──ふ、ふふ、ふふふ。
見せてもらいましたよ、
あなた方の、
本気の祈祷(プレイ)!約束通り
命かけてのみ込んでみせましょおぅおお
おぼおぁあああばばばべべえべ
べえべああばあ゛あ゛あ゛あ゛
あ゛あ゛あ゛あ゛ ! ! !の
のみ込んだッ!!!
いってきます!!!!!選ばれし異世界の亡霊が、
人として生まれ変わる。
その際に一瞬、
垣間見えたものは──
「鍵の言葉」が書き換わります。
『おまえはいらない』
→ 『我は剣と盾になる』『あなたの想いは醜い』
→ 『想いを刃に切り拓く』
『死ぬから許して』
→ 『許されざる命を生きよ』『理を捨てよ』
→ 『理をもって愛せ』
『私はいらない』
→ 『夜明け前の我が道を行け』
ヘルドラ大陸、北方の雪原。
時刻は、未明。
どうせ報告書には、
デタラメを書くつもりだった。
が、今回は……
D級ギ・クロニクル
『祈祷者(プレイヤー)の護符』による、
A級ギ・クロニクル
『戦乙女の冠』半無力化と、
召喚体複数の受肉事案……、
うん。正直に書いても、
誰も信じねえわこれ。
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「いや、手抜き報告は
すぐバレて審問会ですよ。
レイズル氏は根性無しだから
ぜったい全部白状するでしょ?
結果、あの方がたが、
ホントに『聖域』に捕まるとか
笑い話にもなりませんって!
腹をくくって、筋の通った
報告書を偽造なさいな!」
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「わぁったって!
ったく、最後まで
世話の焼ける連中だったぜ。
……ったくよお……」
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「不満そーですね。
『聖域』を脱走して
みなさんに合流したいんじゃ
ないですか?」
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「バカ言うな。
職場放棄は上等だが、
あんな連中は願い下げだよ。
結局、連中が選んだのは
ただの破滅だ。
それしか無かった。
だから俺はヒロイズムも
一発逆転も涙もない、
ただの悲劇を用意した。
なのに連中、
全部自前で用意して
『永遠』と名付けやがった」
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「いくらその光景が美しくとも、
その本質は、集団自殺。
『祈祷者(プレイヤー)』ども
がそれに価値を見い出して、
奴らを生かしたのは、結果論。
俺は臆病だ。
死にたくねえし、
死で買う奇跡の話は苦手でね。
奴らに起きた奇跡を、
手放しじゃ祝福できねえさ」
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「死すら糧(かて)とする
『クロニクル』の
まがい物としては、
コメントに困りますが……
その割に、見逃すんですね?
認められない奇跡なら
消しちゃおう、なんて
思いませんでした?」
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「お前なあ……
そもそも世の中なんて
ユルいもんだろ。
多少の例外に目くじら立てて
どうすんだ。
めんどいだけだろ。
それにまあ、
好き嫌いとは別にして、
たかが5つのちっぽけな奇跡に
水差すほど野暮でもねえよ」
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「……お別れも、不要で?」
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「要らねーよ!
面倒の極みだろ!
生きてりゃどっかで
会うこともあるさ。
その頃までヘルドラが
残ってりゃの話だがな!
頑張れよ~境界騎士諸君!」
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「あなた方だって失敗したら
世界の一つや二つは
軽く吹っ飛ぶでしょうに!
ま、わたしもですけど!
いやー、不可避とはいえ、
冒頭の三巫女世界を
何度吹っ飛ばしたことか」
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「……
うう……
うるさい……
我……
寝てたのか……
うう……
あたまがいたい……
蜂蜜酒(ミード)の……
のみすぎか……」
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「おっと!
ようやくお目覚めですか。
ちゃんと正気です?
わたしのことに見覚えは?」
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「……なんだ……
おまえのこと……
夢で死ぬほど見たぞ……
かましていいか……
ヴァルメイヤキック……」
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「マジ勘弁してください。
ここでやられると
ワンチャン消滅がみえる。
というか……大丈夫かな、
まだヴァルメイヤ信仰とか
執着あったりします……?」
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「おまえ
おまえ
おまえ……
みなまで言わせるな……
なんとなく
夢のノリの続きを
したくなっただけだ……
いま……何歴の何年だ……」
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「……え、えっとぉ!
ヘルドラ新暦491年です!
多忙ですよ~現代は!
『ギ・クロニクル』の制御中枢(せいぎょちゅうすう)
としてキリキリ働いて下さい!
多少劣化してもあなたの能力は
超強いですし!
あとわたしもレイズル氏以外の
話し相手ができるのはまあその
多少嬉しい、えっとえっと、」
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「……レイズル氏ぃ!
もう出ますよね!?
わたしは少し、野暮用が。
ひとっとび、いいですか?」
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「やれやれ。
さっさと戻れよ?」
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「もちろん!
それではお二方、しばし失礼!」
……
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「くっ……この吹雪では、
先に進むのも一苦労ですね……」
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「ビョルカさん、
無理しないでください!
夜の吹雪はガチすぎる!
っていうか全員無理するな!
もう生身なんだから!」
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「よぉし小僧! 盾となれェ!!」
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「聞いてんのかジジイィィ!」
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「うるさ……
使ってみる?
『鍵の言葉』
少しは使えそう。
オスコレイアの力」
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「ふふふ、ヨーズ!
それはちょっと、
もったいないとおもうの!
せっかく体をもらったのよ、
もっともっとさむがって、
つらい旅をやりましょ?
そのほうがきっと、
のりこえたときに
きもちいいわ!」
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「ぬう……
ゴニヤ、成長したのう……」
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「屈折した、の間違いかも」
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「……ふふ」
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「ビョルカさん、
嬉しそうですね。
……良かった。
最後どうなったか、
僕らには知れなかったから」
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「私はね、フレイグ。
あの試練によって、
気付くことができたのです。
思い出も、掟も、信仰も。
心の後ろ盾は全て消え、
我らのゆくえはちょうど、
この夜明け前の道のよう。
もしや、いえ、おそらくは、
いずれ各々、別れてゆくことも
あるのでしょう」
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「でも、それが何でしょう。
あのとき皆さんにいただいた、
あの尊い一瞬が胸にあれば、
どんな闇と孤独にあっても、
私は前に進めます。
そんな皆さんと、
今、この瞬間をまた、
共に過ごせている。
その奇跡が、嬉しくて。
……へ、変でしょうか?」
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「変じゃないですとも!!!!!
変だとすればそれは僕だけだ!
うおおおおおおおおおおお!!
びょるびょるしてきたあ!!!」
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「黙れ。熊糞(くまぐそ)。
尻も蹴り潰すぞ。
……あとな、ビョルカ。
負けないから」
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「……
ふふふ。
いいですよ!
ところで実際これホントに
凍死しませんか!?
アオイトリったら、
防寒具はもう少し
弾んでくれてもよさそうな
ものでしょうに!」
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「ぬう……!
一度洞窟に戻るかの!?」
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「……いや。
嵐は、終わりが近い」
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「あっ……
みんな、みて!
日がのぼるわ!」
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「ああ。
こんな夜明け、見たことない。
そりゃそうか。
これが、
僕らがヘルドラで見る、
最初の日の出なんだから」
かくして、
偽典もまた
祝福されたのです巡礼者も
監視者も
祈祷者もみんなみんな
めでたし めでたし
ですね!!!
【ギ・クロニクル 完】