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私、「ゲームに与える賞」って好きじゃないんですね(桜井氏)。桜井政博が語る、「ゲームデザイナーズ大賞」を16年続けた理由──そして桜井さんの考える、「ゲームに与える賞」の価値とは

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桜井さんのゲーム制作人生が、「独創性」との戦いだった

──まさに『スマブラ』の1作目も、ユーザーがそのおもしろさに気づくまで、少し時間がかかったと思うんです。それが、徐々におもしろさが広まっていったと言いますか……

桜井氏:
まあ……そうですね!

──そうした桜井さん自身の経験も含め、「おもしろいのに日の目を浴びていない作品にスポットを当てたい」というお気持ちが根底にあったのでしょうか。

桜井氏:
何度かお話をしているのですが、「独創性」というものは、ゲームの売れる・売れないに関してはすごく優先度が低い……でも自分は、なんらかの「斬新性」や「独創性」のようなものを入れようとするんですよね。もし同じものなら、そのオリジナルを遊ぶのがいちばんいいですから。

たとえば、『星のカービィ』も横スクロールアクションではありますけど、もし『スーパーマリオブラザーズ』と同じルールだったら、もちろん「じゃあ『スーパーマリオ』を遊べばいいよね」ということにはなりますし。だから、なんらかの形で変えないと意味がないと思っているんですよね。

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_011
(画像は初代『星のカービィ』開発秘話 【雑談】 – YouTubeより)

桜井氏:
ただ、ここがまた、すごく難しいところというか……自分が昔から至らないところで(笑)。

──それはどういったことなんでしょう?

桜井氏:
少し変えると、ユーザーが「なんか違う」って思うんですよ。

これもまた壇上で話をしたことですが、ユーザーは「期待通りのものが、期待通りのものである」ことに期待する。そして、物を買う。『マリオ』は『マリオ』なりに、「マリオのおもしろさ」があることを期待する。

でも、そのうえで変えていくのが、いわゆる「奇をてらっていく」ということになってしまったりもする。これは、食べ物に期待した味が「なんか違った」というのと、比較的近いと思うんですよね。そこに独自のおいしさがあっても、それに気がつく前に嫌悪感が先に来てしまう。

だからといって、もしも独創性や新しいシステムなりをまったく用意しないで作るのは、それこそ本当に「オリジナルのほうを楽しめばいい」ということになります。

たとえば、『スマブラ』がふつうの格闘ゲームのルールを適用としていたとしたら。1on1で、ガードと攻撃と必殺技があり、体力制でただKOして終わり……というものだったら。そもそも最初の『スマブラ』は発売されていないと思うんですよね。

仮に発売されていたとしても、基本的には「イロモノ」として扱われて、そこで『スマブラ』の歴史は終わっていたことでしょう。

桜井氏:
自分としては、『スマブラ』は「蓄積ダメージ」や位置取り等々に楽しみがあり、こういう独創的な遊びやかけひきがあるから、確信してこのように作った……というものでした。しかしやっぱり当時は「『ストリートファイターⅡ』や『バーチャファイター』と違う」と、その違いに馴染めない人が批判するわけですよね。

だけど、そうやって「意図して独創性を加える」ことって、とても難しいことじゃないですか。前例がなければスタッフに説明するのもたいへんですし、どのように狙って先に進んでいくかを考えるのは、もっと大事で……難しい。

そういう苦難を乗り越えて作ったけど、「なんか違う」で終わってしまうのは、まぁまぁ自分の作品のなかではあるんですよね。

『メテオス』とか、『新・光神話 パルテナの鏡』とか、『カービィのエアライド』および『エアライダー』とか……みんなそうです。

──いちユーザーとしては、どれも完成度の高いゲームだとは思うのですが……

桜井氏:
たとえば、「なんでこの『エアライド』って、ボタンを押すと止まるの?」という疑問は、まず「プッシュする」というアクションがあって、それによるドリフトをしたりとか、そういう狙いがある……それは、ゲームを理解した方ならわかる。だけど、そこに至る前に「なんか違う」と弾かれてしまう。

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_012
(画像はカービィのエアライダー Direct 2025.8.19 – YouTubeより)

桜井氏:
独創性って、本当にたいへんなんですよね。
思ったよりもたいへんです。本当に。

それは、ものすごく大きな「氷の壁」と言いますか……なかなか越えられないものがある。だけど、「新しい楽しみを、ちゃんと計算して作り出す」ことが、とても大事ですよね。

とくに、最近はゲームが複雑になったこと……どちらかというとボリュームの問題で、操作系統などはだいたいいっしょですよね。「何ボタンで銃を撃って、何ボタンで弱攻撃、強攻撃があって……」というようなものが、みんなルールとして、しっかりと決まっている。

そこを変えられるものはないのか。そこを変えちゃいけないのか。「奇をてらう」のではなく、そこにある「おもしろさ」のようなものをわかったうえで、新しい遊びを作れないのか。それについては、やっぱり自分のゲーム制作人生のなかで、けっこう大きなウェイトを占めていたところなんですよね。

──「独創性のあるゲームをつくる」こと自体が、桜井さんのゲームづくりでは大きな軸となっていたんですね。

桜井氏:
結局のところ、自分がいまこうやってゲームデザイナーズ大賞の審査委員長をやったり、そのほかの活動ができていたり、そもそもゲームが売れていたり……というのは、とりあえず「それを理解してくれた方々が、ある程度は多かった」ということだと思うんですよね。

でも一方で、『エアライダー』を「エセマリオカート」という風に思っている人も、いまだにいて(笑)。『マリオカート』だと思って遊ぶと、もうぜんぜん違う。嫌悪感すら生まれてくる人もいるでしょう。そういうところは、ずっと難しいなと思っています。

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そんな『カービィのエアライダー』は、2026年の日本ゲーム大賞にて、「優秀賞」を受賞している。

ゲームに「独創性」を持たせることは、なぜ難しいのか? どんな壁を乗り越えなければいけないのか?

──「ゲームに独創性を持たせる」ということは、桜井さんにとっても難しくて、壁を感じることなんだ……と、ちょっと衝撃を受けています。「独創性」を生み出すのは、どんなところが難しいのでしょう?

桜井氏:
えぇ~?
そこから~?

──でも……ちょっとお聞きしてみたいです!

桜井氏:
いろんな段階がありますけど……制作段階からの話をすると、まず「思いつくかどうか」が大事ですよね。

たとえば、「なにかのゲームを改良しよう」という考えで広げることはできるかもしれない。けど、なんの取っかかりもないようなルールやシステムを、誰がどのように考えるのか。それだけで、ハードルが高くなります。

そして、それをまずスタッフに理解してもらわないといけないですよね。「こういう遊びがあるから、これは楽しいんだ」ということを伝えるのが、また難しい。

同じように、ゲームの販売元として、デベロッパーとして、全体的に「このゲームはどういうところがウリで、ここがおもしろいから売るべきなんだ」ということを伝えるのも難しい。

また最終的には、それをユーザーに感じられるようにするのが難しい。

たとえば、「スマブラ拳!!」のようなWebサイトを作ったり、番組をやったりとか、いろいろなことで伝える努力はしているわけですが、これはもう……「伝えること」というのは、誰彼問わず、制作と両輪でたいへんなことで、また大事なことでもあるんですよね。

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桜井氏が開発中の平日は毎日更新していた「スマブラ拳!!(スマブラX版)」のレポート。(画像はスマブラ拳!!より)

桜井氏:
つまり、なにかのアイデアを「自分の頭のなかで完結させる」ということは、いま話していたもののなかでは、最初の一歩にすぎないわけですよね。

なかには「俺が先に考えていたのに!」ということを、なんらかのゲームで言う人もいるのかもしれないけど、「ものにする」ということのハードルの高さから比べると、ぜんぜん下のほうなんですよね。

ひとつの製品を責任を持って作り、そしてそれがスタッフの飯の種になる。スタッフだけではなく、ゲームを売った人や、その流通に関わる人などを含めて、「ちゃんと、みんなの食い扶持にする」ということは、たいへん難しいことかなと思っています。

でも、話をしていて、大変さの説明として当たり前のことすぎて、「うーん、この説明でいいのだろうか」と疑問もあったりするんですけど(笑)。どうなんでしょう?

──いえいえ、参考になるお話でした。実際にアイデアを形にして、ちゃんとみんなに伝わるものにしていくのは、やはり難しいことなんですね。

桜井氏:
もう、いまはおもしろいゲームを作ったら、それでウケたり売れたりするような時代ではないですからね。いや、それはむしろ、昔のほうが顕著だったのかもしれないですけれども。

いま、「◯◯ライク」というような、なにかに似ているゲームって、とても多いですよね。つまり、むしろそれが「みんなに求められる味」だということにはなるわけですが。独創性というのは、その「求められる味」ではないものを作らなければいけない。しかも、計算して。

形にもなっていないものを、形にする。
まぁ……ハードルは高いですよね。

──余談ですが、ゲームデザイナーズ大賞が始まった2010年のSteamの販売タイトル数は約275本だったところ、現在では約1万9000本と、約70倍の本数になっているんです。桜井さんは、こういったタイトル数の増加をどうご覧になられていたのでしょう?

桜井氏:
1万9000本はすごいなと思うのですが、これからはもっと増えると思うんですよね。間違いないと思います。それは、AIで増やしちゃうから。けれど、そのほとんどは「食えないタイトル」になると思いますね。数が多すぎて把握もできないし、理解もできない。

そのAIで作ったもの……もしくは粗製濫造で作られるようなものなどについては、やっぱりいろいろなゲームの、どこかで見たようなシステムをそのまま再現しているものが、ほとんどになると思います。いまも、すでに多いとは思いますけど。

ちょっと前に、それがオリジナルかどうかはわからないんですけど、『Librarian』【※】という作品がありまして。日本語では『司書のお仕事』だったかな?

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※「司書のお仕事:魔導図書館を片付けろ!」
2026年にリリースされた、お片付けシミュレーションゲーム。魔導図書館でバラバラになってしまった無数の本を、プレイヤーが整理整頓していく。(画像はSteam:司書のお仕事:魔導図書館を片付けろ!より)

桜井氏:
魔法が使える世界で、図書館の本がみんなひっくり返っちゃったから、それを戻していく……というようなゲームなんですが、システムとしてはかんたんじゃないですか。だから、案の定フォロワーがいっぱい出たんですよね。

「スーパーマーケットがひっくり返ったから、商品を並べ替えよう」とか、「ネジを戻そう」とか、「干し草の山から一本の針を探そう」とか、そういうタイトルがむちゃくちゃ増えました。パズルゲームの一環でもありますけど。そういう模倣は、AIにはすごくやりやすいはずなんですよね。

だけど、たとえばAIでいろいろな作品が作れたとして、上田(文人)さんが作ってきた作品のようなもの……『ICO』や『ワンダと巨像』の雰囲気を研究して、AIで似たようなことができるというのは、これからもあるかもしれない。

でも、その上田さんが「将来作るもの」というのは、AIには作れないはずなんですよね。将来的にどういう作品性にするのか。それは、やっぱりご本人にしか作れない。そういうところが、人が持ちうる「独創性」なのではないかなと思います。

──AIも、その人の未来までは参照できないですよね。

桜井氏:
基本的に、AIは「いままで作ったもの」を参照するわけですが、「いままでにないもの」は参照できないんですよね。これはAIに限らず、いろいろな作品に対して、似たようなことは言えると思うんですよね。

「先駆者」とまでは言わないけれども、道なき道を行く人……独自の味つけを理解して、作れている人というのが、これからは大事になっていくのだと。とくに、粗製乱造になる時代であれば、なおさらそう思います。

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まさに上田文人氏が制作中の新作、『gen ATLAS(ジェン アトラス)』。(画像はgen ATLASより)

──だからこそ、ゲームデザイナーズ大賞には、その「氷の壁」を破ったことがあるゲームディレクターの方々に審査員として入っていただいているのでしょうか。

桜井氏:
その方々のいろいろな作品を見ていると……例えば「『太陽のしっぽ』【※】ってどうやって考えたの!?」とか思いません?(笑)

──思います(笑)。

桜井氏:
「なぜそれを作ろうとしたの?」と思いますよね。
ほかにも「『ダンガンロンパ』って、すごくない!?」とか(笑)。

そういう企画書の段階から、ある程度の遊びのようなものを考え、それに邁進して、なんとか1本のタイトルを作る……ということは、もっと評価されていいと思っています。

たしかに大型タイトルだって大事で、シリーズを重ねていくことによる意味はあるのだから、もちろんいいのだけれども……やっぱり、「新基軸ができてこない」というのは、文字通りゆっくりと死んでいくわけですよね。

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【※】「太陽のしっぽ」
1996年にアートディンクより発売された、プレイステーション用のゲーム。プレイヤーは原始人を操作し、野生生活を送ることになる。マンモスを狩って手に入れた「像牙」を積み上げ、太陽まで届く塔を作ることが主な目的。ゲームデザイナーズ大賞に審査員として参加している、飯田和敏氏がディレクションを務めている。(画像はARTDINK GAME LOGより)

「なぜやめるのか」ではなく、「なぜ続けられるのか」

──桜井さんがゲームデザイナーズ大賞を立ち上げられたとき、なにかきっかけになった出来事や、タイトルなどがあったりされたのでしょうか?

桜井氏:
そんなにきっかけらしいきっかけはなくて、突然でしたね。
なにか「いまからやろう」と引き込んだわけではないです。

──そうだったんですね。では、当初はこれだけの期間続けることは想定されていなかったのでしょうか。

桜井氏:
もう、先のことは一切考えていませんでしたね。
たまたま続いただけです。
ファミ通のコラムと一緒ですね!

──いや、たまたまで連載はできないですし、あのメンバーをまとめて大賞も決めることもできませんよ(笑)。

桜井氏:
私は……仕事は一生懸命やるんですよ(笑)。

──存じております(笑)。

桜井氏:
なんか、一生懸命やるんですよ。

それこそ、ファミ通のコラムも18年9ヵ月くらい続いたから、比較的ゲームデザイナーズ大賞と近い長さですね。ちなみに、「PRESS START」【※】は10年。「PRESS START」は、もともと「10年やろう」というようなことは決めていました。

桜井政博インタビュー:なぜ桜井さんはゲームデザイナーズ大賞を16年続けたのか──「ゲームに与える賞」の価値とはなんなのか_018
※「PRESS START」
竹本泰蔵氏、桜井政博氏、植松伸夫氏、酒井省吾氏、野島一成氏の5名が主宰を行っていた、ゲーム音楽のコンサート。2006年から開催され、2015年に終了している。詳細が気になる方は、桜井さんのYouTubeチャンネルの「♪ PRESS START [雑談]」をチェック。

桜井氏:
ただ、ゲームデザイナーズ大賞を含め、「なぜやめるの」ということを聞かれるんですが、本来は逆なんですよね。つまり、「なぜ続けられたのか」。

当たり前のようにサービスを享受しがちですが、人が思わないもの、人がやらないことというのは、もうあっさりなくなっていくんですよね。なにか「やろう」という意志があって、それに人が動いているからこそできる。それは、けっこう忘れられているような気がします。

──ちなみに、審査員のなかから「引き継ぐよ」といった声は出てこなかったのでしょうか。

桜井氏:
いや、呼びかけましたよ。
「誰か代わりにやってくんない?」って。

まぁ…………無理でしたね。

──神谷さんなどを含め、手を挙げられそうな方もいるようには感じるのですが。

桜井氏:
神谷さんも、「無理だな~」と言ってました。

もちろん、これまで協力はしてくださっていたわけだから、それぞれに対して労力を割くことはできると思うんですよね。でも、みんなの票を集めたりとか、そのうえで壇上に上がり、うまくプレゼンをし、人が作ったゲームをプレイしてしまうところまでは……まぁ無理でしょうね。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda
ライター
ライターとか、いろいろやってます。 名前の表記ブレは気にしないでください。
Twitter:@yomooog

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