペンギンは一羽ではなく、複数のペンギンを切り替えながら進む。種類によって特徴が違い、鳴き声も変わる。
ジャンプすると「ぷに」と鳴く。かわいい。

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そうして南極を滑走していると、かつてこの地を訪れた男の独白が少しずつ読み上げられていく。

聞こえてくるのは、これから何かが起こりそうな人間たちの物語。一方、目の前に広がっているのは、変わらずのどかなペンギンと雪景色だ。

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南極は広く、ときどき道に迷う。ただ「迷ったら吹雪の方向へ進め」という誘導があり、これに従えば先へ進める。「この先で何か起こるんだろうな」と身構えながら、吹雪に向かって滑り続けること約30分。

それでも人にも怪物にも出会わない。
今のところ、まったく怖くない。

人が死んでいるのに、ペンギンはそっぽを向いていた

しばらく滑り続けて、ようやく人に出くわした。
しかし、その人は目の前で急にのたうち回って死んでしまった。

不穏な音が響き、さっきまでののどかな雰囲気が一変する。ついに狂気の物語が始まった……はずなのに、肝心の自分(ペンギン)はそっぽを向いていて、人間が死ぬ瞬間をちゃんと見ていなかった。

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その後も人々の狂気は目に見える形で現れる。
柱に延々と頭を打ちつけたり、高所から飛び降りたり……人間たちは明らかにおかしくなっていく。

ところが、そんな人間たちのすぐそばを歩くペンギンは平常運転だ。

人間が狂っていようが、目の前で死んでいようが、ペンギンには何もできない。
そして人間も、そんなペンギンを意に介さない。
凄惨な出来事が起きているはずなのに、その横にはいつも通りのペンギンがいる。

怖いというより、なんだかシュールだ。これが、プレイ前には想像していなかった温度差だった。

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巨大な何かが暴れた直後、「なぜペンギンなのか」が分かった

かわいいペンギンが主人公ではあるものの、物語にはクトゥルフ神話らしい存在もしっかり登場する。

たとえばショゴスだ。最初に見つけたときは近づくとダメージを受ける程度で、「ステージギミックみたいだな」と思っていた。

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ところが先へ進むと、今度は巨大な存在が現れて大暴れ。先ほどまでの印象との違いに大仰天してしまった。
そして、その直後に現れたのが、自分よりもはるかに巨大なペンギンらしき存在だった。

「ちゃんとペンギンに意味があったんだ!」

ここまで狂気の物語を横目に歩いてきただけのペンギンが、ここにきて物語そのものに関わってきたのだ。

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プレイ前から「なぜペンギンなのだろう」と疑問に思っていたので、プレイ後に原作小説『狂気の山脈にて』を確認してみた。

すると、物語の終盤にはペンギンが登場する。ショゴスだけではない。ペンギンまで、ちゃんと原作に由来していた。

一見すると「クトゥルフ×かわいいペンギン」という大胆なアレンジに見えるが、このペンギン、ただかわいいから選ばれたわけではなかったのだ。

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(画像は 新潮社 『狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―』より)

「怖いというよりシュール」と油断していたら、普通にビビらされた

序盤こそ「まったく怖くない」と思っていたが、終盤になるにつれてゲームの様子も変わってくる。

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淡々と続いていた男の語りは熱を帯び、未来の地球や、人間という存在について語り始める。
さらには挿入歌まで流れ始めた。

加えて、プレイ中の画面に謎の画像が差し込まれるようになる。何かを暗示しているのだろうか。
正直、何を意味しているのかは分からない。ただ、それまでの南極探索とは明らかに空気が違う。

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そして、しまいには大音量とともにジャンプスケア。
「やめてよ!!」と思わず叫んでしまった。

人間が狂っていく横をペンギンで歩いているときには「怖いというよりシュールだ」なんて思っていたのに、最後には普通に驚かされている。ローポリのビジュアルでも、音と演出は容赦なかった。

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全部は分からない。だから誰かに話したくなる

本作のプレイ前、筆者は『狂気の山脈にて』を読んだことがなかったので、ストーリーについていけるか不安だった。
実際のところ、原作未読でも大筋は追えたが、独白とアクションが交互に来るので「何の話だっけ?」となる場面もあった。灰色のペンギンの謎も残った。

正直、最後まで理解できなかったこともある。
だが、クリア後に表示された制作者からのメッセージを読んで、その「わからなさ」に対する印象が少し変わったのだ。

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そこでは「SNS以前の、秘密を探して物語を語り合っていた精神を再現したい」「発見したものを友人やフォーラムで共有・解釈してほしい」という制作者の思いが語られていた。

考えてみれば、ペンギンには人間の狂気が最初から理解できない。目の前で人が死んでも、そっぽを向いているくらいだ。プレイヤーもまた、全部は理解できないままエンディングを迎える。

その「分からなさ」は欠点ではなく、ペンギンの目を通してこの物語を見た以上、ある意味当然の結末なのだと思う。

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だからこそ、「あそこはどういう意味だったんだろう?」と誰かに話したくなる。

ぜひあなたも、かわいいペンギンの目を借りて、理解できない狂気を少しだけ覗いてみてほしい。そして、分からなかったことは、SNSや知人との会話でそのまま話題にしてみてほしい。
その時間まで含めて、本作の遊び方なのだろう。

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『ペンギン・コロニー』はPC(Steam)にて10月17日に発売される。PS5版とSwitch 2版も2027年に発売予定だ。

ライター
『RimWorld』ではゾウさん帝国を築き、敵をゾウの群れで蹂躙していました。最近はTRPG『ダブルクロス The 3rd Edition』にハマり、元気に必殺技を叫んでいます。思い出のゲームは『リトルビッグプラネット』。

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