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私、「ゲームに与える賞」って好きじゃないんですね。そう思う桜井政博は、なぜ「ゲームデザイナーズ大賞」を16年続けたのか──そして桜井さんの考える「ゲームに与える賞」の価値とは

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「ゲームデザイナーズ大賞」。

それは、名だたるゲームクリエイターが審査員となり、プロの視点でゲームの「独創性」や「斬新性」を評価する賞。2010年から16年にわたり、ほかの賞とは異なる独自の評価軸で、「独創性」にあふれた、数々のタイトルを表彰してきた。

また、その審査員長を『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』でおなじみの桜井政博氏が務め、そのほかの審査員には『ICO』や『ワンダと巨像』の上田文人氏、『UNDERTALE』のトビー・フォックス氏、『ダークソウル』の宮崎英高氏……などなどが参加していたりと、毎年すさまじいメンバーで審査が行われていた。

そんな背景を含め、「ゲームデザイナーズ大賞」で選ばれるタイトルを楽しみにしていたユーザーも多いのではないだろうか。しかし、そんな「ゲームデザイナーズ大賞」は、2026年をもって終了となった。

この「ゲームデザイナーズ大賞」終了時の、桜井さんの「ゲームの独創性」に関するスピーチが記憶に新しい方も、多いかもしれない。「独創性みたいなものを失った業界というのはゆっくりと死んでいくだけ」と語られたスピーチは、ゲーム業界内外で、大きな話題を呼んだ。

そこで、電ファミニコゲーマーでは、改めて桜井さんに「ゲームデザイナーズ大賞を終えられて、どんな心境か」をお聞きするインタビューを実施した……のだが、そこで語られたのは、桜井さん自身の「ゲームに与える賞」に対する、率直なお気持ちだった。

私、「ゲームに与える賞」って好きじゃないんですね。

そう感じながらも、どうして桜井さんは「ゲームデザイナーズ大賞」を16年続けていたのか。この賞にはどんな意義があり、どういった価値があったのか。

そして、まさに「独創性」との戦いだったという、桜井さんのゲーム制作人生にも触れつつ、16年にわたる「ゲームデザイナーズ大賞」の思い出や舞台裏について、いろいろと語っていただいた。

ちなみに、「ゲームデザイナーズ大賞」をよく知らない方も、まさにこれから桜井さんが直接この賞について説明してくれるので……ぜひ、最後まで読んでいただきたい!

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_001

聞き手/豊田恵吾
文/ジスロマ
写真/永山 亘


そもそも、なぜ「ゲームデザイナーズ大賞」は存在していたのか?桜井さんが語る、「この賞の目的」とは

──さっそくではありますが、16年間の「ゲームデザイナーズ大賞」の主催、本当にお疲れ様でした。

桜井氏:
いやあ、疲れましたね!

──(笑)。最後の授賞式から少しあいだが空きましたが、16年間を振り返ってみて、改めていかがでしょうか。

桜井氏:
その前に、この記事を読む人のなかには、そもそも「ゲームデザイナーズ大賞」とはなんなのかがわからない方もいるかもしれません。なので、ここでいったん「ゲームデザイナーズ大賞」について、改めて説明をしたほうがいいんじゃないですかね?

──これは失礼しました。ぜひ、よろしくお願いします。

桜井氏:
そうですよね。
まず、「日本ゲーム大賞」【※】というものがあります。

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_002
※「日本ゲーム大賞」
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が開催している、その年に日本国内でリリースされた、優れたコンピュータゲーム作品を表彰する賞。「ゲームデザイナーズ大賞」は、この日本ゲーム大賞の「年間作品部門」内に設立された賞となっていた。

桜井氏:
そこで、優秀賞や大賞に選ばれるもののいちばんの根拠は、やっぱりユーザーからの「人気票」です。

しかも、その票は「票の中身」というよりは、「票の数」ということになります。当然、多く遊ばれているものが有利だったり、あるいは積極的にロビー活動を行ったソフトが有利だったりはする。

だけど、「それでいいのか」と思っておりました。

──と言いますと?

桜井氏:
つまり、実際のゲームの中身について、もっとスポットを当てられる賞はないものかと。

スピーチでも話をしましたけれども、とくに「独創性」というものは、ゲームの売上などにとって、あんまり優先度が高いものではない。けれど、重要なことなんですよね。

※ここで改めて、桜井さんの最後のスピーチを一部抜粋する。
まだご覧になっていないかたは、ぜひこちらを。

いろいろな価値があった賞だと思います。独創性をテーマにして賞を与えることができるというのは、どうしても人気票になりがちなゲーム大賞において、別の評価軸を与えることができたんではないかと思っています。

ただ大変残酷なことを言いますけれども、独創性ってあんまり売上に影響がないんですね。もう優先度としては下のほうだと思っています。みなさんもそうですよね。

たとえば、コンビニの飲み物とかを片っ端から新製品が出たら試してみようっていう人はあんまいないはずです。慣れれば慣れるほど定番に近づくというか……好みの、期待通りの味であるということを望まれるもんだと思います。

ですが、こういう独創性みたいなものを失った業界というのはやっぱりゆっくりと死んでいくだけなんですね。いままでも新しい発明があり、 新しい喜びがあり、そういうのを開拓した人がいるから、いまの業界が成り立っているものだと思います。

ゲームデザイナーズ大賞はここでいったん幕引きとなりますが、新しさや独創性、 その作品にしかないものに目を向けていただければ幸いです。いままでどうもありがとうございました。

桜井氏:
そして、「その独創性を表彰する、もうひとつの大賞をつくることができないか」というのが、「ゲームデザイナーズ大賞」の第一の目的です。

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_003

桜井氏:
その進行について、改めてまとめをしますと、まず「いままでに独創性の高いゲームを作ったことのあるディレクター」であることを、審査員の条件にしています。これはプロデューサーではなくて、ディレクターです。

やっぱり、それぞれのゲームを正しく自分の頭で考えて、人と違うことをやろうとする……実際に“した”人たちが評価をするということが、大事だと思いまして。

──やはり、そこにも明確な条件があったんですね。

桜井氏:
「誰が言うか」は大事だと思うんですよね。
自分ひとりで言ったとしても、それは「桜井賞」になってしまうだけで、なんとも言えない。また、ゲームをまったく知らない人が集まってやり始めると、これまた結果的に「人気票」になってしまう。

だから、ちゃんとゲームを作って、独創性に対する苦難を理解して、いろいろな見極めみたいなものもできうる人がやる。そこに価値があるわけですね。

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2026年のゲームデザイナーズ大賞の審査員。そうそうたる顔ぶれ。

桜井氏:
その審査方法は、まず第一次審査で10点を振り分けてもらいます。

審査対象になるソフトには対象期間があるんですが、その期間はやや曖昧です。たとえば、「PCでは一昨年に出ていたけれど、コンシューマーでは今年出た」というタイトルも対象になるので、比較的その範囲は広めです。

──かなり広い範囲のタイトルが対象となっていたんですね。

桜井氏:
実際、「アーリーアクセスのタイトルも入れていいのかどうか」と、議論になったことはあるんですけどね。『Viewfinder』【※】とかはそういう感じだったかな?

結論として、それが体験版やアーリーアクセスのようなものでも、とりあえずなんでも入れていいということにはしています。

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※「Viewfinder」
2023年にリリースされた、パズルゲーム。「写真の内容を現実に投影する」という独自のアクションで、さまざまなパズルを解き明かしていく。2024年のゲームデザイナーズ大賞にて、大賞を受賞。(画像はSteam:Viewfinderより)

桜井氏:
審査員には、手持ちの10点を好きなように振り分けていただきます。ひとつのタイトルに10点を極振りするのも、複数のタイトルに1~2点ずつ入れたりするのもいいことにしています。

そこで、得点をまとめるんですね。
そして、まとめたうえで上位になったもの……具体的には、「10点を超えた」、「複数人のアピールがあった」という条件双方を満たしたタイトルを並べて公開し、改めてそのなかに1票だけ入れていただくことにしています。

昔は第一次審査の得点のみで、そのまま決めてしまっていたんですが、それだと「知られていないタイトルを評価する」という目的に対して、ちょっとイマイチだったんですね。

第二次審査も最初のころは、「自分の票を変えたい人は変えてください」ということにしていました。ただ近年は、「あがったタイトルのなかから、必ずひとつを決めてください」という風に言っています。

それこそ、最後の大賞となった『文字遊戯』【※】については、審査員も知っている人が少なかったんですね。だから、第一次審査ではちょっと弱くて、第二次審査では圧勝した感じでした。やっぱり、改めて候補を再考するのは大事ですね。

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※「文字遊戯」
2022年に発売された、テキストアドベンチャーゲーム(日本語ローカライズ版は、2025年に発売)。キャラクターや背景がすべて文字だけで構成された世界のなかで、主人公は「文字」を使って世界を救うことになる。2026年のゲームデザイナーズ大賞にて、大賞を受賞。(画像はSteam:文字遊戯(日本語版)より)

桜井氏:
……という感じで、大賞を決めていました。
ちなみに、その第二次審査まで上るタイトルは、通常3~6タイトルくらいが多いですね。

──なるほど。審査対象となるタイトルのリストは、桜井さんが用意されていたんでしょうか?

桜井氏:
いちおう、対象になるタイトルはCESAから配られています。これは、基本的にコンシューマーで発売されたものが列挙されています。

ただし、そこにもこだわらず、Steamなどを含め、製品として世に出ていればなんでもOKにしています。とくに大型タイトルを推そうという賞ではないし、全部を網羅するのも大変なので、そこはわりかしアバウトに行っています。

私、「ゲームに与える賞」って好きじゃないんですね

──審査員のメンバーは、すべて桜井さんが選定して、お声がけをされていたのでしょうか?

桜井氏:
基本、そうですね。

任天堂の方が参加されたことがありましたが、そのときだけは任天堂そのものに話をして、「誰か審査員をお願いできないか」と伝えていました【※】。それ以外は、もう個人対個人ですね。

【※】過去のゲームデザイナーズ大賞では、任天堂から高橋龍太郎氏、河本浩一氏が審査員として参加していたこともあった。

──審査員は毎年何名もいらっしゃいますし、それを取りまとめるのはすさまじい労力だと思うんです。しかも、みなさんが一流のクリエイターですから、審査の過程で意見が割れることなどもありそうな……。

桜井氏:
いや、意見は一切やりとりしないようにしてもらっています。

──えっ、そうだったんですか?

桜井氏:
そもそも、「審査員どうしの打ち合わせは禁止」ということにして、それぞれにまったく関わらないままで審査をしていました。そうしないと、アンフェアですよね。

たとえば、飲み会などで複数人が集まったときに、「今年はこれがいいよね!」なんて始めてしまったら、そのタイトルに集中してしまう。だから基本的に、「ゲームデザイナーズ大賞の中身については、それぞれ一切お話をしないでください」ということをルールにしていました。

──そこも徹底されていたんですね。

──第一回から皆勤で審査員を務められたのは、飯田和敏さん、イシイジロウさん、神谷英樹さんでした。このお三方は、とくに協力的だった形なのでしょうか?

桜井氏:
もちろん、いま参加されているかたは、みんな協力してくださるから残っているんですけどね!

たとえば、最初にお声がけをして、つぎに「来年もどうですか」とお話をすると、辞退される人が出てくるんですよね。それには、いろんな理由があります。「仕事が忙しい」とか、「評価できるほどいろんなゲームを遊んでいない」とか、「なんとなく窮屈で」……とか。

ゲームデザイナーズ大賞には、審査員がいっぱいいるわけじゃないですか。そのなかで、「自分が浮いているのではないか」という風に思う人もいるんですよね。

──それは「ほかのメンバーがすごすぎる」といったことなのでしょうか?

桜井氏:
「自分はふさわしくない」と。
その方の自己的な評価にすぎないから、それが正しいかどうかというのは置いておきますが。

ただ、「審査員を何年も続ける」って、本当に難しいことだと思うんですよね。だから、「ふつうは脱落するもの」ということを第一前提にしていいんだと思います。

そこまで、いろいろなことがあっても続けてくださった彼らには感謝していますし、途中でやめたからといって「根性がない」とか、そういうことでは決してありません。

──審査員には、宮崎(英高)さんや上田(文人)さんを含め、「参加いただくのは難しいだろうな」といった方々もいらっしゃいました。

桜井氏:
そうなんですよね。

でも、そこは「鈍感力」を発揮すると言いますか。
「あぁどうしよう……受けてくれなさそうだなぁ~……」なんて遠慮していたら、こんな賞やってらんないですからね(笑)。

もう、「お声がけをして、ダメだったらしょうがない!」くらいの気持ちでした。

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全16回のなかで、本当に数多くのゲームクリエイターが審査員として参加していた。(画像は日本ゲーム大賞2025「経済産業大臣賞・年間作品部門」発表授賞式 – YouTubeより)

──第1回実施にあたり、いちばん最初にお声がけをするときは、「ゲームデザイナーズ大賞」がどんな賞なのかもわからない状態だったわけで、審査員を集めるのは難しかったのでは……。

桜井氏:
いちばん最初はもうかなり前のことなので、そんなには覚えていないですね。だけど、無事に軌道に乗ったのは「同じようなことを考えていた人は多かった」という証でもあると思います。「ふつうのゲーム大賞じゃないものがあってもいいよね」と。

例年、同じようなビッグタイトルが受賞してしまったり、どうしても「売れたもの」になってしまったり。「ゲーム作りってそうじゃないんだけどな」とは思っていました。

ちなみにですね、こういうのもなんですけど……私、「ゲームに与える賞」って好きじゃないんですね。

──桜井さんご自身としては、そうなんですね。

桜井氏:
ある意味、よくないと思います。
これは自分にも言うべきことなんですけど、「何様のつもりだよ」って思いませんかね(笑)。

──それは……わかります(笑)。

桜井氏:
これは、私としては「多様性」を信じていて……「多様性」と言っても、変な意味ではなく。

いろんな人にさまざまな好みがあって、そこに向かって目指したソフトがある。つまり、いろいろなもののおもしろさというのは、幅広く広がっていくものだと思っているんですよね。

だけど、それを無理やり、なんらかの基準でいちばんにしてしまう。ゲームにおいていちばんを決めてしまう、優劣をつけるというのは、とてもよくないと思っています。だから、ゲーム大賞などには、反対する気持ちもあるんですよね。

ただ、それでもゲームデザイナーズ大賞を続けていたのは、純粋に「その作品に関わった人々が喜ぶから」です。

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桜井氏:
単純に、「売りました、ファンがつきました、おしまい!」というだけで終わってしまうよりも、なんらかの目に見えるものが毎年残っていくということは、たしかにそれはそれで価値のあることですよね。

だから、「何様のつもりだ」と言われりゃ、「本当にそうですね」と思うばかりなんですけれども……作り手や遊び手に対する一定の価値はあると思っています。

──大規模タイトルのすばらしさも加味したうえで、小規模なタイトルにも目を向けて、同じ「ビデオゲーム」という括りで貴賤なく選んでいるのが、ゲームデザイナーズ大賞のいいところだと感じていました。

桜井氏:
そうですね。

ゲームデザイナーズ大賞は、「(そのゲームを)多くの人が知っている」ということを前提にはしていないんですよね。審査員が知ってることだけ。知らなかったことは、しょうがないと思っています。

だからこそ、第二次審査がとても重要ですね。
「知らなかったものに目を向けて、改めて評価をする」ということは、必要なんじゃないかなと思っています。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda
ライター
ライターとか、いろいろやってます。 名前の表記ブレは気にしないでください。
Twitter:@yomooog

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