カンフーアクションゲーム『Sifu』を作ったスタジオの新作が、5対5のマルチサッカーゲームだと聞いたとき、筆者は思わずチャウ・シンチー監督のアクション映画『少林サッカー』を思い出していた。
そのルールが“反則なし”の、ボディでボールを取りに行くことが推奨される超攻撃的かつスピーディなゲーム性であれば、なおのことだ。そんな本作のタイトルは『REMATCH』。
シングルからマルチへ。カンフーからサッカーへ。実に大きな転換だ。一体、どういった経緯で『REMATCH』の制作が決まったのだろうか? どうにも疑問を抑えられなくなった筆者は、思い切って開発チームへ直接聞いてみることにした。
回答してくれたのは、本作のクリエイティブディレクター・Pierre Tarno氏。Tarno氏によれば、一見かけ離れて見える『Sifu』と『REMATCH』には、「身体性」という共通の大きなテーマが宿っている。その上で、「仲間との連携や協力」という新たな魅力を追求したのが、『REMATCH』だと言うのだ。
そんな『REMATCH』は2025年6月にリリースされ、リリースからわずか1か月でユーザー数が500万を突破する人気作となった。現在開催中のシーズン5では、日本の人気サッカーマンガ『ブルーロック』とのコラボが実施されていることでも話題だ。
「協力」を追求する本作と、「エゴ」の強さを打ち出す『ブルーロック』。一見すると相反するようにすら見えるこのコラボはどのように決まったのか? ほかのサッカー作品とのコラボの可能性は? など、ゲームの開発の経緯から、今後の展望まで、さまざまな観点から質問をさせていただいた。ぜひ最後までお読みいただきたい。
聞き手・文/うきゅう
〇インタビュイープロフィール
『REMATCH』クリエイティブディレクター、Pierre Tarno氏。
※この記事は『REMATCH』の魅力をもっと知ってもらいたいSloclapさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
『Sifu』を作ったSloclapの新作は、5対5のマルチサッカーゲーム!? 一見まったくちがう両作の共通点は、“身体性”の表現にあった
──Sloclapと言えば、やられるたびに年を取っていく異色のアクションゲーム『Sifu』で知られています。そんな『Sifu』に続く次なるプロジェクトとして、サッカーゲームを作ろうと考えた理由を教えてください。
Tarno氏:
Sloclapはこれまで、『Absolver』、『Sifu』、そして本作『REMATCH』を制作してきました。これら3作品には、実は明確な「共通点」があります。それは、いずれも身体の動き、精密でレスポンスの良い操作感、アニメーション、タイミング、そして「身体性」を重視したゲームだということです。異なるのは、それらを活かす舞台や状況です。


『Sifu』の開発を終えた時点で、次も三人称視点のアクションゲームを作りたいと考えていました。ただ、今回は特にマルチプレイやチームプレイに強い関心がありました。
そこで魅力を感じたのがサッカーです。サッカーなら、キャラクターの動きやプレイヤー同士の連携を、これまでとはまったく異なる形で追求できると考えました。2人の戦闘アクションを組み立てるのとは違います。複数のプレイヤーが絶えずポジションを取り、互いの動きを予測しながら、協力してひとつのプレーを生み出していくのです。
開発のごく初期から、私たちが繰り返し思い描いていたのが、「ボレーシュート」の場面でした。複数のプレイヤーが完璧に連携し、ボールを一度も地面に落とすことなく、最後のシュートまでつなげる。そうしたプレーには、非常に美しいものがあります。
だから私たちは、プレイヤー同士の連携によって生まれる、あの感覚をゲームの中で再現したいと考えたのです。
──「三人称視点のアクションゲーム」、「マルチプレイやチームプレイ」というお話がありましたが、それらを満たせるゲームであれば『REMATCH』がサッカー以外のジャンルをテーマにする可能性もありましたか? それとも、企画の初期からサッカーが念頭に置かれていたのでしょうか?
Tarno氏:
サッカーというテーマは、最初から決まっていました。私たちは「チームプレイ」を軸とした三人称視点のマルチプレイアクションゲームを作りたいと考えていました。サッカーはルールがシンプルで理解しやすい一方、戦術的には非常に奥が深い。だから、ゲームを作るうえで実に魅力的な土台になると感じたのです。
開発のかなり早い段階で、私たちは「3つの柱」を定めました。
ひとつ目は、「自分が優れた選手になったような感覚」。プレイヤー自身が素晴らしいプレーを決められることです。ふたつ目は、「チームの一員であるという実感」。個人ではなく、チーム全体の連携によって勝利をつかむことです。そして3つ目は、「試合の緊張感」。白熱した競争の中で、本物のサッカーの試合さながらのプレッシャーを感じられることです。

また、「視点」のあり方も非常に重要でした。一般的なサッカーゲームの多くは、ピッチを俯瞰する視点からチーム全体を操作します。しかし『REMATCH』では、プレイヤー自身が試合の中に入り込む体験を実現したいと考えました。
プレイヤーが操作するのは、チーム全体ではなく一人の選手です。その選手の視点から試合を見渡し、自分でポジションを取り、次の展開を予測する。そして仲間とコミュニケーションを取りながら、互いを信頼してプレーする必要があります。
つまり、サッカーを外側からシミュレーションするのではありません。実際にサッカー選手としてピッチに立つことが、どのような感覚なのか。私たちは、その体験をゲームの中で再現したかったのです。
──本作はフットサルに近い少人数のサッカーで、「反則」や「ボールの場外」によるプレーの中断が発生しません。こうしたスピーディで切れ目のないゲームデザインを選んだのはなぜでしょうか。
Tarno氏:
私たちにとって、「プレーの流れを途切れさせないこと」は非常に重要でした。サッカーには、美しい展開があります。ボールの保持が相手チームに移り、選手たちがポジションを取り直し、攻撃が一転してカウンターとなり、全員が一斉に逆方向へ動き出す。私たちは、そうしたサッカーならではの「リズム」をできる限り保ちたいと考えました。
開発中には、オフサイドなど、従来のサッカーに近いルールも試しました。しかし、そうしたルールの中には、かえって本作の戦術的な可能性を狭めてしまうものもありました。例えば、オフサイドを導入した場合、選手がピッチの特定のエリアに集まりやすくなります。その結果、ポジショニングや戦術の多様性が制限される傾向があったのです。
ピッチを壁で囲み、プレーが中断しない仕組みにする。これによって、試合の流れを途切れさせずに続けられるようになりました。ただし、それはルールが存在しないという意味ではありません。私たちは独自のゲームバランスを作り上げる必要がありました。

その中でも特に重要な原則のひとつが、「ボールを保持している選手は、守備側からのプレッシャーにさらされる」ということです。
守備側にはボール保持者にプレッシャーをかける手段が用意されています。だから、一人の選手がずっとボールを持ち続けることは、多くの場合、最善の選択ではありません。こうした仕組みによって、自然とパスやチームプレイが促されるようになっています。
つまり、私たちが目指したのは、サッカーのあらゆるルールをそのまま再現することではありません。選手の動き、ポジショニング、先を読む判断、プレッシャー、そしてチームとしての連携。私たちが考える「サッカーの本質」を、ゲームの中で表現することを大切にしたのです。
『REMATCH』は「人間版『ロケットリーグ』ではない」。これまで培ってきたアクションゲームの知見と、“実際にピッチ上の選手になったような感覚”の融合がもたらす、新たなるサッカー体験
──『FIFA』(現『EA SPORTS FC』)や『ウイニングイレブン』(現『eFootball』)、『イナズマイレブン』、変わり種では『ロケットリーグ』など、世界的に人気のサッカーゲームは数多くあります。そうした既存作品に対して、どのような差別化を意識しましたか?
Tarno氏:
私たちは、『EA SPORTS FC』や『eFootball』に代わるゲームを作ろうとしていたわけではありません。これらの作品は、それぞれが目指すゲーム体験を非常に高い水準で実現しています。一方で、私たちはそれとは異なる体験を追求したいと考えていました。
最大の違いは、「三人称視点で一人の選手だけを操作する」という点です。これによって、ゲーム体験のほぼすべてが変わってきます。ボールが自分の近くにないときでも、プレーは続いています。
ピッチ全体の状況を読み、スペースを作り、味方のカバーに入り、次にボールがどこへ向かうのかを予測する。そして、いざ自分のもとにボールが届くと、プレーの緊張感は一気に高まります。
『ロケットリーグ』との比較は、発表後すぐに多く寄せられましたし、その理由もよく理解できます。直感的に楽しめる、プレイヤーのスキルが重要となるマルチプレイゲームであり、チームの連携によって素晴らしい瞬間が生まれる。そういう共通点があります。
しかし、『REMATCH』は、私たちがこれまで培ってきた三人称視点のアクションゲーム開発の経験と、実際にサッカー選手になったような体験を作りたいという思いから生まれた作品です。
ですから、私たちは本作を「人間版『ロケットリーグ』」とは考えていません。私たちが追求していたのは、まったく別の問いです。それは、「ピッチを上から見下ろしてチームを操作するのではなく、一人の選手として試合の中に入り込んだとき、サッカーゲームはどのような体験になるのか?」ということでした。
──本作の操作キャラクターには、見た目の違いはあっても性能差がありません。発表時にも話題を呼んだこの仕様について、あらためて理由と狙いを教えてください。
Tarno氏:
『REMATCH』にとって、「公平性」は非常に重要な要素です。
ピッチに立つすべてのプレイヤーは、同じ能力を持っています。足の速いキャラクターや、フィジカルの強いキャラクター、シュート能力に優れたキャラクターがいるわけではありません。ちがいを生むのは、その能力をどう活かすかという点です。プレイヤー自身の操作技術、ポジショニング、状況判断、チームメイトへの理解、そして試合の流れを読む力が重要になります。
また、この仕組みは『REMATCH』のもうひとつの重要な特徴である、「役割の柔軟性」にもつながっています。本作では、ストライカーやディフェンダーといった役割が固定されているわけではありません。ある瞬間には攻撃に参加していても、数秒後には自陣のゴールを守っているかもしれません。ゴールキーパーの役割でさえ、試合中に入れ替わることがあります。
私たちは、プレイヤーに選んだキャラクターの能力値ではなく、自分自身のプレイスタイルを通じて、「個性」を確立してほしいと考えています。
こうした考え方は、シーズン5にて実施中の『ブルーロック』コラボのキャラクターが「見た目のみの変更」となっている理由にもつながっています。

潔世一や糸師凛の姿でプレイしたからといって、ゲーム上で有利になることはありません。それぞれのキャラクターの個性やプレイスタイルに共感し、その姿でプレイを楽しむことはできます。でも、最終的にピッチ上での結果を決めるのは、あくまでプレイヤー自身の実力なのです。

